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「デザインの力で研究を身近に」東大・山中研究室主催の展示会『PLAYFUL』に見る“プロトタイプ”の新基軸

タグ : PLAYFUL, プロトタイピング, 山中俊治, 山中研究室, 義足 公開

 

昨今、大学研究の分野で重要視されている「アウトリーチ」という活動をご存知だろうか。

研究者が自分たちの研究内容を社会に公開する活動のことで、各種展示会やシンポジウムなどを通じて、世間の科学技術への関心を高めるのが目的だ。また、それによって得られるフィードバックを、研究者が得られるというメリットもある。

欧米の大学ではこのアウトリーチ活動が広く浸透しており、例えば米スタンフォード大学では、アウトリーチ専門のオフィスが存在し、教員とは別の専門職員が研究の広報に尽力している。

日本の大学でも、アウトリーチ活動の一環として、新しい試みが始まった。3月25日から3月29日にかけて東京大学生産技術研究所で開催された、山中俊治教授率いる東京大学生産技術研究所・山中研究室のプロトタイプ展『PLAYFUL』がそうだ。

3Dプリンタで作られたアイテムで遊ぶ子どもたちがいたり、鮮やかな赤で着色された義足やチタンでできたファッショナブルなアクセサリーが展示されていたりと、従来の研究発表会とは一線を画するユニークな展示会の様子をレポートする。

遊び心あふれる研究を体感してほしい

「今回の展示タイトルの『PLAYFUL』は、難解で一般人には理解できないと思われがちな先端研究のイメージを払拭したいことから付けました。研究室では黙々と作業を行うだけでなく、自由な発想と遊び心を元に実験を行うこともたくさんあります。山中研究室が専門とするデザイン・エンジニアリング研究のプロトタイプを実際に見たり、触れてもらったりすることで、研究を身近に感じてもらうのが目的です」

そう語るのは、山中教授のアシスタントとして今回の展示全体のディレクションを担当した角尾舞さん。デザイン・エンジニアリングとは、どのような研究なのだろうか。

「デザイン・エンジニアリングは、分断されがちなデザイン設計と技術研究を同時に行うことを目的とした研究分野です。そのため、研究成果は、ただ外観が美しいことだけでなく、技術的な先進性、機能的な実用性にも重きが置かれます。今回の展示作品も、全て『技術をどう面白く、美しく使うか』という共通の主題のもとに作られました」(角尾さん)

開発段階からデザイン性を考慮しながら作り上げていくことで、開発能率を飛躍的に上げることにも繋がるという。チームラボに代表される、デジタル技術と芸術を掛けあわせたメディアアートの興隆やUI/UX設計におけるエンジニアとデザイナーの境界の変化など、昨今の時流に即した研究分野だといえる。

実際に展示されていた、デザイン・エンジニアリングの研究成果の中から、代表的なものを紹介していこう。

【1】ある向きにだけやわらかい

3Dプリンタにより作られた作品群(パナソニック株式会社との共同研究。谷川聡志氏の作品)。「構造触感」という技術により、全て同じナイロン樹脂で出来ているにも関わらず、それぞれ違う触り心地を実現。唯一の国産工業用3Dプリンタを製造する株式会社アスペクト社の機材を使用している。展示会では、子どもたちがおもちゃを触るように、楽しそうに遊んでいた。

【2】チタンジュエリープロジェクト

レアメタル研究の第一人者、岡部徹教授との共同研究プロジェクトの一環で作られた、静脈を模したチタン製のジュエリー。チタンは製錬難度の高さから高価な素材とされているが、埋蔵量は非常に多い。製錬技術の進化により、チタンが安価で手に入るようになった未来をイメージして作られている。

錆びず、人体との親和性が高いチタンは、金属アレルギーの人も安心して使うことができるため、皮膚に差し込んで使うインプラントジュエリーなど、アクセサリーの幅が広がる可能性を秘めていることをこの作品は訴える。

【3】美しいスポーツ義足のブランディング

パラリンピック選手の高桑早生さんのために、2009年より開発が続けられている『Rabbit』と呼ばれるシルバーとピンクのカラーリングの競技用義足。
この出展作品は真っ赤な靴底で知られるクリスチャン・ルブタンのハイヒール『レッドソール』に着想を得て、「義足のブランディング」を目的とした卒業研究。機能性と見た目の美しさを両立させるデザイン・エンジニアリングを体現する研究作品だ。

デザイン性を意識してプロトタイプを作れば研究は広まる

次回は「美しい義足展(仮)」を2015年6月4日〜6月14日まで東京大学生産技術研究所S棟1階ギャラリーで開催を予定している

デザインとエンジニアリングは、本来は別の領域のはずだが、研究室の学生たちはどのようにして両立しているのだろうか。現在、義足プロジェクトのメンバーである山中研究室修士の都甲直之氏に話を聞いてみた。

「1人で両方をこなすのはとても大変なことですし、それを求められてはいません。事実、僕はもともとエンジニアリングの出身なのでデザイン領域には弱いです。でも、この研究室にはデザイン畑の人もいるので、互いの得意分野を補いながら研究を行うことができる。異分野のメンバーが集まり、チームとして研究を行うことがこの研究室の特徴です」

競技用義足のデザインのような機能性とデザイン性を高いレベルで融合させる研究は、こういった開発土壌があったからこそ成し得たもの。山中研究室のような、ダイバーシティ的な体制を敷くことは、今後の大学研究のアウトリーチ活動の発展には重要なのかもしれない。

都甲氏も、デザインとエンジニアリングが融合して生まれる力を実践を通して感じているようだ。

「山中研究室じゃなかったら、自分の研究をこれほど多くの人に見てもらうことはなかったかもしれません。研究に対する、生の声を聞けるのは研究者として、とても刺激的なことだし、継続するモチベーションにも繋がることを今回の展示で実感しました」(都甲氏)

プロトタイプ開発からデザイン性を高めることで、アウトリーチ活動の効果を高めることができる。そんな、プロトタイプの新しい価値を示した『PLAYFUL』。今後もさまざまなテーマで展示を予定しているとのことで、これからの展開に注目だ。

取材・文・撮影/長瀬光弘(東京ピストル




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