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ソニー、グリー出身者が手掛けるクラウド型ホームセキュリティー『Safie』の水平分業型IoT開発とは【連載:NEOジェネ!】

タグ : IoT, グリー, セキュリティー, ソニー, ハードウエア, 暗号化, 画像処理, 顔認証 公開

 
世間をアッと言わせるユニークなアイデアと技術力で勝負しているニュージェネレーションを応援するこの連載。今回紹介するのは、クラウド接続のカメラとスマホで実現する低価格のホームセキュリティーサービス『Safie』だ。チーム結成から8カ月で「プロ仕様」のプロダクト完成までこぎ着けた、水平分業型のIoT開発とは?
(左から)共同創業者 取締役 下崎守朗氏
代表取締役社長 佐渡島隆平氏
共同創業者 取締役 森本数馬氏
エンジニア 近藤英憲氏

『Safie』とは

Safie』は、スマートフォンとネットワークカメラを活用することで、誰もが気軽に利用できることを目指したクラウド型のホームセキュリティーサービス。サービス料は基本無料で、月額980円を払えば、Live視聴に加えて7日間の高画質録画機能を利用することもできる。

名古屋市の老舗カメラメーカー・エルモ社から発売される『Safie』対応クラウドカメラ1号機『Qbic CC-1』は、400万画素、視野角170度の「プロ仕様」でありながら、価格は1万9800円と手ごろ。

従来のサービスと比べて高性能のサービス・プロダクトを、圧倒的な低価格で提供できるのが『Safie』の売りだ。

運営するSafieの代表取締役社長、佐渡島隆平氏によれば、国内に約350万台以上ある防犯・監視カメラの99%は、撮影データをローカル保存しており、データの活用法が非常に限定的だったという。その点、データをクラウド側に保存する『Safie』ならば、例えば外出先からスマホでLiveも録画もシームレスに視聴することが可能になる。

ソニーグループ出身の3人によって昨年4月に結成されたSafieは、8カ月で製品完成にまでこぎ着けた。ハードウエアスタートアップの多くが、展示会で発表する試作品までは作れても、なかなか製品化・量産化まで辿り着けない中で、Safieにはどうしてスピード感のある開発ができたのか。

そのカギは、カメラ本体の開発は既存のハードウエアベンダーに委ねることで、自身はソフトウエア開発とプラットフォーム運営に専念する「水平分業型」の開発スタイルにあった。

アイデアの出発点:「画像処理+クラウド」で業界に革新を

ユーザーとしてホームセキュリティー導入を検討していた佐渡島氏が、既存の業界に対して抱いた物足りなさが、『Safie』誕生のきっかけとなった

ユーザーとしてホームセキュリティー導入を検討していた佐渡島氏が、既存の業界に対して抱いた物足りなさが、『Safie』誕生のきっかけとなった

『Safie』誕生のきっかけは、代表である佐渡島氏の個人的なニーズにあった。

昨年2月に新たに家を購入し、ユーザーとしてホームセキュリティー導入を検討したところ、既存のサービスはコスト、カメラ性能、利便性などあらゆる面で佐渡島氏の満足できるものではなかった。

「初期費用に数十万円、ランニングコストが月々数千円、さらにカメラ自体も数十万円と、既存のサービスは非常に高価で、私のような庶民にとっては敷居の高いものと感じました。それでいて、カメラの性能は30万画素、視野角90度と初期のガラケー並みと言っていい。動画は撮影できず、秒間1フレームの静止画しか撮れません」

さらに調べていくと、国内の多くの防犯・監視カメラがデータをローカル保存していて外出先から録画データを視聴できないこと、カメラ自体のセキュリティー性能もそれほど高くない現状なども分かってきた。

創業メンバー3人はもともと、ソニーの関連会社で顔写真を3Dアニメ化する技術を開発していたモーションポートレート社時代の同僚。そこで佐渡島氏は事業企画や技術セールス、森本数馬氏はOpenGLを使ったライブラリ開発、下崎守朗氏は画像処理・配信システムの開発などに携わってきていた。いわば、画像処理、顔認識技術の専門家集団だ。

「前職で取り扱ってきた画像処理の技術にクラウド活用を掛け合わせれば、既存のホームセキュリティー業界に、大きな革新を起こせるのではないかと考えたのです」(佐渡島氏)

開発のポイント:独自開発の制御プロトコルで高い安全性を実現

森本氏(右)が中心となってカメラ制御のプロトコルを独自開発し、高いセキュリティーを施したことが、クラウド活用を後押ししている

森本氏(右)が中心となってカメラ制御のプロトコルを独自開発し、高いセキュリティーを施したことが、クラウド活用を後押ししている

しかし、防犯・監視カメラの撮影データはどこからでも見られた方が便利なのに、ここまでなかなかクラウド活用が進んでいなかったのは、なぜだろうか。

その理由の一つは、やはりセキュリティー面。ユーザーが最も懸念するのは、自分のデータが他の人に見られる危険性はないのか、ということだ。

『Safie』はサーバ側でカメラを制御できる仕組みになっているのだが、この制御プロトコルを森本氏が中心となって独自開発した。

「ソニー在籍時代に『Google TV』のセキュリティー開発を担当するなどして得た知見が活きている」と話す森本氏。データ転送にはTLS1.1以上、AES128bit以上の暗号化技術を採用、さらには暗号化の鍵を定期的に交換するPerfect Forward Secrecyと呼ばれる技術を活用することで、最高水準のセキュリティーを確保した。

『Safie』対応1号機の開発にあたったエルモ社代表取締役社長の林数馬氏も、「クラウドカメラ製作で国内外のパートナーを探す中で、Safieのセキュリティー技術の高さは決め手になった」と話し、全幅の信頼を置いている。

そしてもう一つ、大量の映像データをどうさばくかというのも、クラウド活用をする上での大きな技術的な障壁だが、こちらもほぼクリアしているとのこと。

さらに効率よくデータを振り分けるための模索は今も続けており、1月に入ってサーバサイドを専門とする元グリーのエンジニア近藤英憲氏を新たに採用するなど、体制強化を図ってもいるようだ。

オープンなプラットフォーム化がもたらす数々のメリット

「オープンなプラットフォームとして開発することで、技術的にもビジネス的にも可能性は広がる」と下崎氏

「オープンなプラットフォームとして開発することで、技術的にもビジネス的にも可能性は広がる」と下崎氏

Safieは、こうして開発したソフトウエアのモジュールを、エルモ社を含む複数のハードウエアメーカーに無償提供している。

その結果、Safie側は既存のハードウエアメーカーの持つ優れたプロダクトを、メーカー側も現代のニーズに合った最新のソフトウエアを、短期間のうちに手にすることができた。

この「水平分業型」の開発スタイルは、Google傘下Nest社の類似サービス『Dropcam』が自社でカメラ製造まで行っているのとは、対照的な戦略だ。

「日本のメーカーが製造するカメラは非常に高性能ですから、これを活用しない手はありません。スタートアップの時点で競争力のあるプロダクトを手にしたことは、我々にとって大きなアドバンテージだと考えています。さらに、すでに海外に販社を持つメーカーの力を借りることで、自然な形でワールドワイドにサービスを展開できるメリットにもなります」(佐渡島氏)

オープンなプラットフォームとして開発していくことのメリットは他にもある、とアプリ開発担当の下崎氏は続ける。

「一つは、ハードウエアの進化や世の中のトレンドに合わせて、容易に更新できることです。思えば一眼レフカメラも昔は高価でしたが、今ではより良い画質のものが低価格で手に入ります。今はこの形(1号機の『Qbic CC-1』)がベストだと考えていますが、3年後もそうとは限らない。オープンな形で開発することで、製品ごとにソフトを開発する必要はなくなるわけですから、移り変わりにも柔軟かつ素早く対応することができます」

視野に入れているのは、実はカメラだけではない。『Safie』は、例えばドアフォンや乗用車のドライブレコーダーなど、広くIoT全般に活用することができる。

『Qbic CC-1』はBluetooth Low Energy(BLE)を搭載しており、BLE対応子機との連係も可能。子供にキーホルダー型のチップを渡して、センサーと映像を組み合わせて親に通知をするシステムや、『Qrio Smart Lock』のようなスマートロック製品と組み合わせることで、スマートホーム分野への発展も考えられる。

「その際に強みになるのは、すでに映像という巨大なデータを扱うインフラを実現できているということです。スマートホームには温度センサーやカギを開けるなどさまざまな分野がありますが、それらはすべて映像と比べれば小さなデータですから」(下崎氏)

広くさまざまな人を巻き込んでやることに意味がある

カメラベンダーや資本業務提携を交わすSo-netなど、多くの人を巻き込んでスタートしようとしている『Safie』

カメラベンダーや資本業務提携を交わすSo-netなど、多くの人を巻き込んでスタートしようとしている『Safie』

Safieは、サービス発表会を開いた1月19日からクラウドファンディング『Makuake』内で先行予約を開始。3月末に予約分を発売し、4月からAmazonや量販店などでの販売を開始したいとしており、年内に1万台の出荷を見込んでいる。

さらに、通信会社So-netからの出資を受けており、同社の240万人の会員網も販路として期待される。

当面は「誰もが利用できるホームセキュリティー」というC向けの新たな市場をターゲットとしているが、同時に、toB領域への展開もすでに始まっている。エルモ社が開発に着手しているクラウドカメラの2号機は、もともと海外で鉄道につけて利用されていたようなカメラがベースになっており、耐熱、耐久性といった環境性能を追求した製品だ。

ソフトウエアの面でも、業務用の利用となれば、現状7日間分の録画機能では足りないケースも出てくる。実際にヒアリングする中では60日に延ばしてほしいという声もあるという。

ただ、現在のままの画質で録画期間を延ばせば、費用は大きく膨れ上がってしまう。『Safie』はそうした要望にも柔軟に応えるべく、フレームレート等を調整して費用を抑えるといったこともできる仕様としてすでに開発されている。

「広くさまざまな人を巻き込んでやることに意味を見いだしています。いろいろな人に、このプラットフォームに参画することでコストを抑え、ユーザーの利便性を高めて世の中をより良くすることに力を貸してもらいたい」と佐渡島氏。『Safie』のオープンな思想は、パートナーシップから利用法まで、隅々に行き届いている。

取材・文/鈴木陸夫(編集部) 撮影/竹井俊晴

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