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「貼るだけホームセキュリティ」のSecualが実践するマイクロタスキングは、スタートアップの採用難を解消するか【連載:NEOジェネ!】

タグ : IoT, Secual, イグニション・ポイント, スタートアップ, ディープラーニング, ホームセキュリティ, マイクロタスキング, 採用, 機械学習 公開

 
世間をアッと言わせるユニークなアイデアと技術力で勝負しているニュージェネレーションを応援するこの連載。今回紹介するのは、シールをはがして窓に貼るだけというカジュアルさが売りのホームセキュリティデバイスを開発するSecualだ。6月に誕生したばかりの同社だが、「マイクロタスキング」の徹底により、人工知能やIoT関連の世界的な技術者の協力を仰ぐことに成功しているという
(右から)COO 西田直樹氏
CEO 青柳和洋氏
CTO 東窪公志氏

先端技術を使ってイノベーションを起こそうというスタートアップ企業にとって、優秀な技術者をいかに集めるかは最も重要な課題の一つと言っていい。

多くの場合、自分たちの持つコネクションを使って人づてに集めるということになるだろうが、高い技術力を持つエンジニアは当然、他社との競合になる。

そのため最近では、必ずしも社員として抱えるという形を採らないで、複数のプロジェクトに掛け持ちで関わるフリーランスの力をうまく借りるという企業が増えてきている。

カジュアルなホームセキュリティをコンセプトにIoTデバイスの製品化を目指すSecual(セキュアル)も、そうした組織運営を追求するスタートアップの一つ。

ビジネスコンサルティングと新規事業創出を手掛けるイグニション・ポイントから分社化する形で今年6月に誕生したばかりの同社は、「マイクロタスキング」の徹底により、人工知能やIoT関連技術の世界レベルの技術者に協力を仰ぐことに成功しているという。

アイデアの出発点:一人暮らしの女性にもセキュリティの選択肢を

『Secual』は、窓やドアからの不審者の侵入を振動により検知し、スマートフォンに通知を送るサービス。シールをはがして窓に貼り付け、Wi-Fiでペアリングするだけですぐに使える手軽さが売りだ。

クラウドファンディングサイト『Makuake』で量産化の資金を募集しているが、8月17日の募集開始から24時間以内に目標金額の100万円を達成。1週間後の24日時点で300万円を集めているように、極めて順調な歩みを進めている。

代表取締役社長の青柳和洋氏は、立ち上げのきっかけを次のように語る。

青柳氏はカジュアルさを追求することでホームセキュリティの「民主化」を狙う

青柳氏はカジュアルさを追求することでホームセキュリティの「民主化」を狙う

「従来のサービスと決定的に違うのはカジュアルさです。今までのホームセキュリティは非常に高価なもので、それがボトルネックになってなかなか導入が進んでいなかった。新しい技術を使えば、そこにイノベーションを起こせるのではないかと考えました」

青柳氏が提起したホームセキュリティの現状に対する問題意識は、COOの西田直樹氏が、身をもって経験したことでもあった。

「コストが掛かること以外にも、設置するのにせっかく買った家の壁に穴を開けなければならなかったり、毎回警備員の人に来てもらうことになったりと、従来のサービスには仰々しいところがありました。もっと簡単に始められる選択肢もあっていいのではないかと感じていました」

機能を絞り、設置に工事を必要としない『Secual』ならば、初期費用(1万円台~)で大手サービスの10分の1、クラウド利用のランニングコストも5分の1程度まで抑えられるという。

センサなどのデバイスのデザインは、良品計画を手掛けるMiyake Designのみやけかずしげ氏に依頼。一人暮らしの女性の家にあっても違和感がないように、見た目にもカジュアルさを追求している。

開発のポイント:機械学習により環境を分類。誤操作を最小限に

「ホームセキュリティの導入がなかなか進まないのには、操作が複雑なことや、誤動作が起きやすいことも理由として考えられた」と青柳氏。そのため、『Secual』は専用アプリについても「立ち上げたらすぐに何をしたらいいか分かるレベル」のUIにこだわった。

「コストだけでなくUIのシンプルさにもこだわった」と西田氏

「コストだけでなくUIのシンプルさにもこだわった」と西田氏

「スマートフォンのロックを解除するように、スライドするだけの直感的な動作でセキュリティのON・OFFができます。解除の履歴は時系列で表示できますので、家族の誰が家にいて、いつ出て行ったかがひと目で分かる。単純に聞こえるかもしれませんが、家に人がいるかどうかが分かるというだけでも、従来のサービスにはなかった便利さなんです」(西田氏)

ただし、見た目のカジュアルさとは裏腹に、その裏側を支えるのは人工知能とビッグデータを活用した高度なシステムだとCTOの東窪公志氏が説明する。

「『Secual』は、加速度センサによって窓の振動を検知することで不審者の侵入を知らせる仕組みになっています。ですが、窓を揺らすのは不審者だけではなく、例えば交通量の多い道路に面している部屋であれば、頻繁に振動する可能性があります。そこで、収集したデータを基に深層的な機械学習により振動パターンを分類し、精度を高めていくことで、誤操作の範囲を調整することに挑戦しています」

振動パターンを統計処理することにより、その窓が横開きなのか縦開きなのか、さらにデータさえ集まっていけば、「これは交通量の多い道路側の窓」といった分類までできるようになるという。

「将来的には、今から何日後に不審者が訪れる確率が何%高まるといった予測までできるようになることがすでに分かっています」(東窪氏)

マイクロタスキングがスタートアップを救うと言える理由

人工知能のエキスパートである東窪氏はSecualのキーマン。「マイクロタスキング」が今後のスタートアップの命運を握ると持論を展開する

人工知能のエキスパートである東窪氏はSecualのキーマン。「マイクロタスキング」がスタートアップの命運を握ると持論を展開する

東窪氏は、慶應義塾大学在学時から20年近くにわたって汎用人工知能の開発に携わってきた技術者。国連関連団体における超国家問題解決へのテクノロジー活用や、大手海外サービスの日本上陸プロジェクトなどにも関わってきた。

『Secual』のプロジェクトには他にも、人工知能やIoT関連技術の国内外のエキスパートが多数参加しているという。

創業間もないSecualがそれだけの人材を集めることができるのには、東窪氏がハブとなっているのはもちろんだが、「マイクロタスキングを徹底して行っていることが大きい」という。

マイクロタスキングとは文字通り、タスクをマイクロレベルに分割することだ。

「タスクは細かく砕けば砕くほどメリットが生まれます。まず、仕事が短期間化するので、企業は大きなキャッシュを持たないでもプロジェクトを回すことができます。1億円の仕事を受注したとしても、キャッシュが入るのが1年後では保ちません。が、100人月の仕事を100人で分割すれば、1カ月後に報酬を得ることができます」

メリットはスピードだけではない。「この方法であれば、必要なスキルを持った優秀な技術者の協力を得られる確率もグッと高まる」と東窪氏は続ける。

「IoT製品の開発を例に話すなら、『この部品のこのMCUでBluetoothの制御の仕方をやったことがある人』という募り方をすれば、100万人の中に30人くらいは該当者がいます。その人に短期間だけ関わってもらう、あるいは別のプロジェクトと並行してでもかかわってもらうことができれば、ざっくり『Bluetoothの技術を持っている人』を半年雇うやり方の何千倍も効率よく、かつ高い技術を導入することができます」

「Railsなどの技術代替性の高いWebの技術であれば、すでにそうした世界はやってきている」と東窪氏。今後はそれがIoTなどでもできるようになってくるというのが彼らの主張で、Secualは現に、それを先取りして行っている。

「もちろん、タスクを分割するというのには非常に高い技術的判断やコミュニケーション力が要求されますから、誰にでもできるわけではありません。こうしたことができる人そのものを何人か集められたことが、今回のプロジェクトの肝になっています」(東窪氏)

こうした戦略は、情報管理的なリスクを抱えた大企業より、資金にあまり余裕のないスタートアップにこそ向いていると言うことができるだろう。

見据えるのは、ホームセキュリティの「その先」

来年2月の発売を目指す『Secual』。しかし彼らが見据えているのは「その先」だ

来年2月の発売を目指す『Secual』。しかし彼らが見据えているのは「その先」だ

現在ある『Secual』はプロトタイプの段階であり、今後、技術仕様なども引き続き追求しながら、来年2月の発売を目指す。

青柳氏は「セキュリティには防犯と並んで見守りのニーズもあるので、ゲートウエイやアプリの強化などを通じて、そちらの充実も行っていく」と話している。

だが、Secualの構想はそれだけにとどまらない。

「セキュリティのために取ったセンシングデータを、AppleやGoogleといったビッグプレーヤー、あるいは他のIoT企業とも相互でやり取りすることで、トータルで快適な生活を実現したいと思っています。『Secualを窓に張るというカジュアルな行為が、スマートホームのドアノッカーの役割を果たす』というのが、僕らが描く計画です」(東窪氏)

将来的に他企業ともデータをやり取りすることを想定し、『Secual』のシステムは当初から、レイヤー化した粗結合の設計で作られている。人工知能やビッグデータの扱い方も、全てその時が来るのに備えた仕様で検討されている。

「カジュアルに一人暮らしの女性を守る」にしては少々いかつい技術者集団が見据えているのは、ホームセキュリティの「その先」ということのようだ。

取材・文/鈴木陸夫(編集部) 撮影/赤松洋太

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