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「技術は僕を何者にでも変えてくれる」映像作家・関和亮氏が肩書きを持たない理由

タグ : カップヌードル, キャリア, クリエイター, 映像制作, 関和亮 公開

 

奇妙な音を立てながら、空中に姿を見せるリアル・インベーダー。彼らは地球に残された最後のエネルギー源、『カップヌードル』を奪うためにやってきた侵略者だ。世界を代表して立ち向かうのは、世界の“Air-K”錦織圭選手。ラケットから放つボールで、インベーダーを次々に撃墜していく――。

これは、日清食品『カップヌードル』の新CMとして放送されている「錦織VSドローンインベーダー」編の内容だ。

その名の通り、出てくるインベーダーの一部はドローンを使って飛ばしており、CGと実写を融合させた斬新な映像が話題を呼んでいる。

この動画の総合演出を務めたのは、映像作家の関和亮氏。スチールカメラマンとしてキャリアをスタートさせた関氏は、近年、ミュージックビデオ(MV)など動画の世界にも活躍の場を広げてきた。Perfumeやサカナクションといった人気アーティストのMVで、彼の名を知った人も少なくないだろう。

そんな関氏が手掛ける映像と切っても切り離せない関係なのが、最新テクノロジーである。2014年、ドローンを用いた空撮と編集ナシの“一発撮り”で話題を呼んだOK Goの『I Won’t Let You Down』のMVも、彼の手掛けた作品だ。カップヌードルのCMでも、インベーダーがドローンに乗った不思議な世界を、違和感なく作り上げている。

なぜ関氏は、最新技術を映像に自然に取り込めるのか。クリエイターとしてデジタルテクノロジーとどう付き合ってきたのかも含めて、その秘訣を聞いた。

ドローンを使うことでリアリティを演出できた

「錦織VSドローンインベーダー」編の撮影秘話を語る関氏

「錦織VSドローンインベーダー」編の撮影秘話を語る関氏

―― まずは「錦織VSドローンインベーダー」編の見どころというか、作り終わっての感想を聞かせてください。普段はMVを多く手掛けておられますが、今回のようなCM撮影は何か違いはありましたか?

MVでは企画段階から関わりますが、今回のCMでは(電通の)安達和英さんが先に企画を固めていたので、映像演出のフェーズから参加しています。なので、「なぜ錦織君がインベーダーを打ち落とすのか?」と聞かれても答えられません(笑)。ただ、ぶっとんだ世界観ですごく面白いし、すぐにやってみたいと思いました。

―― ドローンを使うというアイデアは?

それも企画段階で決まっていましたね。CGだけでもインベーダーを表現することはできますが、ドローンを使った方がリアリティのある映像づくりができるから、と。

今、ドローンっていろんな使い方をされていて、軍用兵器としても使われていますよね。だから将来、ドローンが人間に対して反乱を起こすことだってあり得るかもしれない。そういう意味でも、リアリティがあって刺激的な映像ができそうだなぁと。

―― 苦労した点はどこですか?

最初はインベーダー全部をドローンに乗せて飛ばそうと考えましたが、制御する際のWi-Fi環境など技術的な課題がいくつかあって、実際には特注のドローンを数台使って撮影しています。錦織君がいきなり命中させたのには驚きましたね(※編集部注:その時の様子は、以下のメイキング動画の1:20辺りで見ることができる)。

また、苦労というか、ゲームでは2次元で表現されていたインベーダーの動きを、3次元に変換して表現するのには頭を悩ませました。今回の撮影前に改めて『スペースインベーダー』で遊んでみたのですが、あの動きをドローンで表現しようとすると、いろいろと矛盾に突き当たるんですよ。

例えば、ゲームでは敵のインベーダーが横に動きながら、ジリジリと(プレーヤーが操作する移動砲台に向かって)迫ってくるじゃないですか。あの世界観をそのまま3次元に変換するのはとても難しい。プレーヤーを敵のビームから守る壁にしても、そもそもインベーダーとどういう位置関係で存在しているのか?みたいなことをずっと考えていました。

―― では、ドローンの飛ばし方にも工夫が必要だったのでは?

そうですね。このプロジェクトには技術協力でRhizomatiksさんが入っていたので、彼らとも相談しながら、試行錯誤しました。

デジタルとアナログを行き来しながらアイデアを膨らませる

―― OK Goの『I Won’t Let You Down』のMVでもドローンを使っていましたが、新しいテクノロジーを作品に取り入れる際、関さんなりのこだわりはあるのですか?

いえ、特にないんですよ。「こういう映像を作りたいからこの技術を使おう」ということもあるし、技術からヒントを得て映像のアイデアを広げていくこともあります。

『I Won’t Let You Down』のMVは、「たくさんの人をワンカットで撮りたい」、「最後は上空からのシーンがほしい」というアイデアが先にあって。だったら最初からドローンで撮影するしかない、という結論になりました。

―― 逆に、テクノロジーから着想して企画を練る時はどうやるのですか?

例えばサカナクションの『アルクアラウンド』のMVは、Adobeの『After Effects』でやれるような映像処理を実写で表現できないかな?と考えたのが企画の発端になりました。最初と最後がループするような表現にしてみたのも、CGで映像制作をする時にそういうテクニックを使うことがよくあるからです。

これまでいろんな手法を駆使して映像制作をしてきた経験を、実写に落とし込んでみたらああいう形になったというか。テクノロジーを通じて、新しい映像表現を「発見」したという言い方が近いかもしれません。

―― デジタルとアナログを行き来するようなイメージ?

そうかもしれません。だから、映像づくりに最新技術を持ち込むのに強いこだわりがあるわけでもないんですよ。ドローンを使うことに対しても同じで、僕は単純に、見る人が「これは何だろう?」と感じたり、刺激的なものを作りたいと思っているだけなので。

―― では、映像作家として心掛けていることは何かありますか?

しいて挙げるなら、制作に関わるいろんな人とコミュニケーションを取りながら作るようにしていることくらいです。

ちょっと話が変わってしまいますが、MVを作る作業って、本来とてもおこがましい行為なんですよ。だって、人様が作った楽曲が持つ世界観や雰囲気を、映像として表現するわけじゃないですか。僕自身がアーティストではないのに、ですよ(笑)。

だから、作品のクオリティを高めるのは当たり前のこととして、「自分が納得できない作品は世に出せない」みたいなこだわりは、持っちゃいけないと思うんです。

今回のようなCM制作も同じで、自分のアイデアだけでアウトプットを考えていたら、大勢の人にとっての面白い映像は作れないと思うんですね。だから、制作現場で僕が出したアイデアに対して「違うんじゃない」と言われた時は、コミュニケーションを重ねながら「なぜこの人は『違う』と思ったのか?」を考えるようにしています。

異なる意見、進化するテクノロジー…すべてに対して柔軟でありたい

関氏が映像作家として心掛けている、ある「スタンス」とは?

関氏が映像作家として心掛けている、ある「スタンス」とは?

―― 「違い」の理由を因数分解するようなイメージでしょうか?

ええ。対話を重ねる中で新しい気付きを得ることもあるし、「じゃあ、こういう理由でこの演出の方がいいんじゃない?」と説得することもあります。自分の考えと他人の考えの間を行き来することで、新しい何かを作ることができると思うんです。

人は刺激を求めるので、それまで見たことのないものを見たがります。だから、「昔こういう映像の作り方をしたから、これが正解」みたいな考え方はナンセンスで。過去を超えないと、見ている人は面白いと思ってくれない。

ではどうやって超えるかというと、自分の中にはない視点を持っている人と話をして、アイデアを取り入れていくしかないんだと思います。

カップヌードルのCM制作でも、日清食品さんや、『スペースインベーダー』の開発元であるタイトーさんの意見など、いろんな人の声を参考にしながら作成しました。

―― どんなやりとりだったのですか?

最初は今の映像よりクールな印象に仕上げる予定でしたが、日清さんから「もっと派手に爆発させてもいいんじゃないか」とご意見をいただきまして。一般的に、企業CMや商品CMのクライアントは過激な演出を嫌がる傾向があるのに、日清さんは違いましたね。

それから、「音でもCMを盛り上げてほしい」というリクエストがあったので、冒頭でインベーダーが登場する時の効果音はあえてちょっと耳障りな感じにしています。インベーダーが攻めてくる感じが、よりリアルに表現できたんじゃないかと思っています。

もし僕が思った通りに作っていたら、もっとサラッとした仕上がりになっていたと思いますよ。

―― 柔軟なスタンスなんですね。最初からそういう姿勢で仕事に取り組んできたのですか?

もともと「これが僕のスタイル」というものは持っていないんですよ。これまでの仕事も、スチールカメラマンもやるしグラフィックデザインもやるし、映像監督もやるしアートディレクションもやる、といった感じで続けてきたので。

映像づくりにしても、特定の撮影手法とか、一つの方法に固執はしていません。アウトプットが変われば、作り方も変わるからです。自分のスタイルがない分、フレキシブルに対応したいんです。

映像作品をアウトプットできる場所はすごく増えたし、制作に使えるツール類もこれだけ増えた時代に、一つの肩書きで一つの仕事だけを続けていくのが正解なんだろうか?とも思います。

―― そう思うようになったのはいつごろから?

分かりやすいターニングポイントがあったわけではないです。ただ、2000年代にいろんなデジタル撮影のテクノロジーが広まってきたころ、今話したようなことを真剣に考えたのを覚えています。だから、技術が僕を変えてくれたとも言えるかもしれません。

技術が進歩して、ハードウエアも安くなったことで、映像づくりを1人でやれる部分がすごく増えたわけじゃないですか。それでいろんなことを試しているうちに、依頼される仕事の幅も広がっていった。だから、柔軟でありたいと思うようになったのかもしれません。

―― 関さんの名刺には「肩書き」がないですよね?これも、柔軟さというか、特定の仕事に縛られたくないという思いから?

そうなんですよ。

―― じゃあ、「関さん=ドローンの映像監督」みたいな括られ方をするのもイヤ?

はい(笑)。括られたくないし、自分自身のことを「○○クリエイター」みたいに定義したくないんです。

―― お話ありがとうございました!

取材/伊藤健吾(編集部) 文/片瀬京子 撮影/桑原美樹




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