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[連載:NEOジェネ!] 話題のお願い解決コミュニティ『WishScope』は、作り手目線を「捨てる勇気」が生んだ

タグ : Web, Webアプリ, WishScope, ザワット, スタートアップ, スマートフォン, ソーシャル, 開発 公開

 
世間をアッと言わせるユニークなアイデアと技術力で勝負しているニュージェネレーションを応援すべく始まったこの連載。栄えある第1回目は、正式サービスのリリース前から米『Tech Crunch』で取り上げられるなど、注目度120%のスタートアップ企業、ザワットの2人だ。彼らが国内外で期待を集める秘密を公開!
ザワット株式会社(Zawatt Inc.)
(左)代表取締役CEO  原田大作氏    (右)取締役CTO  鈴木伸明氏

「売りたい・買いたい。教えてほしい。手伝ってほしい。仲間を募集したい」など、日々の生活で抱くWish(願い事)を、誰もが発信・解決していけるコミュニケーションプラットフォーム。具体的には、「ソファーが欲しい」と投稿したユーザーと、「不要になったソファー売ります」というユーザーをつなげるような、個人間での物品売買、またはスキル・ナレッジ売買を支援するプラットフォームである。

オークションではないし、物々交換プラットフォームでもない。それが『WishScope』の特徴。願い事を通じて、人とのつながり、仲間の輪を広げていくためのサービスだ。

発案者であるザワット代表の原田大作氏は、欧米によくあるWishリストを見てこのサービスを発想。人は欲求・願い事を理解し合うことで、より関係が深まっていくという点に着目したという。そこで、モノだけでなく、スキルや時間といった「誰もが持っている”資本”」(原田氏)を見える化して、新しいつながりを生み出すサービスを作ろうと思い立った。

当初から「スマートフォンでも利用できるサービス開発」を志向していたため、ネイティブアプリとしてのリリースを念頭に置いていた。

しかし、ユーザー間のやりとりを活性化させるためには、すでに浸透している大きな枠組み=Facebookと連動しながら、サービス改善を高速で行っていくことがポイントになると判断。皆で議論を重ねた上で、Webアプリでの正式版リリースに軌道修正したという。

同時に、ユーザービリティを追求していく過程で、正式版のリリース1週間前というタイミングでフレームワークも変更。「β版ではjQuery Mobileを使っていたんですが、簡単にカッコいいUIが作れる反面動作が重くなるので、思い切って自前のフレームワークを開発することにしました」(取締役CTOの鈴木伸明氏)。

さらに、β版には物品売買時の決済機能としてPayPalも搭載していたが、ユーザーテストの結果「決済関係の手続きの煩雑さは不安を生む」と判断し、正式版では削除。新規サービスとして安心してサクサク使える点に徹底的にこだわった。

「シンプルに、人の根源的な欲求を満たしたかっただけ」

サイバードで一緒に働いたのはわずかな期間だったが、鈴木氏の技術力と機転の利く発想に一目置いていたと話す原田氏

サイバードで共に働いたのは短期間だったが、鈴木氏の技術力と機転の利く発想に一目置いていたと話す原田氏

2011年6月、元ウォルト・ディズニーのプロデューサーだった原田大作氏や、サイバードで各種モバイルサービスの開発に携わっていた鈴木伸明氏らが立ち上げたザワットは、幸せなスタートを切っていた。

同年9月、米サンフランシスコで開催された『Tech Crunch Disrupt SF 2011』のハッカソンイベントに参加してスポンサー賞を受賞。続く10月には、長野県で開催されたスタートアップイベント『B Dash Camp 2011 Fall in Nagano』にて『WishScope』を発表、最優秀賞を受賞した。こうして、『WishScope』は12月の正式版リリース前から有名メディアに取り上げられ、国内外で知られる存在になっていた。

「ニワトリが先か、タマゴが先かの問題を抱えるCtoCのサービスは、サービス立ち上げと同時に一定数のユーザーの確保が必須。リリース前から広く紹介してもらえたのは、非常にありがたかったです。でも、紹介のされ方が『ソーシャルグラフが~』とかIT用語だらけだったりすると、ちょっと気恥ずかしくなってしまいます(笑)」(原田氏)

「要は、人の根源的な欲求を満たしたかっただけなんです」と、原田氏は開発の意図を語る。鈴木氏も、「願い事を通じて人とつながっていくプラットフォームってありそうでなかった。だから、僕らが作る意味があるだろうと思った」と、ザワット起業に参画した理由を話す。

「誰でも簡単に使いこなせなければ作る意味がない」

「僕、合コンって好きじゃないんですね。あれって、うわべだけのコミュニケーションじゃないですか? やっぱり人間同士って、何が欲しくて、どんな人と仲良くしたくて、というような願望を分かり合って、お互いに需要と供給がマッチしたとき、初めて”つながる”と思うんです。そういう根っこの部分にこだわる癖は、ディズニーで仕事をした経験で身に付いたんだと思います」(原田氏)

スタート間もない『WishScope』だが、すでに「物品売買のやり取りを通じて新しい友だちができた」という声も

スタート間もない『WishScope』だが、すでに「物品売買のやり取りを通じて新しい友だちができた」という声も

エンタメ産業のリーディングカンパニーで、原田氏はモバイル公式コンテンツの立ち上げや、ソーシャルメディア事業の立ち上げを次々と達成してきた。『WishScope』のアイデアを思いつき、鈴木氏に声をかけたのも、前職に在籍していた時だった。

そのディズニーで学んだ最大の収穫は、「人の気持ちや願いと真っ直ぐ向き合って、妥協せずに顧客を満足させられる体験を追求する姿勢だった」と原田氏は言う。『WishScope』開発でも、その学びが十二分に活かされた。

「社内では、僕らのサービスを使うのは誰なのか、それを忘れちゃいけない、という話をよくしましたね。想定ユーザーは、PCやスマホでさまざまなサービスを使い慣れている人ばかりではない。むしろ、そういう操作が苦手な人でも、簡単に使いこなせなければ意味がないんだ、と」(原田氏)

「原田は時々、わざとイヤなことを言ってくるんですよ(苦笑)。『この機能、使い方がよく分かんないなぁ』とか、『これ、意味が分からない』など。その狙いは分かってはいるのですが、技術的なハードルの高さとスケジュールの兼ね合いなども含め、時には原田と熱く議論をしながら、分かりやすさや操作性をブラッシュアップしていきました」(鈴木氏)

骨太なチームが目指すのは 『WishScope』のディズニー化

鈴木氏が言う「その狙い」とは、あえてWeb初心者、スマホ初心者の視点に立って機能を吟味することだ。

「誰にでも使いやすいって、そういうことですからね。例えば、僕の身近にいるIT関係の仕事についていない友だちは、『WishScope』を初めて見ても使おうと思うのか。Webサービス開発にどっぷり漬かっていると気にしなくなる部分を意識し直すために、あえて素人の思考になり切ってコメントしてから、システムの設計をしていました」(原田氏)

撮影中にふざけ合う仲の良さだが、サービス開発の際は「ある軸」を共有すべく喧々諤々の議論を繰り広げるそう

撮影中にふざけ合う仲の良さだが、開発の際は「ある軸」の下、喧々諤々の議論を繰り広げるそう

そんなやり取りを通じて、日々サービスの本質について語り合ったからこそ、正式版のリリース時には「捨てる勇気」も身に付いた。

前述したjQuery Mobileから自社フレームワークへの移行や、PayPalを取り払ったのも、すべては「ユーザーの使いやすさ」を最優先にしたからこそ。2人にとって、流行りの開発手法や多機能ぶりは二の次。使う人たちがどう感じ、何を楽しいと思うのか? それこそが唯一の重要事項なのだ。

「エンタメの基本は、ほかにもありますよ。やっぱり女性ユーザーにウケてこそ、サービスは広く伝播していく。だからこそ、今後はより女性に支持されるような機能やインターフェースを充実させていく予定です」(原田氏)

「僕はサイバード在籍時に百数十万人規模の月額課金コンテンツをはじめ、多くのタレントさまのコンテンツに携わってきたので、TV露出時の高負荷対策などを得意としてますが、、『どうしたら面白くなるか』という部分を技術的に追求できるからこそ、原田と一緒にやっていくことにしたんです。だからこれからは、もっとリッチな世界観、つまりユーザーが気持ちイイと感じるような体験を提供するエンジニアリングにこだわっていきたいですね」(鈴木氏)

例えば、スマートフォンのWebアプリは3G回線の細さがボトルネックになりがちだ。そこで今後は、localStorage、cache manifestなどを最適化させ、サクサク使ってもらえるようなスマートフォンならではのチューニングをしていきたいと鈴木氏は言う。

Wishボタンを押したら、画面に星が流れる――。そういう些細な工夫にこそ、魂は宿ると2人は信じている。今はHTML+CSS+JavaScriptを駆使すれば、いろんなUIが作れる時代。「まだ全然満足していない。目指すは『WishScope』のディズニー化」と2人は意気投合する。

形だけを模倣したソーシャルサービスとは違う。技術面ばかりが目立つ”重たいサービス”でもない。「Webサービスの魅力は、広く世界中の人に使ってもらって初めて本当の価値が出る」(原田氏)からこそ、はじめから英語ベースで開発してその後に日本語化する、という手順を踏んだ(左上のかわいいサービスプロモも英語だ!)。

ザワット流に言えば、「より多くの人に愛されるサービスにしていくため」には当然の備え。そんな骨太なチームが生み出す、『WishScope』の進化が見逃せない。

取材・文/森川直樹 撮影/小禄卓也(編集部)

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