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プリミティブであってレトロではない~新型マツダ・ロードスターに見るデザインエンジニアリングの本質【連載:世良耕太】

タグ : デザイン, マツダ, ロードスター, 世良耕太 公開

 
F1ジャーナリスト世良耕太の自動車開発探訪

F1・自動車ジャーナリスト
世良耕太(せら・こうた)

出版社勤務後、独立し、モータリングライター&エディターとして活動。主な寄稿誌は『Motor Fan illustrated』(三栄書房)、『グランプリトクシュウ』(エムオン・エンタテインメント)、『auto sport』(三栄書房)。近編著に『F1機械工学大全』(三栄書房/1728円)、『モータースポーツのテクノロジー2014-2015』(三栄書房/1728円)など

4代目にあたる新型マツダ・ロードスター(海外名:MX-5)の先行予約が始まった。発売は6月頃が予定されている。

1989年に発売されたロードスター(NA型)は、手軽に楽しめるライトウエイトスポーツカーを復権させた。1960年代にはイギリスを中心とするヨーロッパで同種のカテゴリーが存在したが、厳しくなる一方の排ガス規制や安全性向上への対応に追われるうち、消滅してしまった。

それを復活させたのがマツダだった。広島に本拠を置く自動車メーカーが発売した2人乗りの小型オープンカーは、価格が手頃なだけでなく、人とクルマが一体となったような爽快な運転感覚が味わえたし(クルマを操ることが「スポーツ」だと認識させてくれた)、個性的なスタイリングが魅力的だった。

ゆえに、日本のみならず世界で大ヒット。ロードスターのヒットに刺激を受けて、日米欧の主要なブランドが後追いし、同種のモデルを発売した。マーケットを牽引したロードスターは2000年5月に累計生産台数53万1890台を記録し、「2人乗り小型オープンスポーツカー」の生産累計世界一だとして、ギネスに認定された。

ロードスターは1997年に2代目(NB型)に移行。2005年に3代目(NC型)に切り替わった。初代の登場から26年を経た現在でも、「マツダ・ロードスター」が2人乗りライトウエイト(小型軽量)オープンスポーツカーの代名詞的存在であることに変わりはない。

ミウラ、カウンタックの必然から生まれた普遍的な美しさ

新型が、ヨーロッパで培われた正統派のライトウエイトスポーツに範を求めていることも変わりはない。だが、その一方で、初代が、登場から四半世紀を経た現代の視点で見ても一向に古くならないように、新型も、25年経っても古くならないようにする。そう意識してデザインされている。

「今回のクルマは原点回帰」だと、チーフデザイナーを務める中山雅さんは説明した。といって、初代のデザインをなぞるのではない。それをやってしまうとレトロ(懐古)になってしまう。だから、「プリミティブにデザインする」と言う。

「最初から古いのがレトロ。これ(新型ロードスター)は、(登場したときから)ものすごく新しくて、今(25年先)でも新しい」

古くならないプリミティブなデザインの例として中山さんが引き合いに出したのは、1966年に発表されたランボルギーニ・ミウラと、1971年に初登場(市販版の登場は1974年)したランボルギーニ・カウンタックである。筆者のようなスーパーカー世代にはどんぴしゃのサンプルで、車名を聞いただけで瞬時に姿形が脳裏に浮かび上がる。

中山さんはBICのボールペンを使ってこの2台をササッとスケッチしながら、理にかなった必然的なデザイン(なんでこういう形になっているのか)について解説してくれた。プリミティブなデザインだから記憶に残ると話したし、ミウラとカウンタックはスーパーカー界における王と長嶋のような存在だと説明した。

つまり、「キャラが立っている」ということだ。ミウラとカウンタックは必然から生まれたデザインのため正統派すぎて、変える必要がない。ヘッドランプの形をちょっと変えたり、ウィンドウの形をちょっと変えたりして印象を変えようとしても、王流、長嶋流であることに変わりはなく、原点が持っているほどのインパクトは持ちえない。だから、原点を化粧直ししたモデルは記憶に残らないのだと。

原点は「理想的な位置に乗せて、ミニマムに作る」

ロードスターが回帰する原点とは「理想的な位置に人を乗せて、ミニマムにクルマを作る」ということだ

ロードスターが回帰する原点とは「理想的な位置に人を乗せて、ミニマムにクルマを作る」ということだ

中山さんが新型ロードスターを開発するにあたっては、原点である初代をベースに枝葉末節を変えて新しさを演出するのではなく、初代が持つコンセプトに「回帰」することにこだわった。初代への懐古では王・長嶋クラスのインパクトは持ち得ないし、登場した時点で古くさく感じてしまうからだ。

原点回帰の原点とは例えば、「理想的な位置に人を乗せて、ミニマムにクルマを作る」ということである。

「マツダは(新世代商品群の第一弾である)CX-5以降、フロントのタイヤハウスや、FR(フロントエンジン・リヤ駆動)の場合は(センター)トンネルに左右されてペダルが正面に来ない、そういうクルマはやめると宣言しています。ペダルは必ず(ドライバーの)正面にくる。とすると、理想的なところにペダルを置き、人の乗せ方を決めます。その結果として、ペダルからフロントアクスル(左右の前輪を結んだ軸)までの距離が伸びました。

その後に、クルマをミニマムにつくる。ということは、後ろに余計なスペースを設けないよう、(人の)背後にすぐリヤタイヤを置く。すると、結果的に前後ホイールの中央に人が座るレイアウトになりました」

人は前後タイヤのちょうど中央に座るが、そうして座った場合、頭は前後タイヤの後ろ寄りに位置することになる。その頭を覆うようにミニマムなラインを引くと、ルーフの後ろにピークが来ることになる。ルーフの中央にピークがある初代に対し、4代目は後方にピークがあるのは、目新しさを狙ったわけではなく、人を理想的な位置に座らせた結果だ。必然から生まれているため、フォルムに説得力がある。

こうして必然をベースにデザインすると、できあがった形はクラシックになる。つまり正統だ。

「ロードスターのサイドビューは非常にクラシックです。いまだにミウラやカウンタックを見てきれいだと思う。きれいだと思う価値観は時代とともに変わるはずがありません。人間がもともと持っているバランス感覚にかなっているから、きれいだと思うわけです。9等身は格好いいけど、18等身が気持ち悪いと感じるのは、(人間が)もともと持っているバランス感覚。そういうものにかなっていれば、20年30年経っても古くならない美しい形になる」

新型ロードスターもそこを狙ったというわけだ。

クラシックとモダンの融合が重要なキーになる

新型はボディの四隅をカットし、斜めから見たときにタイヤが四隅で踏ん張って見える「新しさ」が加えられている

新型はボディの四隅をカットし、斜めから見たときにタイヤが四隅で踏ん張って見える「新しさ」が加えられている

必然から生まれた普遍的な美しさに、「新しさ」(モダンな感覚)を盛り込んだのが新型ロードスターの、もうひとつの特徴である。キーはボディの四隅。ここを大胆にカットしたのだ。

ミウラとカウンタックのサイドビューは美しいが、斜めから眺めた瞬間に、古いクルマだというのがわかってしまう。それは、タイヤが奥に引っ込んでいるから。古いクルマほどタイヤが奥に引っ込む傾向にあり、そこを見ることで、そのクルマが登場した年代がばれてしまう。

その見え方を逆手にとり、新型ロードスターはボディの四隅をカットし、斜めから見たときにタイヤが四隅で踏ん張って見えるようにした。

「クラシックとモダンの融合はすごく重要なポイントです。新しさのために美しさを失ってしまったら意味がない。美しさのために新しさがなくても意味はない。この2つは今回のロードスターにとって、非常に重要なキーになっています」

プロダクトとしての必然性を忘れて新しさに走っても、商品に説得力は生まれない。といって、必然性だけで固めてしまっても魅力に欠ける。両者の融合が大切。「原点回帰」したロードスターのデザインは、ヒットしたプロダクトのDNAを継承し、新たな価値を与えるうえでの、普遍的なアプローチに思える。

※ 新型ロードスターの必然的なデザインについては、ここで紹介しきれなかったエピソード(例えば、LEDヘッドランプの必然性について)が動画に収録されています。ぜひ、ご覧ください。

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