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もしも私がVAIOとBRAVIAの新社長だったら、ソニー創業期と同じことをやると思う【連載:中島聡】

タグ : BRAVIA, SONY, VAIO, ソニー, 中島聡 公開

 
中島聡の「端境期を生きる技術屋たちへ」

UIEvolution Founder
中島 聡

Windows95/98、Internet Explorer 3.0/4.0のチーフアーキテクトを務めたエンジニア。NTTに就職した後、マイクロソフト日本法人(現・日本マイクロソフト)に移り、1989年、米マイクロソフトへ。2000年に退社後、UIEを設立。経営者兼開発者として『CloudReaders』や『neu.Notes+』、教育アプリ『neu.Tutor』といったiOSアプリを開発する。シアトル在住。個人ブログはコチラ

今回は、ソニーが6月30日~7月1日に行ったPC・テレビ事業の分社化について書きましょう。

新たにできたVAIO株式会社ソニービジュアルプロダクツ株式会社は、ソニー本体が進めるエレクトロニクス事業再編の文脈の中で、大きな注目を集めています。

赤字部門を切り離す形で生まれた新会社の両代表は、発足会見で「経営のスリム化」と「高付加価値戦略」による黒字転換に自信を見せていましたが、正直、現時点ではああ言わざるを得なかったのだろうというのが感想です。両社とも、分社後の戦いは今まで以上に厳しいものになると分かっているはずですから。

製品から「SONY」の名前が外れた新生VAIO

PC事業に関しては、マーケット自体が衰退し、世界的に各メーカーが苦戦している状況です。本音では、どこかの会社に売却したかったのだと思います。実際、VAIO株式会社は投資ファンドの日本産業パートナーズへ事業譲渡した上で発足しており、ソニー本体としては持ち株と共に完全に手放しています。

7月1日の発足会見で、VAIO代表取締役社長の関取高行氏は「本質+α」のモノづくりで「2015年度を目標に年間30万台~35万台」の販売台数をクリアしたいと述べていたものの、このままでは2年と持たないのではと感じました。

一方、テレビ事業はソニーの子会社という位置付けでのリスタートなので、本体側にも未練があるようです。とはいえ、マーケット内で一定のブランド力を保っているVAIOに比べ、BRAVIAのブランド力は弱い。その点で、厳しい戦いに変わりはないでしょう。

では、どうすれば富士フイルムやオリンパスの医療機器事業のようにV字回復の道をたどれるのか。もし私がこの2社の代表をやることになったらと仮定して、主に技術開発の面から前向きに今後の打ち手を考察してみましょう。

VAIOは「PC」を捨てて別ジャンルの開拓に乗り出す

まずVAIOについて、上で書いたようにあと2年くらいが企業存続の分かれ目になると想定すると、今すぐ採るべき策はPCの「本質+α」の追求ではなく、新規事業の創出だと思います。

PCでもタブレットでもウエアラブルでもない、まったく新しいジャンルのプロダクトを生み出す。難しいのは承知の上で、それしか生き残る道はないんじゃないかと考えます。

新生VAIOの製造拠点となる長野県安曇野は、かつて一世を風靡したペットロボット『AIBO』の製造拠点だったこともあり、一部でロボット事業の復活を願う声も出ているようですが、私もそれには大賛成です。

From Kate Nevens
市販用ロボットとして先駆者的存在だった『AIBO』

当時のノウハウが残っているかどうかが不明な上、巨額の赤字を抱えるPC事業で新規事業開発に必要な資金をどう捻出するのかという問題があります。それでも、ロボットくらい「今までと違うジャンル」に打って出ないと、会社の存続は難しいと思うのです。

ロボティクス産業は、Googleが先頭に立ってマーケットを開拓しようとしていて、対抗馬となるようなプレーヤーはまだありません。そこに、ソニーが(厳密にはVAIOが)再び乗り出すとなれば、マーケットの期待は一気に高まるでしょう。

『AIBO』はソフトウエアディベロッパーが介入できないプロダクトだったので、そこをオープン化して外部のエンジニアを巻き込んでいっても面白いかもしれません。

代表の関根氏が強みとして述べていた、「社員数240人という小さな会社だからこそ、今まであったしがらみや思い込みから解放されて」モノづくりを行うならば、PCにこだわる必要すらないはず。VAIOの売り上げで当座をしのぎながら、まったく新しいプロダクトの研究開発を進めるのは、現場のエンジニアからすればやる気になれるミッションではないかと思います。

テレビ事業はBtoB領域にチャンスがある

From Solo, with others
街中にあるデジタルサイネージには、イノベーションの余地がまだまだある

次にテレビ事業について、私が社長ならコンシューマー向けよりBtoB向けを強化していくと思います。

先の発足会見だと4Kを付加価値戦略の中心に据えていく方針のようですが、すでに成熟している映像技術の中で2Kと4Kの違いを突き詰めていっても、一般人の購買意欲を新たに掻き立てるとは思えません。

また、新会社の代表となる今村昌志氏は、垂直統合でソニーの独自技術を極める「縦糸」と、パネルメーカーとの水平分業のような「横糸」をうまく組み合わせていくとし、2015年をメドにGoogleの次期OS「Android L」を採用したテレビをリリースする計画を発表していました。この点でも、OSを「横糸」の中に入れてしまうと、もはや他社製品と差別化不可能なレベルになってしまうと考えています。

であれば、業務利用を前提に付加価値を高めていく方が、ソニーらしい事業展開ができると思います。

例えば、ソニーは今回のワールドカップでゴール判定システムとして使われている『ホークアイ』のような興味深い映像技術を持っているので、それらと連携しながら業務利用の可能性を探っていくのもアリでしょう。

以前の連載でこれからデジタルサイネージ領域が面白くなりそうだと書いたように、この分野に活路を見いだすのも面白いと思います。ソニー本体が抱えるカメラやセンサ部門と積極的に絡みながら道を探っていけば、2020年の東京オリンピックでものすごい“電脳都市”を世界に披露することだって可能かもしれません。

私が考える「ソニーらしさ」とは

好き勝手に書いてしまいましたが、2社ともに共通するのは、復活の道を模索するには既存事業の延長線上に答えはないということ。

それに、新会社に移ったエンジニアたちの立場で考えても、ソニーという巨大な組織から離れた以上、本社にいてはできなかったことができるチャンスととらえてSomething Newを創る方が楽しいはずです。

もともとソニーは、北米で生まれたトランジスタ技術を学び、応用することで、それまで真空管を使った製品が主流だったラジオの世界に「トランジスタラジオ」という新しいプロダクトを持ち込んで名を上げた会社です。

なので、ちまたでよく言われる「ソニーらしさ」を私なりに解釈するなら、創業期から持っていた「組み合わせの妙」で斬新なモノづくりをしていくことなんじゃないかと思います。

VAIOもBRAVIAも、このソニーらしいモノづくりを改めて実践して起死回生できれば、すごくクールですよね。新会社のエンジニアたちには、苦しい状況だからこそ「世界のSONY」をほうふつとさせる動きを見せてほしいと期待しています。

>> 中島聡氏の連載一覧はこちら




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