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NewsPicksの第二章は“融合”がカギに~「PV至上主義」を捨てて新しいメディアのあり方を探る【特集:New Order】

タグ : NewsPicks, メディア, 佐々木紀彦 公開

 
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(写真左から)NewsPicks取締役/編集長の佐々木紀彦氏、サービス開発の文字拓郎氏、ツィンツァレク・トビアス氏、サービス開発マネージング・ディレクターの杉浦正明氏

昨年7月に『東洋経済オンライン』元編集長の佐々木紀彦氏を招聘、自前の編集部を立ち上げてオリジナルの記事コンテンツの配信を開始するなど、ニュース配信アプリという枠組みを超えて新たなメディアとしての道を歩み始めたNewsPicks

今年4月には、これまで開発・運営を行っていたユーザベースから分社化し、グループ会社の新会社ニューズピックスとして体制も刷新した。

「NewsPicksは『専門×人×テクノロジー』の掛け合わせで世界一の経済メディアを目指す」

昨年9月のメディア発表会で、そう宣言していた佐々木氏。テクノロジーとメディアの融合はその後、どこまで進んだのか。そこに生み出される新たな価値とはどのようなものなのか。

編集長の佐々木氏に加え、サービス開発チームのエンジニアである杉浦正明氏、文字拓郎氏、ツィンツァレク・トビアス氏の4名に、NewsPicksの現状と今後の展望について話を聞いた。

PVに替わる新たなKPIで「記事の価値」を見える化

—— 昨年9月のメディア発表会で、新しい経済メディアを作る上での構想を語っておられましたが、現在はどの辺りのフェーズまで進んでいるのでしょうか?

佐々木紀彦氏

「PVに替わる新たなKPIを確立することが、ゲームのルールを変えることになる」と佐々木氏

佐々木 まだ第1フェーズでしょうね。プラットフォームとしての土台造りが続いていている状態です。

ただ、それがあと少しで終わるというところまで来ていると感じています。メディアとテクノロジーが本格的に融合していくのはこれからです。

編集部に関して言えば、昨年9月にオリジナルコンテンツの配信を開始したころはまだ2、3人くらいしか担当者がおらず、徒手空拳で作っている状態でした。それが今、20人くらいまでチームが大きくなり、ようやくきちんとしたフローでオリジナルコンテンツを作れるようになってきました。

杉浦 テックチームに関しても、今は15人弱の体制になり、以前は1つだったチームを3つに分けています。

1つは、ユーザーへの価値を最大限に上げることをミッションにグロースハックを行う「グロースチーム」。2つ目は、戦略的な機能の開発やシステムのインフラ運用などを担う「プロジェクトチーム」。3つ目は、「コンテンツ・マーケティング・プラットフォーム(CMP)」と呼んでいる、マネタイズのための土台を作るチームです。

佐々木 新規のユーザー獲得を目指すグロースチームには、編集メンバーも参加しています。どういう風にしたらもっとユーザーに刺さるのか、ユーザーがNewsPicksに期待しているコンテンツとは何なのか。そういった部分を正確に知ることに関して、編集部はまだまだ経験に頼って甘いところがあるので、テックチームに分析してもらっているということです。

具体的には、今は有料会員が増えているので、どういう記事が有料会員獲得につながっているのかを逐一分析して、コンテンツ制作に活かすといったことをやっています。

―― 具体的にどう活かしているのですか?

杉浦 一つは、社内のメンバー全員が分析結果を見られるツールを導入しました。また、週に1回、全員が集まるミーティングがあるので、そこでKGIやKPIのハイライトを共有しています。

ツールはFluentdを使ってログをRedshiftに保存するというもの。技術的には一般的な内容ですが、独自開発したツールを使っています。

(※編集部注:以下の資料は、文字氏が『JJUG CCC 2015 Spring』で発表した「Java が支える人気ニュースアプリNewsPicksの裏側」。資料内に独自ツール開発の詳細についても書いてある)

外部の分析ツールもいろいろと試したのですが、それだとかゆいところに手が届かない。例えばGoogle Analyticsのようなツールでは、「1本記事を書いたら有料会員がどれだけ増えたか?」といったNewsPicksならではの指標を追い切れないところがあるので。

どういう情報があったらいいかというのは、編集部側とテックチームとで膝詰めで突き合わせました。

―― コンテンツ作成が主業務の編集部に、「数字で測る文化」を根付かせるのには苦労しそうですが。

佐々木 そんなことはありませんよ。編集部の人間も、紙の時代には部数という数字を追っていましたし、Webになってからも記事がどれくらい読まれたらいいかというのは、どの編集部も気にしていますから。

ただ、単にPVを追うというのは時代遅れなので、それに替わるKPIは何だろうというのはずっと悩んでいました。それに対する回答の一つが、どの記事で有料会員が増えたかという数字です。

その他、重視して継続的に追っているのはDAU。ここに各記事がどう貢献したかはまだ見えにくいので、もっと練っていかないといけない部分です。

もう一つは新規会員獲得。PVを完全に捨てるとしたら、どの記事で新規会員を獲得できたかを見える化して、PDCAを回していかないといけない。これも今後の課題です。

いずれにしろ、編集者や記者には今後、PVは全く意識させないようにしようかと思っています。

―― なぜですか?

佐々木 PV至上主義である限り、PVを稼いでネット広告を入れて……というビジネスモデルが変わらないままで、結局単価は上がらない。むしろスマホになって下がるだけです。それでは「新しいメディア」として未来がありませんし、高い収益を上げて、コンテンツやテクノロジーに投資し続けることができません。

ですので、自分たちで新しいルールを作りたいんです。どういうKPIを追うか? ということ自体が、新しいゲームを作るという意味で非常に重要であると思っています。

あ、奇しくも「ゲームチェンジャー」の企画につながりましたね(笑)。

—— 新しいKPIには、編集部の方々も慣れましたか?

佐々木 有料記事にはもう慣れましたね。もともと、記者や編集者はPVに興奮していたのではなくて、自分の記事がどれだけの人に影響を与えたかということにアドレナリンが出ていたんです。

だから、違うアドレナリンの素が必要なわけですが、有料会員についてはテックチームが見える化してくれたことで、それを探せたということです。

メディア、プラットフォーム、ソーシャルの三角形が強みになる

—— NewsPicksは、Pickerのコメントを含めてコンテンツを作るという点がユニークさにつながっています。この強みを伸ばすために、テックチームが注力しているのはどういったことでしょうか?

トビアス氏、文字氏

NewsPicksの第二章は、メディア、プラットフォーム、ソーシャルの三角形が生む新たな価値を探るフェーズになる

文字 グロースチームでは、ルーティン業務としてKPIを追い、落ち込んでいるところがあったらそれに対する施策を打って……という基本を繰り返してきました。そこから今は少し進んで、大きなプロジェクトが進んでいます。

それは「Web版」の作り直しです。

昨年6月にWeb版をリリースしてから、今まで少々おざなりになってきましたが、秋の編集部の発足以来、コンテンツが蓄積されてきたこともあり、Web 版の立ち位置を考え直す時期に来ていると思います。

ここを整備することで、ストックとして蓄積されたコンテンツをユーザーの皆さまが掘り起こし、新たな発見につながるようなユーザー体験を提供できるようにしたいと考えています。

トビアス それと今は、閲覧履歴や記事の内容に応じて、自動的に関連記事を表示するアルゴリズムの開発にも取り組んでいます。

私は音声認識や自然言語処理が専門なので、将来的には記事内容やPickerの皆さまのコメント内容を分析することで、よりパーソナライズされた関連記事を提示するような機械学習にも挑戦していきたいですね。

それにはもっと大きなチームが必要ですが。

—— 今、トビアスさんから将来的なお話もありましたが、NewsPicksとしての第2フェーズはどういったものになっていくのでしょう?

佐々木 NewsPicksの特徴は、メディア、プラットフォーム、ソーシャルの3つの要素を全て持っているということだと思っています。それぞれが「第1フェーズ」としてはかなり育ってきたので、今度はこれら3つをつなげることで生み出される新しい価値を追求していきたいと考えています。

メディアは「メーカー」、プラットフォームは「流通」、ソーシャルは「宣伝」として例えると、その強みが分かりやすく伝わるのではないでしょうか。

私が以前在籍していた東洋経済はメディアだけ、ヤフーやスマートニュースはプラットフォームだけ、Facebookにしてもプラットフォームとソーシャルの2つだけです。3つをつなぐことが本当に合理的かどうかはまだ証明されていませんが、そうであるというのが我々の仮説です。

―― Pickerの方々を交えたオフラインのユーザーミートアップをしているのも、今お話いただいた構想の一環ですか?

佐々木 そうです。ただ、ソーシャル的要素を持つNewsPicksはコメントなどを通じて日々ユーザーの声を聞ける。それをリアルでもやったということであって、特別珍しいことではありません。

—— リアルなミートアップを通じて、テックチーム側は何かしらの気付きがありましたか?

文字 課題もいくつか明らかになりましたね。例えば「コメント欄、ランキングが固定しがちだ」という意見をいただきました。そうした課題をどう解決していくかを考えるのも、第2フェーズだと思います。

——アクティブなユーザーが増えてくると、初期から使っていたユーザーの方からは、「当初のサロン的な要素が薄れた」といった不満が出てくることもないですか? その辺り、新しいルールを設けるといったお考えは?

杉浦 サロン的な要素が薄れてきているという仮説は確かにあります。なので、例えば閲覧履歴などからユーザーの方々をクラスタリングして、似た嗜好のユーザーを緩やかに集めることで、その人たちのコメントを上に表示させる……みたいな施策は考えています。

すでにその走りとして、コメントの並び順にアルゴリズムを入れるという取り組みを始めてもいます。ただ、そこはトライ・アンド・エラー。反応を見ながら、ちょっとずつスコアを調整しています。

あまり調整し過ぎると、似たような意見ばかりが優先的に表示されるようになり、それはそれで怖いですしね。一つのニュースに対して、肯定もあれば否定もあるというのがNewsPicksの目指したい姿なので、“質の良いコメント”をどう定義付けし、いかに表示させるべきか、仕組みそのものを模索しています。

—— 以前、中島聡さんが梅田望夫さんとの共著『iPadがやってきたから、もう一度ウェブの話をしよう』の中で、「運営側のポリシーに合わないものをリジェクトする代わりに最高のユーザー体験を提供しようとするAppleはディズニーランド的で、何でもありで自由な状態を善きものと考えるGoogleはオープンソース的」とたとえていたのですが、NewsPicksが目指す像はどちらに近いでしょう?

佐々木 ディズニーランド……ではないですね(笑)。今までは完全にオープンな世界。ユーザー、Pickerの方々に任せていました。ただ今後は、そこに少しだけ“神の手”を入れていこう、と。

基本的には自由経済というのがNewsPicksのテーマです。ただ、国家を見てみても、完全なる自由主義はうまくいかない。最低限のルールは必要かな、と思っています。

ネット広告を「ウザくない」ものにするプラットフォーム

—— ではマネタイズ、広告に関しては今後、どのような取り組みをなさるおつもりでしょうか?

杉浦正明氏

広告をより良いコンテンツに変える「CMP」とは?

佐々木 NewsPicksのマネタイズ戦略には、大きく分けて3つの柱があります。一番大きな柱が有料会員。もう一つは、巷ではネイティブ広告と呼ばれる広告記事です。

これに関しては、クリエイティブな広告を作って単価を上げて、ブランドそのものを伝えていく必要があると考えています。そこで、日経BP社のママ向け雑誌『ecomom(エコマム)』で編集長を務めていた久川桃子(きゅうかわももこ)さんに入ってもらい、国内初のブランド広告専門チーム「ブランドデザインチーム」を立ち上げました。

しかし、これだけだとスケールしない。何よりテクノロジー企業っぽくない。そこでこれから始まるのが、3つ目の柱にしたい「テクノロジーと広告の融合」です。

杉浦 冒頭で申し上げた3つ目のチームが担う「CMP」がそれです。

一番実現したいのは、現状はとにかくクリックさせることが優先されて、ユーザーにとって「ウザいもの」になっているネット広告を変えること。広告を、読み手にとってちゃんと新たな情報のある、良いコンテンツにしたい。

そのためには、その情報を必要としている人だけに届けることが重要になります。

そして、コンテンツを見たユーザーからフィードバックを受けて我々作り手が学び、より良いコンテンツづくりに活かせるというコンテンツマーケティングの一連の流れを行えるプラットフォームを作りたいと考えています。

コンテンツを作成するCMS部分は、まずNewsPicks編集部に使ってもらいますが、内部でドッグフーディングしてクオリティーを十分に高めた上で、外部のメディアの方々や広告主の方にも使ってもらえるようにする想定です。

作成したコンテンツは従来のアドネットワークに出稿するだけでなく、例えばPickerの中でもフォロワーが多いインフルエンサーになっている人にPickしてもらうことによって、コメントという情報を付加した上でソーシャルメディアに拡散をさせることも可能です。

従来の分析ツール、例えばGoogle Analyticsなどでは、「誰が読んだか?」といった細かい情報までは分かりませんでした。ただ、Pickerという「人」に紐づいたサービスであるNewsPicksであれば、誰がいつ、どこまで読んで拡散したかどうかまで分かる。届けるべき人に届けるという精度を高めていくこともできるでしょう。

ここでも、メディア、プラットフォーム、ソーシャルの3つを持っていることが活きてきます。

—— そうした全く新しいモデルを作る場合、例えばこういうものというものを示すのが難しいと思うのですが、アイデアの発案はどなたが行うのですか? 「ゼロイチ」を作るチームの働き方のヒントを、最後にいただければ。

佐々木 どうでしょう。具体的なアイデアはトップダウンもあればボトムアップもある。さまざまですよね。

杉浦 「CMP」という“線”にしたのは僕ですが、「ウザくない広告を作りたい」ということは日々、みんなが考えていて、普段の会話の中でいくつもの“点”になるアイデアが出てきていました。そうした“点”をまとめることで、ゼロからイチが生み出されるイメージではないでしょうか。

佐々木 クロスファンクショナルなアイデア出しはまだ仕組み化していないので、現状はカオスといってもいいかもしれません。今後もこのままがいいのか、あるいは整理した方がいいのかは、検討の余地があるでしょう。

グロースやマーケティングはすでに横断的にやっているので、そうしたプロジェクト単位の横断から、新しいやり方ができてくるのかもしれません。

—— なるほど。貴重なお話をありがとうございました。

>> 特集「New Order~現代のゲームチェンジャーたち」記事一覧

取材/伊藤健吾 文/鈴木陸夫(ともに編集部) 撮影/竹井俊晴




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