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高専ロボコン優勝メンバーが「熱意のままに作る」搭乗型ロボットで描く、次世代のモノづくり

タグ : エグゾネス, スケルトニクス, ロボコン, ロボット, 中野桂樹, 白久レイエス樹, 阿嘉倫大 公開

 
チームスケルトニクス

(写真左から)「チームスケルトニクス」の中野桂樹氏、阿嘉倫大氏、白久レイエス樹氏

2013年11月3、4日に行われたMakerムーブメントの祭典『Maker Faire Tokyo 2013』でひときわ子どもたちが群がっていたブースがある。その中心にあったのは、骨組みでできた『スケルトニクス』という動作拡大型スーツだ。

最大の特徴は、ロボット的な見た目でありながら“人力のみで動作可能”という点だ。一般的にロボットと聞くと動力としてモーターが組み込まれたものを想像するが、スケルトニクスにはモーターが搭載されていない。人力を活用してモーターが担うべき動力へと代える制御機構となっている。

これを制作・販売しているのは、今年10月、スケルトニクス株式会社として法人化した「チームスケルトニクス」。起業に参画したのは、代表の白久氏をはじめ、同級生だった阿嘉氏、後輩の中野氏の3人。いずれも沖縄高専出身でチームスケルトニクスの中心メンバーだ。

子どものころからモノづくりや機械いじりが好きだったというメンバー。「みんなをロボットに乗せたい」という同じ志を持って集まった。

廃材置き場から始まったスケルトニクス

チームスケルトニクスの原点は2008年にさかのぼる。開校からわずか5年で、全国高専ロボコン(第21回「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト」)全国大会に出場し、優勝を勝ち取ったメンバーを中心に、2010年8月に結成された。

ロボコンでの優勝時、4年生だった白久氏がリーダーを務め、阿嘉氏、中野氏など約15人が初期メンバーだったという。

チームスケルトニクス 白久レイエス樹氏

東京大学では海中ロボットを研究している白久氏

「ロボコンへの出場で自分たちは卒業ということになったんですけど、この経験を活かして、もっとチームでモノづくりをしたい、自分たちが作りたいロボットを作りたいということで結成しました」(白久氏)

沖縄高専は本科5年、専攻科2年の7年間が在籍期間。チーム発足後、メンバーたちはそれぞれ卒業や進学を経ながらも一貫して自分たちが理想とするロボットづくりを志してきたという。

スケルトニクスのプロトタイプが完成したのはチーム結成からわずか6カ月後。それも予算はわずかだったという。

「最初はとにかく必要な材料や部品の調達に苦労しました。ロボコンの時もそうでしたが、部品が買えない時は廃材を拾ってきて自分たちで作ったりと限られた予算でどうやりくりするかが常に課題でしたね」(中野氏)

動作拡大型のロボット、スケルトニクスを作るという構想自体はすでに高専在籍時にあったため、ごみ捨て場にあった廃材で“右腕”部分だけを試作。それを校長に見せて実際に動かしてみせるなどのプレゼンテーションをして、最初の資金を調達したのだという。

「校長先生が有望な技術やモノづくりと認めてくれれば、校長の裁量によって予算が出るという制度があったんです」(阿嘉氏)

全国高専ロボコンでの優勝は当時、地元メディアでも大きく取りあげられるほどの注目を集めたが、その時の取り組みと成果はチームのメンバーに画期的なモノづくりを実現させるという強い意欲と熱意をもたらすことになったようだ。

スケルトニクスというネーミングは「スケルトン(骨格)」と「メカニクス(構造)」とを組み合わせた造語。ヒトの骨格を設計の参考にし、電力でなく人力を活用する制御機構が実現したのも、ロボコンでの経験を元に新しいアイデアと改良とを積み重ねてきた結果と中野氏は話す。

「ロボットにいろんなことをさせようと考えれば、モーターをいくつも使ったり、複数の回路を組み合わせて制御させるといった発想になります。でもスケルトニクスは人間の動きを拡張させるもの。ですから、機構そのものはできるだけシンプルに、単純にという消去法をうまく工夫して組み合わせていきました」

事実、スケルトニクスに使われている回路設計や制御機構の1つ1つはロボコンで優勝した時の応用であると話す。

チームスケルトニクスが東京に開発・製作の拠点を移したのは2012年の4月。その際は現在の3人のほかに、大阪や神奈川にもそれぞれ別の大学に進学したメンバーが在籍していた。Googleハングアウトなどで連携を取りながら、それぞれの得意分野をうまく役割分担して開発と製作を進めてきたという。

大きいモノづくりならではのチームスケルトニクスの苦悩

スケルトニクスを装着する阿嘉氏

総重量は上半身15kg、下半身10kgだが、製品版は改良によってもっと軽量化が可能だという

現在、スケルトニクスは2体が稼動可能な状態。ヒトが身につけた写真から想像できるとおり、高さは約2.5m、両腕を広げた長さは実に3.5mにもなる巨大さだ。

装着した人物が動いたとおりに軽快かつ俊敏な動きを再現できる。その大きさゆえに圧倒的な存在感がある。

「ロボットづくりやモノづくりの業界や団体よりも、エンターテインメント系のイベントなどに呼んでいただいてデモンストレーションする機会が多いですね」(白久氏)

毎週1回は全国各地のイベントや催しものへ“出張”してデモンストレーションする依頼があり、今年10月にはグッドデザイン賞を受賞するなど、その人気は徐々に高まっている。

ただ、その大きさゆえに各地への移動や保管場所には苦労してきたという。

「今は何とかレンタカーに積んで運べるようになりましたが、以前はそれぞれのパーツごとに分解してむりやり5つのケースに入れて電車移動したりと苦労しました。ほかの乗客からは不思議な目で見られましたね(笑)。

また、保管場所も今でこそ私が在籍する東京大学生産技術研究所の巻研究室に置かせてもらっていますが、以前は某企業様のご好意でオフィスの一角に置かせてもらったりしていました」(白久氏)

ベンチャーでロボットを作っている、と聞くと「RAPIRO」や「エボルタ」といった机1つに悠々収まるくらいのものを想像する人も多いらしく、いったん間借りの許可が出た企業でも、その大きさを見て「想像していたのと違う!」と搬入直後に断られるケースもあったという。

次に目指すは高速で動くロボット開発

今後のビジョンについて熱く語るチームスケルトニクスの3人

今後のビジョンについて熱く語るチームスケルトニクスの3人

今、チームスケルトニクスが直面している課題は汎用性と価格だ。

「体の動きを忠実に再現させるという機能のため、身につけるヒトに合わせた完全なオーダーメイドで制作しています。そのため、複数の人間が、たとえばだれでも装着できるようにしてほしいという要望はよくいただきますね」(中野氏)

スケルトニクスについては、こうしたフィードバックや今後のオファーを取り入れながら、より完成度を高めた製品として進化させていく予定だという。

白久氏が東京大学の修士課程に、阿嘉氏が首都大学東京の学部に、中野氏はまだ沖縄高専に在籍中という現役の学生3人による起業だが、すでに次のプロジェクト実現へ向けて日々の開発が進んでいる。

「出張のたびに『コレが自分で動いてくれたらラクなのに』と思ったのがきっかけ」と話すのは中野氏。次に目指すのは、クルマ並みのスピードで歩いたり走ったりするロボット「エグゾネス」の開発だ。

搭乗したまま車に変形して移動できる「エグゾネクス」。大きい画像はこちら

搭乗したまま車に変形して移動できる「エグゾネクス」。大きい画像はこちら

「ハリウッド映画なんかでビルの間や道路を自由に動く巨大な人間型のロボット。あれを実現したいんです」(中野氏)

スケルトニクスからエグゾネスへの進化と発展。それも「2015年の3月までにはプロトタイプを披露しますよ」(中野氏)と、絶対的な自信と確信に満ちあふれている。

その根拠、裏づけを白久氏は「実装力」と言う。

「僕たちは小さなチームですが、絶対に作りたいものを作るという意欲と熱意だけは強く持っています。それを実現させてきたのはこれまでロボコンで培ってきた『実装力』です。次のエグゾネスも必ず実現できると思っています」

チームのメンバーも体制も変わったが、子どもの頃に抱いた夢とロボコンを通して学んだ意欲と熱意は変えることなく実現させていく——その強い情熱を持った3人が、さらに画期的なモノづくりを達成していくに違いない。

取材・文/浦野孝嗣 撮影/小林 正


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