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「新規採用のエンジニア約100人中8割以上が外国籍」楽天のダイバーシティは日本のグローバル化に風穴を開けるか【特集:New Order】

タグ : ダイバーシティ, 吉岡弘隆, 安武弘晃, 楽天 公開

 
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(写真左から)アプリケーションエンジニアの及部敬雄氏、グローバル人事部のトゥルーダニエルズ チカさん、技術理事の吉岡弘隆氏、常務執行役員の安武弘晃氏

2015年1月、楽天が開発職の通年採用を開始――。

日本企業の伝統と言われる新卒一括採用を廃止し、国籍、年齢、職務経験を問わず通年でエンジニアを受け入れる取り組みは、楽天のダイバーシティ推進を象徴するメッセージとしてメディアを賑わせた。

楽天はこれまでにも大きな組織改革を行ってきた。2010年に発表された、社内での英語公用化がそれだ。

これによる変化の一つが、外国人のエンジニア採用だったという。2014年4月と9月入社の開発職は約100人中8割以上が外国籍である。もはや楽天のエンジニア採用では、日本人がマイノリティだと言っても過言ではない。

日本のeコマース領域でゲームチェンジを起こしてきた楽天が次に目指す、ダイバーシティ推進の裏側に迫る。

―― 開発職の通年採用開始は大きな反響を呼んだと思います。常務執行役員を務める安武弘晃さんの印象をお教えください。

安武 海外ではとても好評、日本でも否定的な意見が少なかったです。通年採用に切り替えたのは、エンジニア採用のみ。営業職などは日本のルールで採用を行っているため、日本の採用ルールから外れることに対し、それほど大きな問題にもならなかったのではと、感じています。

―― 現場の人事として採用を担っているトゥルーダニエルズ チカさんから見て、今回の開発者通年採用はいかがでしたか?

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楽天のグローバル採用の裏側に存在したギャップとは?

チカ グローバルでベストタレントを探すという意味で、メッセージ性の強い発表だったと思います。

人事としては、グローバルでの採用をとても進めやすくなりました。日本では当たり前とされている性別や証明写真、家族関係などを開示していただくことに対し、以前は多くの説明を行わなければいけませんでした。つまり、日本と海外で採用の前段階から文化的ギャップがあったということです。

通年採用を始めたことで、海外の基準に合わせて採用を行えるようになりましたね。

海外では新卒生を一括で大量採用するような習慣がありません。楽天は国境を越え、いろいろな国で価値を発揮できるエンジニアを採用したいと考えています。つまり、採用競合はGoogleやFacebook、Twitterなどです。

日本の採用基準に足並みをそろえたままでは、大きなハンデキャップを背負っている状態だったと言えます。

―― 全て海外で面接して、入社という流れなんですか?

安武 外国籍の方のうち、2~3割が日本に留学をしている方、残りの方は海外の大学を卒業し、現地での面接もしくはSkypeで面接をしています。シリアやウクライナの方は、社会情勢に不安があるため、楽天は知らないけど良い会社のようだから面接を希望したという声もあります。

他には、アニメが好きで日本に興味がある方や、アジアのカルチャーに興味があるという方も入社していますよ。

―― グローバルで見た時に日本で働くということは、メリットがあるということですか?

安武 日本の文化や治安を考えると、メリットはあると言えます。一方で、エンジニアが日本で働くということに関してはニッチマーケットでしょう。決して給料が良いわけではありませんし。

私たちがグローバル採用を通じて感じていることは、「日本人で腕の立つエンジニアを東京で探すよりも、世界中で日本が好きなニッチな人たちを探した方が楽」だったということです。世界でニッチなエンジニアの方が、東京にいるエンジニアよりも人数が大きいということです。

マネジメント層が変わらなければ、ダイバーシティは成功できない

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「英語の公用化だけでは、ここまで外国籍の人材を採用することはできない」と、安武氏は語る

―― グローバル採用を行う上で課題となった点について、お教えください。

安武 組織全体の考えを全て変えなければ、成立しないということです。

例えば、楽天の規模がまだ小さかったころは「同じ場所で寝食を共にできる仲間を探す」ということが採用の軸。日本という場所を前提に、一緒に働くことが当たり前という考え方でした。

それが英語公用化を行い、英語が海外の人の採用や、海外の人と一緒に働くバリアを消したツールとなりました。また、楽天のグローバル戦略により、離れたところで働くということが前提となりました。なので、面接を行う際にも、以前は当社に訪問していただいていましたが、今はSkypeでもいいと思うようになりました。

働き方の前提から面接のプロセスまで、全ての価値観が変わったと言えるでしょう。日本と海外のサラリー構造の違いに関しては、社会保障の考え方も異なりますし。

もちろん楽天にも、かつてはグローバル採用の仕組みがありませんでした。一つ一つ候補者の意見を聞きながら、変えていったというのが実情です。そうしたダイバーシティに関する会社の仕組みの面でのハードルはありましたし、今も取り組んでる最中ですね。

ただ結局のところ、大切なのは自分の仕事が評価される環境を作るということ。外国籍のエンジニアが日本語をしゃべれないことで、ディスアドバンテージが発生しては絶対にいけません。

英語でちゃんと意思疎通ができて仕事の評価ができるボスではなければ、エンジニアのマネジメントが務まらないということです。

―― マネジメント層こそが、十分なレベルの英語力を持たなければならない。

安武 心がつながっている関係性を築くためには、まずは言葉でのコミュニケーションを円滑に取る必要があります。

仮にあなたがアメリカに行って仕事をすると考えてください。日本語が通じる上司と日本語が全く通用しない上司、あなたは、どちらに心を開きますか? 愚痴を言えたり、本音を伝えられることで、心の距離は近付くものですよね。

楽天では、トップレベルの開発マネジャーは十分なレベルの英語力を持った人材、またはそもそも日本語をしゃべれない者が務めています。そういった部署構成にしているからこそ、安心して外国籍の社員が働けているのだと思いますね。

―― 一般論にはなりますが、ベテランほど考え方が凝り固まってしまい、変わることが難しいというイメージがあります。

安武 うちはトップ(代表取締役会長兼社長最高執行役員の三木谷浩史氏)がそういう考えをハンマーで叩いて壊す組織なので(笑)。

英語公用化や日本語をしゃべれない外国人を執行役員に任命したりなど、常に大きなインパクトがあるため、凝り固まっている暇がないというのが実態です。

お互いの文化をシェアする

―― アプリケーションエンジニアの及部敬雄さんにご質問です。現時点で、楽天に入社するエンジニアの約8割が外国人という状況に変化したとお聞きしました。現場目線で特に印象に残っていることはありますか?

及部 現場で外国人を受け入れる前は、英語を話せない人が大半でしたので、日本語が通じないという点に、戸惑いを感じたのは事実です。しかし、一緒に働いてみれば、思っていたほどのギャップはありませんでしたね。

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社内での英語公用化や外国籍社員の増加が現場に与えた印象に迫る

英語公用化に伴い、私たちが英語を話せるようにもなりましたし、外国人の仲間も徐々に日本語を覚えるようになりました。お互いの文化をシェアしていった印象です。

―― 及部さんはもともと英語を話せましたか?

及部 私は学生時代、英語から逃げてきたタイプです(笑)。僕が楽天に新卒で入社したのは2009年ですので、当時は英語の話も外国人がこんなに増えるなんて話もありませんでした。

実際に英語公用化や外国人と一緒に働くことを体験してみて、もっと早く英語に取り組んでいればと思うことすらあります。

外から見ていると大変そうな印象を受けるかもしれませんが、組織も仕事も目まぐるしく状況が変わることで、楽天という会社で働いていて飽きないということにもつながっていますね。

―― 現場でスムーズな受け入れができるよう取り組んだ点についてお教えください。

安武 結局人は人なので、実際にコミュニケーションを取ってみれば、大した問題ではありません。でも、日本の文化では想像もつかないこともありました。

2つほど事例をご紹介すると、1つはイスラムの方の礼拝、次にベジタリアンの方の食事です。

礼拝に関しては、時間と場所の確保をまず考えました。社内の会議室を一室、礼拝の部屋にすることで、対応しました。また、「礼拝の時間と重要な会議の時間が重なってしまった、どうすればいい?」という質問もありました。

ベジタリアンの食事に関しては、カフェテリアでは対応するのが難しいという課題もありました。そのため、委託先と打ち合わせを何度も行いました。

その他、家探しは会社がスポンサーに付く必要もありますし、病気になった際のサポートもあります。物理的な距離が遠いところから来日し、日本で働いている方は、帰省の際、1日、2日では着かないので、休暇を増やすという点も議題に上がりましたね。

チカ 日本語がしゃべれない方に関しては、社内で日本語の教育も行っています。社内は全て英語ですので、仕事上では問題ないのですが、一歩外に出れば日本語でのコミュニケーションが必要になるためです。日常の生活でも問題なく過ごすことができるよう、会社全体で取り組んでいます。

楽天流の朝会は国境を越えた

―― 技術理事を務める吉岡弘隆さんから見て、楽天が世界に通用するための準備は順調に進んでいますか?

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今の楽天の姿は、吉岡氏の瞳にどう映っているのだろうか

吉岡 私のキャリアは外資系企業のDECからスタートしました。ですので、その経験からという意見にはなりますが、銀行口座を作ったり、アパート探しなどについては、私が25年前くらいにUSに赴任した際、実際に困ったことだったんですね。

楽天が世界からエンジニアを集めるということで、異なる文化を許容し、生活もバックアップする。グローバルで通用する企業への準備は着実に進んでいると言えるでしょう。

ローカルな会社からグローバル企業へ変貌する楽天、つまり「楽天の脱皮」を社内で見ていると、とてもワクワクします。

―― 日本伝統の文化では、世界に通用するWebサービスが生まれにくいという声があります。その中でも楽天は朝礼、朝会という儀礼を残しました。海外では朝会という文化はないイメージですが、その点はどう受け入れられましたか?

チカ 朝会というコンセプトが海外には存在しませんが、透明性を増やす行動という意味でとてもワークしていると思います。これは楽天バージョンの朝会だから受け入れられていると思います。

朝決まった時間に出勤して今日の行動を発表するなどの儀礼は、海外では不必要だと考えられているためです。楽天の朝会は経営の透明性を増やし、理念を共有するための時間ですので、共感を得ることができていると思います。

―― 安武さんはどう思われますか。

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楽天オリジナルの文化で「世界一のインターネット・サービス企業」を目指すと安武氏は語る

安武 これは会社を代表した意見ではなく、私一個人の意見として聞いてください。日本か日本じゃないか? という考え方はもう意味をなさないと感じています。

そう感じたのは、楽天が国内信販を買収した時が最初です。当時の楽天は社員数1000人、平均年齢約30歳の組織でした。国内信販は2000人、平均年齢40歳より上の組織。そもそもコーポレートカルチャーが全く異なります。

世代間のギャップがある時点で、文化のボーダーは必ず存在します。それでも、国や言葉といったボーダーは唯一無二の超えられないものだとは、私は思いません。

楽天はM&Aを繰り返しながら、多様性のある文化を形成してきたためです。

日本文化の良いところを残しながら、海外の文化も取り入れる。ダイバーシティを推進することで、楽天の新しい文化は生まれ続けているのだと感じています。

―― 貴重なお話をありがとうございました。

>> 特集「New Order~現代のゲームチェンジャーたち」記事一覧

取材・文/川野優希(編集部)  撮影/竹井俊晴




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