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[連載:伊藤直也②] ユーザー広がるソーシャルゲーム、開発の肝は行動分析にあり

タグ : GREE, Web, Webエンジニア, ゲーム, スキルアップ, スペシャリスト, ソーシャル, 伊藤直也, 業界有名人 公開

 
グリー・伊藤直也のソーシャル開発記
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グリー株式会社 メディア開発本部  ソーシャルメディア統括部長  プロデューサー
伊藤直也

2002年に新卒入社したニフティでブログサービス『ココログ』の開発担当となり、一躍有名になった若きトップエンジニア。その後、はてなで『はてなブックマーク』など各種サービスを立ち上げ、2010年にグリー入社。自身のブログ『naoyaのはてなダイアリー』なども人気だ

前回の記事でわたしは、ソーシャルメディアとスマートフォン時代の到来によって、エンジニアに要求されるスキル、また活躍の場に変化が起こっているという話をしました。

わたしはWeb一本で10年やってきましたが、ほかの業界からやってきたエンジニアにはどう見えるのか。家庭用ゲーム開発の現場出身で、今はグリーのゲーム開発を担当している岡田さんに、経験談を聞いてみましょう。

これからは組込み系エンジニアにも活躍の場が広がる

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グリー株式会社
メディア開発部 エンジニア
岡田一起氏
約7年間、セガのゲーム・プログラマとして国際的なヒットとなった『マリオ&ソニック』シリーズ開発などにかかわり、2010年6月、グリーへ

こんにちは、伊藤からバトンを受けた、メディア開発部の岡田一起です。わたしがグリーに転職したのは2010年6月で、今年に入ってからは当社の内製ゲーム『モンプラ』のスマートフォン移植などを手掛けてきました。4月以降は海外でのスマートフォンによるサービス展開の準備を進めています。

以前勤めていたセガでも、主に家庭用ゲームのソフト開発をしていましたが、グリーでのゲーム開発はいろいろと勝手が違います。一つは開発のスピード。家庭用ゲームソフトの開発は1~2年くらい掛けて行いますが、今は立ち上げから2~3カ月でローンチするような世界。もう、段違いに速い(苦笑)。

とはいえ、開発そのもので言えば、オブジェクト指向のプログラミングといった基本部分は同じ。データベースの負荷対応などを覚えれば、業界間の敷居はそれほど高くないと思います。それよりも今目を向けるべきは、急速に進むデバイスの変化です。

ご存じの通り、今、ソーシャルゲームはフィーチャーフォンからスマートフォンへの移行が加速度的に進んでいます。グリーも今、スマホ対応を急ピッチで進めていて、ネイティブアプリの開発~ローンチも視野に入れて動いています。

この流れがもっと進めば、そう遠くない将来――この業界の「将来」とは「1年以内」だったりしますが(笑)――組込みソフト開発のニーズも高まると見ています。そうすれば、わたしのようなゲーム業界出身のプログラマーが、より経験と能力を活かせる世界になってくるでしょうね。

また、スマホの表現力や性能を考えると、これからは従来のケータイゲームが追求してきたライトでソーシャルグラフ重視のゲームと、『モンスターハンター』シリーズのようなやり込み系オンラインゲームの両方が混在したマーケットになっていくはずです。そこで開発エンジニアに問われるようになるのが、「開発スタイルの柔軟さ」と「ユーザー分析」の2つです。

60%でローンチするか、限りなく100%までつくり込むか

まずは開発スタンスについて説明しましょう。Webゲームの開発は、60~70%の完成度ですばやくローンチして、頻度の高い更新で100%のゲームに育てていくというのが常識でした。しかし、今後ネイティブアプリも混在するようになってくると、こちらは限りなく100%に近い状態でローンチして、その後の改善で120%、150%と完成度を高めていくスタイルに変えなければなりません。

理由は単純で、組込みでつくるネイティブアプリは、HTML5+CSS3でつくるWebゲームに比べて動的更新が簡単ではないからです。

わたしがグリーに入社した直後にやっていたWebゲーム『探検ドリランド』の開発では、「ユーザーがどのボタンをどれだけ使っているか」、「どこのアクションでつまずくことが多いか」といった詳細な行動分析に基づいて、ほぼ週1ペースで機能改善やユーザー向けのイベントを行っていました。このやり方は、スマホにシフトしても重要な打ち手であり続けるでしょう。

ただ、ネイティブアプリはそこまでのスピードで更新できない分、多少のつくり込みが必要になる。今後はこうした違いを理解しながら、開発の力点を変えていくことが大切になります。

そして、この力点を変える判断をする際の大事な指標になるのが、ユーザー分析です。ソーシャルゲームの利用者層は、家庭用ゲーム機ユーザーをも取り込んで、どんどん多層化しています。それこそ老若男女の幅広い層が利用するものになるため、ゲームに求められる要素も異なるわけです。

例えばライトユーザーの主婦をターゲットにしたゲームをつくるとしましょう。家事の合間にちょこちょこ楽しむのが目的になると想定されますから、つくり込みのポイントは「直感的で使いやすいUI」と「ゲームの障壁を低くする」点になります。短時間で楽しめて、すぐに達成感を味わえるものにした方が良いからです。一方、ゲーム好きのヘビーユーザーを想定した開発では、ゲームの障壁は多少高めに設定し、家庭用ゲームソフトのようなつくり込みが必要でしょう。

グリーでは、こうした仮説を開発陣自らが立てながらゲーム構成を企画し、ローンチした後のユーザーの行動分析にもエンジニアが携わります。より良い構成、より楽しめる機能にしていくために、コーディングだけでなく「数字にも強い人」になるのが欠かせないのです。

ならば、ユーザーの行動分析の精度を高めるには何をしたらいいのか。わたしは愚直に数字と向き合うタイプなので、締めは伊藤に託します(笑)。

ユーザーの「真意」を知るには、仮説検証の繰り返しが一番

再び伊藤です。岡田さんが話してくれた「ユーザー分析」とは、数字と向き合った後にどう思考をめぐらすのか、という点が一番大事。僕としては、結局

【1】 出てきた数字を見るだけでなく、自分でまず仮説を立てる。

【2】 そのために、出てきた数字とほかの数字との相関関係を考える。

【3】 立てた仮説をチームの仲間と共有して、レビューし、

    フィードバックをもらって再度仮説を見直す。

の3つが基本じゃないかと思っています。「数字に強い人」になるには、その数字が何の兆しを示しているのかを理解しなきゃダメで、そのためには過去の分析データや外部の統計調査なども引っ張り出しながら、目の前にある「数字」との相関関係を自分なりに考えなければならない。

この、仮説~レビュー~開発の繰り返しが、よりユーザーに刺さるサービスを作っていくための大前提になる。技術屋も分析力を付けなきゃダメな背景って、要はこういうことなんだと思います。
 

撮影/小林 正(人物のみ)




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