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やまもといちろう×楠正憲「ネット業界“ソーシャルの次”を本気で考える」(前編)~楽しさだけを突き詰めても先はない

タグ : SNS, やまもといちろう, ソーシャル, 楠正憲, 業界有名人 公開

 

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作り手自身が「何がどうグレーなのか」を理解しているか?

やまもと 今、EMA(モバイルコンテンツ審査・運用監視機構)に審査を委託する件や、JOGA(日本オンラインゲーム協会)との調整を進めているようですが、まだ審査料や体制が固まっているように思えません。今のソーシャルゲーム業界が置かれている状況って、据え置き型ゲーム機における性的表現の問題で警察の介入直前で、CERO(コンピュータエンターテインメントレーティング機構)が作られた2000年代初頭に似ている部分があると思うんです。

 なるほど。

やまもと けど、ソーシャルゲームは機能のアップデートも多いですし、利用者の個人情報であるとか、コミュニティ機能を通じた未成年者略取とかの危険にも触れるわけで。

 性表現規制の話は製作側が配慮すれば済む問題だから、ガイドラインさえあればある程度運用は容易にできますしね。でも、ユーザー間コミュニケーションの問題はすごく難しい。

やまもと 2007年のモバゲーで起きた事件(青森県で30代男性が女子高生を殺害した事件。2人はモバゲー経由で知り合ったとされる)の後、怪しげなメッセージのやり取りはなかば手作業で落としていくっていうことをDeNAさんはやったわけだけど、これをやり過ぎると“通信の秘密”にも踏み込むことにもなる。なかなか一筋縄じゃいかないんですよ。

 さらに、日本的な議論の積み重ねの中で、日本だけのものを作ろうとすると、また「ガラパゴスをやるのか」って批判される。

やまもと 一つだけ言えるとすれば、今、ネット業界で技術とかサービスを設計している人たちの多くが、こういった諸問題まで視界に入れて仕事をしているとはとても思えないんです。今後はそこが作り手たちの課題になるというか。

 そうですね。業界が成熟してくると、倫理規定づくりは必ず通らなければならない道です。

やまもと テクノロジーをマネジメントする人も、テクノロジーを使って事業をドライブしている人も考えなきゃいけないパラメータが増えていきますよね。でも、現状はこういう着眼点さえ持っていない人がほとんどだから、あらかじめ問題を起こさないようにしていくこと自体が難しくなるってことでもあるわけです。

 ネットにしてもソーシャルにしても、まずは何がどうグレーな状況なのかってことに僕ら作り手自身が自覚的でなければなりませんよね。

ネット社会は作り手が描いたシナリオ通りに進むものではない

―― これらの問題の解決も見据えた上で、今後のソーシャルWebをどう作っていくのがよいかについて、お2方のご意見をお聞かせください。

 大前提として、ここまでお話したような問題にどう対処するかという観点は「必要不可欠」ですが、技術開発の視点で言うと「必要十分条件」にはならないと思います。

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長年ITの世界に携わってきた楠氏が考える「必要十分条件」とは?

やまもと どういう意味ですか?

 これまでのネット社会も、合理的経過を辿って今の姿になったのではなく、いくつかの偶然が重なって今の状態に落ち着いているだけ、みたいなところがあるじゃないですか。

―― 具体的な事例はありますか?

 昔話で恐縮ですが、1990年代の後半にかけて盛んに行われていた議論の一つに、「eコマースが流行らないとすれば、それは店の顔が見えないから」というものがありました。「顔が見えないネット商店のことを信用できるはずがないし、クレジットカード番号なんか預けるわけがない」という理屈です。

やまもと ああ、ありましたね。

 で、当時は店舗を挟んで「消費者と金融機関が三角決済をする形が必要だ」なんて議論がされていて、SETと呼ばれるクレジット決済プロトコルや匿名暗号が日本でも盛んに研究されていたんですよ。いくらお金をつぎ込んだのかってくらい。

―― そうなんですか。

 ただ、当時あれだけお金とリソースを注ぎ込んで研究開発をしていたのに、今現在の僕たちはアマゾンや楽天に躊躇なくクレジットカード情報を預けているわけです。

やまもと つまり、ネット社会は作り手が考えたシナリオで進むものではないってことですね。

 そうなんです。さらに言えば、最近は電池の消費量が抑えられると思って入れたスマホアプリが勝手にアドレス帳をぶっこ抜いていくような、まったく別の個人情報リスクにも見舞われている。

やまもと 『the Movie』事件ですか。ただ、あれは利用規約上、情報の取得を行うことについては明示していたので、厳密に言うと個人情報を取得したことだけで摘発するのが非常に難しかった。健全なサービスも似たようなことをやっていますから。まさにグレーなところを突いた事件でしたが、やらかした会社が闇金グループだったため、無理に摘発にまで持っていった感はありましたね。

 ともかく、eコマースの安全な決済方法についてあれこれ議論していた当時、2010年代にこんなことが起こるなんて誰も予想できなかった。だから、フロンティアスピリッツを持った事業者なり開発者なりが新しいWebサービスを世に出すということは、少なからずこういった諸問題と付き合わざるを得ないんです。

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ソーシャルWebの全体像について繰り広げられた2人の議論も、次第に「個人」のフェーズへ

やまもと 元も子もない抽象論になっちゃいますが、結局は利便性とリスクの間で許容できるバランスを見つけながらやっていくしかないってことですかね。

 これは例えが悪いかもしれませんが、交通事故で年間何千人も亡くなっても自動車は禁止されていませんが、こんにゃくゼリーで赤ちゃんが亡くなることは1人だって受け入れられない。世の中ってそういうもので。だから、これからのソーシャルWebの最適解を見つけるためには、やはりユーザーや規制当局を含む「社会」とキッチリ向き合うことを前提にどうリスクを取るか、慎重に判断するしかないでしょうね。

―― では、次はここまでの議論をもう一歩ブレイクダウンして、各企業や作り手個人が「次のソーシャルWeb」、「次のネット社会」を作っていく上で求められることは何かを聞かせてください。
(続く)

>> 対談後編はコチラ「欲求とリスクを知って壁を越えろ」

取材・文/武田敏則(グレタケ) 撮影/竹井俊晴




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