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ある起業家から学ぶ組織づくりの失敗学~ユーザビリティ分析ツール『ONI Tsukkomi』の誕生秘話

タグ : linklive, ONI Tsukkomi, スタートアップ, 大道宏樹, 澤村大輔 公開

 

ユーザーが、WebサイトのUIにオニの様にツッコミ、つまり感想を延べ、改善すべき点をあぶり出す『ONI Tsukkomi(鬼ツッコミ)』。インパクトあるネーミングをひっさげ、ありそうでなかったこのサービスが登場して約1カ月になる。

ONI Tsukkomiはリリースから約2週間で導入企業数は150社を突破。既存サービスと差別化を図ったコンセプトがマーケットに選ばれた格好だ。

サービスを提供するのは2014年4月創業のリンクライブ。創業者で代表取締役社長の澤村大輔氏にとって、2つめに興した会社だ。

澤村氏の経歴はなかなかにユニーク。早稲田大学法学部在学中は、政治の道へ進むか起業家になるかで迷い、後者を選択。そうと決めたからにはなるべく早く社会経験を積もうと、IT系企業でアルバイトを始め、「何でもやっていい」という会社の言葉を受けていろいろと提案はするものの、そこで知ったのは、自分は仕事の仕方を全く知らないという事実だった。

社会の厳しさを思い知った澤村氏は、卒業後すぐ起業する道をあきらめ、社会人としての経験を積むために野村総合研究所へ。3年経ったら起業のために退社すると心に決めて入社した。そして3年後、有言実行で退社するのだが、それが波瀾万丈な起業家人生の幕開けとなった。

起ち上げた会社を1年で売却。苦汁を飲んだ澤村氏に、組織づくりの苦労と、現在の経営方針について聞いた。

1度目の起業は、疎い方向けのファッションECサイト

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学生時代から『起業』を意識していたと語る澤村大輔氏

起業したい――。その思いは人一倍強かったが、起業に必要なもう一つのものが欠けていたと澤村氏は振り返る。どんなビジネスで起業するかがなかなか見つけられずにいたのだ。

試行錯誤の末、起業の種を自分自身の中に見つける。ファッションだ。とはいえ、澤村氏はファッション大好きというわけではない。むしろ「まったく詳しくない」と断言する。

それでもファッションのECサイトを立ち上げてみようと思ったのは、「自分のようにファッションに疎い男性が、難しいファッション用語を知らなくても、コーディネートされた服をまとめて買えるサイトにはニーズがある」と考えたからだ。

目指していたのは「ファッションに疎い男性のためのファッションサイト」。ストールとマフラーの違いが分からなくても大丈夫なよう、UIからはファッション用語をできるだけ排除した。

それが使いやすいものになっているか確かめるため、澤村氏は、知人をつかまえては持参したPCでその画面を見せ、使ってもらうことを繰り返した。使ってもらうと、思いがけないところで「分かりにくい」と言われ、それを実際のUIに反映すると、明らかに数字が改善する。

ただ、アナログなヒアリング作業は手間が掛かる。この手の検証サービスがネットで提供されていないか探したが、見つからない。時間と手間が掛かっても、自分でやるしかなかった。

起業ごっこの限界。空中分解する組織

澤村氏が起業を見越して読んできたビジネス書には、「起業仲間は能力より相性で選べ」と書いてあったし、コンサルタントとして歩んできた3年間の仕事で学び、身に付いていたことでもあった。しかし、身に染みてはいなかった。

「腹落ちしていませんでした。実際にやってみないと分からないという自分の性格も災いしたのだと思います」

だから 相性や人間性よりも、結果的に事務処理能力などに重きを置いて仲間を選んでしまい、最初の起業を行った。

ほどなくして澤村氏は、自分の判断より、ビジネス書に書いてあることが正しかったことを知ることになる。自分以外のチームメンバー2人が日々衝突を繰り返し、それを仲裁できる力を当時の澤村氏は持ち合わせていなかったためだ。

また、ビジネス書には「ECをやるなら在庫はできるだけ持つな」とも書いてあったのに、結果として、在庫を大量に持たざるを得なくなってしまった。

開設したサイトでは、上下をコーディネートしたセットを売るため、販売単価は高くできる。しかし、購買率が上がらず、在庫が減らない。

「日々、『お金が溶けていく』恐怖を味わいました。そうなってみてようやく、『そういえばこれもビジネス書に書いてあったな』と思いました。このころに、本に書いてある悪いことはたいてい体験しました」

失敗から学んだ、仲間を集めるための3つの信念

結局、その会社は起業から1年で売却。

「今となっては、あれはただの“起業ごっこ”でした」

と振り返る澤村氏にはその時、大きな教訓が残った。

「仲間選びには、能力がどうこう以前に、もっと大切なことがたくさんある。そう思いました」

そして、能力以外に以下の条件を満たす仲間が見つかるまで、次の起業はしないと決めた。その条件とは、

【1】起業仲間である以前に、人として付き合いたい相手であること
【2】できない理由ではなく、できる理由を探せる人であること
【3】起業に本気であること

の3つだ。

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一度目の起業の失敗を経て、仲間集めに奮闘したと語る

ただ、仲間探しは簡単ではなかった。知人に紹介してもらったり、ネットで起業に興味のありそうな人を見つけ出したりして、これはという仲間候補を見つけては会って話をして「違ったな」と感じることを繰り返し、1年近くが過ぎた。

3つの条件が厳しすぎるのだろうかと思うようになった頃、約10人目の仲間候補となったリクルートに勤めるエンジニアの男性と新宿の喫茶店で会うことになった。

待ち合わせは16時。ところが直前にLINEで30分遅れると連絡があり、30分後にはさらに「15分遅れる」。「今回もやっぱり違ったか」と悟ったが、ここまで待った以上、相手の顔くらい見てやろうと、イライラしながらその人物の登場を待っていた。

そして、約1時間遅れでやってきたのが、後のリンクライブ技術部門責任者となる大道宏樹氏だった。LINEでは知り得なかった遅刻の理由は、客先でのトラブル対応。連絡が素っ気なくても仕方ない状況だ。それでもまだ澤村氏は、許す気にはなれずにいた。

ところが話をしてみると、目の前の男が3つの条件をすべて満たしていることがすぐに分かった。大道氏はもともとコンサルティング業界出身で頭が切れるだけでなく、起業意識も高い。何よりエンジニアとしての実績も申し分なかった。

イライラがすっかり消えた澤村氏はふと、初対面の人に必ず振る持ちネタを大道氏に投げかけてみた。

「俺、元日生まれなんだよね」

返事は「俺も」だった。

「え?何年の?」「1986年」「え、俺も」

急速に打ち解けた2人は、次に会う時にはビジネスの話をすると約束し、その日はそれぞれ帰路についた。このおよそ1カ月後、澤村氏は大道氏に「起業のため、今勤めているリクルートを辞めてくれないか」と伝え、大道氏はそれに同意することになる。

失敗ばかりの1年間も、無駄ではなかった

「で、澤村さん。起業のアイデアはあるの?」「ない」

「法人はもう持ってる?」「まだ」

「人は?」「いない」「金は?」「ない」

「じゃ、どうすんの」「それを一緒に考えて欲しい」

こんな会話の後、ふたりは平日の夜や土日を使って、起業のアイデアをぶつけあったが、「それじゃ大手に瞬殺される」、「そもそもニーズがない」など、なかなかこれというものに決まらない。

そうしているうちに、澤村氏の頭の中には、ファッションサイト運営時のことが蘇ってきた。あのアナログなUIの検証を、Webで再現できないだろうか。

当時の記憶をもとに、あったらいいと思ったサービスのイメージ図をコワーキングスペースのホワイトボードに描いてみた。すると、それを見ていた大道氏の目が輝いた。

「使えるよ、それ。作ってみるよ」

澤村氏はその言葉を聞いて「リクルートにいた大道が使えるというなら、いける」と直感した。これが、リンクライブ設立とONI Tsukkomi開発のきっかけとなった。

失敗を「準備期間」と考える

今日までを振り返り澤村氏はこう感じている。

「至らなかった私のすべての経験が、今、役に立っていると思います。そしてやっぱり、大切なのは人ですね」

リンクライブは澤村氏と大道氏の2人で創業したが、役員は澤村氏のみで、大道氏は技術部門責任者。つまり、経営者と従業員という関係になる。大道氏の提案でそう決めた。

大道氏の提案とは、こうだ。

「その会社に早く入ったことは、役員になる理由にはならない。いつかもう1人役員が必要になったら、それはその時に決めればいいこと。もちろん、みんなから『大道さんにやってほしい』と言ってもらえるように頑張るけどね」

立場を明確にするため、正真正銘の同い年の2人は「澤村さん」、「大道」と呼び合う。3つの条件をぶらさずに採用した新メンバーが加わって、今、リンクライブはエンジニア3名を含む5名の所帯となった。4月には、現在はPC版のみのONI Tsukkomiに、スマホ版が追加される予定となっている。

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2度目の起業で最高のパートナーを見つけたという澤村氏(左)と大道氏(右)

失敗から学んだ仲間の見つけ方。そして、ONI Tsukkomiというサービス。1度目の失敗は失敗ではなく、リンクライブのための準備期間だったのかもしれない。

「今はONI Tsukkomiに興味があるよりも、リンクライブで働きたいという言葉を新しい社員からもらっています。今が幸せで忘れがちですが、失敗した時に決めたことを何年後でも胸に持ち続けたいです」

取材・文/片瀬京子 撮影/赤松洋太




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