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2013年はアップルvsアマゾンの年になる? いよいよ放送産業に革命が起きるかもしれない【連載:中島聡⑥】

タグ : Amazon, Apple, TV, 不ドワンゴ, 中島聡, 放送業界 公開

 
中島聡の「端境期を生きる技術屋たちへ」

UIEvolution Founder
中島 聡

Windows95/98、Internet Explorer 3.0/4.0のチーフアーキテクトを務めたエンジニア。NTTに就職した後、マイクロソフト日本法人(現・日本マイクロソフト)に移り、1989年、米マイクロソフトへ。2000年に退社後、UIEを設立。経営者兼開発者として『CloudReaders』や『neu.Notes+』、教育アプリ『neu.Tutor』といったiOSアプリを開発する。シアトル在住。個人ブログはコチラ

2012年も残りわずかとなりました。今回はわたしなりに、今年の振り返りと、2013年の予測をしてみようと思います。

まず、テクノロジー界隈の今年1年を振り返ると、「変化の乏しい年」だったと言えるんじゃないでしょうか。技術、サービス、プロダクトのどれを取っても、大きなパラダイムシフトを起こすような出来事はなかったと思っています。

Surface-ad

From ph_en
日本では発売されていないが、海外では大々的にリリース告知が打たれていた『Surface』

デバイス面だけを見れば、MicrosoftがSurface(とWindows 8&RT)をリリースしたのが一番のニュースだったかもしれません。これによって、MicrosoftがAppleやGoogleとガチンコ勝負をしていく流れが確定しましたからね。

ここに、Kindle FireのAmazonと、GALAXYシリーズが好調なサムスンを加えると、この5社がグローバルな覇権争いをしていく構図が確立された年だったといえるでしょう。

ただ、ここまでは想定の範囲内。「PCの時代」から「モバイル&タブレットの時代」に移り変わることは、かなり前から言われていたことです。2013年はそれぞれの会社にとって勝負の1年になるはずで、いずれは何社かが脱落して、2~3社の覇権争いになる。残念なのは、この中に日本のメーカーが入っていないことでしょうか。

では、2013年はどんな年になるか。あくまでも個人的な予想ですが、これまでもよく言われてきた「Apple vs ○○○」、とりわけ「Apple vs Amazon」の構図が、いよいよ変わるかもしれないなと思っています。

理由は、Amazonの台頭が著しいから。ECや電子書籍、クラウドの世界ではすでに大きな力を持っているAmazonですが、今後、現時点の時価総額で世界No.1となっているAppleの牙城を崩す可能性もあると見ています。

この予想の根拠を、いくつか挙げてみましょう。

Amazonが本当に放送革命を起こすかもしれない2つの理由

まず、Amazonの優位性は経営者にあります。会社というのはどうしたってトップの影響力が大きいですから、CEOであるジェフ・ベゾスのビジネスセンスやリーダーシップは間違いなく強みになってくる。

Jeff Bezos

From jurvetson
米『Fortune』誌が選ぶ「2012 Businessperson of the Year」に選ばれたジェフ・ベゾス

アメリカではベゾスの評価が年々高まっていて、今年は『Fortune』誌が選ぶ「2012 Businessperson of the Year」にも選ばれました。「ジョブズ亡き後……」といった文脈で彼を語る人がいることには違和感を持っていますが(ジョブズとベゾスはタイプが全然違うと思うからです)、注目の経営者であることに変わりはありません。

次の根拠は、以前から変化が叫ばれてきたものの、まだまだ独占市場となっている放送産業に、Amazonが乗り出しているからです。

「噂されるApple TVが発売したら、この分野でもAppleがリーディングカンパニーになるのでは?」という反論も聞こえてきそうですが、本当の意味で放送革命を起こす起爆剤となるのは、ハードウエアではなくコンテンツ。

Appleが音楽産業に革命を起こせたのは、iPodを作ったからではなくiTunesを立ち上げたから、という事実を考えれば、自明の理です。

そこで「映像コンテンツの再配信権をどこが数多く握るか?」という点で見ていくと、AppleよりもAmazonの方に本気度を感じます。

AppleもすでにiTunesで映画コンテンツの販売・レンタルを行っていますが、わたしの周りを見ている限り、「iTunes経由でよく映画を観る」という一般家庭はまだまだ少ないんですね。それよりも、オンラインDVDレンタル大手のNetflixを利用している人の方が、アメリカでは多いように感じています。

amazon-box-image

From Ben Mortimer Photography
「Amazon=ネット書店」「Amazon=ECサイト」という世間的なイメージは、この1~2年で劇的に変わるかもしれない

話を戻して、Amazonは去年から今年にかけて、各種映像コンテンツの権利を持つ企業との提携を加速度的に進めています。

同社の会員制有料プログラム『Amazon Prime』のインスタントビデオでは、すでにパラマウント・ピクチャーズやソニー・ピクチャーズエンタテインメント、ワーナーブラザーズといった映画会社のコンテンツのほか、CBS、Fox、NBCユニバーサル、ViacomなどのTVコンテンツも視聴できるようになっています。

さらにAmazonの本気度を感じるのは、彼らはAmazon Studioというオリジナル映像コンテンツの企画・制作プロジェクトを立ち上げており、今年は「自社でコメディショーを作成する」と発表したりしています(参考記事:http://hotakasugi-jp.com/2012/02/12/amazon-creates-orijinal-content/)。

権利を「買う」だけでなく、コンテンツを「作る」までやるとなれば、Appleはもちろん、NetflixやGoogleのYouTubeと比べても、本気なんだなと。

「ネットvsケーブルTVの争いが年々激しくなっているアメリカで、次の革命を起こすのはAmazonである」

この予想は、決して絵空事ではないと思うのです。あとは、TVで人気の高いジャンルである「スポーツ」を押さえれば、その実現度合いはさらに高まるでしょう。Amazonがスポーツ放送の大手であるESPNと提携、なんてニュースが出てきたら、本当に放送革命が起きるんじゃないでしょうか。

日本は違った形で「世界初の放送革命」が起こり得る

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From dennis
年々TVのパワーが落ちているという報道もあるが、「マスメディア」として力はいまだ絶大

ちなみに、ここまでの話はあくまでもアメリカを中心とした予想です。日本は欧米ほどケーブルTVの文化、すなわち「有料放送」の文化が浸透していませんから、そもそもの事情が異なります。若者のTV離れの問題も、アメリカでは日本ほど顕著になっていません。

ただ、見方を変えると、日本は放送革命が「違った形でもう起こり始めている」国かもしれないな、と。

わたしの考える「ネットによる放送革命」とは、①これまでTV局が独占してきた映像コンテンツの再配信権(特に人気のドラマやスポーツなど)を獲得すること、②自分たちでも映像コンテンツを作って配信すること、の2つがそろって初めて起こります。

実はこの②について、日本はニコニコ動画やニコ生の奮闘で、一般レベルまで浸透していますよね。ドワンゴが生み出した自然発生的なストリーミング放送の流れは、世界的に見ても稀有なものです。

年末年始の予想ものは突拍子もない方が面白いという前提に立つなら、日本は世界で初めて放送革命が起きる国になるかもしれない。そう考えると、ワクワクしてきませんか?

じゃあ、実際にそんな未来が遠からず来るとして、エンジニアとして何をしておけば良いのか。わたし自身、放送関連で「これは!」と思えるサービスを思い付いているわけではないので、アドバイスはできません。でも、実はもう、本業の傍らで動画ストリーミングに関するプログラムを書き始めています。まだまだ遊びの域を出ていませんが。

技術的には、iPhoneやほかのスマートフォンで撮った動画をすぐに世界中へ流せる土台がもうでき上がっています。技術屋として生きていく上で大事なのは、もし本当に革命が起きたとして、自分は「革命を起こす側」に身を置けるかどうかなんです。

そんなことを考えながらコードを書いていると、いつか遊びが本業になるかもしれないじゃないですか。だから、プログラマーという仕事は面白いんですよ。

撮影/竹井俊晴(中島氏のみ)




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