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セガ制作陣が『Orbi Yokohama』開発で学んだ、エンタメの世界展開に必要なこと

タグ : BBC Earth, Orbi Yokohama, エンターテインメント, セガ 公開

 
BBC Earthとセガの共同プロジェクトとして2013年に誕生した大自然体感型エンターテインメント施設『Orbi Yokohama』

BBC Earthとセガの共同プロジェクトとして2013年に誕生した大自然体感型エンターテインメント施設『Orbi Yokohama』

Orbi Yokohama』は、横浜市みなとみらい地区の商業施設内に2013年8月にオープンした、「大自然超体感ミュージアム」と銘打ったエンターテインメント施設だ。

英国BBCワールドワイドとセガによる、世界展開を視野に入れた共同プロジェクト「Orbi」の第1弾施設として誕生したものであり、「BBC Earth」の迫力ある大自然映像コンテンツと、セガの高い技術力やアイデアの融合により、都会にいながら五感で大自然を体感できる。

この夏、オープンから2周年を迎え、ファミリーで楽しむエンターテインメント施設として確固たる地位を築いた感のあるOrbi Yokohama。だが、開館1カ月で来場10万人を突破した後は、しばらく伸び悩む時期も続いたという。

プロジェクト立ち上げ当初から企画・制作の責任者として関わってきたセガ・ライブクリエイション(今年4月に分社化。開館当時はセガ)の長谷川敦彦氏と原武司氏によれば、開館直後の苦境とそれを克服しての再上昇には、世界進出を前提にした国際プロジェクトならではの難しさが関係していた。

Orbiがぶつかった壁とは? 彼らはいかにしてそれを克服したのか?

国際プロジェクトならではの2つの壁

セガ・ライブクリエイション 社長室コンセプトプランニングチームの長谷川敦彦(左)と原武司氏

セガ・ライブクリエイション 社長室コンセプトプランニングチームの長谷川敦彦(左)と原武司氏

BBCとセガの間でプロジェクトが持ち上がったのは、Orbi Yokohamaの開館からさかのぼること4年、2009年のことだという。

それまでにも日本全国のゲームセンターやエンターテインメント施設『ジョイポリス』などで実績を残してきたセガだが、そのいずれもが若者向け。親世代、祖父母世代も含めた3世代に提供できる新しいものはないかと、模索しているタイミングだった。

一方でBBCは、優れた映像コンテンツを、映像から一歩踏み込んだ別の価値として提供する可能性を追求すべく、パートナーを捜していた。こうした両者の思惑が一致する形で、Orbiのプロジェクトは立ち上がった。

だが、いざプロジェクトが始まると、セガは『ジョイポリス』など過去のプロジェクトでは味わったことのない壁にぶつかった。

「一番の苦労は技術ではなく、文化の違いだった」と長谷川氏は振り返る。

「セガが得意とするのはエンタメ、つまりお客さんをいかに楽しませるかということです。一方でBBCは英国の公共放送。日本で言えばNHKですから、非常にお堅い文化で、ノリが違う。自分たちの作ってきた大自然そのままの映像素材には自信を持っていますから、私たちが主張するような過剰な演出を嫌がるようなところがありました」(長谷川氏)

人々の琴線に触れるには、最低限の誇張、演出は必要なものであるというのが、セガがこれまでの経験から学んできたことだった。この感覚の不一致は思いのほか、彼らを苦しめた。

「リアルって意外なほど面白くないんですよね。もちろん、素材そのものが響くケースだってありますよ。でもそれは、予備知識があったりすごくその分野に興味を持っていたりする一部の人に対してであって、一般の人には届かない。テレビの視聴率とかだってそうじゃないですか。でもそれが彼らには分からないんですよ」

Orbiは先述した通り、当初から世界展開を想定したプロジェクトだ。そのため、開発もドメスティックな体制ではなく世界連合的な構成で、ということになった。

画像認識技術を利用して、自分の姿と動物のCGを合成する「アニマルセルフィー」

画像認識技術を利用して、自分の姿と動物のCGを合成する『アニマルセルフィー』

例えば、好きな動物と一緒に映っているような写真が撮れるコーナー。そのシステムの開発においては、撮影の仕組みはアメリカ、プログラムを組むのはドイツ、サーバ管理はシンガポール、販売するレジのシステムはまた別の会社……といった多国籍な構成となっていた。

企画から制作までを一貫して行うことが多かったセガとしては、初めての挑戦だった。ここで、もう一つの「文化の壁」に苦しめられることになる。

「日本の会社同士であれば『こんな感じで』で伝わるところが伝わらない。自分の想いを伝えるのに非常に時間が掛かるし、ディテールが伝わり切らずに思うような演出ができないこともありました。また、スケジュール通りの納品といった日本の常識が通じないことも身をもって痛感しました」(原氏)

必要だったのは「お客さんからのフィードバック」と「時間」

Orbi Yokohamaはオープンから1年後に、大規模なリニューアルを行っている。

大型シアターで現在公開されている新プログラム『海がめロキシーの冒険』。従来のものよりストーリー性を意識した内容になっている

大型シアターで現在公開されている新プログラム『海がめロキシーの冒険』。従来のものよりストーリー性を意識した内容になっている

まず、施設の目玉である大型スクリーンで上映される映像作品は、それまでのドキュメント性の強かったものが、ストーリーを意識した起承転結のある作品へと変更された。さらに、『Kinect』と顔認証の仕組みを使って動物に変身できるエキシビションなど、体験型のコンテンツが新たに追加され、人気を博すようになった。

これまでは映像そのものを活かした「教育的コンテンツ」が中心だったが、動物や自然をネタにして「遊ぶ」コンテンツが織り交ぜられるようになった。

「見る」が主体の博物館的な施設から、セガがこれまでに培ってきたノウハウが活かせるアミューズメントパークへとシフトしたのだ。

「これまでのBBCのスタンスからすればあり得なかった変化ですが、今では彼らもこうした路線に寛容で、むしろ彼ら自身も楽しんでコンテンツ制作に加わっています」(長谷川氏)

では、セガとBBCはいかにして「文化の壁」を乗り越えることができたのか。それは「お客さんの顔を見たから」だと長谷川氏は言う。

「来場しているお客さんの反応を見れば明らかなのですが、全体的に教育色が強い中でも、比較的エンタメ寄りのコンテンツに対して、笑顔を見せることが多い。お客さんからのフィードバックを目にしたことで、彼らの意見は確実に変わっていきました」(長谷川氏)

一方で、開発体制が抱えていたもう一つの「文化の壁」を解決したのは「時間」だったと原氏が続ける。

「相手のことを理解するのには、何より繰り返しのコミュニケーションが必要。だから本来的に時間が掛かるものなんです。どういう情報の出し方をすれば相手が分かってくれるのか、どこまでこちらでコントロールすれば意図がズレないのか……。そういったノウハウがたまってきたことが大きいと思います」(原氏)

これまで経験してこなかった苦境を乗り越えたことは、国内では確固たるノウハウと自信を築いていたセガの制作チームに、新たな境地を開かせた。

「実装までを一貫して行うこれまでのモノづくりが、いかに恵まれていたかを再認識できましたし、これまでは言語化してこなかったことを、万人に伝わる形にするにはどうすればいいのかを学べたのも、今後を考えると大きかったと思っています」(原氏)

この冬に大阪もオープン。そしていよいよ世界へ

「横浜で得た経験とノウハウは今後の海外展開に必ず活きる」と語る2人

「横浜で得た経験とノウハウは今後の海外展開に必ず活きる」と語る2人

エンターテインメント色をより強くしたOrbi Yokohama。自分たちの土俵で勝負できる環境が整ったという意味では、セガ制作陣にとっては、これからが本領発揮と言えるだろう。

「これまでのように情報を与えるだけであれば問題がなかったデバイスも、エンターテインメントとしてインタラクションが求められるようになれば、精度が物足りないといった問題も生じてきます。新しい路線に合わせて、開発面でも修正の余地が今後もあるでしょう」(原氏)

「エンタメ路線に振ったとはいっても、一方でOrbiが教育的価値を追求していく姿勢は今後も変わりません。エンタメと教育の両立という企画面でも、模索は今後も続けていきます」(長谷川氏)

横浜での一定の成功を受け、国内第2弾施設として今冬に大阪に進出することがすでに発表されている。そしてその先にはいよいよ、初めての海外展開の話も水面下で着々と進んでいるという。

「世界に出るとなると、また新たな問題が生じる可能性もあるでしょう。日本でウケていたコンテンツが別の文化の国でそのままの形でウケるとは限りませんから、カスタマイズは必要になってくるでしょうし、開発体制の座組みにも、その国ごとの最適な形があるでしょう。

ですが今回、『産みの苦しみ』を味わう中で得られた経験とノウハウは、新たな挑戦を行う上でも、きっと活かせるのではないかと思っているんです」(長谷川氏)

取材・文・撮影/鈴木陸夫(編集部) 一部画像提供/Orbi Yokohama




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