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アナリティクス機能も備え躍進中のクラウドファンディングサイト『Makuake』の「CA流+α」の成長戦略

タグ : Makuake, クラウドファンディング, サイバーエージェント, モノづくり 公開

 
サイバーエージェント・クラウドファンディング代表取締役社長の中山亮太郎氏(左)とプロジェクトマネジャーの松風敬氏

サイバーエージェント・クラウドファンディング代表取締役社長の中山亮太郎氏(左)とプロジェクトマネジャーの松風敬氏

サイバーエージェント・クラウドファンディングが運営するクラウドファンディングサイト『Makuake』がこのほど、プロジェクトページのPV数、支援者の流入元、決済手段、利用デバイス、属性などのさまざまな情報を閲覧できる「アナリティクス機能」を新たにリリースした

プロジェクトの実行者はこのデータを基に、支援者獲得のための新たな施策や、マーケティングの精度向上につなげることができるようになる。

2013年スタートの『Makuake』は国内クラウドファンディングサイトとしては後発の部類に入るが、昨年夏ごろから急速な成長を見せており、すでに国内最大級のサービス規模となっている。

日本の主要クラウドファンディング単月の月次支援額推移。一番上の桃色がMakuake。昨年夏ごろから急速に伸びていることが分かる

日本の主要クラウドファンディング単月の月次支援額推移。一番上の桃色が『Makuake』。昨年夏ごろから急速に伸びていることが分かる

今回のアナリティクス機能のリリースも『Makuake』の成長戦略の一環として捉えることができる。では、『Makuake』が急成長できた背景にはどのような戦略があったのか。開発チームはそれをどう支えてきたのか。

サイバーエージェントグループ内のスタートアップとして『Makuake』を立ち上げた代表取締役社長の中山亮太郎氏とプロジェクトマネジャー松風敬氏へのインタビューから見えてきたのは、「CA流」ならぬ「Makuake流」とも呼べる、徹底したユーザー視点獲得の取り組みだった。

クラウドファンディングの使われ方が変わってきている

「今回アナリティクス機能をリリースした背景には、クラウドファンディングの使われ方の変化があります。国内海外を問わず、単純な資金調達目的というより、テストマーケティングとしてクラウドファンディングを使うケースが増えてきているのです」(中山氏)

この傾向は、国内の他のクラウドファンディングサイトと比べて、『Makuake』により顕著なものだという。

というのも、日本のクラウドファンディングは東日本大震災の復興の文脈で盛り上がった経緯があり、これまでは比較的チャリティー色の強いプロジェクトを多く扱うサイトが多かった。

ソニーが名前を伏せたまま『Makuake』で募集した電子ペーパー時計『FES Watch』

ソニーが名前を出さずに『Makuake』で募集した電子ペーパー時計『FES Watch』

対して『Makuake』は創業時から、「競争力のある全く新しいプロダクトが生まれる土壌を日本に作ること」を目的としており、必然的にマーケティング利用の需要が高い。ソニーが名前を出さずに『Makuake』で募集した電子ペーパー時計『FES Watch』のプロジェクトはその好例といえるだろう。

「アナリティクス機能はこうしたテストマーケティング利用を支援する目的でリリースしました。期間中はもとより、クラウドファンディングの期間が終わった後のビジネス展開を、より後押しできるのではないかと考えています」(中山氏)

こうした実行者の変化に続いて、昨年の夏ごろからは支援者の側にも、新しいプロダクトが生まれるクリエイティブな場としてクラウドファンディングを楽しむ傾向が見えてきているという。

そうした時代の空気も『Makuake』の好調を後押ししている一因のようだ。

開発にユーザー目線をもたらす「シャークアイタイム」

アナリティクス機能を開発する上でのポイントは大きく2つあった。まず、支援者のどのデータを取得するべきかという点、そして、取得したデータをどのように見せるのがいいのかという点だ。

データの取得にあたっては、コンバージョンレートをいかに下げないかに細心の注意を払ったと中山氏は振り返る。

「資金調達のためには当然、決済完了まで到達するコンバージョンレートが高い方が良いわけですが、そのために『Makuake』ではもともと、決済時の入力項目を極限まで削っていました。実行者の方からはできるだけたくさんの支援者データが欲しいという声が多いのですが、レートが下がってしまっては意味がない。性別、生まれた年代、職業と、慎重に見極めながら少しずつ項目を増やしていきました」(中山氏)

今回リリースされた『Makuakeアナリティクス』のUI

今回リリースされた『Makuakeアナリティクス』のUI

取得したデータの見せ方については、「どのデータをどこに見せるか、スムーズにデータを表示するにはどうすれば良いかという点に、特に気を使った」と松風氏。ログ解析のために使用していたElasticSearchに支援者の属性などのデータも加え、そのデータを非同期で取得して画面に表示する仕組みを採っている。

「常に意識したのは、実行者にとっての使いやすさ、分かりやすさです。でき上がったものがエンジニア本意になってしまっていては、意味がありませんから」(松風氏)

開発者がユーザーにとっての使いやすさを正確に把握し、プロダクトに反映させるために、同社では大きなリリースの前には必ず「シャークアイタイム」と呼ばれる大規模な意見交換の場を設けている。

開発チームや経営陣に加えて、実行者のコンサルティングを行う立場である「キュレーター」も参加。その名の通り「サメのような鋭い目」でプロダクトを審査する。今回もリリース予定日の2日前に決定が覆り、UIを作り直したためにリリースが2週間ほどずれ込んだ。

「直前であっても違うものは違うと言える文化、それに応える開発チームが弊社にはあります。ここで妥協してもいいものは生まれない。今回も喧々諤々の議論を経たからこそ、結果として良いものができたと思っています」(中山氏)

工場を訪れ製造工程を体験し、社長自ら100本のアニメを見る

サイバーエージェントグループである利点を活かしたメディア戦略。最速で対応したスマホ最適化。日本最多種類の決済手段……。『Makuake』急成長の要因として考えられるものはいくつもある。

だが、そうした中でも特筆すべきは、「実行者の視点」を獲得するための泥臭い努力を惜しんでいないことだ。

「面白いプロジェクトを発掘することにはかなりの力を入れています。新しいプロダクトを生むプロジェクトであれば、その工程を知るために工場を見学したり、時には実際に製造工程を体験したりもしますし、未開拓のアニメコンテンツのプロジェクトであれば、できるだけ多くのプロデューサーに話を聞いたり、100本単位でアニメを見たりもします」(中山氏)

『Makuake』では映画やアニメ、飲食店など幅広いジャンルのプロジェクトが募集されている

『Makuake』では映画やアニメ、飲食店など幅広いジャンルのプロジェクトが募集されている

各業界の人たちがどのような課題を抱えているのかを知り、その課題に対してクラウドファンディングはどのような形で貢献できるのかを考える。そうした努力が、キュレーターに実行者目線のコンサルティングを可能にさせ、アニメや映画から飲食店まで『Makuake』が扱うプロジェクトの多彩なラインナップにつながってもいる。

このユーザー視点を開発に落とし込む上では、プロジェクトマネジャーである松風氏の存在が大きいという。

松風氏はサイバーエージェントに入社する以前に数々のソフトウエア開発会社を渡り歩き、Web開発、インフラ構築、組込み開発などの幅広い開発をしてきただけでなく、社長と2人だけの小さなベンチャーでは値段交渉などビジネス面の役割にまで踏み込んできた。

「本体であるサイバーエージェントのプロマネは『技術も分かるビジネス人材』であることが多いですが、松風は対照的に『事業マインドを持ったエンジニア』です。そのことが事業にひもづいた技術選択という意味で、非常に大きな価値をもたらしています。また、ユーザーにとって何がベストかを知るためにここまでどっぷりと浸かるというのも、CAの文化をうまく取り入れた、Makuake流といえるかもしれないですね」(中山氏)

サービスによってはエンジニアはモノづくりに徹していればうまくいくケースもあるが、クラウドファンディングは実行者と支援者の両方と向き合うことが必須のサービスであると中山氏は言う。そうしたサービスの性質もあって、『Makuake』には独自の文化が生まれつつあるのかもしれない。

「次の課題は、この事業マインドをいかに開発チーム全体に浸透させるか。そこは目下、模索しているところです」(松風氏)

見据えるのは日本のモノづくりが再び世界で脚光を浴びる未来

年内には海外ユーザー向け機能のリリースを目指しているという

年内には海外ユーザー向け機能のリリースを目指しているという

現在は国内での利用がほとんどだが、今後は世界展開を見据えている。海外のユーザーが申し込みやすくなるような機能を年内にリリースする予定という。

もともと世界で競争力を持つようなプロダクトが生まれる土壌を日本に作ることがミッションであるから、この流れは当然といえば当然といえるだろう。

中山氏はこの2年間、さまざまなプロジェクトを目にしてきて、「日本のプロダクトや職人は世界的にも偏差値が高い」とあらためて知るに至ったという。見据える先には、日本のモノづくりが再び世界で脚光を浴びる明るい未来がある。

ただし、そのハードルは低くない。国ごとに環境が違う中、配送をどう最適化するかなど運用フローの問題がある。そして、こうした問題のどこまでをシステムが担い、どこからを人手に任せるかの境目は日に日にあいまいなものとなっている。その意味でも、開発チームに事業マインドを醸成させるのは喫緊の課題なのだ。

取材・文・撮影/鈴木陸夫(編集部)




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