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ガラケーからスマホへ。Web決済の大転換期を乗り越えた『ルナルナ』に学ぶ、13年間サービスを続けるサバイバル術

タグ : アプリ開発, エムティーアイ, スマートフォン, フィーチャーフォン, ヘルスケア, ルナルナ, 女性, 決済 公開

 

ルナルナ Webサイト

2010年春、株式会社エムティーアイの会議室では、数名の社員があるサービスの戦略会議を行っていた。

「いよいよ世間にスマートフォンが普及し始めてきた。スマートフォンへ移行する時にユーザーは利用し続けてくれるだろうか……」

彼らが開発を手掛けるのは、2000年にスタートした女性向けヘルスケアサイト『ルナルナ』。手帳への記入が主流だった情報をモバイル端末で管理することで、生理周期の自動計算や、記録忘れ防止などが可能となるサービスだ。

女性のライフスタイルにマッチするサービスだったことやテレビCM効果もあり、2011年には有料会員数が200万人を突破。フィーチャーフォン向けサービスとして抜群の知名度を誇るまで成長した『ルナルナ』だったが、誕生から10年目を迎え、大きな転換期を迎えていた。

この年は、docomoから国産初のAndroid端末『Xperia』第一世代が、ソフトバンクとauから『iPhone4』が発売を控えるなど、スマートフォンブームの気運が高まり始めていた。そうした流れの中で、スマートフォンへ乗り換えたユーザーが『ルナルナ』を退会する可能性があったのだ。

『ルナルナ』開発チームはスマートフォンへの乗り換え時に発生するリスクをどのように回避したのか?

決済方法の多様化こそ「スマホ転換」における最大の課題

『ルナルナ』開発チーム

『ルナルナ』開発チームの清野氏(左)と日根さん(右)

ほかのフィーチャーフォン向けサービスと同じく、「スマートフォンへの転換期」という大きな山を迎えた『ルナルナ』。その山を越えるべく、彼らが着目したのは、「Web決済の最適化」だった。

「それまでは、キャリア側が持つ決済システムにより、ユーザーが通話料などと一括で使用料の支払いができました。しかし当時、スマートフォンではキャリア決済がなくなってしまうという変化があったのです。そのため、『ルナルナ』を継続したくても支払い方法が分からないユーザーが、離脱するリスクがありました」(『ルナルナ』事業部部長・日根麻綾さん)

Web決済の多様化は、いわば店舗のレジが至るところに置いてあるようなもの。それまでは「キャリア決済」というレジしかなかったため、ユーザーはどこで支払えばいいのか、考える必要もなかった。

しかし、スマートフォンでは、クレジットカード、ネットバンク、プリペイドカードなど、多様な支払い方法が可能である。

選択肢が増えたことによって、どこで支払えばいいのか、ユーザーは迷ってしまう。また、キャリア決済に慣れている既存のユーザーにとって急にクレジットカードに切り替わるのはハードルが高い。

「そういったリスクがある中で、国内最大級のモバイルコンテンツプロバイダーである当社は、専門の開発部隊を立ち上げて独自の決済システムを開発していました」

そう振り返るのは、2010年当時、エンジニアとして『ルナルナ』を開発していた清野保雄氏だ。

「その決済システムが『mopita』です。これは、1アカウントで複数の決済ができるスマートフォン用決済サービスです。既存会員をスムーズにレジへと誘導するために開発され、今日までたくさんの改善を行っています。その後、各キャリアがスマートフォン用の決済に次々に対応した際にもmopitaで一元対応するため、各サービスで個別対応しなくても、スピーディにリリースしていくことができました」(清野氏)

mopita

現在一般的になっているどのキャリア決済よりも早く『mopita』はリリースされた

『mopita』がリリースされたのは2010年7月。当時、スマートフォン用決済サービスを持っていたキャリアはauのみで、docomoのスマートフォン用決済サービス『spモード』がリリースされたのは2010年9月、ソフトバンクの『ソフトバンクまとめて支払い』が2011年3月だった。

いかに『mopita』のリリースが早かったかが分かる。

「2011年末にはdocomoの『マイメニュー引き継ぎ』サービスが開始されましたが、mopitaとサービス開発側の役割分担が明確になっていたため、約1カ月でリリースすることができました。これにより、フィーチャーフォンのユーザーがほぼ自動的にスマートフォンでも会員として引き継がれるようになり、スマートフォン移行での会員の離脱を大きく防ぐことになったのです」(清野氏)

決済方法の明確化と迅速な開発によって、「2013年10月時点で、フィーチャーフォンとスマートフォンのユーザーの割合は1:2」(日根さん)と全体の60%以上がスマートフォンユーザーに切り替わるなど、移行はスムーズに進んでいるようだ。

「月額で健康を買う」消費モデルを定着させられるかが生き残りのカギ

エムティーアイでは、なぜこのようなスピード開発が可能だったのか?

「エンジニア自ら、できること、できないことを企画側にハッキリ提示し、タスクの優先順位を都度話し合いました。その上で、できることから着手する。企画側も現場の状況を理解したうえで仕様を修正していくので無駄が少なかったです。エンジニアが現場の全体を仕切ることで、効率的な進行が可能となりました」(清野氏)

エンジニアが能動的にプロジェクトを引っ張ることで実現したスピード開発。そのスタイルはサイトのスマートフォン化にも活かされ、わずか1カ月で『ルナルナ』をスマートフォン用に最適化したという。

「既存ユーザーを逃さないためには、『ルナルナ』をフィーチャーフォンのサイトと同レベルの操作感でスマートフォンに最適化させることが必須でした。当初のリリースでは、スピードを優先させるため自社のコンバートソフトウエアを使ってフィーチャーフォンのソースを一部利用しました」(清野氏)

また、現在エムティーアイは生理日の管理だけを行えるWebサービスの機能制限版『ルナルナ Lite』を無料アプリとして提供しているが、これはあくまでもアプリで気軽に触れてもらい、上位機能が欲しい人に有料サービスへ登録してもらうフリーミアム戦略の一環として提供されているもの。

ルナルナ Lite

フリーミアムの一環としてリリースした『ルナルナ Lite』はiOS、Android、Windows Phoneに対応

『ルナルナ』サービスの軸となるのは、今後も月額課金だという。

「ゲームアプリのような単発の課金や従量課金は『生理日予測』には相性がよくありません。そもそもヘルスケアサービスは、一時的な欲求を満たすためではなく続けるためのサービスです。アプリの無料化が進む現在、課金のハードルがどんどん上がっていますから、お客さまがお金を払ってでも利用を続けたいサービスを作る。これが、われわれが日々目指している企画です」(日根氏)

事実、この10月初旬にはTechCrunchに「有料アプリは終わった、わずかな例外を除いては」という記事が載るなど、ユーザーにとってお金を払ってアプリをダウンロードするという行為がいかにハードルの高いものになっているかが周知されるようになっている。

その流れを予測していたかのように、Webサービスでの月額課金を続ける『ルナルナ』。今後は、どのような展開戦略を立てているのか?

「生理日のモバイル端末での記録はもはや当たり前になりました。次に目指すのは生活習慣を記録する“ログ活”の習慣化です。そのために、『ルナルナ ビューティー』というグレードアップ版のサービスを2012年7月からスタートしました。これは生理だけでなく、ダイエットのために食事や運動の記録からカロリー計算をするサービス。

また活動量計『カラダフィット』の消費カロリーと連携したダイエットアプリの『カロメモ』も2013年2月にリリースしました。そうした新しい消費モデルや利用シーンの定着によりユーザー継続率を高めるのが狙いです」(日根さん)

環境や市場の大幅な変化があれば、今後もユーザーの離脱という壁が出てくる可能性はいくらでもある。そうした時の対処法として、ユーザーを新しい環境にマッチさせる施策の実行と新しい価値感の提供は効果的だといえる。そして、自ら企画を先導するエンジニアの存在こそが、その効果を増大させるスピード開発を可能にするのだ。

フィーチャーフォン向けサービスとしてスタートしてから13年間。Webサービス界の老舗として揺るがない立場を確立している『ルナルナ』の開発ポリシーに、課金型サービスのサバイバル術を見た。

取材・文・撮影/長瀬光弘(東京ピストル




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