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松井秀喜さんの現役引退から考える、シニアエンジニアのキャリア設計【連載:小松俊明⑫】

タグ : 35歳限界説, マネジメント, 管理職 公開

 
キャリアコンサルタント・小松俊明の「最新ニュースから読み解くキャリアの未来」
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東京海洋大学特任教授/グローバル・キャリアコンサルタント
小松俊明 [@headhunterjp]

慶應義塾大学法学部を卒業後、住友商事、外資コンサル会社を経て独立。エンジニアの転職事情に詳しい。『35歳からの転職成功マニュアル』、『デキる上司は定時に帰る』ほか著書多数。海外在住12年、国内外で2回の起業を経験した異色の経歴を持つ。現在はリクルーターズ株式会社の代表取締役、オールアバウトの転職ノウハウガイド、厚生労働省指定実施機関による職業責任者講習講師を務める傍ら、東京海洋大学特任教授として理系大学生のキャリア&グローバル教育の研究と教育に取り組む。小松俊明公式HP転職活動コンサルHP

先日、38歳を迎えた松井秀喜さんが現役引退を表明しました。

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米メジャーリーグでスラッガーとして活躍し、渡米後も日本のファンに愛されてきた松井秀喜さん

会社員ならば、まさにこれから働き盛りといえる年齢ですが、過去の実績よりも今の成績が評価されるのがプロスポーツの世界。

体の調子や気力の状態、そして先シーズンの成績を考慮すれば、松井さんが現役引退という決断を下したのも、致し方なかったのかもしれません。

さて、体力、精神力の限界まで突き進んで現役続行にもう一度賭けるか、余力を残して現役を退くかの選択は、開発現場から立ち去り、管理職に進む選択を迫られるシニアエンジニアの姿と重なるものを感じます。

実は同じ構図が、わたしが昨年から身を置く大学教育の現場にも存在しています。若い研究者として研究活動に没頭し、日ごろの研究の成果を論文にまとめて学会に発表すること、これが大学教員の研究者時代の日常です。

ただ、年を重ねて教授となり、大学運営の管理業務もたくさんこなすようになれば、研究者として研究に割ける時間が大きく奪われることになります。

大学教授の現実は、開発現場の仕事から離れ、管理職として「人の管理」を中心とした毎日を過ごすことになったシニアエンジニアの未来選択と重なるのです。

果たして、すべての人が管理職を目指すべきか?

いつの時代でも、さまざまな職種の多くの人が、現場を離れて管理職になることに悩んできました。スポーツ選手になぞらえて言うならば、現場の仕事は現役選手のようなものであり、管理職は現役引退に似ていると言っても過言ではないのかもしれません。

特に職人の世界は現役志向、現場志向が顕著だと言いますが、エンジニアの世界も近い性質があるのではないでしょうか。

もちろん、管理職になる選択は悪いわけでも、後ろ向きのチョイスでもありません。むしろ、スタッフとは違った多くの刺激的な挑戦があり、仕事の難易度は高いものです。

ただ、エンジニアの世界を良い例に、「できれば管理職になりたくない」、「管理職的な仕事にはできるだけ時間を割きたくない」と、現場で努力をし続ける人も少なからずいます。

ではなぜ、それでも多くの人が管理職の道に進むのでしょうか。若手を育成しなければ事業継続が難しいという経営側の要請もあるのでしょう。また、企業の給与体系や待遇全般が、管理職を厚遇する傾向にあることも、「管理職にならなければならない」と思わせる大きな要因になっているのではないでしょうか。

現にスタッフでいる時よりも、管理職になればはるかに待遇が良くなるという会社は少なくありません。出世競争という言葉も、主に管理職になる競争のことを指しています。

「名選手、名監督にあらず」はプロスポーツだけの話ではない

ここで、プロスポーツの世界にもう一度話を戻して考えてみましょう。プロ選手の場合は、どんなスポーツであっても明確な実績主義であり、それがゆえに現役の時の方が管理職になるよりも給料や諸待遇がはるかに良いものです。

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エンジニアに限らず、どの世界でも「現場で優秀」だったスターがマネジメントでも優秀とは限らない

管理職としての監督を務めている人よりは、名声にしてもはるかに現役選手に集まるものです。

このような考え方を、ビジネスパーソンの世界でもっとドラスティックに適用できたとしたら、中には管理職を無理して目指す必要がなくなる人もたくさんいるのではないでしょうか。

世の中には、適性として管理職には向かない人がたくさんいます。そんな“不適格上司”を持った部下は、悲惨な会社生活を送ることにもなります。

「名選手、名監督にあらず」という言葉がありますが(逆にそれほどスター選手ではなかったのに、名監督になった人はたくさんいます)、現場で大活躍するスタービジネスパーソンが、必ずしも管理職として成功するとは限らないはずです。

シニアエンジニアの「現役続行」が特別視されない時代に

そうしたスター社員、スターエンジニアをずっと現場に残して活用するような諸制度、特に給与と評価制度があれば、企業は今よりも適材適所のキャスティングをして、もっと多くのベテランを現場に残し、本人が希望しないような管理職の仕事につける必要もなくなるのではないでしょうか。

シニアエンジニアが自らの人生後半を迎えた時、キャリアの未来選択として、もっと気楽に「現役続行」という選択肢を選べる時代がもうそこまで来ているように思います。

「生涯現役」という言葉がありますが、スポーツ選手のような特別な身体能力を求められないシニアエンジニアの仕事において、生涯開発現場にこだわり、いつまでも最先端の技術を学んで腕を磨きながら仕事をし続けることは、従来型の組織が軒並み苦境にある今や現実になりつつあると思うのです。

前述の松井さんとほぼ同世代、39歳を迎えたイチロー選手も、長年活躍したマリナーズを離れ、ヤンキースで新たな現役続行に挑戦しています。こうした輝かしい実績を持つスター選手から、わたしたちはたくさんのエネルギーをもらい、いつまでも自分らしい仕事にこだわって、現場で輝き続けたいものです。




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