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スタートアップがプラットフォーマーになるのは可能か?Secual×Safie「防犯IoT」2社の戦略

タグ : IoT, Safie, Secual, スタートアップ, プラットフォーム 公開

 
(写真左から)Safie取締役の下崎守朗氏と、SecualのCTO東窪公志氏

(写真左から)Safie取締役の下崎守朗氏と、SecualのCTO東窪公志氏

IoTは一般的に「モノのインターネット」と訳されるが、IoT企業が作っているのは多くの場合、モノそのものではない。モノを含めたサービス全体が実現する世界観を提供しようというのが、彼らの目指すところだ。

世界観はビジネス的な言い方に換言すれば、プラットフォームということになるだろう。例えばスマートロックサービス『Akerun』を手掛けるPhotosynthは、法人化する以前から「HEMSの入り口になる」と公言していた

しかし、こういった壮大な構想を描けば、必然的に“敵”になるのはGoogleでありApple、Amazonなどの巨大なテクノロジー企業ということになる。極東の一スタートアップがこうした世界の巨人たちと伍して戦う術は本当にあるのだろうか。

そこで今回は、同じセキュリティー分野のIoTスタートアップとして注目を集めるSecualのCTO東窪公志氏と、Safie共同創業者で取締役の下崎守朗氏に登場してもらい、それぞれが考えるプラットフォーム構想について聞いた(両社についての詳細は以下の記事を参照してほしい)。

>>「貼るだけホームセキュリティ」のSecualが実践するマイクロタスキングは、スタートアップの採用難を解消するか
>>ソニー、グリー出身者が手掛けるクラウド型ホームセキュリティー『Safie』の水平分業型IoT開発とは

2社が考えるプラットフォームとは? 勝算、そこで求められる人材像は? 6つの疑問に応える形で対談してもらった。

【1】なぜIoT企業はプラットフォーマーを目指すのか?

下崎 Secualさんのことを掘り下げてお聞きする機会はなかったので基本的なことから伺いたいのですが、そもそもどうしてSecualを始めようと思ったんですか?

東窪 何か分かりやすいストーリーがあったというより、マーケティング的な観点から創出されたアイデアで、技術の発展によって低価格でやれそうなことと、安価でカジュアルなセキュリティーへのニーズがありそうだということ、その両方のタイミングが合ったということです。

汎用人工知能の研究にも携わってきた東窪氏。Secualのプラットフォーム構想にどう活かされるのか?

汎用人工知能の研究にも携わってきた東窪氏。Secualのプラットフォーム構想にどう活かされるのか?

下崎 セキュリティーを安価に、というところではSafieも一致していますね。防犯カメラはシステム的には簡単なのに、値段が高くて一部のお金持ちにしか手に入らないものでしたから。

ただ、Safieのユーザーさんには、自宅は既存の防犯サービスに入っているけれど、別荘にSafieを使いたいという人もいる。こちらが想定していなかった使い方を提案されることがあるのは、やっていて面白いですね。

東窪 新しいサービスの使い方は、ユーザーが自分たちで見つけていくものでもあると思いますね。

下崎 この前はあるビルのオーナーから、現行の警備員による警備から、機械警備とカメラの組み合わせに切り替えられないかと相談されたんです。普通は人間による警備が最上級だと思うんですが、完全自動化することで、いずれは入退室管理などにもつなげたいというニーズがあったようです。

ただ、最終的にはまるっと全てのサービスを網羅しているという理由で既存の大手サービスを導入することになった。

ここで例えば、SafieとSecualが一緒になっていたらどうだったか。IoT連合のようなものができて、大手並みにまるっと必要なものを提供できるようになったら面白いですよね。こうした発想がプラットフォーム化にもつながっていくのだと思います。

東窪 自分はこれまで、汎用人工知能の研究に携わってきました。Secualの当初の構想に人工知能の活用というものはなかったんですが、プラットフォーム化を視野に入れる中で人工知能という話が出てきた。

一つのセンシングデータのみを扱うのであれば簡単な機械学習程度で事足ります。でも、こっちからは映像データ、こっちからはセンサのデータ、またこっちからはカギの開け閉めのデータと、種類の違うものを統合するとなると、今話題のディープラーニングよりさらに一歩先に進んだ技術が必要になるからです。

ただ、そうするとGoogleと全面戦争するとかいう規模の話になってくるから、一スタートアップがどこまでやれるかは未知数なところもあります。

下崎 Googleの強みは、全てのデータが自然と集まるハブになっていることですよね。うちらはまだ小さいので、分散したデータをどう集めるかには、技術的な課題に加えて、会社の枠をどう乗り越えるかという課題もあるでしょう。

もっともそこは、大企業と比べればずっと薄い壁ではあるんですけど。

IoT企業と言っても、モノを作るだけではスマートフォンのアプリを作っている会社にモノがくっついただけで終わってしまい、それほど面白くない。うちも含めて、いわゆるIoT企業と呼ばれる会社は、みんなプラットフォーマーを目指すものだと思います。

Google傘下のNestが「IoT」という言葉を使っていないのは、もしかしたら、自分たちはモノづくりの企業ではなくプラットフォーマーを目指すのだという、ブランディングの意味合いが込められているのかもしれないですね。

【2】「勝機のありそうなレイヤー」をどう見極めるか?

下崎 注目しているプラットフォーマーはありますか?

東窪 面白いと思っているのはIFTTTです。最初に出てきた時はかなり興奮して、各地で話題にしたものです。IFTTTの社長は、Flickrなどを見ても完全にアーティスト気質。だからこそあれだけ領域横断性のあるサービスができるのでしょうし、でありながらテクノロジー的に尖ってもいる。そのギャップが面白いですね。

シリコンバレーからあんな人材が出てくるとは正直思っていなかった。(スティーブ)ジョブズ以来ではないですかね。

多岐に及ぶIFTTTの連携サービスラインナップ

多岐に及ぶIFTTTの連携サービスラインナップ

下崎 うちが最初にサービスをリリースした時点では、日本にはまだIFTTT対応のサービスがなかったので、その第1号を目指そうということになったんです。結果的には別の会社に先を越されてしまいましたが。

それまでは、プラットフォームとはいっても「つながるモノが限られた連合のようなもの」しかなかったですが、IFTTTはオープンで、本当のプラットフォームと呼べるものだと思います。

東窪 NestをGoogleが買収し、IFTTTのようなサービスも伸びてきている。すでにプラットフォームがどんどんできてきているので、これからはそのレイヤーが役割ごとにどんどん“薄く”なっていくだろうと思っているんです。

だから、ビッグプレーヤーが次々に現れる中で、どこのレイヤーが残るのかを見極める必要がある。

今、既存のWebの輪の中から、一方ではIoT、もう一方ではビッグデータや人工知能的なものがはみ出し始めている。そうやってデータ量が膨大になってくると、データはストリーミングモデルということになるでしょう。これはTwitterの変遷などを見れば容易に推測できることです。

こうやって大きくなった輪の中で、単体のプラットフォーマーが全てを担うのは限界がある。そこで、プラットフォームとプラットフォームをつなぐプラットフォームが、IFTTTということになると思います。

そんな中でSecualが目指すのは、IFTTTにストリームレベルの巨大なセンシングデータを上げるためのセンサープラットフォーム。世の中のIoTデバイスのほとんどは、それぞれの中で簡単な演算を行っていますが、より汎用的に使えるデータにするために、各デバイスから吸い上げたデータを人工知能によって演算し、合成して流すという役割を担いたいと思っているんです。

下崎 なるほど。うちはうちで、情報のロジスティック的なことをやりたいと思っています。ある企業が持っているデータを別のところに移せばとても高い価値を生むのに、技術的な制約で動かせなかったり、原石のような形に留まっているから使えなかったりするケースがたくさんある。それを適切な形に磨いてあげて、適切な場所へと流す役割をやりたい。

その最も原始的な形が、今取り組んでいるカメラ。これまで見えなかったものを見えるようにするわけだから。いずれはそれをもっと発展させた形にしたいと考えていて、その際には人工知能なり何らかのステップが必要になるでしょう。

そこをSecualさんがやってくれるのなら、お客さんに新たな価値を提供できるかもしれない。

【3】どこまで自前で開発するか?

下崎 実際、お客さんからはさまざまな要望が寄せられるんです。データの保存に関して、3カ月程度まで対応していたのですが、「すぐには活用しなくてもとりあえずアーカイブしたいので、1年、2年分といった長期に対応してほしい」という声が結構ある。

これまでのローカルストレージを使ったシステムでももちろん技術的には可能ですが、それをやるとリーズナブルな価格ではなくなってしまうので、現実的ではない。一方で、うちのようにクラウドを使って値段が安くなった途端、「ああ、それ前からほしかったんだよ」という人が現れるのも事実。値段は非常に重要ですね。

ただ、もっと安くしていきたいので、データをどう圧縮するかというのは一つの課題だと思っています。

東窪 Safieさんでは貯めたデータに機械学習的な判定をするアルゴリズムも独自で作っている?

既存のアルゴリズムを載せるにしても泥臭いチューニングは不可欠。「どこまで自力で開発すべきかにはジレンマもある」と下崎氏

既存のアルゴリズムを載せるにしても泥臭いチューニングは不可欠。「どこまで自前で開発すべきかにはジレンマもある」と下崎氏

下崎 まだそこまでやっていないですね。カメラに載っているものに手を入れているだけ。既存のものはそこまで精度が高くないですし、一方で自分たちで作るとなるとリソースも限られるので、そこにはジレンマがあります。

店舗で使っているユーザーさんからはよく、お客さんの人数をカウントしたいとか、プロフィールを取りたいといった要望があるので、そこもシステムに入れたいとは思っているんです。ただ、既存のアルゴリズムを入れるにしても、ポンと入れたら使えるというものではない。

前職で医療用画像処理のワークステーションをやっていた時も、一つ一つ違う生データを扱うので、きれいなアルゴリズムを書けるようなものではなく、泥臭い作業が必要で職人芸的な側面がありました。

技術者としてはそこが面白いし、技術力が上がるところでもあるんですが。

東窪 せっかく泥臭く調整した部分も、その2カ月後にはGoogleが使えるものを出してくる、とかよくありますしね(笑)。どう枯れていくのかは分からないから、そこにはジレンマがある。

超汎用的な人工知能が出るまで、少なくともあと数年の間は、既存のものを自分たちで泥臭くチューニングしていくことになるのでしょう。

下崎 いろんなユーザーさんと話していると、結構同じことを考えている人が多いことに気付くんです。例えば「駐車場で車のナンバーを取りたい」というのは想像の範囲でしたが、運送会社などでも出入りの管理をするために同じニーズがある。ナンバーを抽出して認知する技術さえあれば、いろいろな使い道があるということ。

リソースが限られている中、全てを自分たちでやることはできないので、そういうキーになりそうなところをうまく抑えていきたいですね。

【4】サービス全体の魅力を伝えるUIをどう作るか?

東窪 Makuakeで募集していても、IoTはまだまだテクノロジーに敏感な限られた人の世界なんだと感じるんです。

Makuakeのユーザーにはガジェット好きな男性が多い一方で、Secualが訴求したいユーザー像の一つと考えているのは、既存のセキュリティーに物々しさを感じているような一人暮らしの女性。そのズレを解消するために、当初は予定になかったギフトプランという売り出し方を追加したりもしました。

下崎 Safieも、日経新聞に「ソニーグループが出資」と掲載されたら、ソニーショップに買いに行く人がいた。そういう人はだいたいネットを使っていない人たち。今はまだ、「使える人」と「使いたい人」とがマッチしていないのだと実感しました。

クラウドファンディングサイト『Makuake』で支援を募集中のSecual。世界観をいかに一般ユーザーに伝えるかは課題の一つだ

クラウドファンディングサイト『Makuake』で支援を募集中のSecual。世界観を一般ユーザーにいかに伝えるかは課題の一つだ

東窪 Secualはセンサだから、最近でこそiPhoneの登場で以前より身近になったとはいえ、一般人にとってはカメラ以上にイメージがつかみづらいというところがあるようです。だからこそ、このセンサを持っていると、それがどこかにつながってこういう価値を生むんですというイメージをUIとして表現したい。

そういう意味でも、プラットフォームが必要だと考えているんです。

下崎 UIとモノを結び付けるのは非常に難しいですよね。というのも、技術的にはもちろん難しくないが、モノがあるとモノそのものがSafieであると勘違いされがち。何とかしてサービス全体がSafieであると分かってほしいのですが、目に見えるものが本質であると思われてしまう。

東窪 人工知能にしたって、多くの人はSiriのように受け答えしてくれるものがそうだと思い込んでいますからね。

下崎 どうにかして一般ユーザーの意識を変えていかないといけない。計算機も90年代にGUIを獲得することで革命が起きた。ソフトウエアという言葉も昔はフロッピーディスクやカセットをイメージする人が大半だったけど、今はそんな人はいませんから。

【5】プラットフォーマーとしての敵はどこにいる?

Nestをハブとするホームオートメーション・プラットフォーム「Works with Nest」

Nestをハブとするホームオートメーション・プラットフォーム「Works with Nest

東窪 僕らスタートアップが連合するとしたら、日本の大企業がよく行う「一式そろえて……」というやり方に対してはまだ戦い方があると思う。でも本当の敵はやはり海外で、Googleはそもそもがスタートアップのような存在だから、イメージが被って戦いづらい。

Nestのラインナップを見ると、今のところブランド力で攻めている感じ。IoTのイメージとは距離のある、おしゃれな家具のようなものがズラリと並んでいる。

下崎 Appleも怖いですね。プラットフォーム化が得意な印象はないけれど、デバイスとして広く浸透しているという意味ではやはり脅威です。

東窪 AppleTVは出来が良かったし、何より美しいという武器を持っているのがAppleですからね。

下崎 Googleの良いところはオープンなところだけれど、その分、こちらのデータはおそらく提供せざるを得ない。一方でAppleはクローズドだけれど、データをプライベートに使ってくれそうではある。モデルとしてはどっちもどっちという印象ですが、我々としてはその隙間を狙うということになるのでしょうか。

東窪 Amazonもいます。クラウドを抑えているし、ラストワンマイルの移動系に手を出していることも怖い。あとはショッピングモールとして、売れるモノ・売れないモノの趨勢を決めてしまえる立場にいるという意味でも怖いですね。

現行のオススメ情報のところをいじれば、「この商品を買ったらこの商品も自動で接続できます」みたいなこともできるわけだし。

下崎 ウチとしては、そこは逆にやってほしいところですね。Amazonの倉庫に入っていれば設定系まで自動的にやってくれるというのであれば、一般ユーザーとの間をつないでくれるかもしれない。AWSを使っていることもあり、協力関係でやっていくことはできないかと。

東窪 ユーザーの行動なしに認証するというのは一番難しいところだとは思いますが。

下崎 個人情報のように、「1度流出したら終わり」といった類の情報だとダメだと思いますが、利用料を返金すれば解決できるところもありそうです。何を守るかという観点にもよると思いますね。

【6】プラットフォームを担う人材像とは?

下崎 プラットフォームのいいところは、やるのに時間も労力も掛かるので、参入障壁が高いところ。Safieとしてはこの1年で何らかの形にしたいとは思っています。

会社間連携のような形では、すでに進んでいる話もいくつかある。カメラという明確な形がすでにあるため、お客さんの方から「もっとこういう形で使いたい」という要望をもらえるので、進みやすいという強みはあるんです。

東窪 今募集しているのも、プラットフォーム化を見据えた人材ですか?

下崎 そうですね。ただ、どういう人がいいのかというのは非常に難しい。うちは小さい会社だから全て引っ張ってくれる絶対的なリーダーがいるわけじゃないので、手を動かすだけのスーパープログラマーというのでもダメなわけで。例えば、カメラを見てそれがつながっている先まで想像できる人がほしい。

東窪 技術選定から、インフラに精通していることも重要でしょうし、周辺領域の情勢はかなり頻繁に動くので、そういうことに敏感なことも求められるでしょうね。お仕事には研究的な側面も出てくる?

下崎 画像処理系とか人工知能系は、いつ出すとは言い切れない分野なので、研究的な要素も当然入ってくるとは思います。何でもやれる自由なポジションですから、面白いことがやりたいと思っている人にとっては、これ以上ない分野ではないでしょうか。

プラットフォームを実現する上で、東窪さんが考えるキーファクターはありますか?人なのか、お金なのか……。

東窪 APIエコノミーが来るっていうことを認識していて、それに向けて準備をしている人はいるべきだと思います。ここが出したAPIを別のところが加工して、また別のところが使うといったことが、今後は普通になっていく。これからエンジニアの市場として確立していく分野だと思うし、欧米でも需要がある。

そういった未来予測ができている、ビジョナリーであることは重要であると思います。それがないと、せっかく作ったものも、6カ月後には利用価値がなくなってしまいますからね。

取材・文・撮影/鈴木陸夫(編集部)




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