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村田製作所のロボット開発は人命も救う?『村田製作所チアリーディング部』誕生の裏にある隠された歴史とは

タグ : CEATEC, ムラタセイコちゃん, ムラタセイサク君, ロボット, 吉川浩一, 村田製作所, 村田製作所チアリーディング部 公開

 

2005年の10月4日、エレクトロニクス関連の国際展示会『CEATEC』に、ある1台のロボットが出展された。

そのロボットは、人間のように自転車を漕ぎ、人間以上のバランス感覚で細い平均台を難なく渡り、さらにその途中でぴたりと静止するという離れ業をやってのけた。

当時のことを記した開発ブログによると、「人間を超えたロボット」を一目見ようとブースには黒山の人だかり。展示2日目にして入場制限がかけられるほどだったという。

そのロボットの名前は『ムラタセイサク君®』。電子部品メーカーの村田製作所が生み出したロボットだ。

村田製作所はその後、2008年に一輪車型ロボット『ムラタセイコちゃん®』を発表。そして今年2014年のCEATECで、新しいロボット『村田製作所チアリーディング部』を発表した。

『村田製作所チアリーディング部』は、ボールに乗った10体のチアリーダー型ロボットが隊列を組みながら移動・応援を行うという、これまでのロボットに倣うなら「0輪車型ロボット」である。

そもそもなぜ電子部品メーカーの村田製作所がロボットを作ることになったのか。村田製作所の歴代ロボットの開発に携わり、『村田製作所チアリーディング部』の開発リーダーを務めた吉川浩一氏にその歴史を聞いた。

ムラタセイサク君の内製化を転機に自社開発体制へ

村田製作所の歴代ロボットの開発に携わってきた吉川浩一氏。初代セイサク君(左)、2代目セイサク君(右)と一緒に

歴代のロボットの開発に携わってきた吉川浩一氏。初代ムラタセイサク君(左)、2代目ムラタセイサク君(右)と一緒に

ムラタセイサク君といえばその名を冠する通り、いまや村田製作所が作るロボットの“顔”と言ってもいいだろう。

しかし、セイサク君がかつて外注されていたという事実はあまり知られていない。

「私が開発に携わったのは、2005年にリリースした2代目のセイサク君からでした。初代は社外で開発していたのですが、ある時、製作をお願いしていた企業から『開発を続けるのは難しい』という話がありまして、では社内で開発をしよう、という判断になりました」

その判断には、生産設備から製品まで全てを自社開発することで、技術をブラックボックス化して他社との差別化を図るという、当時の村田製作所の経営方針も後押しした。

「2005年当時、村田製作所の主力事業は電子部品。そのため、ロボットづくりは『電子部品メーカーとしてムラタ』のセンサ精度が高いこと、そしてモノづくり力があるということを社外にアピールするのが主目的でした」

しかし、セイサク君から『村田製作所チアリーディング部』開発に至る途中、同社はビジネススタイルの転換を迎えている。

ビジネスモデルの変化から内製→協業へ

セイサク君、セイコちゃんと今回の村田製作所チアリーディング部が大きく異なるのは、部品を求められているのか、機能を求められているのか、の違いであると吉川氏は話す。

「セイサク君とセイコちゃんのころは、彼らに使われている部品の性能や技術力を対外的に示すためにロボットを開発していました。それが、2012年の『村田製作所チアリーディング部』企画の時点で、ビジネス面では『この部品がほしい』よりも『このような機能がほしい』というようなニーズが増えていました。つまり、機能を実現することにビジネスの核が移りつつあったのです」

このような、今までの部品小売型ではなく、ハードウエアやソフトウエアも含めた機能提供型のビジネスに移り変わると企業の規模は関係なくなる。

チア部は自社だけの宣伝ツールではなく、他社とのコラボの宣伝ツールに昇華したと吉川氏は話す

チア部は自社だけの宣伝ツールではなく、他社とのコラボの宣伝ツールに昇華したと吉川氏は話す

「機能を求められた時、大きな企業でも小さい企業でも土俵が同じになります。開発のリードタイムを考えると、最終的には、より早く、より顧客の求める機能を提供できた会社の勝ちなのです」

2代目のセイサク君からセイコちゃんまでは自社内で全て開発していた村田製作所の開発チーム。そして、今回の『村田製作所チアリーディング部』からは自社での開発だけでなく、他社や大学との共同開発に切り替えている。

「価値として機能を求められている今の時代では、外部パートナーと協業して、より良いものをより早く提供できて初めて評価される。当社におけるロボット開発は、もともと対外アピールを目的としていたので、外部との協業にシフトしたのは当然の流れです」

『村田製作所チアリーディング部』に搭載された最新技術「3つのS」

そのため、『村田製作所チアリーディング部』の意匠はRobiなどの開発にも携わるヴイストン、その他の最新技術においてもプロアシストや京都大学など、その分野で先頭を走る企業や大学と共同開発をしている。

『村田製作所チアリーディング部』に搭載された「3つのS」と呼ばれている先進技術も協業の賜物だ。

その3つとは

【1】ボールの上で安定性・バランスを保つスタビリティ(Stability)
【2】10台のロボットを同時に動かす群制御のシンクロナイゼーション(Synchronization)
【3】超音波での位置把握とロボットに相互通信させるセンシング&コミュニケーション(Sensing&Communication)

だ。これらの技術は『村田製作所チアリーディング部』のためだけに開発された技術ではなく、将来的に人々の暮らしを良くするために開発された技術をカスタマイズして使っているのだと吉川氏は語る。

「例えば、京都大学との共同研究から生まれたシンクロナイゼーションは、レスキューロボット用に考えられたシステムです。この機能を搭載した小型で安価なロボットを大量にばら撒き、瓦礫の下にいる生存者をいち早く探します。その時、それぞれのロボットが1カ所に固まらず、効率よく動いて、1秒でも早く生存者を見つけるために群制御が必要なのです」

また、群制御でロボットたちを団結させることで1台では不可能な瓦礫の除去ができたり、1台を犠牲にして障害物を乗り越えたりと、まるで動物のような使い方まで視野に入れている。

「他にも、無線通信を用いたコミュニケーション技術では、将来的に自動車間通信(C2C通信)への利用が考えられています。前を走る車の進路予測や、見通しの悪い交差点でも死角にいる車の位置が把握出来るようになるでしょう」

セイサク君やセイコちゃんにも搭載されていた開発当時の最新技術の中には、今、社会をより良くするために使われているものもある。

「セイサク君の得意技でもある平均台走行や転ばずに停止する技術にはジャイロセンサーが用いられていますが、今では建物などの免震技術に応用されています。私たちが作っているのは、小さなロボットに見えますが、これは凝縮された未来への技術でもあるんです」

これから人々の生活はどう変わるのか。そのヒントは、村田製作所のロボット製作にあるのかもしれない。

【『村田製作所チアリーディング部』のメイキング映像】

取材・文・撮影/佐藤健太(編集部)


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