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「モノをデザインする時代は終わった」気鋭のメイカーが語る、アップル以降のモノづくり【特集:New Order‐坂井直樹×八木啓太】

タグ : Bsize, デザインエンジニア, プロダクトデザイン, モノづくり, 一人メーカー, 八木啓太, 坂井直樹 公開

 

インターネットの普及やテクノロジーの進化により、さまざまなシーンで大きな変革が巻き起こっている。モノづくりの世界も例外ではない。3Dプリンターの出現に象徴されるように、「マス」から「パーソナル」へと時代は移り変わりつつあるのだ。そうした中、オリジナリティのあるプロダクトを生み出し続けるコンセプター・坂井直樹氏と、一人家電メーカー・Bsize代表の八木啓太氏が対談。これからのモノづくりは、一体どんな方向に進むのだろうか?
Innovation Talker

WATER DESIGN 取締役 / コンセプター
坂井直樹氏 

WATER DESIGN取締役、コンセプター。レトロな形状で衝撃を与えた日産自動車の『Be-1』、独創的なスタイルでその後のカメラデザインに大きな影響を及ぼしたオリンパスの『O-Product』など、さまざまな作品を手がけた。現在も、携帯電話、時計、カバン、電子杖、電気自動車など多彩なプロダクトに携わっている

Innovation Talker

Bsize 代表 / デザインエンジニア
八木啓太氏 

大阪大学大学院修了後、富士フイルムに入社して医療機器の機械設計に従事。並行して、デザインを独学する。2011年に退職し、Bsizeを設立。LEDを使ったデスクライト『STROKE』を発表し、グッドデザイン賞、独Red Dot Design賞などを受賞。“一人家電メーカー”として注目を浴びている

坂井 (Bsizeの製品『STROKE』を見ながら)ほう、これが八木さんの作品ですか! いいですねぇ。

『STROKE』と『髑髏伊万里』を見ながら対談をする二人

八木 ありがとうございます!優れた光だけを提供して、照明器具は消えてしまうようなデザインを目指しました。

坂井 八木さんは「一人メーカー」なんですね。

八木 はい。

坂井 じつは僕も、一人でモノづくりをすることが多いんです。例えば、「和のスカル」というイメージで作った、この『髑髏伊万里』もそうですね(手近にあった伊万里焼の皿を取り出す)。だから、何だか親近感がありますね。

はびこる20世紀のモノづくり。日本の経営者はデザインを軽視し過ぎ

坂井 ところで、日本には、八木さんのように個人で活動している優秀なデザイナーがいます。そして、メーカーの中にも優秀なデザイナーは多いんですよね。

八木 本当に、そう思います。

坂井 しかし、それが製品に反映されていない。ここですね、問題の核心は。原因はデザイナーではありません。だって、優秀なデザイナーはたくさんいるんですから。問題はむしろ、日本の経営層がデザインを理解していない、あるいは、「デザイン・マネジメント」ができていない点にある。それが、このところ日本企業が良いプロダクトを生み出せていない原因の一つではないかと思うんです。

スティーブ・ジョブズが亡くなった後、日本でも「経営者もデザインを知らなければならない」という考え方が広がってきました。ただ、まだまだ十分ではないですね。

—— 確かに、日本企業では、デザイナーの発言力が弱い印象があります。なぜなんでしょう?

「モノづくりのステップをアップデートすべきだ」と語る坂井氏

坂井 日本最大の自動車メーカーでさえ、デザイナーの占める割合ってどのくらいだと思います? 実は、たったの0.0028パーセントらしいですよ。それだけが理由ではありませんが、こんなに人数が少ないのでは、デザイナーが発言力を持てるはずがないですよね。

だから自動車メーカーでは、エンジンを作る人が一番偉くて、デザイナーは最後にパッケージをまとめ上げるだけの役割ということになりがちです。でも、こうしたやり方は「20世紀のモノづくり」ですよね。もう、21世紀型モノづくりに変わっていかなきゃ。

八木 そうですね。世界を変えるようなプロダクトを作ろうと思った時、往々にして障害になるのは、組織の意思決定や開発プロセスなど、自社の内側にあるものだったりします。僕がBsizeを創業したのも、優れたプロダクトをデザインするためにはメーカーからデザインする必要があるように感じたからです。

坂井 なるほどねぇ。納得できます。

八木 僕は、大手メーカー時代はエンジニアをしていましたが、今は「デザインエンジニア」として、デザインとエンジニアリング双方を同時に行っています。

デザインもエンジニアリングも、何らかの根拠に基づいて決定していくという点で同じだと考えています。曲率も寸法も、すべて理由があって決まっている。それを決定をする時に、理由がデザインかエンジニアリングかということを、僕の中では分けて考えません。

そもそもユーザーにとってみれば、決定した理由がどちらにあるのかは、あまり関係ないですよね。結果としてのプロダクトがすべて。ユーザー目線で考えるほどに、両者は分けられなくなります。

一方で、大手メーカーでは、デザイナーとエンジニアは明確に分業されている場合がほとんどです。その点はもっと柔軟でもいいと考えていますし、逆にいえば、そこが僕のオリジナリティなのかな、とも思っています。

坂井 分業制、専門の細分化は、日本メーカーにとって大きな罪でしたね。戦後間もないころに日本には、280社の自動車・バイクメーカーがあったんです。今では考えられませんが。創業期はトヨタもソニーも、ごく小さなメーカーでした。当時は少人数で議論しながら、モノづくりをしていたはずです。それが、生産効率を高めるため、各社は分業を進めていきました。その細分化が進み過ぎたのが、今の日本ではないかと思います。

見た目ではなく、「モノの在り方」からデザインする

八木 以前、いわゆる「デザイナーズ携帯」が一世を風靡しましたよね。僕も、好きで愛用していました。携帯電話の領域にも広くデザインの価値を普及させた点で、素晴らしい成果がありましたが、結局世の中を変えたのは、iPhoneでした。あの時、僕の中で考え方が大きく変わりました。

坂井 分かります。

八木 既存の製品や技術、開発プロセスなどがあって、その前提からデザインを始めるやり方では、新しいデザインを志す上でもう十分ではないのではないかと思ったんです。技術も、製造方法も、開発プロセスも、そういう前提条件そのものからデザインする。そうして根源的なモノの在り方に踏み込まなければ、世の中を変えるプロダクトは生み出せないのでは、と感じました。

—— そう考えたのはいつごろですか?

(次ページへ続く)




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