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「コードの未来、エンジニアの未来」まつもとゆきひろが語る、明暗2つのシナリオ 【キーパーソンインタビュー】

タグ : Heroku, mruby, Ruby, SE, SI, まつもとゆきひろ, クラウド, ソフトウエア, プログラマー, マルチコア, 業界有名人 公開

 

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技術革新の「本当のメリット」を見逃している開発案件が多過ぎる

―― 「暗い未来」を予想する理由は?

旧態依然のソフトウエア開発が、いまだに主流派を占めているということです。

Webサービスをインストールする最後のところだけAmazonのクラウドサービスを使っているけれど、開発プロセスは前となんら変わっていなかったり、プログラムを1行も書いたことのないSEが設計フェーズを仕切っていたり。一つのソフトウエア開発チームに何十人もかけたりするのも、いまだによく聞きますよね。

昨今のソフトウエア開発は、表面上だけ「最新テクノロジーの良いところ取り」をしているものも多いと示唆

現在のソフトウエア開発は、「表面上だけ最新テクノロジーの良いところ取りをしているものも多い」と指摘

これらは、さっき話した「持たない強み」とは真逆の状況ですし、中途半端に流行を取り入れただけの開発案件もたくさん見聞きします。

「プライベートクラウド」なんて単語を聞くと、ただただ悲しくなってしまいます。だって、クラウドサービスはネットの向こう側にあるたくさんのコンピュータを使えるのが最大のメリットなのに、プライベートクラウドは自社内に数多くのコンピュータを持って”クラウド的サービス”として提供しているわけですよね。それって「持っちゃってるじゃん!」と。その時点で、もうダメというか。

―― 最新の技術トレンドを取り入れている風ではあるけれど、本当のメリットを見逃しているケースが多いということでしょうか。ほかに、まつもとさんが「暗い未来」を暗示していると感じる部分はありますか?

今はBtoBの大規模開発でも、スタートアップの”小さなソフトウエア”開発でも、「持たないこと」のほかに開発スピードがとても重要視されるようになっていますよね。ヤフーさんが「爆速化」という言葉を使い出していますが、速さこそが差別化、競争優位性につながるわけです。

その視点で考えると、いわゆるシステムインテグレーターと呼ばれる人たちの仕事は、ほとんどが時代遅れになってしまうのではと思っています。

「時代遅れ」になっても仕事は残り続けるのか、それとも不要な存在になってしまうのかは、わたしには分かりません。が、間違いなく言えるのは、ほかの世界で本当に実力と能力を発揮しているエンジニアとの格差が、どんどん開いていく一方だということです。

「普通に開発をしている人」の職業的寿命は5年持つかどうか

―― 「実力と能力を発揮しているエンジニア」とは、どのような人ですか?

自分が社会に提示したいソフトウエアやシステムの形を思い描けて、実際に提供までできる人たちです。Web系かSI系か、コンシューマ寄りかビジネス寄りかは関係なく。

―― 設計から実装まですべてできるエンジニアということでしょうか。

そうですね。そもそも論として、「設計だけ」をやるエンジニアなんて不要なんですよ。ソフトウエア開発では、「人はコード書きから離れては生きていけない」というのが僕の持論。ラピュタのセリフじゃないですけど、人は地に足を付けて生きていかなければダメなんです(笑)。

不自然な分業制がソフトウエア開発を「暗い未来」におとしめると話すまつもと氏

不自然な分業制がソフトウエア開発を「暗い未来」におとしめると話すまつもと氏

ソフトウエアを開発しない人が設計だけしているなんて、ナンセンス極まりない。なのに、これまでそういう仕組みで日本のSI産業が成り立ってきたのは、マージンがたくさんあったからです。

設計をやる人がワケの分からない仕様を出してきても、その下でコーディングする人たちが何とかごまかしてやりくりしたり、少々性能の悪いソフトウエアだとしても、文句を言いながら使ってくれるユーザーがいたり。いろんなマージンによって、粗が吸収されていたのです。

でも、先ほど話したように開発のスピードがどんどん速くなってくると、合わせてマージンも小さくなっていきます。以前のようなやり方では、粗をカバーし切れなくなる。

僕の肌感覚だと、これまでと同じ価値観で「普通にソフトウエア開発をしている人」は、あと5年、身が持つかどうかといったところではないでしょうか。

さらに言えば、コーダーからプログラマー、SEに昇進していくというエコシステム全体が消えてなくなる可能性すらあるわけですから、それを前提に個々人が身の振り方を考えなければなりませんよね。

レンタルビデオ屋さんにDVDがぽつぽつ並び始めたと思っていたら、すぐにVHSが棚からなくなっていったように、変化とは突然、一気に起きるものです。

自分の人生をコントロールできる人、できない人の違い

―― では、その「暗い未来」に巻き込まれたくないというエンジニアにアドバイスするとしたら、どのようなアクションを勧めますか?

何か新しいものを作ることができるようになれ、ですかね。それ以外に、差別化する方法はないと思いますよ。

これは「そこまで暗くない未来のシナリオ」ですが、既存のシステムがどんどんWebに置き換わろうと、あり物の組み合わせでサービスを提供していくような仕事はなくならないでしょう。今後もそこで食っていくエンジニアは、一定数はいると思うんです。

それでも、将来のリスクの総量で考えれば、新しい言語なり開発手法を身に付けて、新しいものづくりをしていく方が、安泰なんじゃないかと。

―― まつもとさんのおっしゃる「新しいもの」とは、何を示すのでしょう?

3つの階層で考えられると思います。

1つは、お客さまに対して新しいサービスを提供していくという選択。ビジネスモデルとして新しいものを提供する、もしくは類似サービスよりも格段に使い勝手を良くするのも、新しいものを提供することにつながりますよね。

新しいものを作り続ける一環として、今春には組込みシステム向け軽量Rubyの『mruby』をgithub上に公開

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2つ目は、技術面で新しさを提供していく選択です。既存のWebアプリケーションフレームワークより性能が良いものを開発したり、これまでできなかったことができるアプリケーションを開発するなどが、この階層でできることでしょうか。僕がやり続けてきたのもここです。

もしくは、もっと下のレイヤーで新しいアルゴリズムを見つけるような道も考えられます。

それぞれのレイヤーで難しさは違いますが、いずれにしても今までなかったものを作るという点で共通しているし、こういったチャレンジを続けられる人が「変化に強いソフトウエアエンジニア」になれるんです。

ちなみに、この3つの道以外で仕事をしていくエンジニアは、結局は「この言語が流行っているので習得しよう」、「こういうフレームワークを使って開発しよう」などと、トレンドを追いかけることでしか生きられないわけで、それって主体性がないじゃないですか。

エンジニアとしての基礎体力をつける上で、流行を追ったり既存のものを学ぶのは大切ですが、それをゴールにしていると自分で人生をコントロールできないまま終わってしまう。「流行を追従する」、「あり物を学ぶ」、「組み合わせる」以外の道を選んだ方が、幸せなエンジニア人生を歩めるんじゃないかなと思います。

―― まつもとさんご自身は最近のmrubyしかり、20年近く「新しいもの」を作り続けていらっしゃいますが、そのモチベーションはどこにあるんですか?

(次ページに続く)




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