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メーカー大リストラは他人事じゃない!竹内健氏、吉岡弘隆氏に聞く「生き残る技術者」とは【特集:職場がなくなる日】

タグ : SE, エルピーダ, エルピーダメモリ, エンジニア, ハッカー, プロジェクト, メーカー, モノづくり, 事業統廃合, 技術者, 統合, 解雇, 転職, 開発 公開

 

2012年2月、国内唯一のDRAM専業メーカであるエルピーダメモリが、東京地裁に会社更生法の適用を申請し破綻した。4480億円という巨額の負債もさることながら、かつて日本を支えたエレクトロニクス産業の弱体化を象徴するニュースとして大きな話題となったのは記憶に新しい。

かつて東芝でフラッシュメモリ開発に携わり、現在、中央大学理工学部の教授を務める竹内健氏は、エルピーダメモリの破綻劇を次のように見ている。

プロフィール

中央大学 理工学部 電気電子情報通信工学科 教授 工学博士

竹内 健氏

1967年東京都生まれ。東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻修士課程修了。1993年に東芝入社後、フラッシュメモリの開発に携わる。その後2003年に、スタンフォード大学ビジネススクール経営学修士課程修了し、MBAを取得。2007年には東芝を退社し、東京大学大学院工学系研究科准教授となり、2012年4月より現職

「エルピーダメモリが破綻したのは、一概にDRAMの『過剰品質』のせいと言い切ることはできません。微細化によるコスト削減が進まなかったこと、さらにPCからスマートフォン、また高速DRAMを必要としないモバイルゲームの人気拡大という市場の急激な変化によって、需要が一気に縮小し、価格の下落を招いたことが大きな要因です」(竹内氏)

もちろん、技術のコモディティ化が同社の経営に暗い影を落としていた面もある。

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竹内氏は、自身の著書「世界で勝負する仕事術」でも、「今の勝者が次世代で勝てる保証がまったくない」と語っている

「いまや韓国や台湾、中国の技術力は大きく向上しています。また生産には数千億円規模の設備投資が必要だし、技術のコモディティ化が進むほど利益率は低くなるという難しさもある。

そのため、どうしても日本より税率が低かったり、優遇施策が手厚い国のメーカーの方が優位に立つことができます」(竹内氏)

海外のDRAMメーカーのほとんどは、微細化によるコストダウンの余地が残され、かつ将来的にも需要拡大が見込まれるフラッシュメモリ開発に軸足を移すことで生き残りを図ったが、エルピーダメモリはDRAM専業を貫いた。そこに微細化の壁と市場環境の急速な悪化が追い打ちを掛け、破綻という事態を招いてしまったのだ。

つまり、エルピーダメモリ破産の要因をDRAM技術の敗北ではなく、エルピーダメモリ自身が置かれていた状況やマーケティング戦略のミスこそ企業破綻の元凶だと、竹内氏は見ている。

実は「時流に乗った仕事選び」は危険

エルピーダメモリのように、業界の大変革に適応できない企業の中で共倒れに遭ってしまうエンジニアもいれば、「業界トレンド」という大波に乗ったつもりでいたはずが、突然解雇に襲われるエンジニアもいる。

「日を追うごとにプロジェクトメンバーが減っていき、『いつか自分も…』という漠然とした不安感は常にありました」

「長期プロジェクト」だからといって、全員が自動的に長期間その案件に携われるとは限らない。A氏のケースも、そのワンオブゼムだ

「長期プロジェクト」だからといって、全員が自動的に長期間携われるとは限らない。A氏のケースも、その一例だ

2011年の1月より携帯キャリア大手の基地局開発プロジェクトに派遣技術者として参加していたA氏は、解雇までの様子を生々しく話す。

プロジェクトに参加した時は、「基地局開発は新規開拓を積極的に行うので、食いっぱぐれがない。基本的に最低6カ月、その後も依頼する予定だ」と担当者から勧められていた。「それならば」と安心していた矢先、同年3月の終わりに解雇通告を受けた。

「震災の影響もあって、3つに区分されていた作業地区でそれぞれプロジェクトに参加していた約50名のメンバーは徐々に減少。『◯◯さんも今日はお休みですか?』、『昨日でいなくなっちゃったみたいですよ』なんて、日々そんな会話をしていました。最初はすごくやりきれませんでしたが、今となっては(解雇)通告されて、かえってスッキリしましたよ」(A氏)

「大規模プロジェクトで、かつ今後もニーズが高まっていく」という言葉に魅力を感じてジョインしたA氏だが、実は以前検証エンジニアをやっていた時にも、同じような経験をしている。

大学を卒業後、検証エンジニアとしてキャリアをスタートさせたA氏。「開発の仕事に携わりたかった」という思いとは裏腹に、2000年ごろから新しいパッケージソフトの登場や携帯電話の普及に伴ってシステム検証のニーズが拡大。A氏もそのまま、検証エンジニアとしてのキャリアを進むこととなる。

「当時は、システム検証をメイン事業とした新企業が設立されたり、わたしたちの会社にもたくさんのプロジェクトが寄せられていました。アメリカでは検証エンジニアが職種として地位を確立していたし、それなら自分も検証のスペシャリストになろうと思ったんです。その時に、知り合いの紹介で検証依頼が来たので、思い切って個人事業主として独立しました」(A氏)

しかし、それから2年もすると、検証の案件は激減。案件はあるが、単価がどんどん安くなるという状況に陥り、結果的にA氏は個人事業主として生きていくことを断念した。

今回の解雇と当時の話を踏まえ、A氏は反省する。

From Roberto Bouza

From Roberto Bouza

「結局、自分のスキルを磨くことを怠っていたのかもしれない」とA氏は振り返る

「今回仕事を失った背景には、震災という予期しない事態があったとは言え、『これから伸びそう』、『需要はなくならない』といったことを鵜呑みにしてエンジニアとしてのキャリアを歩んできた自分にも責任はあると、今になって思います。

基地局開発プロジェクトでわたしがクビになったのも、もしかしたらそんな『甘え』があったからかもしれませんね」(A氏)

「現状維持」こそが、技術屋にとってリスクとなる

竹内氏が以前所属していた東芝がDRAM事業から撤退したのは2003年。その数年前からDRAM事業の凋落ぶりは、竹内氏に強烈な印象を残していた。

「かつては『DRAMにあらずは人にあらず』と言われたほど、わが世の春を謳歌していた時期もあったわけですから、あの時の衝撃は今でも忘れることができません。実際、会社はもちろん日本経済にも多大な貢献をした事業から撤退してしまうなんてことがあるのかと。明日はわが身という言葉が身に染みました」(竹内氏)

この出来事は、竹内氏の心の中に「フラッシュメモリだって安心できない」という危機意識を植え付けるとともに、技術者としての生き方にも大きな影響を与えることになった。

「会社の事業もそうですけれど、個人も同じだと。国内の大手エレクトロニクスメーカーが、お金と時間と人員を割いて半導体事業を手掛けていた時代もありましたが、いまやプロセス技術者や回路設計技術者の需要はきっと日本より海外の方が多いはずです。現状に安穏としたり、身に付けたスキルにこだわり続けることはリスクなんだと悟りました」(竹内氏)

かつて隆盛を誇った東芝のDRAM事業。ここに所属していた技術者は撤退決定後、配置転換か退職かの選択を余儀なくされた。そして、ほどなくして東芝からDRAM事業が消える。

「あんなに活躍していた人がしょんぼりしている姿を見るのは、とても忍びないものでした。皆さんがどこに行かれたか、ちゃんと把握しているわけではないですが、フラッシュメモリやシステムLSIに移った人もいれば、他社に引き抜かれたり、経営コンサルタントや投資ファンド会社などに転身した人もいたと聞いています」(竹内氏)

竹内氏自身も2007年、活況のさなかにあった東芝のフラッシュメモリ事業部を辞す。「留まることのリスク」を痛切に感じていたからだ。

>> 危機的状況下でも「生き残る技術屋」が持つ、「+αの力」とは?
>> 吉岡弘隆氏&竹内氏「サバイブの鍵は、セルフアップデートと脱・情報のタコ壷」




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