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独自アルゴリズムの開発で、“マンション探しのGoogle”を目指す『マンションノート』【連載:NEOジェネ!】

タグ : Google, キュレーション, スタートアップ, 不動産, 統計学 公開

 
世間をアッと言わせるユニークなアイデアと技術力で勝負しているニュージェネレーションを応援するこの連載。今回話を聞いたのは、『マンションノート』を開発、運営するレンガの3人。マンションの価値を計る新たなサービスが、不動産業界に起こすイノベーション。そのアイデアの源泉、そして込められた思いとは?
(左)取締役副社長 岡崎嘉之氏
(中央)代表取締役社長 藤井真人氏
(右)執行役員 小原和磨氏

3月21日にβ版がリリースされたあるWeb サービスが、不動産業界のみならず多くの消費者からにわかに熱い視線を集めている。それが『マンションノート』だ。

日本全国にある数十万件のマンションを対象に、マンションの住人をはじめ、元住人、周辺住人、専門家、不動産業者、物件オーナーなど、あらゆる立場の人物が自分の立場を表明し、マンションへの生の意見や評価を投稿・共有。

その集合知を分かりやすく「口コミ」と「ランキング」で見せることで、マンション検討者が購入前に、そのマンションでのリアルな生活を想像することができるWebサービスだ。

サイトのトップページには検索窓があることからも分かる通り、ユーザーは気になるマンション名や住所、路線から検索をかけるだけ。マンションの評価や特定地域のマンション評価一覧を確認することができる。

『マンションノート』が注目に値するのは、単なる口コミ検索サイトで終わらず、周辺施設などで変わる価値を独自スコア化して検索結果が変わる点。口コミと立地情報の両面から、条件に合った物件にめぐり合えるアルゴリズムとなっている。“マンション探しのGoogle”と例えたのはそのためだ。

マンションの項目別評点や口コミの詳細、ランキング順での表示には、会員登録(eメールアドレス、性別、生年が必要)と、現在または過去に住んだことのあるマンションについての口コミ投稿が必要だ。

アイデアの出発点:不動産は一生ものの買い物。なのに情報が少ない

「マンションは高額かつ一生ものの買い物であるにもかかわらず、非常に情報が少ない中で買わなければなりませんよね。そう感じたことが、『マンションノート』を立ち上げようとしたきっかけです」(藤井真人氏)

そう話すのは『マンションノート』の発案者でレンガ代表取締役、藤井氏。1998年に新卒で博報堂に入社後、2004年にショッピングサイトを運営するエニグモの創業に取締役COOとして参画。2010年に博報堂に戻り、新規事業の企画やIT企業への投資を行った後、レンガを立ち上げた。

「サービス発想のきっかけは自分自身がマンション購入を検討していたこと」(藤井氏)

「2010年ごろ、わたし自身がマンション購入を検討していたことがあり、不動産のサイトを調べていました。しかし、どのサイトを見ても掲載されているのは間取りや階数、方角などの基本情報がほとんどでした。マンションについての口コミが集まる掲示板もありましたが、そこに集まる情報は玉石混淆で、肝心の住民の雰囲気や日々の利便性、治安の善し悪しといったイメージを得ることができませんでした」(藤井氏)

また、物件を検討する際は、どれだけ文化施設が近くにあるかといった「良い情報」だけでなく、どれだけ治安が悪いかといった「悪い情報」もほしいもの。しかし、不動産屋は基本的にそのマンションのマイナスイメージにつながることは言わない。

「検討者が本当に必要としているのは、そういった『生の情報』なんです。当時は思わず、見かけたマンションの住人に、声をかけて直接聞きそうになりました(笑)。そのような経験を経て、『マンションでのリアルな生活を想像することができるWebサービス』のイメージが膨らんでいきました」(藤井氏)

ちょうどそのころ、藤井氏はエニグモ時代の部下だった岡崎嘉之氏と再会する。

レンガの取締役副社長を務め、機能の要件定義やデザインを受け持つ岡崎氏は元銀行マン。銀行を退職後、エニグモを経て2007年に靴磨きを専門とする富裕層向けのコンシェルジュサービスの会社を起業。会社の業績は順調だったものの、エニグモが上場準備に入るタイミングで、同社代表取締役の須田将啓氏から復帰を求められ、再びエニグモに参画する。

岡崎氏が藤井氏と再会したのは、ちょうどエニグモの上場を見届けた折。改めて自分の会社を立ち上げたいと考えていたころだった。

「わたしの親族が不動産関連の会社を経営しており、その仕事を間近で見ることも多く、不動産系のサービスにはまだまだ改革の余地があると感じていました。そんなタイミングでの藤井との再会。2人でいろいろと話をする中で、『マンションノート』の構想ができあがっていきました」(岡崎氏)

開発のポイント:アルゴリズムの構築とパラメータの調整がすべて

藤井氏と岡崎氏が出会い、始動した『マンションノート』プロジェクト。次に必要なのはサービスの開発を一任できるエンジニアだった。そこで声を掛けられたのが、現在レンガで執行役員を務める小原和磨氏だ。

小原氏もエニグモ出身であり、その後参画したオンザボードでは取締役CTOとして、さまざまなサービスの開発に従事。豊富な開発実績と技術力、経営経験がある小原氏こそ、まさに藤井氏と岡崎氏が求めていた“ミッシングピース”だった。

「定量的評価だけでスコア化した項目は200種以上。今後も増やしていく」(小原氏)

『マンションノート』の開発をすべて1人で行った小原氏。開発を進める上で、最も大きな力を注いだのが「アルゴリズムの構築」だと話す。

「これまでのマンション評価サービスにおいて、口コミによる『定性的な評価』と、マンション自体のスペックと周辺情報をスコア化した『定量的な評価』は切り離されて示されていました。『マンションノート』の最大の特徴は、そんな両者を組み合わせ、☆による評点という形に落とし込んでいる点。それを実現する上でキモとなるのが、各種アルゴリズムの構築です」(小原氏)

『マンションノート』独自の評点を出す大まかな流れはこうだ。

まず定量的な評価として「建物の評価」と「周辺環境の評価」をそれぞれ100種類以上の情報から、独自のアルゴリズム用いてスコアを算出。そこにユーザーが口コミとともに投稿した評価を掛け合わせて最終的なマンションの評点を算出する。

ただ、各種アルゴリズムを構築する上で必要なパラメータの調整は非常に難しい。一例として定量評価のアルゴリズムを見てみよう。

『マンションノート』の医療施設に関するアルゴリズムの一つに、「マンションから○○メートル以内に医療施設があれば、その医療施設の質とマンションからの距離を係数にしたものの掛け合せでスコアが上がる」というものがある。

医療施設が近い/アクセスが良いほど、評点は高くなると考えるのが一般的だが、実は必ずしもそうとは限らない。あまりにも大きな総合病院が近くにあると、気になる住人や、救急車のサイレンが耳に障ったりすることを嫌う住人もいるからだ。

「ユーザーの生活実感に合わせて、近過ぎると逆にマイナス評価にするなど細かな配慮をしています。同様の調整を生活施設の種類ごとに丁寧に考え、各種アルゴリズムを作りました。マンションを評価するアルゴリズムには、組み入れたい要素がたくさんあるのですが、ユーザーにとっての重要度が高く、かつ実現までのハードルが低いものに的を絞って、効率的に開発を進めています」(小原氏)

「マンション評価のスコアの精度は、常に100%に到達することのない永遠の課題です。今後もユーザーや専門家など多くの方々から情報を集め、統計学も用いて愚直に精度を高めていこうと考えています」(藤井氏)

いかに口コミを書いてもらうか。データを駆使しストーリーをつくる

アルゴリズム同様、細心の注意を払っているのが、口コミをより多く書きこんでもらうためのUI・UX設計だ。

「ユーザーに負担をかけず、口コミを書いてもらうためには『ストーリー』が不可欠」(岡崎氏)

「『マンションノート』は、多くのユーザーに口コミを書いてもらうことで、初めて成立します。そのため、ユーザーがサイトを発見してから口コミを書き込むまでの“ストーリーづくり”には心血を注ぎました」(岡崎氏)

「やることは地味ですよ(笑)。いろいろな知り合いに協力してもらってデプスインタビューを繰り返し、時には仮ではあるものの、実際に画面遷移に触れてもらいました。そうすることでトップページに来たユーザーの何%が今住んでいるマンション名を検索するのか、その内で会員になってくれるのは何%か、離脱して別のマンション名を検索するのは何%か……。

あらゆる選択肢と条件を設定し、考えられるすべてのストーリーを作成。各ストーリーにおけるすべての項目をパーセンテージに換算して、最も効率良く会員になってくれるパターンを想定しました。世に出ているサービスであればリアルデータを活用できますが、新規事業の準備時点でのストーリーづくりには少しテクニックが必要です」(藤井氏)

ユーザーの離脱率を下げるため、ゲーミフィケーションも研究。大ヒットした携帯電話専用のオンラインゲームのプロデューサーに助言を求めたこともあるという。

「ある程度までは、想定通りのフローになるものの、行動パターンを数値化してみると、『実はこのUIの方が離脱率が低かった』ということもよくあります。そういう場合は、なぜずれたのかを徹底検討し、UIに改良を加えます。そういう意味で現状の『マンションノート』はまだまだβ版。いろいろな方に使っていただくことで収集されたデータをUIに反映して、より良いUXを追求していきます」(小原氏)

加えて今後は、ユーザーの利便性を上げるべく、価格や広さといった「マンションを探す」ための検索軸の追加や、実際にそのマンションに住んでいる人物の属性を判断し、レコメンドを行う機能拡充などにも力を入れていく予定だ。

「『マンションノート』を通じて、信頼できる定性・定量情報/データをユーザー同士が提供し合う仕組みを構築し、住まいの情報インフラを最適化するのがわたしたちのミッションです。人生の重要な意思決定をサポートする社会的価値の高いサービスにしていくことで、『人々の生活の質の向上』を目指したいと考えています」(藤井氏)

取材・文/桜井祐(東京ピストル) 撮影/竹井俊晴

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