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中国のMakerスター来日でpixivやPepperに見た、日本のクリエイター文化の豊かさ【連載:高須正和】

タグ : Papper, pixiv, メイカームーブメント, 高須正和 公開

 
高須正和のアジアンハッカー列伝

高須正和(@tks

無駄に元気な、チームラボMake部の発起人。チームラボニコニコ学会βニコニコ技術部DMM.Makeなどで活動中。MakerFaire深圳、台北、シンガポールのCommittee(実行委員)、日本のDIYカルチャーを海外に伝える『ニコ技輸出プロジェクト』を行っています。日本と世界のMakerムーブメントをつなげることに関心があります。各種メディアでの連載まとめはコチラ

2014年の11月23~24に開かれたMakerFaire Tokyo 2014(以下MFT)に、連載第1回目に紹介した「アジアのMakerスター」エリック・パンほか、Seeedstudio、Makeblockといった深圳のMakerたち、シンガポールのMakerFaireを運営するMakerたちなど、多くのMakerが海外から来日しました。

僕も彼らの案内のためもあって、ひさびさに東京に行き、チームラボMake部のブースで出展をしたほか、海外のMakerたちのために東京のMakerツアーやイベントを行いました。

アジアのMakerたちが東京をどう見たか、まずはエリック・パンほか、深圳のMakerたちがpixivやPepperに受けた印象を紹介します。

イラストコミュニティpixivに見る、絵師さんのクリエイティビティ

僕が最初に彼らを案内したのは、MFTの前日まで行われていたpixiv祭でした。

Maker Faire発祥の地 アメリカのベイエリアでは、DIYの名前のもとに、絵を描くこと、服を作ることなども内包されていて、Maker Faireでは養蜂や漬け物なども展示されています。とはいえ、電子工作のコミュニティと絵を描くコミュニティは距離があります。最近のpixivは海外ユーザーもだいぶ増えてきていますが、Seeedstudioのメンバーはpixivを見たことがなかったようです。

2014年10月25日~11月24日で開催されたpixiv祭は、六本木ヒルズに、pixivにアップロードされたイラストを整理してプリントアウトしたものを中心にしたイベントです。

pixiv祭の様子。「ドット絵」「女の子」など、人気のタグごとに作品がプリントされて展示されている

日本にいると、クラスに何人か絵を描く人がいるのが当たり前で、本屋の店頭POPやモスバーガーの店頭などに置かれている黒板に、ちょっと絵が描いてありますが、海外ではなかなか目にしません。日本は「クオリティの高い絵を描ける人がたくさんいる国」と言えます。

pixivではそうした絵師さんたちがコミュニティを作っていて、そこではMakerのコミュニティに見られるように、お互い作ったものを見せ合うことでモチベーションを上げたり、教え合ったりしている風景が見られます。

DIYをしていく中で、コミュニティの存在は、全体のクリエイティブを上げる効果があります。クリエイティブは細かい具体的な事の組み合わせです。

例えば「かわいい女子の顔を100回書いたことがある人たちの平均」の作品は、「10回しか描いたことのない人たちの平均」よりも、総じて良くなります。一回一回にかけた情熱と、試行錯誤した回数が、作品のクオリティを上げていきます。

自分と縁が薄い世界のものは、「うまい」と「ヘタ」の差、「良い」と「悪い」の差、「どうすれば良くなるか」などを具体的に感じることができず、すべてが才能で最初から決まっているように思えますが、エリック・パンはクリエイティビティがそういう細かい工夫の積み重ねであることを知っています。

コミュニティは1人ではキープするのが難しく、やる気や刺激を与えることで、結果として「バラバラの100人の描き手」よりも「何かしらコミュニケーションしてる100人の描き手」の方が、全体的なクオリティが高くなることをよく知っているようです。

「講座」タグ。絵としてアップされた画像データの中に、描き方講座が描かれている

3Dプリンタで出力されたフィギュアに来場者がその場で絵を塗っていく展示や、描いた絵がその場で3Dになって動き出すお絵かきピープルなど、テクノロジーに関連した展示もあったのですが、エリックは何よりpixivのコミュニティそのものに興味を惹かれ、画集やクリアファイルを買って帰りました。

ユーザーコミュニティに支えられる企業の形

別の日、僕らは新宿のpixivオフィスを訪問し、pixivのオフィスや運営についての説明を聞きました。

今回来日したMakerたちは、自分たちがSeeedstudioやMakeblock、シンガポールScience Centerといった組織を率い、かつユーザーたちのコミュニティを大きくするのを仕事にしている人たちです。初めて実際に見たイラストコミュニティの姿や、それを実際に運営する会社の姿は、強い関心を惹くものだったようです。

pixivの盛り上がりは基本的にユーザーの互恵的な相互作用に支えていて、絵のネタを提供する企画や絵の描き方を教える講座といった他のユーザーを助ける機能は、もともとユーザーがそういう絵を投稿することで始まったとのこと。

もともと収益プランも不明確な小さなプロジェクトとして始まったpixivが、どんどん大きくなってきて、ついには会社のメイン業務になったことや、今ではそのコミュニティの大きさと絵師のクオリティの高さからプロデビューする人もいるようになったこと。そして、収益の大部分がユーザーからの課金に支えられており、コスプレSNS『Cure』の運営や出版など別ビジネスが広がっていること。

コミュニティの成り立ちと成長の歴史、そしてコミュニティをうまく企業活動に反映しながらユーザー重視・ユーザー主導で大きくなってきたpixivという会社の姿は、彼らの好奇心を刺激したようです。

特に運営のやり方やコミュニティの盛り上げ方について多くの質問が飛び、「そこまでユーザー任せにしてコミュニティが成長するというのが、ちょっと真似できそうに思えない。このコミュニティはスゴイし、会社には勇気がある」という感想も聞かれました。

pixivのオフィス。訪問者も絵師さんが多く、彼らが書いた絵馬が壁を覆っている(提供:チームラボ)

オフィスや会社の雰囲気そのものが社員の自発的な活動を大事にし、かつ社員同士のコミュニケーションを重視していることも興味を惹きつけたようです。チームラボがデザインした、全員が250メートルの長い一つのテーブルに座る構造のpixivオフィスは、『designboom』などの有名な海外メディアでも取り上げられていて、彼らも知っていました。

pixivオフィスでは、社員のほとんどが一つの同じテーブルに座る

Seeedstudioのオフィスはアメリカのカルチャーにすごく影響を受けていますが、オフィスにパーテーションはなく、社員同士がお互いに話しやすい環境になっています。入口の絵馬については「何かしら同じようなコンセプトを自分たちのオフィスにも取り入れたい」と言っていました。

深圳のエリックも、シンガポールMakerFaireの運営者たちも、個人が何かを創作する動きと、長いこと一緒にいて、どうやれば盛り上がるのか日々活動してきた人たちです。

pixiv祭で見られる、「講座」というタグで、「金属の質感の出し方」、「風に揺れるスカートの描き方」のような知識をシェアしている様子や、お題を出しては描き合っている様子、他の国ではプロになり得るようなクオリティの作品が、毎日数千枚アップロードされていて、それは膨大な数の絵師とコミュニティからしか生まれないことを感じ、pixivユーザーたちのクリエイティビティに深く感じ入っていました。

その影響かどうかは分かりませんが、今年からMaker Faire Shenzhenの出展カテゴリに、「絵」が加わりました。

Pepperから感じた未来

ちょうどこの日、僕はニコニコ技術部向けPepperハッカソンの主催のために、ツアーの引率を途中で抜けることにしていました。

Facebookグループで募集したボランティアの人たちにお願いして、ツアーはそのまま続ける予定だったのですが、深圳組が「そのロボットのことは知っていて、友だちのMakerたちからもぜひ見てきて欲しいと頼まれていた。ぜひ見たい」とのことで、エリック・パンたちがハッカソンに飛び入りすることになりました。

飛び入りしたSeeedstudioのエリック・パン社長(写真右)、MakerFaire Shenzhen実行委員長のケヴィン、Seeedstudioのブライアン。後ろで見ているのはMakeblockのエンジニア

ハッカソンを訪れた彼らが驚いたのは、Pepperそのものに加えて、システムのあり方でした。単なるプログラミングできる高品質なロボットと思っていたPepperが、

■プログラムはボックス(「手を上げる」「発声する」など)をグラフィカルに組み合わせることによって簡単に作れる

■ボックスそのものをPythonで作ることもでき、ボックスはインターネット上で共有され、すべてのPepperは能力を共有している状態にある

■Pepperは「介護ロボ」のように何か特定の目的のために開発されたのではなく、楽器のような表現手段か、むしろコンピュータのような「プログラム次第でいろいろなことができる道具」として開発されている。だからハッカソンが開かれていて、最初のユーザはクリエイターが想定されている

■Pepperを開発したフランスのAldebaranは、感情表現をするために人型のロボットをずっと開発していて、表情、顔の形、ボディーランゲージなどについて知見を積んでいる

などなど、これまでのどのプロダクトとも異なるところを目指していることを聞いて、エリックの目が輝きはじめました。

ユーザーコミュニティを前提として、開発ツールとしてロボットを販売する。ここでの「ロボット」は、初音ミクやArduinoと同じように、ユーザの表現活動に使われることを前提にしたツールです。

そういうツールを市場に出すためには、クリエイティブを楽しむ人が多くいる文化圏が必要になります。ましてやPepperは、個人向けの開発ツールの中では段違いに多くの投資が行わないと市場に出ない類のものです。

エリックが、会場であるソフトバンク・Pepperアトリエのエンジニアや、ハッカソンに参加していたエンジニアたちと話し、Pepperの開発環境を自分のPCにインストールした後に漏らした感想は、

「I felt Future……」

でした。

世界のMakerシーンを引っ張るSeeedstudioのCEOから見ても、多くのクリエイターがいる社会の中で毎日を過ごす僕らは、未来の中にいるのです。

次回はギーク大臣の国、シンガポールMaker Faireの実行委員たちが見た、Maker Faire Tokyoのレポートをお届けします。

告知です

【1】Maker Faire 台北 2015が、5月30日(土)、31日(日)開催が告知されました。東京からは最も身近で、安く行けるMaker Faireなので、日本のMakerを集めて共同出展を考えています。ご興味ある方はこちら

【2】Maker Faire 深圳 2015は6月の19日〜21日に行われます。こちらについては僕らが実行委員をやっているので、日本語で申し込みできるようになっています。

【3】Mini MakerFaireシンガポールが、7月の11日~12日に開かれます。こちらも日本語で申し込みができるようにするつもりです。

【4】科学未来館での『チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地』展が、来場10万人を超えて、まだまだ人気です。3月1日まで開催しています。

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