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BtoBとBtoCの垣根がなくなる時代の開発論~『Sansan』『Eight』の責任者に聞く【特集:2B Hack】

タグ : 2B Hack, BtoB, BtoC, Eight, Sansan, 宍倉功一, 藤倉成太 公開

 
(写真左から)Sansan株式会社『Eight』事業部開発統括責任者の宍倉功一氏、『Sansan』事業部開発部部長の藤倉成太氏

(写真左から)Sansan株式会社『Eight』事業部開発統括責任者の宍倉功一氏、『Sansan』事業部開発部部長の藤倉成太氏

昨今、クラウドストレージサービスEvernoteのビジネス版『Evernote Business』のNTTドコモとの販売代理提携や、業務管理システム『Salesforce』のアプリ開発・実行基盤のスマホ版リリースなどで、法人向け業務支援サービスの「個人デバイス最適化」の動きが顕著になってきている。

同社の提供する『Sansan』(上)と『Eight』(下)

同社の提供する『Sansan』(上)と『Eight』(下)

では、これからの法人向けサービスを作る上で、モバイル対応やBYOD(私用デバイスの業務利用)について意識すべきところはどこなのか。

その答えを探るべく、Sansan株式会社に取材してきた。

同社は、2014年5月19日、シリコンバレーのベンチャーキャピタルであるDCMなどから、法人向け名刺管理サービス『Sansan』の北米展開を前提とし、総額14億6000万円の大規模増資を受けている。その一方で、昨年末に個人向け名刺管理アプリ『Eight』が50万ユーザーを突破しており、法人向けと個人向けの両面から注目を浴びている稀有な会社だ。

『Sansan』と『Eight』のように、同じ切り口ながらBtoB、BtoCの双方で成長していくためには、何が違い、どこが共通しているのか。

その疑問を同社の、法人向けサービス『Sansan』事業部開発部部長の藤倉成太氏と、個人向けサービス『Eight』事業部開発統括責任者の宍倉功一氏にぶつけてみた。

BtoBでは精度、BtoCではスピードを優先

有償のBtoBサービス『Sansan』も、無償のBtoCサービス『Eight』も、名刺管理を通じてビジネスコミュニケーションを効率化し、働き方を変えることが目的。データ入力には人の手を介するなど、基本的には同じ構造のサービスだ。

同社には、マネタイズしやすいBtoBからサービスの提供を開始し、基盤が整った後、BtoCの立ち上げを行ったという経緯がある。

生い立ちは同じサービスだが、異なるところもある。それを「優先順位」だと指摘するのは藤倉氏だ。

「というのも、一番に求められるものが、法人向けと個人向けでは違うからです。ユーザー数、つまり1日に名刺が流入する枚数の変動の仕方が大きく違う。BtoBサービスの場合は流入数の増加はある程度予測できます。しかしBtoCサービスは、外的要因や何かのきっかけで急増することがある。極端な話、明日ユーザーが倍増する可能性だってあります」(藤倉氏)

だからBtoCのシステムでは、スピードやスケーラビリティの柔軟性の優先度が高くなる。

BtoBサービスでは、ユーザーが離れないようにすることが大事、と話す宍倉氏

BtoCサービスでは、ユーザーが離れないようにすることが大事、と話す宍倉氏

「自分がユーザーでもそうすると思いますが、個人向けのサービスは、待たされたら使わなくなりますよね。だから、BtoCでは、スピードを優先させています」(宍倉氏)

『Eight』の場合は、その変化に対応できるシステム設計が肝になる。『Eight』を使い始める時、最初にユーザー本人の名刺をプロフィールとして登録させ、それを優先してデータ化する。まずは使い始めることを最優先する戦略を採っているのだ。

「一方、法人向けのサービスは組織で名刺情報を共有し、営業に活用することがコンセプトなので、データ化にはより高い精度が求められます。ですから、完成度を優先させるため、システム上時間が多少かかることをご理解いただく必要があります」(藤倉氏)

名刺の流入枚数の予測に基づき、BtoBでは、営業担当がユーザー企業の担当者に説明して調整を図ることもできる。ところが、個人ユーザー向けとなると、インタフェースはPCやスマートフォンの画面といったユーザー体験に集約されるため、事情を“ご理解”いただくのは難しい。

サービスの提供方法や顧客接点の違いによるところも大きいのだ。

Sansan入社以前にBtoCとBtoB両方のサービスに携わった経験から、開発体制についても違いがあると宍倉氏は言う。

「BtoBの場合は例えば業務フローを分析するというプロセスが入ったり、携わる人も多く開発期間も長いです。しっかり作って納品、改善提案もまとめてきっちり行う。しかし、BtoCの場合はまずはプロトタイプを作って、ユーザーと一緒にそれを改善していくといった具合で、スピード感が違います」(宍倉氏)

BtoBのUIはシンプルイズベスト、ではない

藤倉氏は、ユーザビリティにも言及する。

「BtoBのインタフェースは、放っておくと複雑になりがちです。ただ、BtoCサービスのようにシンプルになり過ぎていいかというと、そうではないと思います。実際、企業の中で『いいね!』をクリックし続けるような仕事はほとんどないでしょう。業務レポートが140字で済むこともないはずです」(藤倉氏)

そのため、BtoCで好評なユーザビリティだとしても、安易にBtoBに持ち込むだけではうまくいかないと藤倉氏は考える。

BtoBとBtoCの操作性では求められているものが異なる、と藤倉氏は語る

BtoBとBtoCの操作性では求められているものが異なる、と藤倉氏は語る

「入力効率などについても、将来はともかく、今はまだフリック入力よりキーボード入力の方が効率がいいでしょう。BtoBのシステムは放っておくと複雑になることを知った上で、ほどよくシンプルにするべきだと考えています」(藤倉氏)

Sansanは今後、別々に開発してきた『Sansan』と『Eight』の名刺情報のデータ化ノウハウを統合し、世界最強のデータ化システムの開発を目指す。BtoBはデータの完成度を、BtoCはスピードというのは、あくまで優先順位の話だ。

どちらにとっても一番良いのは、素早く完成度の高いデータを提供することだ。

藤倉氏は「例えば、『Sansan』で行っている、データのクオリティを担保しながらスピードを上げるノウハウは、『Eight』にもフィードバックできると思っています」と話す。

どちらも求められるのは成長の意識を持っている人

異なる点も多い『Sansan』と『Eight』だが、共通点ももちろんある。それは、名刺の管理を通してユーザーに新しい価値を届けることだ。BtoBであろうが、BtoCであろうが、そこは変わらない。

では、それぞれのサービス開発に関わるエンジニアに求められる資質に違いはあるのだろうか。藤倉氏は「どちらにしても、技術の潮流を見極めることが必要」という。それは、残らなさそうな技術には手を出さず、残っていきそうな技術を見抜き、効率良くキャッチアップするという意味ではない。

「例えばRubyのバージョンが1.Xから2.Xになった、C#が4から5になった時に、どの文法がどういう意図で変わったか、その意味を自分の頭で考えて理解することです」(藤倉氏)

バージョンアップには必ず意味や理由があり、それは自動化の方向へ進んでいる。

「それを捉えて、プログラムを書くに当たって2つ、3つの選択肢がある時に、自分なりに合理性のある判断を繰り返すと、センスが磨かれると思います」(藤倉氏)

宍倉氏は「特にBtoCでは少人数で開発をスタートするケースも多いので、1人で素早くサービスを作れる、フルスタックエンジニア的な人が求められると思います。つまり、分かる範囲が広い人ということです。ただ、これはBtoBでも同じように求められることだと思います」と話す。

勉強会『目指せ!フルスタックエンジニア』では同社のエンジニアが登壇し、キャリアアップのための秘訣を紹介した

勉強会『目指せ!フルスタックエンジニア』では同社のエンジニアが登壇し、キャリアアップのための秘訣を紹介した

その理由はこうだ。新しい技術に触れ、広範な視野を持つエンジニアは、同じ要求に対しても、より安価でスマートな解決法を提示できる。

事実、2014年5月に同社と『type IT Academy』が共催したエンジニア向けの勉強会でも、藤倉氏はフルスタックエンジニアの重要性を説いていた。

「今は自動化が進んでいるので、プログラムを書けるエンジニアが関与できる領域は広がっています。その可能性をさらに広げることを自分から求めて行けばいいと思います。

SI の場合、原理的に同じことを求められることも多々ある。違う機能を作るにしても、技術は一緒だったり。それに飽き足らなくなることもあると思いますが、その都度、前回とは違う、より良いやり方にトライしてみればいい。

すると、何を学ばないといけないかが分かり、マインドも変化します。自分が成長できる環境を自ら創ろうという意識を持っていさえすれば、普段の仕事を通じても変わっていけると思います」(宍倉氏)

藤倉氏は「情報収集は、SNSで有名人をフォローしたり、書店で技術書の棚を1時間くらい見たりAmazonで売れ筋をチェックしたりすることでもできます」という。

ドメインやユーザーが違っても、常に新しい価値を提案できるサービスが求められるのと同様に、BroBとBtoCどちらでも新しい価値を提供し続けられるエンジニアが求められるのだ。

取材・文/片瀬京子 撮影/赤松洋太

>> 【SE歓迎】新しいBtoBサービスを創るハッカソン『2B Hack』6/14-15に開催!


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