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森川亮氏が考えるキャリア論「イヤなことをやめてみる。そこからやりたいことが見えてくる」

タグ : C CHANNEL, LINE, キャリア, 森川亮 公開

 

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日本発で世界的にヒットした『LINE』のCEOを経て、2015年4月に女子のための動画ファッションマガジン『C CHANNEL』をリリースした森川亮氏。

すでに多くのメディアが取り上げている通り、そのキャリアは稀有だ。

日本テレビ放送網のコンピューターシステム部門のイチエンジニアから始まり、ソニーへ。その後、ハンゲームジャパン(現・LINE)に転職し、代表取締役社長を務めた。その経歴から、森川氏は「プロデューサー」というイメージが強いが、大学ではコンピュータサイエンスを専攻するなど、技術開発と密接な距離にあったという。

森川氏はなぜ、エンジニアから企画職、起業家への転身を図ったのだろうか。

東京・原宿にあるC CHANNELのオフィスを訪ね、森川氏の言葉に耳を傾けると、自分自身の目的を見つけることがキャリア形成ひいてはサービス開発において重要であることが分かった。

演奏者よりも作曲家、指揮者になりたかった

—— まず、日テレのエンジニアだった森川さんが、企画サイドにキャリアチェンジをした理由をお教えください。

なるべく上位レイヤーで仕事をしたいという気持ちが強くなったからですね。

大学でコンピュータ工学を学んでいて、それこそ当時はコード1行で1パラメータを動かすような世界。何かをやるにしても数千、数万行を書かなければいけませんでした。そうしてモノはでき上がっているんですけど、「もっと早くできないかな?」って当時から考えていたんです。

社会に出た後でも、アルゴリズムや設計などは自分で決められるわけですけど、世の中に影響を与える部分は自分よりも上位レイヤーの人たちが決めていた。自分もそちらの世界に行きたいという気持ちが強くなった。これが理由ですね。

—— 大学ではなぜ、コンピュータ工学を?

「コンピュータが世界を変える」と直感的に感じたからです。そこに携わるなら、(コンピュータを動かすための)ロジックを知る必要があるなと。ただ当時、コンピュータは多くの人々にとって高度な専門性を有する世界で、敷居が高いものでした。個人で学ぶことに大きなコストが掛かった時代です。現代のように個人がスマホアプリを作っているような時代ではありませんでしたからね。

僕自身も大学に入学する前まではコンピュータに触った経験がほぼありませんでした。それでもコンピュータ音楽の世界にはとても興味がありましたので、シンセサイザーやDTMはやっていました。入り口はそこからでしたね。

—— なるほど。

結局、楽器はツールなんです。どんなに優れた楽器を持ち、演奏したとしても、人を感動させなければ良い音楽とは言えない。

これは、ITの世界にも同じことが言えます。いくらコンピュータの知識があって技術力を持っていたとしても、それをベースに良いモノを作らなければ「良いエンジニア」とは言えません。

社会に出た当時の僕は、シンセサイザーを弾くようにコンピュータを扱う“演奏家”でした。当然、演奏者ならではの表現を極めるという道もありましたが、僕の場合は作曲家や指揮者のようにトータルの世界感を作りたくなったんです。

これはあくまでも僕の考え方。エンジニアの方の中にはビジネスに興味がなくて、綺麗なコードを書くことに意識が向いている人もいる。これは、個人の思考の違いです。それぞれの好みの道を歩むのが大切だと僕は思います。

—— エンジニアを経験されたことで強みとなったことはありますか?

ネットワークの構成やソフトウエアの設計について理解していた方が、良いモノは作りやすいですし、サービスの実現可能性の判断もできるので効率的だと思います。

反面、技術に対しての知見が豊富だと、技術的に実現不可能なことを言わなくなるケースもあります。何かぶっ飛んだことを思い付いたとしても、自分の中で「これは無理だ」と判断をしてしまうこともあるためです。技術は進化していますので、僕の知識の中にない技術が、世の中では生まれている可能性は十分にある。

例えば、僕が技術的な実現性を全く持たずに、妄想のようなメッセージを伝えたとして、それを具現化したいと考えて行動し、成し遂げてしまう人もいるのかもしれない。その点では、技術理解があるということは、時に弱点になるのもしれないですね。

自分の中の選択肢を減らすことで、見えてくる新境地がある

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エンジニアからスタートしたキャリアを「拡張」してきた森川氏が大切にしてきた価値基準とは?

—— では、なぜ日テレやソニーなどの大手からベンチャーに転職されたのでしょうか?

本質的には大手vsベンチャーという話ではないのですが、振り返ってみると、企業文化が合わなかったのだと思います。

起業する人って、今世にあるプロダクトで我慢すればいいのだけれど、我慢できなくてもっと良いモノを作りたくなるんだと思います。我慢ができないから、自分で起業する。

僕の所感ですが、多くの日本人は我慢強いんだと思います。これは悪い意味ではありません。我慢して組織に貢献するのも個人の選択ですから。ただ、自分なりの考え方が必要だとも言えます。

自分なりの考え方とは、「自分は何のためにやるのか?」という目的を見つけることです。例えば、お金のためや上司のため、好きな人のためなど、何でも良いとなってしまうと、その都度「何のために?」が変わってしまいます。

自分なりに仕事の目的を見つけると、「今携わっているモノづくりはその延長線上に存在しているのか?」と判断する軸ができます。まず、自分なりの生き方を見つけること。それが、その人の仕事人生を変えていくのだと思います。

もしも目的が見つかったら、自分の軸にあった会社を選ぶことや起業をしてみるのもいいかもしれません。そうすることで、いろいろな“人生”が生まれていく。結果的に世の中に多様性が生まれて、新しいモノが生み出されていく気がするんですよね。

—— 森川さんの場合、著書である『シンプルに考える』の中で、自分の仕事の目的は「新しいことしかやりたくない」ということだ、と記載がありました。が、本当にやりたいことを見つけられないまま、キャリアを過ごす人も少なくありません。個人が目的を見つけるためのヒントがあれば教えてください。

私からの意見として2つあります。

実は皆さん目的をお持ちなんですよ。フタをしているケースが多い印象があります。まずは、そこに向き合ってみることでしょう。

若い人であればあるほど自分なりの理想の生き方を持っているので、歳を重ねて削ぎ落とされる前に、今の自分を大切にして生きた方が良いと思います。

もう1つが、自分が好きなことの中には答えがない場合が多いということ。ですので、イヤなことからやめてしまうことをお勧めします。そこで残ったモノの中に、きっと何かがあると思います。

皆さん、好きなことから自分の目的を探そうとするものですが、イヤなことをけっこうやっているんです。だから中途半端になってしまう。イヤなことを全部やめてみると、選択肢か限られるんです。

僕の場合は「新しいことしかやりたくない」という思いに共感してくれる経営者に出会えたので、ハンゲームジャパンに転職しました。だからと言って、ベンチャーに行くという選択だけが正しいわけではないのです。あくまで、大切なのは個人の選択と考え方です。

—— 一方で、森川さんが経営者として、メンバーがやりたくないことを生み出しているケースもあるかと思います。その点を踏まえて、どのように経営をされてきたのでしょうか。

重視してきたことはいろいろありますが、結局、採用が大事なんだと思います。ごまかして採用をしても意味がないんです。ですので、僕は面接の段階から会社の内情について率直に伝えていました。

「仕事はキツいし、人も育てません。でも、良いモノを作ることは全力で応援します」と。組織の良いところ、悪いところを知った上で、共感してくれる人という軸で採用を行っていました。LINEの時も、面接中に「入社してほしい」とは言わなかったですね。

採用は給料も大事ですが、僕の経験上、誰と働くかが一番大切だと思っています。そこにコミットしないと、せっかく同じ目的を持って集まった優秀な仲間も退職してしまいます。

—— 「経営者の魅力」が大切だと考えると、今、森川さんはどのようにご自分を磨かれているのですか?

正直、今はそんな余裕、ないですね(笑)。経営者というのは結果が全て。そこにコミットするだけです。

7月の3連休も、ずっと家で(C CHANNELの)SEOタグの見直しと追加をやっていました。僕のことを「週末は別荘で美味しいワインでも飲んでいるんでしょ?」と思っている方もいるかもしれませんが、こういった地道な作業もやってるんですよ(笑)。

流行りモノのトレースはしない。新しいモノを作る

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「新しいことしかやりたくない」という森川氏が、次に目指す場所とは?

—— 仕事の目的である「新しいこと」の一つとして『C CHANNEL』をリリースした森川さんですが、世界基準でサービスを展開すると拝見しました。LINEでの成功体験を経て、「世界で勝つ」ということに対してはどうお考えでしょうか?

世界で勝つということは、世界で負ける可能性も生むので難しいですね。そもそも僕は、日本で成功しやすいサービスと、世界で勝つためのサービスは異なると考えています。

例えば、『C CHANNEL』は日本の若い女性が見た時にデザインが可愛くないと言われることがあります。

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動画ファッションマガジン『C CHANNEL

日本の若い女性が好むデザインは、プニプニしていたり、可愛いイラストが描いてあったりする。日本ではその方が分かりやすいし、良い面もあるのですが、僕は多くのサービスと混在するため、埋もれがちだなと思います。

そのことは、いろんなサービスに対するデータ分析の結果を見れば分かりやすいと思います。今まで成功したサービスの成功点をトレースすることで、成功する確率は高まるでしょうが、大成功はしないのです。

大成功したモノって、今までにない、ちょっと枠から外れたようなモノで。Twitterだって、「何でユーザーがつぶやくの?」というところから始まって、ここまで成長しています。

良く分からないんだけど何だか気になる。そんなサービスは、失敗の確率が高いものの、大成功するのかもしれません。

—— 『C CHANNEL』が採用した縦型動画はとても斬新でした。

横型の動画ってどうしても、劣化版テレビという印象を受けたんです。そんな時に縦で動画を撮った人がいて、縦というだけで新鮮に感じました。制作メンバーと話した結果、「縦、いっちゃいますか?」とそんなノリでしたよ。

これって、Twitterが採用した140文字という制約がなぜ140文字だったのかという点と一緒で、ヒットすれば官軍な一方、ダメだったら「やっぱり縦じゃないでしょ」と言われる。ですから、ここが頑張りどころですね。

—— 欧米で流行したサービスをトレースする文化が根付いている日本で、斬新なことをやろうと踏み切るために必要な考え方とは何でしょうか。

感覚、としか言えません。『C CHANNEL』の場合は、我々の感性として、明らかに縦の方が良かった。ただし、制作ではないメンバーの女性は、縦動画を強く支持したわけではないんです。これは、日本人の多くが今あるモノに慣れてしまう習慣があり、新しいモノをすぐに良いというカルチャーがないことにつながっている気がします。

僕もこれまでに、LINEやゲームなどいろいろなサービスを立ち上げてきましたが、日本はすぐにはヒットしないものです。じわじわ伸びる。海外だと、良いモノが出たらすぐに広まります。が、冷めるのも早い。日本の場合は逆で、広がるまでに時間が掛かるのですが、普及した後の息は長いんですよ。

そのため、モノを見た瞬間に善し悪しの判断ができない人が多いのではないかと考えます。僕たちは縦型動画の方が「見ていて気持ちいい」と感じたから、縦型を選択した。その感性を信じて進むことが大事なのではないでしょうか。

最終的にモノを言うのは、ユーザーにとって価値のあるサービスかどうか

—— 今後の『C CHANNEL』について、森川さんはどのような目的を持って運営されるのでしょうか。

いろいろなところで言っているのですが、日本を代表するメディアブランドを作ることです。今までそういった事業をやった人が日本では出ていない。任天堂やソニーなど、プロダクトではブランドを作れているのですが、メディアではまだない。僕たちはそこに向かいたいんです。

ちなみに、歴史上で有名人とタッグを組んで世界的に有名になったメディアって、事例がないんです。

最近ですとYouTuberがありますが、これって皆さんもともと有名人というわけじゃないですよね? 有名じゃない人たちが有名人を超える仕組みがあって初めて、メディアとしての価値が生まれるんだと思います。

そうしたロジックはありますが、根本はユーザーにとって価値のあるモノでなければ意味がありません。その点では、有名人が出ていても、そうじゃなくても関係ないと思っています。

—— 貴重なお話をありがとうございました。

取材・文/川野優希(編集部)  撮影/赤松洋太




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