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「変えたいのはSEの常識」元アマゾンのエンジニアが決済ベンチャーに転職した理由

タグ : ネットプロテクションズ, ベンチャー, 決済, 転職, 開発環境 公開

 

ネットショッピングの支払い方法が、一昔前とは比較にならないほど多様化している。

従来からあるクレジットカード払いや銀行振込、代金引換払はもちろん、最近ではネットバンキング経由の支払いや各種電子マネー、ATM、コンビニ、ギフトカード払いなど、利用者は多様な選択肢から自分にとって都合のいい支払い方法が選べるようになった。

さらに海外ではTwitterやFacebookアカウントから送金できる『Dwolla(ドゥオラ)』のようなサービスや仮想通貨など、次々と新手のサービスが登場している。決済手段の多様化は、加速度的に進行していると見るべきだろう。

こうした群雄割拠な決済サービス市場の中、後払い型の独自決済サービスを提供して成長している日本企業がある。ネットプロテクションズだ。

ネットプロテクションズのホームページ

2002年から同社が提供している『NP後払い』は、商品到着後、コンビニや郵便局、銀行の店頭で「後払い」できるサービスとして、初めて利用するネットショップへの警戒心やクレジットカード決済に抵抗があるユーザーを中心に利用が進んでいる。

利用可能店舗数も拡大中だ。エンドユーザーの過去の支払い履歴などから未回収リスクを分析するシステムを独自開発することで、未払い発生時の費用は同社が負うというモデルが受け、現在1万4000社以上の通販事業者が導入済み。月間トランザクション数にして130万超、後払い型決済サービスとしてはトップクラスの利用を誇っている。

この独自の決済サービスを提供するベンチャーに、世界的なEC事業者から1人のエンジニアが入社した。アマゾン ジャパンのサプライチェーンマネジメントを担う部門で活躍していた片山富章氏だ。

アマゾンで培った経験で、ゼロから組織づくり

ネットプロテクションズの片山富章氏

「アマゾンでは楽しく仕事をしていましたし、特に不満もありませんでした。ただ、在籍期間中に目に見えて組織が大きくなっていましたから、改めてベンチャーの規模感で、組織づくりやビジネスづくりに挑戦したいという気持ちになったのは確か。それで転職を決意しました」

転職先にネットプロテクションズを選んだのは、長らく携わってきたEC事業を支える決済サービスであるのもさることながら、同社の置かれた状況にも心動かされたと片山氏は振り返る。

「ネットプロテクションズの開発チームは、CTO直下に開発者が横並びでいるという非常にフラットな組織でした。ただ、他部署との連携のしやすさや調整のしやすさを考えると、CTOに判断が“一極集中”し過ぎるのは考え物です。面接の時にそんな話を聞き、その問題の解決には自分の経験が活かせるかもと感じました」

そこで片山氏にオファーされたのが、CTOと現場開発者、ビジネス担当者をつなぐシステム管理ユニットのマネジャー職だった。それまで、CTOが兼務していた役割である。

「過去のキャリアから、組織上のボトルネックを見える化して新しい仕組みに落としこんだりすることが得意でもあったので、お受けすることにしたんです」

社内開発でありがちな下請けマインドからの脱却を目指す

影の存在ながらすごいことをやってのけるという意味で、アマゾンではエンジニアを「Ninja」と呼んだりするそう

片山氏は現在33歳。NTTコムウェアからアマゾン ジャパンに移り、5年半ほどの在籍期間中、Amazon.co.jpが受けたオーダーをサービス向上やコスト削減などの観点から効率よく注文者に届けるための一連の流れを制御するシステムを担っていた。

そんな片山氏には、ネットプロテクションズでもう一つやりたいことがある。それは、アマゾンで見知った開発風土を、社内の組織づくりに活かすことだ。

「良いところはどんどん取り入れていければと思っています。例えば開発チームが陥りがちな『下請け』マインドからの脱却もその一つです」

現在、同社のシステム開発は協力会社に委託する形で行われている。それゆえ社内のエンジニアの人数は少なく、ビジネスサイドの意向を実装する業務に追われていた。さまざまなビジネスが、システムありき、ネットベースに移行しているとはいえ、情シスや社内SEチームが人数不足によって「社内下請け」状態になっているケースは同社以外にも多数あると言えよう。

片山氏はアマゾンでの経験から、こうした状況を変えていきたいと語る。

「アマゾンでは、エンジニアであろうとなかろうと、常にサービスに対するオーナーシップが求められました。会議などで、エンジニアから『それってビジネス的にどうなの?もっとこうしたら……』といった趣旨の発言が出ることは当たり前でしたし、むしろテクノロジーのバックグラウンドがある分、発言は説得力を持って迎えられていた気がします」

おりしもネットプロテクションズは、片山氏の話すような考え方を組織に反映させるべく、開発チームを含めたグループ全体を「ビジネスアーキテクトグループ」と改名したばかりだそう。事業と技術を横一線で考える風土は、何よりエンジニアを成長させてくれると片山氏は強調する。

「だからこそ、ネットプロテクションズでもエンジニアから発信して動くプロジェクトを一つでも増やしていきたいんです」

カッコよさにこだわり、エンジニアの自尊心を高めたい

片山氏の入社からまだ1年足らず。現状は、増え続けるトランザクションへの対応や機能拡大で手一杯な状態と話すが、意識改革に向けた取り組みは少しずつ進んでいる。

「手始めに、ユーザーからの問い合わせフローや、サポート内容を分析するためのデータ抽出を自動化するプロジェクトを開発者主導で立ち上げました。こうした取り組みを契機に、いずれは『ビジネスアーキテクト』という部署名に恥じない、人やお金、オペレーションを含めて提案できる人材を育て、エンジニア発信で物事を動かせるような組織にしていければと思っています」

立場上、片山氏には、エンジニアチームの結束と意識を高め、サービスをさらにスケールさせることが求められるのは言うまでもない。だがその実現のためには、他にもこだわるべきポイントがあると片山氏は考えている。

「それが『カッコよさ』です。自分たちの作るものに対して、カッコよさを感じるには、相応に力を注ぎ込まなければなりませんし、そうしたこだわりがあるからこそ、エンジニアの自尊心が高まるのだと思います」

だから社内ツール一つをとっても、手を抜かず「カッコよさ」を追求すべき――。その結果、エンジニアが自主性とオーナーシップを発揮している証にもなるからだ。

決済サービスという伸びしろのあるビジネスに挑戦するベンチャーに、果たしてアマゾン流の開発者マインドが根付くか。片山氏を中心としたビジネスアーキテクトグループの挑戦はこれからも続く。

取材・文/武田敏則(グレタケ) 撮影/小林 正




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