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「今必要なのは、究極にシンプルなmixi」ニコ動生まれのアーティストkz氏(livetune)に聞く、ネットカルチャーの未来【特集:New Order】

タグ : kz, livetune, ニコニコ動画, ネットカルチャー, 初音ミク, 音楽 公開

 
livetune
kz氏
ネット上に公開したオリジナル楽曲『Packaged』、『Light Song』など、初音ミクのVOCALOIDを 使用して制作した楽曲が話題となり、累計350万 回以上再生される快挙を達成。音楽業界から注目される。現在は、TVアニメの主題歌からクラブミュージ ック、有名アイドルのツアーのライブ用BGM などさまざまなジャンルのアーティストの楽曲の 作詞、作曲、Remixなどの楽曲を手掛ける人気 クリエイターとして活動

2012年、世界に配信された『GoogleChrome』のCMキャラクターとして初音ミクが起用されたのはご存知だろうか? 同CMは、初音ミクがテレビや動画を通して、国内外問わずより多くの人に知られるきっかけともなった。

BGMとして使われた楽曲『Tell Your World』を作曲したのは、ボーカロイドクリエイター&音楽プロデューサーのkz氏(livetune)だ。

その音楽性の高さで、数多くのアーティストに楽曲を提供しており、2014年3月12日にリリースされたBUMP OF CHIKENと初音ミクとのコラボ曲『ray』では初音ミクのプログラミングも担当している。

そんなkz氏は、2007年9月にネット上でのオリジナル曲の公開からキャリアをスタートさせた、いわゆる「ネット発アーティスト」である。ネットやリアルの垣根を超えて活動を続けるkz氏に、これからのネットとクリエイティブのあり方を聞いた。

ニコニコ動画は混沌としていたからこそ、新しいモノが生まれた

―― エンジニアtypeでは珍しい、音楽系のアーティストということで、今日はネット×クリエイティブの関係について、忌憚のないご意見をお話いただければと思います。

門外漢なので、あまり役には立てないかもしれませんが、がんばります。

―― 2007年9月にボカロ曲『Packaged』をニコニコ動画で公開したことが活動のスタートになっています。そもそも、この楽曲が注目されたきっかけは何だったのですか?

実は、特にこれというきっかけはなかったと思っていて。あるとすれば、不完全な動画にコメントで突っ込むことが娯楽だった時期に投稿したことですね。

当時は今みたいに、投稿時からPVや凝ったフォントの字幕が付いている作品はあまりなくて、『Packaged』も曲の最中は初音ミクのサムネが映っているだけの動画でした。

その不完全性、ミステリアスな初音ミクという存在に対して、みんなで突っ込みを入れることがウケて、再生数が伸びていったんだと思います。

そこから二次創作的なクリエイティブが発展して、イラストやPVなど、一つの楽曲に対して、多角的な盛り上がりが発生しました。

徐々に音楽やPVを含めた一つの動画として完成された、ウェルメイドな作品がアップされ、再生数が伸び始めていったのは、2009年以降からではないでしょうか。

ネット上で生まれる二次創作は「不完全」だから面白いと話すkz氏

―― なぜ、「不完全な作品」から「完成された作品」を楽しむ方向へ変化していったのでしょうか。

ネットユーザーの低年齢化が進んでいるからだと思います。ニコニコ動画は今、ティーンのユーザーが圧倒的に多いと聞きますからね。

ティーンは、自分たちで二次創作をクリエイトするところまではなかなか辿りつけないので、完成されたポップスを聞くのと似た感覚で動画を楽しんでいる。

そうした楽しみ方の変化に合わせて、作品も完成度の高いモノが多くなってきていますね。

それから、ニコニコ動画がプラットフォームとしてクリーンに整備されたことも大きいと思います。というのも、僕が初めて作品を投稿した2007年9月は、ニコニコ動画がアカウント制を導入して間もないころで、プラットフォームとしてはかなり混沌としていました。

法的にグレーな動画も多くて、ある種「スラム街」みたいな空気感がある場所だった。だからこそ、みんな好き勝手やって、新しいクリエイティブが生まれていったと思うんです。

「これをやっちゃいけない」みたいな空気ができちゃうと、みんな冒険しなくなっちゃいますからね。

それから、自分で言うのもなんですが、僕やsupercellのようにニコニコ動画からメジャーレーベルへ行くというロードマップができたことで、それを狙った作品が多くなったのも大きいと思います。

ニコニコ動画は再生数ランキングが目立つような設計なので、ランキング上位に入ってメジャーレーベルを狙うという発想の人が増えてきました。そのため、作品としてのクオリティはどんどん上がっているのですが、新しいモノが生まれにくくなってきているのも事実です。

「究極にシンプルなmixi」が必要とされている理由

livetuneのオフィシャルWebサイト。写真はlivetuneの新曲『DECORATOR』のジャケット
【初回盤】CD+DVD:2000円+税
【通常盤】CD:1500円+税

―― プラットフォーマーからすると、新しいモノが生まれる混沌としたパワーと、サービスとして継続させるためのクリーンな整備をバランスよく両立させるのは難しいはずです。今後はどちらのプラットフォームが増えていくと思いますか?

趣味的なモノから新しいクリエイティブを生み出したいと思っている人か、それともランキングを駆け上がってメジャーを目指すぞと思っている人か、どちらが多いかという話だと思います。

現状でいうと、後者の方が多いように思います。『カゲロウプロジェクト』のじん(自然の敵P)君も、しっかりそういう意識を持ってやっていると思います。彼らのような意識を持った作り手にとったら、今のニコニコ動画のようなプラットフォームは最適なアウトプットの場所なんだと思います。

逆に、新しいモノが生まれる場所として、一番可能性があるのは、結局YouTubeになるんだと思います。良いか悪いかはさて置いて、ニコニコ動画ほど整備されていないですからね。

動画コンテンツ以外で言うと、Sound Cloudやpixivは面白いプラットフォームです。あくまで、自分の作品の置き場所として機能している。

彼らがやっていることって、要は落書き帳をポンって置いているようなものなんです。そういう場所では、自由なコンテンツが生まれやすい。

―― kzさんは現在、ネット上ではなく、メジャーレーベルから作品をリリースしています。もう、ニコニコ動画などには投稿しないのですか?

またカオスな場になったら、投稿するかもしれません(笑)。

僕がメジャーに行きたいって思ったのは、そっちの方が混沌としていて面白いなと思ったからです。

―― その結果生まれたGoogleCromeのCMは、今回の特集テーマである「融合」を2012年の時点で行っていた象徴的な事例でもあると思います。ネット発のクリエイターが、リアルと接点を持つためには何が必要なのでしょうか。

何でしょうね……。コミュニケーションツールという意味では、TwitterやLINEなどある程度完成されたサービスが存在すると思っています。だから、リアルの世界で会った人とは、そうしたサービスを使ってコミュニケーションを取ればいい。

ただ、会ったことがない人に自分のことを理解してもらうには、それらのツールはあまり使えないんです。

LINEはそもそもクローズドなコミュニケーションツールですし、Twitterだと「お腹空いた」みたいな表面的な情報の垂れ流しになってしまう。それだけだと、本当に自分のことを理解してもらえているのかな、と思ってしまうんです。

あと、Twitterって導線が難しいんです。フォロワー数が多いからといって、全員が自分の作品を買ってくれたり、ライブに来てくれるわけではない。

だから、よりアーティスト個人にコミットしてもらうためのオープンなコミュニケーションツールとして、「ブログ」をちゃんとやった方がいいのかなって思います。

ブログ全盛の時代って、じっくりと、個人の感情の流れや日常が読めていたと思うんです。そうしたものを復活させてもいいんじゃないですかね?

お笑い芸人の有吉弘行さんのTwitterを安心して見ていられるのって、僕らがテレビで有吉さんの人となりをある程度知っているからじゃないかな、と。有吉さんにとっては、テレビがブログとして機能している。

「個人の考えを蓄積する場所」と「瞬間的な気分をタレ流しできる場所」の2つがあって初めて、その人を知ることができると思うんです。

そういう意味で、僕が今一番あるといいなと思っているのは、「究極にシンプルなmixi」。mixiってブログを蓄積できるし、チャットもできるし、Twitterみたいな機能もあったよくできたサービスだったんです。

「ファーストインプレッションの優しさ」はどのジャンルでも大切

―― 「シンプルな」と付けた意味は?

mixiはアプリとか余計な機能を追加していって、使いづらくなってユーザーが離れていったから。どうしても、機能を追加してごちゃごちゃさせちゃうのは、日本人の性なんですけどね(笑)。

音楽を例にとっても、日本の音楽は、海外に比べて音の密度が高いと言われている。アメリカのマスタリング・エンジニアにとったら、日本の音源は、音が多過ぎてどこをいじっていいか分からないんです。それぐらい、音の情報量が多い。

逆に、アメリカで売れているポップスって、めちゃくちゃシンプルにできている。それが日本でできないのは、「被り」が怖いからでしょう。ちょっとでも聞いたことがあるメロディだったりすると、すぐにネットで叩かれてしまいますからね。

―― エンジニアからすれば、シンプルなサービスってことになりますね。それも音楽と同じく、被ることを恐れ、多機能性に走る傾向があると思います。

情報過多で多機能過ぎるサービスは、どこがスポットなのか分からないですよね。それはサビが分からない曲と同じこと。やっぱり、一発でサビが分かる曲って、良い曲なんですよ。

インターネットによって情報量が圧倒的に増えたことで、みんなシンプルなものを欲するようになってきている。

そういう時代の流れの中、「ファーストインプレッションの優しさ」っていうのは、音楽だけでなく、どの業界でも通じる大切な要素だと思います。

最新E.P.『FLAT』絶賛発売中
定価:1000円+税

―― なるほど。先ほどの話でいくと、kzさん個人のファーストインプレッションを優しくするためのツールがブログであると。

そうですね。どうしても、ネット発の人たちって、ミステリアスな存在に思われがちというか、小難しい人なんじゃないかというイメージがまだ強いんです。実際、僕もよくそう言われる(笑)。

「ネット発でダンスミュージックやっていて」と説明すると、それだけで閉鎖的というか、怖いイメージを持たれてしまうんですよ。でも、本当は笑いも取りたいし、バラエティとして作品を発信したい。

エミネムだってバラエティ番組に出たりしている時代ですから。実はみんな、そういうのが好きなんですよね。

だから、僕もその最初の一歩としてブログを始めようと準備しているし、USTREAMでライブを生配信したり、曲作りの過程を生配信したりといったことを今後はしたいと思っています。

そうした活動を通じて、ネットミュージックやネットカルチャーの「何か怖い」というイメージを払拭して、リアルとネットの垣根をなくしていきたいです。

取材・文/長瀬光弘(東京ピストル) 撮影/竹井俊晴

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