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開発チームの半数以上がインターン。新世代グルメアプリ『SARAH』に見る、若者の力をサービスに還元する方法【連載:NEOジェネ!】

タグ : gram30, SARAH, グルメアプリ, スタートアップ, 採用, 育成 公開

 
世間をアッと言わせるユニークなアイデアと技術力で勝負しているニュージェネレーションを応援するこの連載。今回紹介するのは、「みんなの好きより、わたしの好き」をコンセプトにした新世代のグルメスナップアプリを開発するSARAHだ。半数以上が学生インターンという特徴的な開発体制や独自の育成プログラムなど、若者のニーズを知り、自由な発想力を活かすための同社の取り組みに迫った
(前列左から)CEO 高橋洋太氏
Engineer 市川直弥氏
CTO 林健一氏

ポール・グレアムは「HOW TO GET STARTUP IDEAS」と題したエッセイの中で、「最も価値のある新しいアイデアは、10代や20代の若者から生まれる」と言っている。

若者のニーズを知る、あるいは若者の自由な発想力を活かすというのは、イノベーションを生むための有力な方法の一つであると言えるだろう。

こうした考えをかなり明確な意思を込めて実践しようとしているのが、今回紹介する創業半年あまりのスタートアップ、SARAHだ。

彼らが開発・運営する『SARAH』は、「みんなの好きより、わたしの大好き」をコンセプトにした新世代のグルメスナップアプリ。既存のグルメサービスが店舗単位の情報をデータ化しているのに対し、メニュー単位の情報を扱うことで差別化を図っている。

当初想定していたターゲットユーザーは、経済的にも余裕のある28~39歳あたりの女性だった。だが、ふたを開けてみると、実際には10代~20代前半のより若い層からの反応が良かったという。しかも、こうしたユーザーは単に情報を閲覧するだけでなく、想定を超えてアクティブに投稿してくれるそう。

『SARAH』が若者のハートをガッチリとつかむことができたのはなぜか。その答えは、どうやら彼らのチームの成り立ちにあるようだ。

アイデアの出発点:「自分が」食べたいものに出会えない既存の検索

『SARAH』のアイデアは高橋氏の個人的な体験に端を発していた

『SARAH』のアイデアは高橋氏の個人的な体験に端を発していた

CEOの高橋洋太氏は、法政大学在学中に学生起業家選手権で優勝し、19歳の若さで起業を経験した。その後『BUYMA』を運営するエニグモでマザーズ上場を果たし、2013年に元エニグモのメンバーとともにgram30を立ち上げた。

さまざまな新規事業創出を行うgram30のビジネスモデルについては、以前この連載で飲み会マッチングサービス『JOIN US』を取り上げた際に紹介した。『SARAH』はもともとgram30内の一プロジェクトとして立ち上げられ、昨年12月に独立して会社化した。

>> 話題の飲み会マッチング『JOIN US』は、作り手たちもつなげる「Startup Studio」から生まれていた

『SARAH』が既存のグルメサービスと比べて特徴的なのは、メニュー単位で検索できること、そして、その人に合ったメニューをレコメンドしてくれることだ。

「前職時代、海外で食べたスペアリブの味が忘れられなくて帰国後に検索してみたものの、『場所×メニュー』の従来の検索では店舗のランキングばかりが表示されて、結局見つけられなかった。本当に食べたいものにたどり着くためには、別の方法が考えられるのではないかと思ったことが、『SARAH』のアイデアにつながっています」

『SARAH』では、メニューの情報は基本的にユーザーがInstagramのように写真とテキストで投稿する。一方で、投稿やいいね!、検索といったユーザーの行動データはその人の味覚傾向を示す情報として蓄積され、検索結果はその人個人の味覚に合うようにカスタマイズして表示される。

これまでのグルメサービスが、レビューの内容や星の数で表現していた「みんな」の好みではなく、「その人」が本当に食べたいものにたどり着けるサービスを『SARAH』は目指している。

「自分の味覚に合ったメニューのレコメンド機能があれば、お店選びだけでなく実際にどこかの店に入ってからも、店員さんが示す『オススメメニュー』以上に自分がおいしいと思えるメニューを選んで注文することができるようになります」

開発のポイント:味覚傾向のクラスタリングでレコメンド精度を向上

レコメンドの精度向上にはデータの蓄積が不可欠。「ユーザーが投稿したくなるよう、UIにはこだわった」と林氏

レコメンドの精度向上にはデータの蓄積が不可欠。「ユーザーが投稿したくなるよう、UIにはこだわった」と林氏

「レコメンドの精度を上げていくためには、ユーザーの行動データをどんどん蓄積していく必要があります。つまり、まずは活発に投稿してもらわなければ始まらないということです」(CTOの林健一氏)

そのため、開発にあたってはユーザーの投稿を促すさまざまな工夫が施されている。

例えば、アプリを最初に立ち上げた時に行う、ユーザーの好みを知るために行う19個の質問。テスト段階では、質問への回答を選択式にするなどのいくつかのアイデアがあったが、最終的には『Tinder』のように次々現れる料理の写真を好き嫌いで左右にフリックするUIを採用した。

「質問に回答するのはユーザーにとって面倒な作業であるため、より直感的に楽しみながらできることを重視しました。その結果、19問というけっこうなボリュームでありながら、この段階での離脱率は0%となっています」(林氏)

また、ユーザー全体に占める自ら投稿する人の割合が15%を超えているというのも、開発陣の狙いがうまくいっていることを示す数値と言うことができるだろう。有名グルメサイトでも1%に満たないというこの数値、『SARAH』では当初の目標を4%に置いていた。

「おしゃれなデザインや投稿の簡易さ、レスポンスの向上など工夫した点はいろいろありますが、最も意識したのは、いいね!ボタンやクリップ、コメントの機能など、投稿した後に反応を得られる仕掛けをさまざま用意したことです。人がまた投稿したいと思うためには、何より即座に反応や手応えが得られることが一番だと考えたからです」(林氏)

サービス開始からコンスタントに月1万件の投稿があり、すでに投稿数は10万件を超えているという。こうして蓄積したデータを基に、機械学習によりレコメンドの精度向上に日々取り組んでいる。

レコメンドに関しては、当初は検索しているユーザーの好みとメニューが持つ情報とを単純にマッチングさせ、表示順を変える仕組みだった。

だが、それだけではどうしても本当においしいと思うメニューにたどり着けない停滞期に突き当たったのだという。

ブレークスルーをもたらしたのは、ユーザーのクラスタリングというアイデア。味覚が近いユーザー同士をあらかじめ分類しておき、検索しているユーザーと味覚が近い人の情報も参照するようにしたことで、精度は格段に向上したという。

インターン生を“重用”する3つのメリット

社会人1年目でありながら創業メンバーであり、主力エンジニアの市川氏

社会人1年目でありながら創業メンバーであり、主力エンジニアの市川氏

SARAHの開発チームは6人のエンジニアと4人のデザイナーで構成されているが、その大半を学生インターンが占めている。

創業メンバーで主力エンジニアの市川直弥氏も、インターン出身の新卒1年目社員。社員の平均年齢は25歳で、高橋氏、林氏ら4人の30代を除けば、残りは全員21~22歳という若さだ。

「SARAHが意識的に若い人の力を活用しているのには、大きく3つの理由がある」と高橋氏は言う。

1つ目は、若者は無条件にどん欲であるということ。

「時代の流れは速いため、学ぶ意欲のない人間は何もなし得ることができない。逆に高い意欲さえあれば、その時点での知識量やスキルの高さは問わないというのがSARAHの考え方です」(高橋氏)

2つ目は、スマホネイティブであり、30代には分からない感覚を持っていること。

象徴的な例として挙げられるのがグルメ検索の方法で、「30代がWebを中心に検索エンジンを使って『場所×料理』で検索するのに対して、学生はInstagramを活用し、ハッシュタグを辿ることで人気の店を見つけるのが主流になってきている」のだという。

この「SEO的というより直感的」なグルメ検索の仕方は、学生インターン生との会話の中で判明したことだった。

「グルメサービスとして後発である限り、既存サービスと同じ方法でやっていても勝ち目はありません。時代にマッチした機能を開発するため、検索やUIは学生デザイナーに全面的に任せています」(高橋氏)

先述したユーザーのクラスタリングというアイデアも22歳の市川氏の発案だった。若いアイデアは、フロントにもバックエンドにも活かされている。

そして3つ目の理由は、コスト面にある。

「30代のベテランエンジニアを1人雇うコストで、学生であれば2、3人を雇うことができる。1つ目、2つ目のメリットを考えれば、学生のコストパフォーマンスは非常に高い」というわけだ。

「自由な発想を活かすためにも、管理するようなマネジメントは一切行っていない」と高橋氏。

「アイデアをユーザーの課題を解決するレベルまで昇華するのはむしろ僕らの役割と考えています。方向性だけは誤らないよう、KPIについては毎週、厳しく共有することを意識しています」(高橋氏)

未経験者を1週間で戦力化するカリキュラム

インターン生のほとんどは、実は入社するまでプログラミング経験のない初心者だ。だがSARAHには、そうした初心者を7日間で戦力化するカリキュラムが存在するのだという。

カリキュラムを作成、指導しているのは自身も新社会人ではあるものの、10歳からプログラミングに親しんできたという市川氏。紹介してくれたカリキュラムは、以下のようなものだ。

■ 研修

1.プログラミング言語(2日間)
 プログラミングとは
  - ソフトウエアの動作イメージ
  - プログラミング的思考法(問題分割/組み立て戦略)
 Ruby
  Ruby基礎
  - オブジェクト志向
  - プログラミングコンテスト

2.Webプログラミング(2日間)
 Ruby on Rails(MVC)
  - MVC役割分担
  - Rails基礎
  - Rails上でのMVCの実際の定義内容の理解
  - GET/POST処理フロー

3.データベース(1日間)
 DB
  - DB基礎
  - DBの役割・責任
  - 設計基礎
 SQL
  - ネイティブSQL基礎
  - ActiveRecordとの連携

4.課題(2日間)
 エンジニアによって課題内容を変更
 Webフロント/バックエンドエンジニアの場合
  - SARAH(prototype)の作成
  - SARAHの根本的要素について、productionに準ずる機能をひと通り備えたRailsアプリケーションを作成

■ OJT移行後

・SARAHの表示・ロジックのバグ修正/リファクタリング
  対応範囲:html/css/JavaScript/Ruby/SQL
・SARAH機能追加(設計/実装)

市川氏は上達のポイントを、「問題を解決できるレベルまで噛み砕けるか、それをプログラムにまで落とし込めるか。また、教える側はいかに『教えない』で自ら気付くようにうながせるか」と話している。

社員は大学で講師を経験。採用、マーケティング面でも貴重な場に

SARAHは法政大学で「アントレプレナーシップ論」の講義枠を受け持っており、市川氏も講師としてCTO編を担当する

SARAHは法政大学で「アントレプレナーシップ論」の講義枠を受け持っており、市川氏も講師としてCTO編を担当する

もちろん市川氏も、最初から人に教えることが得意だったわけではない。実は、SARAHは法政大学キャリアデザイン学部で「アントレプレナーシップ論」の講義枠を受け持っている。

市川氏はそこで「CTO編」の講師として教壇に立つことを通じて、次第に「教える」ことに開眼していった。

当初は、同学部の卒業生である高橋氏が知り合いの起業家らの力を借りながら行っていた講義だったが、3年目を迎えた今年からは会社として引き受け、CEO編、CTO編、COO編……と、業務に応じて社員が交代で講師を務めるようにした。

「教えることにより自分の頭の中が整理されるというのももちろんありますが、自分よりさらに若い人が初めてプログラミングに触れると、こちらが想像しなかったような独特の考え方を示してくれる。その発見自体が大きな喜びになるということを体感できたのが大きいと思っています」(市川氏)

受講生によっては講義後に自らインターンを希望してくることもあるし、逆に筋がいい学生に対してはこちらから声を掛けて誘うこともある。講義自体が、良い“リクルーティング”の場にもなっている。

さらに、授業の連絡のためにFacebookグループなどで学生とつながると、否応なしに受講生の投稿がTLに流れてくることになる。こうした交流を通じて何気なく若い人たちの感覚に触れることも、サービスの開発に活かされているという。つまり、講義は同時に“マーケティング”の場でもあるわけだ。

「大人は知らない間に『できない理由』を探していたり、限界を設定してしまっていたりする。若い人のアイデアは、経験豊富なベテランと比べればもちろん荒削りなものも多いですが、若さゆえの斬新さやパワーといったメリットの方がはるかに大きいと考えています。僕らの想像を超えて良いサービスというのは、そういうところから生まれるのではないかと思っているんです」(高橋氏)

取材・文/鈴木陸夫(編集部) 撮影/竹井俊晴 一部写真提供/SARAH

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