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[コラム] 電気自動車を作っちゃった”クルマ素人”東大生に学ぶ、コアスキルの発展的活用法

タグ : EV, UTECH, UTFF, 学生フォーミュラ大会, 東京大学, 東大生, 自動車, 電気・制御系エンジニア, 電気自動車 公開

 
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シャシーは、2009年の学生フォーミュラ大会で優勝したものを使用。バッテリーやモーターは、ダイキン工業株式会社から提供されている

東京大学のあるサークルが、電気自動車を自作した。それも、学生フォーミュラ大会競技仕様の、最高時速100km、航続距離約20km、総重量約300kgのレーシングカーだ。

驚くのは、製作者であるサークルのメンバーのほとんどが、自動車開発の専門知識を持たない”クルマ素人”ばかりという点。

電気自動車の研究・開発は、大学や企業の研究室などでその道のプロたちが知恵を搾り出し、研鑽を積んでいる専門領域。”素人”たちが集まって、簡単に作れるようなシロモノではないはずだ。

果たして、彼らはなぜ電気自動車を自作しようとしたのか、そしてどのように作ったのか。サークルを創設した新領域創成科学研究科先端エネルギー工学専攻の修士2年生、恩田祐輔君に詳細を尋ねてみた。

電気・制御系の技術知識と車体さえあれば作れちゃう

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現在は、新領域創成科学研究科先端エネルギー工学専攻の堀教授・藤本准教授の指導のもと、電気系工学専攻のバックアップを受けて活動している

電気自動車を製作したのは、UTECH(東京大学EVクラブ)という東大生7人(当時)が運営するサークルだ。恩田君は、その中でリーダーを務めている。彼はもともと、UTFF(東京大学フォーミュラファクトリー)というエンジンカーのレーシングチームに所属していた。

昨年4月の学生フォーミュラ大会の走行会で、東大・草加浩平教授から「2013年に、学生フォーミュラ大会のEV(電気自動車)部門が新たに設立されるから、やってみない?」と声をかけられ、電気自動車の製作に乗り出した。

「電気工学科出身ということもあり、EV製作はぜひともチャレンジしたい課題だったので、チャンスだと思った」と語る恩田君。これを機に、当時同じUTFFで活動していた電子情報工学科の小川耕平君に5人の仲間を加えてTECHの活動が始まった。

発足当時、全員が電気自動車に関する知識を持ち合わせていなかった。UTFFに所属していた恩田君と小川君以外に関して言えば、エンジンカー製作の経験すらない。恩田君はこう話す。

「今回の開発で必要だったのは、自動車製作の知識・経験よりも、電気・制御系の技術・知識です。その理由は、車体をUTFFが所有していたマシンのシャシーを使用できたため、バッテリー・モーター・インバータ周辺、およびその制御部分に注力できたからです。だから、メンバー選びに利用したのも、自分の専攻している電子工作の授業でした」

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工学部の授業などで使用する道具を借りて、シャシーの組み立てや設計などを行っている(写真は小川君)

電子工作を受講している生徒の中から恩田君が選んだメンバーは、「生粋のモノ作り好き」な5人だった。与えられた工作キットをマニュアル通りに作る人よりも、オリジナルの発想を取り入れて自分が面白いと思うものに仕上げていくのが好きな人を、メンバーに入れたかったのだそうだ。

恩田君が目をつけたのは、人の顔を感知して追尾する仕組みを自作してカメラに組み込ませたメンバーや、ペットボトルと羽根にセンサーを組み込み、LEDライトの光る方向へ飛んでいくペットボトルロケットを自作してしまうメンバーなど。みんな、授業でも自分の作りたいものにこだわってモノづくりをしていた。

こうして、個性的な発想力・創造力を持ったクルマ素人たちの電気自動車作りは始まった。

東大生なら、既製品のコピーを作っても驚かない

製作期間は約2週間。シャシーがすでにある状態とはいえ、電気自動車のノウハウを持たないことを考えると、驚くほど短期間だ。

「今あるモノを作っても、あんまり面白くないじゃないですか。僕たちを電気自動車製作に誘ってくれた草加教授も、『東大生なら、他の学校のコピーをして大会に優勝するのは当たり前だが、それは古いやりかた。これからの技術者は、新しい発想で独自のモノをつくっていかないと』なんておっしゃっていますしね(笑)。

だから僕たちが最終的に目指すのは、一般的にエコのイメージが強い電気自動車が、ガソリン車よりも速いということを証明できればと考えています」

これは、前述の学生フォーミュラ大会のEV部門出場に向けたレーシングカーの製作を予定している事を考えると、自然な流れだろう。

「低回転から最大トルクを出すことが可能であるモーターは、レーシングカーにとって大きなメリットです。他にも、変速機が不要なのでシフトチェンジをする必要がないこと。モーターに流す電流をインバータでコントロールすることでタイヤスリップ防止制御などの機能がエンジンに比べて容易かつ高精度で実現できることなど、レーシングカーとしても非常にアドバンテージがあるんです」

自分たちの持つ技術を活かして、異分野で活躍するということ

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現在就職活動中の恩田君(写真右)。やはり、自動車に関わる仕事がしたいのだとか

「僕たちの目標は、あくまで数年後に開催予定の学生フォーミュラ大会EV部門での優勝ですが、それとは別に短期的な目標も立てています。今考えているのは、4モーターの協調運転を実現させ、これから1年で公道でも走れるミニカーを作ること。

2モーターのミニカーは、トヨタが販売していた『コムス』がありますが(5/13に販売終了)4モーターのミニカーは市販化されたものを見たことがありません。

上述したような仕組みからすると、4モーターにすることで、より優れたタイヤスリップ防止制御が実現できるのではないかと考えられます。だからこそ、公道を走れる4モーターのミニカー(電気自動車)を作れたら面白いんじゃないかなと」

ほとんどのメンバーが、機械加工の経験ゼロから電気自動車を作り上げた彼ら。旋盤なら旋盤加工のパーツをずっと製作してもらうなど、自分の専門領域を活かせる作業を任せることで自動車製作に慣れていったそうだ。

新たなことに挑戦する際にも、自分のコアスキルを活かせるポイントを見つけ出し、そこから徐々に専門領域を広げていったのだろう。何事も、できることからはじめてみると、きっと今とは違った幅広いスキルを身に付けられるのかも知れない。

取材・文/小禄 卓也




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