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編集という職人芸はどこまで機械化できるのか?月間100億PVのYahoo!ニュースに見る編集とエンジニアのいい関係【real news “tech” HACKレポ】

タグ : Yahoo!ニュース, ヤフー, 編集 公開

 
公共性を担うニュースメディアのあり方を編集、開発両面から探ったイベント「real news “tech” HACK」。前半はYahoo!ニュース編集部の苅田伸宏氏(中央)、開発部の庄司和正氏(右)が登壇した

公共性を担うニュースメディアのあり方を編集、開発両面から探ったイベント「real news “tech” HACK」。前半はYahoo!ニュース編集部の苅田伸宏氏(中央)、開発部の庄司和正氏(右)が登壇した

月間PV数は100億を超え、老若男女幅広いユーザーが視聴するYahoo!ニュースは、いまや日本国民にとっての公共ニュースと呼べる存在だ。その公共性を担保するため、「編集」と「テクノロジー」はどのようにお互いを支え合うのが理想なのだろうか。

こうしたテーマについて、編集者、開発者、UIデザイナーといったさまざまな立場から議論するイベント「real news “tech” HACK with エンジニアtype『公共性×編集×テクノロジー』」が9月17日、東京・港区のヤフー本社で開催された。

弊誌では、この模様を前後編の2回にわたってレポートする。前編となる今回は、Yahoo!ニュース編集部の苅田伸宏氏、開発部の庄司和正氏によるディスカッションの内容を紹介しよう。

苅田氏は毎日新聞の元記者で、2013年にYahoo!ニュースへと移籍。以来、トップページの記事や関連リンクの選定など、編集チームの一員としてニュースの理解を深める情報パッケージの制作にあたっている。

一方の庄司氏は2007年にヤフーに入社して以降、エンジニアとして主にプラットフォームの開発に携わってきた。機能ごとのプロジェクト制を敷いているYahoo!ニュースチームにあって、横断的なプロジェクトにも多く関わってきた。

ディスカッションでは、ニュースアプリを語る上ではいまや欠かせない機能といえる「プッシュ通知」と、Yahoo!トピックスの見出し選定に使われているという「A/Bテスト」を例にとり、編集者と開発者双方の立場から、日々公共性と向き合うYahoo!ニュースチームの取り組みを語った。

24時間“Yahoo!砲”を受けても落ちることは許されない

「「一般的なニュースに求めるものの上位に来るのは正しさ、公平性なのに対し、ネットニュースに求められているのは、重大なニュースが確実に、速く通知されること」と苅田氏

「一般的なニュースに求められるのは正しさ、公平性なのに対し、ネットニュースに求められているのは、重大なニュースが確実に速く通知されること」(苅田氏)

まず2人が紹介したのは、Yahoo!ニュースが過去に行った「ニュースに期待する役割」に関する調査結果。これによると、一般的なニュースとネットニュースとでは、期待される役割に異なる傾向が見えたという。

「一般的なニュースに求めるものの上位に来るのは正しさ、公平性なのに対し、ネットニュースに求められているのは、重大なニュースが確実に、速く通知されること。スマートフォンが普及したことを背景に、どこにいても確実にニュースを届けてほしいというニーズが強まっているのを感じます」(苅田氏)

こうしたニーズに応えるために重要な役割を担うのが、プッシュ通知機能だ。そしてプッシュ通知を打てば当然、アクセスが一気に跳ね上がる。システムを開発・運用する側には、こうして瞬間的かつ爆発的に増大する負荷にも耐え得る設計が求められる。

当然だがYahoo!ニュースそのものは「24時間このYahoo!砲を受けているようなもの」(庄司氏)。公共性を担う立場としては、それでもなお「絶対に落とせない」緊張感と戦っている。

「もちろん負荷対策には力を入れていて、サーバをずらっと並べて負荷分散をしていますし、仮想と実機の使い分けも行っています。また、万が一大規模災害などでデータセンターが倒れてもカバーできるよう、東京、大阪、北九州、八戸の全国4カ所に拠点を設けています」(庄司氏)

「読まれなくても届けるべき情報」をどう扱うか

「仮に好んで読まれなくても、届けなくてはいけない情報というのはあるのではないか」(庄司氏)

「仮に好んで読まれなくても、届けなくてはいけない情報というのはあるのではないか」(庄司氏)

毎日コンスタントにプッシュ通知を打っているYahoo!ニュースだが、それが裏目に出ることもあるという。

過去1日に最も多くプッシュ通知を打ったのは、今年の7月28日。この日は午前中に新国立競技場問題関連で1回目の通知を打ったが、夜になってプロ野球で節目の記録達成が相次ぎ、結果として1時間おきに通知が続く“ラッシュ”となった。その結果、アプリのアンインストールが続く「苦い1日」(苅田氏)になったという。

「ここから学んだのは、スポーツの記録や株価の動きなどは、専門的に知りたい人はすでに他に知る手段を持っていて、逆にそうでない人はそこまで欲しいとは思っていないのではないかということです。この教訓を活かし、現在では通知の間隔を調整したり、1日の本数を制限するといったことも行っています」(苅田氏)

このプッシュ通知をめぐり、Yahoo!ニュースチームが現在課題として向き合っているのが、全てのユーザーに一律でプッシュすることの是非だ。

「九州の豪雨の情報を北海道の人に打つというのは、果たしてどうなのか。もちろん、世の中でこんなことが起きているというのを知ること自体は大切ですが、一方でもう少しセグメントした方が、生活に密着した形で情報を提供できる。そのせめぎ合いで、日々議論を交わしているところです」(苅田氏)

「技術的にはパーソナライズは問題なく実現できます。現に、トピックス下のタイムラインなどはすでに、ユーザーの志向に合わせて変えています。しかしパーソナライズをかけ過ぎるとフィルターバブル問題が起こるし、好きなニュースばかりを読んでしまって、表示されるのがエンタメ一色になってしまうといったことも起こり得ます。仮に好んで読まれなくても、届けなくてはいけない情報というのはあるはずで、ヤフーとして届けたいものと求められるものとのバランスをどう取るかというのも、非常に重要な課題です」(庄司氏)

どこまでいっても「100%機械化」はあり得ない

Yahoo!ニュースでは現在、トピックス見出しのA/Bテストを日常的に実施している。この見出しは従来、重大な間違いがない限りは変更されることがなかったが、現在ではA/Bテストツールを使うことにより、最大3本の見出しのCTRを比較検討しているという。

このA/Bテストツールは完全に独自開発されたもの。取り上げられるトピックスは通常2、3時間で入れ替わるため、1時間かけてベストを検討するのでは意味がない。膨大なトラフィックを捌きながらリアルタイムでデータを分析し、およそ10分で優劣を判断するためのツールが必要だった。

しかし、ここでも完全に機械に委ねることはしないというのが、Yahoo!ニュースの大方針だ。

「かつてはCTRが一番いい見出しに差し替えてしまえばいいじゃないかという議論もありました。ですが、仮に多くクリックされようとも、その見出しがいわゆる釣りになっていないか、誤解を招いたり人権侵害になったりする要素が入っていないかは、現状は機械が100%の精度で判断するのは難しい。そのため、数字はあくまで判断材料として、最終ジャッジは編集チームにお願いしています」(庄司氏)

とはいえ、開発側としては全ての判断をこのまま編集チームに委ねておくつもりではない。「将来的には、機械学習を記事とユーザーのマッチングというレベルに留まらずに、職人芸になっている編集スキルを解析することにも使っていきたい」と庄司氏は話している。

「ただし、どこまでいっても100%機械に置き換わるということはあり得ないと考えています。Yahoo!ニュースのスタンスは『人にしかできないことをテクノロジーで加速する』というもの。その役割は、編集チームのサポート的なものになるでしょう」(庄司氏)

守るだけではダメ、攻めすぎてもダメなのが公共的立場

あらためて例を挙げるまでもなく、テクノロジーを強く打ち出したさまざまなニュース関連のサービスが生まれている。そんな中にあってYahoo!ニュースの開発陣には、「レガシーだと思われている」(庄司氏)現状への危機感もあるという。

「この時代においては守るだけではダメという認識から、1、2カ月でプロトタイプを作り、ライブテストを行うということをどんどんやっていて、開発サイクルは昔とは比べられないくらい速度に上がってきています。しかし一方で、攻めすぎて既存のユーザーが離れてしまうのでもダメというのが、公共性を担う立場。そんなせめぎ合いの中で何とか最適解を探しながら、Yahoo!ニュースは編集だけじゃないという部分も見せていきたい」(庄司氏)

一方で苅田氏は「エンジニアはもはや報道に不可欠な存在なった」と言い切る。

「リアルタイムでデータを見られるというネットの特徴は、ニュースを扱う上で非常に重要。また、プッシュ通知やA/Bテストツールなどは一度作って終わりではダメで、もっとこうしたい、もっとこうできるという議論を重ねて、毎日改善していかなければなりません。その意味でも、エンジニアと一緒になって取り組み、コミュニケーションを密にすることが欠かせないと思っています」(苅田氏)

文・撮影/鈴木陸夫(編集部)




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