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クラウドは社会を変え、SEを“IT士業”に変える~サイボウズ青野慶久氏【連載:エンタープライズSEのNextStep】

タグ : kintone, SE, キャリア, サイボウズ, 業務系システム開発, 青野慶久 公開

 

日本型のSIビジネスが曲がり角にきているといわれて久しい。近年この流れに拍車を掛けているのがクラウドサービスの普及だ。高度なビジネスアプリケーションやITインフラが、ネットを通して安く手軽に調達できるようになった今、あえて外部の手を借りなければならない領域はかつてほど広くなくなっている。

当連載は、その当事者であるSIerやITベンダーを直撃し、エンタープライズ向けのシステムに従事するエンジニアが今後進むべき道を探っていく企画である。

今回は、クラウド上で業務アプリ構築を可能にする『kintone』を手掛けるサイボウズ代表の青野慶久氏に話を聞いた。

プロフィール

サイボウズ株式会社 代表取締役社長
青野慶久氏

大阪大学工学部卒業後に入社した松下電工(現パナソニック)を経て、1997年、サイボウズの設立に参画。マーケティング担当の取締役副社長としてグループウエア市場の開拓に尽力する。事業企画室担当、海外事業担当などを歴任し、2005年に代表取締役に就任。約9000社が利用するクラウド型グループウエア『cybozu.com』の普及に力を入れている

≪青野氏が考える現状打開のヒント≫
■クラウド時代が本格化するのはこれから。好機を逃すべきではない
■業務部門のITリテラシー向上はSIerや情報システム部の革新をうながす
■“IT士業”としてキャリアメイクを考えよう

先行して行った完全クラウド化。その結果見えた可能性

『kintone』は簡単に業務アプリケーション開発ができるPaaS型のクラウドサービスだ

「クラウドには社会を変える潜在能力があるのに、まだ多くの人がそのことに気付いていないのではないでしょうか。日本にはまだクラウド時代の“ク”の字もきていないというのが私の認識です」

業務アプリクラウド『kintone』が好調なサイボウズの青野慶久氏は、クラウドビジネスのポテンシャルがいまだ多くの人たちに理解されていないことを憂いている。

「例えば医療機関や介護施設、自治体との間で過去の診療履歴などの健康情報がクラウドを通じて安全にやり取りされるようになれば、医療や介護の質は劇的に向上するでしょうし、IoT(Internet of Things)を取り入れれば、遠隔地から1人暮らしのお年寄りの健康管理や安否確認を行うことも容易になります。医療や介護だけに限ってもこれだけのことが可能になるのですから、社会を変革することだって夢ではないはずです」

2009年に全社を挙げてクラウド事業に舵を切ることを決めて以来、主力製品の『サイボウズOffice』、『Garoon』、『メールワイズ』のクラウド対応を進め、2011年にはクラウドサービスの本丸ともいえる、PaaS(Platform as a Service )製品『kintone』を完成させリリースを果たす。

現在、これら同社のクラウド製品群をまとめた『cybozu.com』のアクティブユーザーは約9000社。中でも『kintone』の成長は著しく、契約数では対前年比260%で成長している。

これは同社のサービス開発戦略が功を奏した結果でもあるようだ。

「『kintone』の開発テーマは『ファスト&イージー+エンターテイン』。つまり申し込めばすぐに使えて操作も簡単。しかも使っていて『楽しい』と思えるようなサービスにしようと開発したものです。簡単な機能であればプログラムを書かなくても使えますし、複雑な機能の実装やインターフェイスの変更にも容易に対応できるスケーラビリティとカスタマイザビリティを備えているので、エンタープライズ向けのシステムにありがちな、使いづらくてガッカリするようなインターフェースを我慢する必要もありません。それがユーザーの皆さんに支持される理由なんだと思います」

>> 機能面の参考記事:「シャドーIT」全盛の今、『kintone』が好調なサイボウズに聞く

5年前に全社を挙げて「クラウドシフト」をした際は、まだ周囲の反応は鈍かったという

実際、『kintone』のユーザーは営業や販売、企画、製造部門など、本来システム開発とは無縁な業務部門が7割を占めるているという。

ユーザー企業内の情報システム部門や、そのパートナーを自負してきたSIerの手を借りなくても、業務部門自身が容易に業務用アプリを作ることができるようになるなら、もはや彼らには出る幕がないようにも見える。

が、そうではないと青野氏は断言する。

「むしろ情報システム部門やSIerが自身を変革するためのツールとしてクラウドを使ってほしいのです。例えば、これまで社内のガバナンスや予算の関係ですぐに実現できなかった業務部門からのシステム化要求にも、少ない予算で迅速に応えられるようになります。SIerにとっても、納品して後はユーザー任せの受託型のスタイルから、ユーザーの利用率を見ながらシステムの精度を高めるようなサービス型のビジネスモデルに変えることが可能になるからです」

その好例が「納品のない受託開発」で知られるソニックガーデンや、「定額39万円+来店型」でシステム開発を行うジョイゾーのような、サービス型にシフトしたデベロッパーたちである。

そして、かつてウォーターフォール型で作った営業向けSFAシステムを刷新することで、わずか3%に過ぎなかった利用率を94.2%にまで引き上げたジュピターテレコムや、散在するExcelデータを『kintone』に集約することで、営業ノウハウの共有や引き継ぎデータロスの削減に成功し、業務効率化を実現した西武ライオンズなどのユーザー企業だ。

いずれもクラウドを効果的に活用することで、エンドユーザーと密につながる方法を手に入れた企業たちだと青野氏はいう。

「システムを受託するSIerであれ、システムを使うユーザー企業であれ、一度完成させたシステムをひたすら使い続ける時代ではありません。システムをより良くスパイラルに変化させ続けられる時代です。ツールやインフラはすでに整っています。

後はやるかやらないか。企業の大小を問わず、先進的な感覚を持った人たちはすでに始めています。クラウドは多くの方が長年不幸だと感じながら抜け出せずにいる、システム開発の不幸から抜け出すためのツールでもあるのです」

「穴だらけのゴムボート」を捨て、「新しい船」に乗り移ろう

サイボウズが考える、クラウドビジネスの普及で解消できる4つの問題(資料は『cybozu.com カンファレンス 2014』より)

現状、クラウドはすべての問題を消し去る“特効薬”にはなっていない。しかし、日本を取り巻く「エネルギー問題」や「少子高齢化」、「持たざる経営」、「多重下請け構造」といった、さまざまな課題を解決する糸口になるはずだと青野氏は考えている。

そして、クラウドを使いこなすことで、業務系開発に携わるエンジニアたちはピラミッド構造の中で作業をこなすSEから“IT士業”へと変貌すると続ける。

「今ほどエンジニアに可能性と未来が感じられる時代もないと思います。私自身がフリーのデベロッパーになりたいくらい(笑)。顧問弁護士のように長い付き合いの中で、顧客と一緒に課題解決に当たれるわけですから、楽しくないわけないじゃないですか」

むろんクラウドに対する楽観的な見方に対して懐疑的な声があるのは百も承知だ。安全性や安定性について懸念する声が耳に届くこともある。

だか、意に介すことはないと青野氏は言う。

「古いマインドセットを持つ方々の意識を変えるには、成功事例を数多く生み出すしかありません。私たちはユーザーの成功を全面的に支援することで、その声に応えていくつもりです。

以前、OpenSSLに大きな脆弱性が見つかった時も、私たちは発見から2時間半で対処しました。もしウォーターフォール型の開発に固執していたら、どれくらい時間が掛かったでしょう。システム開発の構造や手法が変わることは、もはや止めようがない事実なんです」

だからこそ、エンジニアやプログラマーにも目の前の現実を直視してほしいと青野氏は願っている。

「とりわけエンタープライズ系の開発は、コンシューマー系のシステムに比べてレガシーで使いにくいモノがはびこっています。1人ですべての機能を改善し続けることはできないにせよ、チームワークが前提なら、自分が好きな領域を深堀りしつつ全体として大きな成果を残すことも可能です。インフラからフロントまで、エンジニアやプログラマーが活躍できる場は、以前に比べて格段に広がっていることを知っていただきたいと思います」

時代の潮目が変わるタイミングは奔流の只中にいる間は分かりづらいものだ。だが時が経てば、クラウドもPCやインターンネット、スマートフォンの登場に比類する大きな変化なのは明白になりつつある。

青野氏が「今こそエンジニアが次の時代の働き方を模索する時期」と力説するのはそのためだ。

「クラウドはこれから10年、15年の時間を掛けてさらに大きな市場になるでしょう。すでに『穴だらけのゴムボート』を捨て次の時代にふさわしい『新しい船』に飛び移った人も少なくありません。エンジニアの皆さんには勇気を持って現実を見極めてほしいですね」

>> 連載「エンタープライズSEのNextStep」記事一覧

取材・文/武田敏則(グレタケ) 撮影/桑原美樹




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