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モノづくりで、世界に勝てる「ブランド」はどう生まれるか? テラ・モーターズ徳重徹氏と元アップル山元賢治氏に聞く

タグ : アップル, テラ・モーターズ, ブランド構築 公開

 

「世界を変えるモノづくりとは何か」

3月28日、そんな壮大なテーマについて議論するイベント『次の坂本龍馬を発掘・育成プロジェクトvol.1』が、東京・テレコムセンターにあるコワーキングスペース『MONO』で行われた。

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当日のトークセッションに登壇した、山元賢治氏(写真左)と徳重徹氏(写真右)

目玉のトークセッションには、テラ・モーターズ代表の徳重徹氏と、Apple Japan元代表取締役(米国本社バイスプレジデント)で現コミュニカ代表の山元賢治氏が登場。Skyland Ventures代表パートナーのベンチャーキャピタリスト木下慶彦氏をモデレーターに、聴講者も交えながらの議論が繰り広げられた。

テラ・モーターズは、「電動バイク」、「電動トライシクル(3輪EV)」の開発・販売で着々とシェアを伸ばす注目のモノづくりベンチャーだ。徳重氏が2010年4月に興したスタートアップながら、《日本発のベンチャー企業として、サムスン・アップルを超えるインパクトを世の中に残す》というビジョンを掲げて急成長。国内ではすでに電動バイクの最大手メーカーとなっており、今春はアジア各国向けに3輪EVタクシーの展開を発表するなど海外でのプレゼンスも高めつつある。

一方の山元氏は、日本オラクル、Apple Japanなどのグローバル企業で活躍し、現在はコミュニカ代表取締役として活動や私塾の「山元塾」で、グローバルリーダーの育成に力を注いでいる。こうした2人の経験則から語られたGo Globalのヒントの中で、弊誌が特に注目したのは、世界で支持される「ブランド」の作り方だ。

もう、「プロダクトアウトかマーケットインか」という議論は不要だ

かつては「世界のSONY」を例に挙げるまでもなく、日本製というだけで世界各国で高値で売れるような時代があった。

だが、家電製品を筆頭に、モノの価値が「機能価値」から「情緒価値」へと変わっていく中で、日本メーカーのブランド力は徐々に低下。日本の各メーカーはいまでも世界最高レベルのテクノロジーを有しているにもかかわらず、一部メーカーを除けばサムスンなど海外企業を「追いかける側」への転落を余儀なくされている。

また、製品マーケティングの観点でも、SNSでの口コミが購入動機に直結するような時代の変化で、製品ブランド、企業ブランドの持つ意味は重要度を増している。こうした状況下、プロダクトや機能のように目に見えるモノとは違う「あいまいな価値」をどう高めていけばよいのか。

iPadやiPhoneの成功で、世界中に再び高いブランド力を示すようになったAppleでの経験をもとに、山元氏はこう述べる。

「モノづくりで最も大切なのは、製品開発のゴールとしてどういうブランドを創るかを考えておくことです。故スティーブ・ジョブズは自社プロダクトの細部まで口を出す経営者でしたが、彼が見ていたのは実はプロダクトそのものの機能や品質ではないのです。ジョブズが日々こだわっていたのは、Appleがその製品を世に出すことで、世の中がどう変わるのかという点でした」(山元氏)

山元氏はこの話に続けて、「マーケットインかプロダクトアウトか?という議論自体がもうなくなってもいい時代になっていると思う」とも述べていた。ニーズにどう答えるか、という考え方を前提としたモノづくりでは、愛されるプロダクトを生み出せなくなっているということか。

他方、徳重氏は前述のように海外での電動バイク販売シェアを急速に伸ばすテラ・モーターズでの実体験を交えてこう説明する。

「わたしは以前、ブランド構築についての書物を片っ端から読破した時期があって、読んで『これは!』と思った著者の方に会いに行ったりもしていました。そういう学習を通じて、頭ではブランドの創り方を理解していたつもりでしたが、いざ海外へ自社製品を販売しに行ってみると『ちょっと違うな』と。つまり、ブランドとはかっこよさや品質の良さではなく、マーケットシェアがすべてなんじゃないかと今は思っています」(徳重氏)

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テラ・モーターズがフィリピン市場向けに開発を進めている3輪EVタクシーのプロトタイプ

市場にどれだけ製品が出回っているかが、ブランドパワーを左右する。当たり前の話に聞こえるが、まだ起業間もないベンチャーにとって、それを実現することこそが最も難しい。

徳重氏は、「もちろん企業のステージによって正解は異なる」と前置きしつつ、重要なのは自社プロダクトを「どこで」「誰に」「どう使ってもらう」かを考え、優先順位を付けることだと言う。

アジアの新興国向けに、電動バイクのみならず日本ではほぼ見ないトライシクルEVまで開発・展開することで、そこでの評判が日本での認知度を高める形になっている同社の状況を見ればうなずける話だ。

ブランドも製品価値も、すべてはイノベーションの後でしか生まれない

2人の話す内容は方向性が異なるように見えて、ある一つの共通項でつながっている。それは、モノづくり企業には、何をゴールにして開発・販売をしていくかというビジョンが最も重要だということ。

Appleには「ジョブズと製品以外は極力外に出さない。なぜならブランドづくりにおいて、人が最も不確定な要素だから」(山元氏)という不文律があったというが、それも、ジョブズが考えるビジョンを実現することにこだわり抜いていたからだ。

徳重氏も、イベント参加者からの「エンジニア採用で最も重視しているのは?」という問いに、「ビジョンに共感してくれる人かどうか」だと即答していた。

「朝令暮改どころか、その日の昼には方針転換することもあるベンチャー経営において、『何があっても掲げたビジョンを実現するというゴールを共有できる仲間』こそが最も価値があるからです。結果を出すという点にフォーカスするなら、仕事の“How”(どうやるか)は関係ないですから」(徳重氏)

テクノロジー、技術力ありきで開発や採用を行うのではなく、ビジョンを実現できるか否かの基準ですべての物事を判断する。その積み重ねが、プロダクトに独自のキャラクターを宿し、愛される「情緒価値」を生むのかもしれない。

最後に、山元氏はある大手メーカーにコンサルティングをしていた際に感じた「ズレ」を挙げながら、こうメッセージを送る。

「とある日本の大手メーカー2社で、最も優秀と目されるエンジニアに『今の仕事で一番大事なスキルは?』と聞いたんですね。すると、2人とも『社内を調整するスキル』だと言うんです。それを聞いて、このままではマズいと痛感したのを覚えています。スピード重視、アジャイル全盛の今、そこに拘泥していては新しい価値を生めないだろうと。ブランドもプロダクトの価値も、すべては新しいイノベーションの後に付いてくるものです。だから日本の若いエンジニアが、調整ではなくイノベーションを生むことに集中して働けるようになることを切に願っています」(山元氏)

取材・文/伊藤健吾(編集部)




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