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[対談:小飼弾×猪子寿之①] ニッポンの”change”はエンジニア出身のボスがもたらす

タグ : Web, スキルアップ, スーパーギーク, プログラマー, 小飼弾, 業界有名人, 猪子寿之, 経営者, 転職 公開

 
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プロフィール
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アルファブロガー
小飼 弾(こがい・だん)氏

元・ライブドアCTOで、現在ではブログ『404 Blog Not Found』のアルファブロガーとして知られるスーパープログラマー。1969年生まれ。米カリフォルニア大学バークレー校中退。1996年設立の個人資産管理会社ディーエイエヌ有限会社の代表取締役でもある

プロフィール
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チームラボ株式会社  代表取締役社長
猪子寿之(いのこ・としゆき)氏

「ウルトラテクノロジスト集団」チームラボの代表として、最先端テクノロジーの研究や各種Webプロデュースを行うWeb業界の異端児。1977年生まれ。東京大学工学部応用物理・計数工学科を卒業。ブランドデータバンク取締役、産経デジタル取締役も兼任する

――日本のエンジニアリングの世界は、欧米に加えて中国やインド、韓国などとの競争も激しくなっており、厳しい時期を迎えています。日本企業で働くエンジニアを、お2人はどう見ていますか。

小飼 日本は、優秀なエンジニアを見つけやすい国だと思いますよ。前に中国でエンジニアを集めたことがあるけど、1を言って10のアウトプットが返ってくるようなエンジニアは少なかった。日本には、そういう人が多いと思うな。

猪子 でも、最近は中国のエンジニアも相当優秀ですよ。例えば、日本ではサーチを扱っている企業が少ないけど、中国ではかなりの人数のエンジニアがサーチのコアの部分にかかわっている。エンジニアの人数もすごいから、優秀な人の絶対数も多いでしょう。

小飼 「中国人」とか「日本人」って分け方は、この世界じゃあまり意味がないかもしれない。エンジニアリングは、1000人の凡人が1人の天才に負けちゃう世界。固有名詞、つまり自分の名前で仕事をしてナンボで、「あの人は日本人エンジニアだから」とか言われているうちは大したことない。エンジニアとして猪子はどうか、小飼はどうかってことなんです。

猪子 僕が思うのは、日本の企業の経営者とか、決定権を持っている人って、エンジニア出身の人が少なくない? ってことで。それが、いろいろな弊害を生んでるんじゃないですかね。

小飼 エンジニアじゃないと分からないことって、結構あります。ボスがエンジニア出身かどうかの違いって、やっぱり大きい。現場の働きやすさもそうだけど、ホワイトカラーが決定権を持っていると、新しいことにチャレンジしにくくなるような気がします。

猪子 ビジネス側の人って、すぐ「投資対効果は?」とか聞くじゃないですか。でも、これまでなかったものを作ろうってときに、そんなの分かるわけないじゃん、って。「オレはこれが作りてーんだ。よく分かんないけど、ついてきて」って言えるボスがいるかどうか。まぁ、そればっかりだと、会社が潰れるかもしれないけど。

小飼 ボスだけじゃなくて、投資家なんかもそう。シリコンバレーの投資家には、成功した技術者が多い。技術が好きで、面白いと思ったベンチャー企業に投資している。一方、日本のベンチャーキャピタルは他人事なんです。だから、「コイツにいくらつぎ込むと、いくら返ってくるかな」と考える。

猪子 「投資対効果は……」とか考えながら(笑)。

小飼 シリコンバレーの投資家にとって、技術は自分事なんです。アンディ・ベクトルシャイム(サン・マイクロシステムズ共同創業者)が、グーグルのラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンに10万ドルの小切手を渡した時、たぶん「これが先々いくらになるか」なんて考えてなかったはずですよ。

猪子 未来を見たかったんすよ、きっと。

小飼 そうそう。グーグルという会社に、どうしても存続してもらいたかった。ここで終わらせるのはもったいないと。ただ、シリコンバレーに比べて、日本はダメだというのは間違い。シリコンバレーが飛び抜けているだけで、あそこと比べれば、世界中のほかの地域は全部ダメだということになりますから。日本はダメなんじゃなくて、単に「その他大勢」というだけなんです。

同じ技術畑でも、「エンジニア」と「テクノクラート」は違う

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技術の世界ではトップがフライングする勇気を持つのも大切と力説する猪子氏

猪子 昔は日本にも、「オレはこれがやりてーんだ」って突っ走っちゃうボスがたくさんいましたよね。本田宗一郎さんとか。どうしても飛行機が作りたい!って。ロボットだってそう。

小飼 そこで取り巻きが「ROI(投資収益率)はいくらなんでしょうか?」とか言い出しても、聞く耳を持たなかったでしょうし。

猪子 宗一郎さんには、取り巻きが何言ってても、「ウルセー!」みたいな感覚があったんだと思う。「今の時代はプロの経営者が必要だ。グーグルのエリック・シュミットを見ろ」とか言う人もいるけど、違うと思うんすよ、僕。シュミットだって、ファーストキャリアはサイエンティスト、しかもスーパーサイエンティストですよ、って。アップルを見たって、スティーブ・ジョブズが優秀なプロ経営者かというと、ちょっと違いますよね。だから、ビジネス側の人がリードする時代って、もうとっくに終わってんじゃん、って。

小飼 ジョブズの役割は2つある。1つは、自分よりも優秀な人を集めてくること。もう1つは、そういう人たちに対して「これ、オレは欲しくないね」と言うこと。

猪子 アートディレクターというか、クリエーターというか。

小飼 アップル製品の最初の客だね。

猪子 任天堂だってそうですよ。岩田(聡社長)さんはプログラマー出身だし、宮本(茂専務)さんはクリエーター。今、世界で突き抜けたものを作ってるところって、MBAを取った経営者が社長をしているような会社じゃない。グーグルにしても任天堂にしても、技術者とかクリエーター出身の人が決定権を持ってる。アップルも、ここに含めていいと思うし。

小飼 決定権を持つ人が技術畑の出身だとしても、エンジニアとテクノクラートは違うしね。

猪子 ん、てくのくらーと? 何ですか、それ。

小飼 「技術をやりたい人」がエンジニアで、「技術でやりたい人」がテクノクラート。

猪子 んんっ、ちょっと分かんないっす。もっと詳しく聞かせてください。

小飼 じゃあ、こう説明すれば分かるかな? ユーザーとか外部に直接接しているのがエンジニアで、組織の中間にいるのがテクノクラート。エンジニアはとにかく作りたがるけど、テクノクラートは「そんなの作れっこない」ってすぐに頭で考えちゃう”技術官僚”なんだな。
で、エンジニアが勢いで作ったものが大ヒットしたりすると、テクノクラートは「オレらが『ビジネス』にするからこっちによこせ」とか言い出す(笑)。『i-mode』なんかがそうだね。

猪子 へぇー、何となく分かったような……。

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技術をベースにする人でも、テクノクラートは「革新を生まない」と小飼氏は言う

小飼 組織には、実はどちらも必要な人たちなんだけどね。特に、大きな組織はテクノクラートがいないと動かなくなったりする。

猪子 でも今は、イッちゃってるエンジニアが引っ張る会社が、すごいことやるケースが増えてんじゃないですか。Hondaとかソニーが伸びてた時代も、そうだったと思うし。井深(大)さんはもちろん、盛田(昭夫)さんだってエンジニアリングのバックグランドを持ってますからね。
マイクロソフトも、ビル・ゲイツがトップだったころの方がすごかった。みんな「それは時代が変わったから」とか言ってるけど、それだけが理由じゃない気がする。

小飼 僕も、ゲイツがいなくなったことがこれほど大きなことだったのかと、今さらながら思います。ただ、いろんな人に話を聞くと、マイクロソフト社内では前からスティーブ・バルマーの方が圧倒的に好かれていたし、リスペクトされていたらしい。あくまでも周辺情報だけど。

猪子 組織がオトナになった、ってことなんですかね。で、オトナになったら、アップルに抜かれた。さっきのエンジニアとテクノクラートの違いみたいな話だけど、会社とか集団には、「修復する力」と「ぶっ壊す力」の両方が必要なんすよ。で、今はどっちが先導すべきかと言えば、ぶっ壊す力を持った人だと思うんです。

トップは一番”イッちゃってる人”が良い

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「これからはヤバいモノが作れるブルーワーカーに陽の目が当たる」(猪子氏)

――猪子さんはよく、「ヤバいモノさえ作っていれば営業はいらない」と言っています。

猪子 ネットがなかった時代なら、ジョブズみたいな人がいくらヤバいものを作ったとしても、CMを打たなければ知ってもらえませんでしたよね。それに、流通や店舗もちゃんと確保していなければ売れなかった。でも、ネット社会になった今は、ヤバいモノさえ作っていれば話題になるし、量販店に置いてなくても買ってもらえる。だから、モノやサービスそのものを作るエンジニアやデザイナーの価値が、どんどん上がってると思うんです。

小飼 思い付くことと、作ることは違う。アップルがすごいのは、ジョブズが「これ欲しい」と思い付いたものを、何年もかかって作る人たちがいること。逆に言えば、ジョブズは「これだ!」と思うものが完成するまで、4年でも5年でも待つんです。その忍耐力は、ほかの会社にはマネできない。

猪子 それで言ったら、宗一郎さんもすごかったですよね。

小飼 天国に召されても、ずっと待ってるよ、と。

――猪子さんも、そんなトップたちと同じ「エンジニア社長」ですよね。代表として気を遣っていることはありますか?

猪子 いや、僕は全然経営の能力がないから。それに、もうエンジニアでもないと思ってます。

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「社内で社長が一番突き抜けちゃってる会社が理想的だね」(小飼氏)

小飼 たぶん、猪子さんは「社員がクリエイティブなことをやる言い訳」として存在しているんじゃないかな。「ウチのトップはここまで突き抜けているんだから、オレもこれくらいやって大丈夫だ」と思える。社員というのは、社長以上の出る杭にはなれませんから。

猪子 お褒めにあずかり、光栄っす(笑)。

小飼 トップが突き抜けちゃってる人だというのは、組織にとってすごく大事なことなんです。アップルはそんなトップの周りを、抜群にキレる人たちが固めている。そうでなければ、あの値段で『iPhone』や『iPad』を売るなんてことはできません。この順番を間違えてはダメで、まず、トップが一番イッちゃっている人でないといけない。

――エンジニアは、そういうトップがいる会社を選んだ方が良いということでしょうか。

小飼 「猪子さんよりオレの方が突き抜けてる」と思う人は、起業すればいいんじゃないですか。そこまでの自信がない人は、突き抜けちゃってる人がトップを張っている会社を探した方が良いと思う。で、「オレがこの人のそばにいたら、もっとカッコ良くなれるし、してあげられる」と思える人が見つかったら、その会社で働くこと。僕が堀江(貴文・元ライブドア社長)さんと一緒に働いたのは、たぶんそういうことだったんじゃないかなと思っています。

猪子 当時のオン・ザ・エッヂはエンジニアが一番仕事しやすい会社だったって、みんな言ってました。僕自身は、オン・ザ・エッヂもライブドアも直接知ってるわけじゃないけど。

欠落しているルフィの方が、GTOよりも魅力的なワケ

――チームラボのトップとして、猪子さんはある記事で「とにかく一芸に秀でた人を採用したい」と言っていますね。それはどういう理由からですか。

猪子 そりゃあ、みんな欲しいでしょう。アーキテクチャーでもデータベースでも何でもいいけど、「コイツすげー」っていうエンジニアがいたら、ずっと引きこもりしてましたっていう、コミュニケーション力ゼロの人だとしても欲しいですよ。

小飼 そういうスーパーエンジニアなら、会社が彼専用の”通訳”を雇ってもモトが取れますしね。猪子さんの話に付け加えると、ある分野で突き抜けちゃってる人の通訳をする仕事も、これはこれでおいしいポジションです。『スター・ウォーズ』で言えば、スーパーエンジニアはR2-D2で、通訳はC-3PO。通訳には、それなりの力量が求められる。

猪子 うん、それも一芸。

小飼 僕自身のことを振り返ると、結果としてはR2-D2としての仕事よりも、C-3POとしての仕事の方が多かったように思います。「何でも自分でやれます」という人が集まっても、あまり面白い組織はできません。自分には足りないものがあると思うから、「組織をつくろう」とか「組織に入ろう」という発想が出てくる。だから、猪子さんでも会社をつくれる(笑)。

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チームラボの名前の由来が「僕の能力不足にある(笑)」と明かす猪子氏

猪子 あ、でもそれ、冗談じゃないんすよ。僕は人として欠落しちゃってたから、「チームラボ」って社名を付けたの。支えてくれている人たちがいなくなったら、2秒後に潰れますよ、って(笑)。

小飼 十全を目指すと、ほかの人は不要になっちゃう。だから、むしろ欠落している人の方が、組織の中で居場所をつくりやすいんだと思う。もちろん、ある部分では、ほかの人の欠落した部分を補ってあげる存在にならなきゃいけないわけだけど。

猪子 僕も、絶対にそっちの方が面白いと思うんすよね、仕事が。僕は『少年ジャンプ』は好きだけど、『少年マガジン』はあんまし好きじゃない。GTO(漫画『グレートティーチャー鬼塚』。『少年マガジン』の人気作品だった)が、「生徒のために死ぬ」みたいなこと言うのって、どうもウソ臭く思えちゃって。

――いきなり話題が変わっちゃいましたが(笑)。

猪子 いや、でもね、ルフィ(『少年ジャンプ』掲載の漫画『ONE PIECE』主人公で、海賊船の船長)が、「(航海士の)ナミを守るためなら片腕を失っても構わない」くらいのこと言うのって、すげーリアリティーがある。だってさ、ルフィはナミがいなくなったら、航海できなくてどっちみち死んじゃうんだから。

――あ、なるほど!

猪子 人として欠落しているから、ルフィは本気で仲間を助けるし、面白い航海ができる。

小飼 欠落していると、「コイツはほっとけない」って思ってもらえるよね。

猪子 そうなんすよ、仲間に居てもらうために、僕も必死ですよ。P/LとかB/Sとかよく分かんないから。会社が2秒後に潰れないためにもね。

(対談②に続く)

 




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