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教育とMakeの見事な融合~子どもたちも「創る人」になるMaker Faire Singapore 2015【連載:高須正和】

タグ : Maker Faire Singapore 2015, シンガポール, 高須正和 公開

 
高須正和のアジアンハッカー列伝

高須正和(@tks

無駄に元気な、チームラボMake部の発起人。チームラボニコニコ学会βニコニコ技術部DMM.Makeなどで活動中。MakerFaire深圳、台北、シンガポールのCommittee(実行委員)、日本のDIYカルチャーを海外に伝える『ニコ技輸出プロジェクト』を行っています。日本と世界のMakerムーブメントをつなげることに関心があります。各種メディアでの連載まとめはコチラ

さる7月18日から19日の2日間、シンガポールの東、タンピネスにある廃校の小学校を丸々使って、『Maker Faire Singapore 2015』が開催された。

小学校の校庭に自作の自転車が走る。シンガポールにMakerFaireがやってきた!

小学校の校庭に自作の自転車が走る。シンガポールにMakerFaireがやってきた!

会場となった小学校

会場となった小学校

マーライオン、マリーナ ベイ サンズ、エスプラネード・シアターズ・オン・ザ・ベイ、シンガポール・フライヤー、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイなど、シンガポールの代表的な建築物をLEDミニチュアにした作品

マーライオン、マリーナ ベイ サンズ、エスプラネード・シアターズ・オン・ザ・ベイ、シンガポール・フライヤー、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイなど、シンガポールの代表的な建築物をLEDミニチュアにした作品

アジアで4番目のMaker Faire

Maker Faire Singaporeは、2012年にMini Maker Faireとして、主宰するサイエンスセンターシンガポールのイベントスペースで始まった。当時の出展はたった30組。シンガポール国立大の研究者である勝本雄一朗さんは第1回のフェアに出展していて、当時の様子をブログに書いている。ブログからは多民族・オープンマインドな雰囲気が伝わってくる。

それから4回目、ついにシンガポールのMini MakerFaireはMaker Faireとなり、出展数は約200組、来場者数1万8000人を数えるフェアになった。

Maker Faireは2013年の時点で世界130カ所を越えて行われるようになり、Mini Maker Faireと呼ばれる小規模なフェア(最初はここから始まる)、Miniが付かないFeacherd Faire、Maker Mediaが直接運営するFlagship Faireの3つのランク分けがされるようになった。

アジアでのFeacherd Faireは、2012年から東京が、2013年から台北が、2014年から深圳(シンセン)が毎年行うようになり、2015年の今年、シンガポールはアジア4番目のFeatured Faireとなった。今年は他にソウル、香港、台南でもFeacherd Faireが行われる予定で、昨年まで3つだったフェアがいきなり7つに増えることになる。

サイエンスセンターが主催、教育が目立つ

僕は今のところ、アジアのMaker Faireはすべて見てきている。

Makeの流行そのものは、楽しむための集まりで正解があるわけではないから、主催者やコミュニティの中心がどういう人かで、フェアのカラーが違う。

趣味のモノづくりを助けるメディアを提供しているオライリーが主催する東京のフェアは、趣味で作られた出展物が多いし、Maker向けのビジネスを行っているSeeedStudioが中心になっている深圳のMaker Faireはインダストリアルな感じが目立つ。

シンガポールのMaker Faireはサイエンスセンターが主催している。

サイエンスセンターは、日本で言うお台場の国立科学未来館みたいな展示施設としての機能と、STEM教育(サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、数学に重点を置く教育)の中心地としての機能があり、教育省の配下にある。

シンガポールはOECDが発表しているPISAランキング(15歳の時点で数学力、科学力、読解力などを計測する世界的なランキング)で常にトップを争っていて、教育熱心な国として定評がある。最近ではより実践的な教育として、理論と実践、実験を組み合わせた体験型の教育、STEM教育に力を入れている。

子どもたちが中心になっている出展は、他の国のフェアに比べるとはるかに目立つ。

小学校からの出展。作品をきちんと売っているのはさすが

小学校からの出展。作品をきちんと売っているのはさすが

シンガポールの教育は子どもだけにやらせるものではなく、親が子どもに教えるのも習慣化されていて、教科書は大人も子どもも読む。

それぞれの出展物について、親が仕組みを把握して子どもに楽しみ方を教えている風景はシンガポールならではだ。

グラフィカルプログラミング言語のScratchを使っている出展者。子どもだけでなく、親が注目しているところがシンガポールらしい

グラフィカルプログラミング言語のScratchを使っている出展者。子どもだけでなく、親が注目しているところがシンガポールらしい

ピタゴラスイッチのような仕組みをみんなで作る

ピタゴラスイッチのような仕組みをみんなで作る

60を超えるワークショップ

教育が目立つMaker Faireらしい点として、2日間で60を超えるワークショップが開催されている。

はんだ付けやプログラミングといった情報技術の他、クラフト系や「おかんアート」のようなものを作るワークショップも目立つ。

絵の具で彩色するワークショップ

絵の具で彩色するワークショップ

スチームパンク風の小道具を作るワークショップ

スチームパンク風の小道具を作るワークショップ

もちろん、典型的なMakerもいる!

人口の少ないシンガポールとはいえ、生活水準が高く技術力もある国なので、もちろんMakerもいる。ハッカースペース、高専、大学からの出展者は、いかにも「Maker Faireらしい」ブースを出展している。

実行委員長のKiruthika(キルシカ)が「この人たちと知り合えたのは最高に幸せ」と賞賛していたのはBikes4funという自転車を自作するグループだ。2006年から結成されているエンジニアたちのホビーサークルで、自転車を作ることと、子どもたちを含めてそれを楽しむコミュニティを活動方針にしている。

リカンベント、2台ヨコにつながったもの、ドラム缶を切って作ったゴンドラを列車のように引っ張る自転車、さらには漕ぐと水を吐き出す自転車型ウォーターポンプなど、さまざまな形の自転車は、特に子どもを大喜びさせていた。

さまざまな形の「自転車」が小学校の校庭に勢ぞろい

さまざまな形の「自転車」が小学校の校庭に勢ぞろい

Bikes4funのような活動はまさに「MakerFaireっぽい」ものだ。シンガポールのフェアが大きくなってきたことによって、ずっと活動してきたグループにまで評判が届いて、良い循環が生まれてきているのを感じる。

また別のグループ、OneMakerGroupは、フェアの2日間の間に、板の両脇に車輪を付けたリヤカーのような構造にドリルを入れて、即席のクルマを作っていた。

両輪に付けたドリルで進む

両輪に付けたドリルで進む

こちらのグループは古いPCのリサイクルとして、ゲーム機の筐体にPCを格納してアーケードゲーム機にしてしまう。

古いPCをゲームの筐体に格納してゲーム機にする

古いPCをゲームの筐体に格納してゲーム機にする

裏側には、古いラップトップの筐体が見える

裏側には、古いラップトップの筐体が見える

ハッカースペースシンガポールでは、Grove Starter Kit、3DプリンタといったMaker向けツールを紹介。ビギナーからステップアップしたいMakerの相談にも乗っていた。

ハッカースペースシンガポールのブース

ハッカースペースシンガポールのブース

同じくハッカースペースシンガポールからやってきたバイオハッカーのグループ

同じくハッカースペースシンガポールからやってきたバイオハッカーのグループ

シンガポール国立大のブース。水上にも着陸できる小型ドローンを研究している

シンガポール国立大のブース。水上にも着陸できる小型ドローンを研究している

シンガポール高専。ウエアラブルなLEDコスプレなどに取り組んでいる

シンガポール高専。ウエアラブルなLEDコスプレなどに取り組んでいる

別のグループは野外で火をたいて鋳造をしていた。会場が半野外で、これまでで最も大規模になったことで、これまで以上に祭りとしての祝祭的な雰囲気があふれ、サイエンスセンター単体のイベントだった昨年までから、別のステージに進みつつあるのを感じた。

鋳造で高温を出すため、ブロアでかまどに空気を送り込む

鋳造で高温を出すため、ブロアでかまどに空気を送り込む

シンガポールならではの多国籍ぶり

シンガポールは東南アジアのハブ的な位置にあり、大きな空港から各都市に安いLCCが飛んでいる。アジアで国際イベントを行う際にシンガポールが選ばれることは多い。

シンガポールを代表するMakerのグループとして、前にも紹介したウィリアム・フーイが率いるOneMakerGroupは、Maker Asiaとしてマレーシア・タイ・ベトナムなど、東南アジアのMakerのハブになる活動を続けている。

OneMakerGroupと連携関係にある、タイのチェンマイからMakerグループが来ていた。

チェンマイからMakerクラブの面々

チェンマイからMakerクラブの面々

スウェーデンのStrawbeesもシンガポールへ。リーダーのErik(エリック)とは、これで台北・深圳・シンガポールと一緒になった。Strawbeesとは、東京でもその後会うことになる。

スウェーデンのStrawbeesによるデモ風景

スウェーデンのStrawbeesによるデモ風景

政治家もMakerも一体となるホスピタリティ

Maker Faire Singaporeの実行委員会は、Maker Faireを、国内外の人たちに向けて「Maker Faireとは何なのか、シンガポールのMakerたちはどういうことをしているのか」を示す機会だと考えている。官民一体となったホスピタリティは、世界でもなかなか見られないものだった。

教育大臣のHeng Swee Keat(ヘン・スウィー・キート)はキーノートスピーチを行うだけでなく、大半のブースを回ってさまざまなプロジェクトを体験。ケンブリッジ大学で経済学の学士、ハーバード大学で社会参加について修士の学位を取得し、ずっと経済関係の部署を担当してきたHeng大臣は、2011年から教育省を担当し、Makerムーブメントについても大きく関心を払っている。

Strawbeesを体験するシンガポール教育相

Strawbeesを体験するシンガポール教育相

最大のスポンサーでもあるIntelのブースにて

最大のスポンサーでもあるIntelのブースにて

日本からの参加したV-Sido OSのアスラテック

日本からの参加したV-Sido OSのアスラテック

Strawbees、アスラテックなどの説明は僕が担当したのだが、短い説明だけで的を射た鋭い質問が来る。ハイエンドに近いロボット技術の話も、子どもに向けてメカニカルの技術を教えるStrawbeesについても、ある程度バックグラウンド含めて見ているのにびっくりした。

この週末は複数のサイエンスイベントが並行して行われ、それぞれの会場を結ぶ無料のシャトルバスが運行していた。

Maker Faire行きと書かれたシャトルバス

Maker Faire行きと書かれたシャトルバス

ただでさえ南国のシンガポールの中、半野外の会場で非常に暑いMaker Faireだったが、各ブースには水や食事が適宜、委員会から配られ、終了直前にはなんとケーキが振る舞われた。これには、出展していた日本人たちも感心していた。

最後にケーキが差し入れられた

最後にケーキが差し入れられた

さらに、Maker Faireの翌日には、観光バスを貸し切ってシンガポール中のMakerスペースを回り、それぞれのスペースのキーマンから説明を受けるツアー(事前申し込みすれば誰でも参加可能)が行われた。

初めてシンガポールを訪れた人も、このMaker Faireで初めてMakeの世界に触れたシンガポール人も、「シンガポールのMakeとはどういう感じか?」を体感して、興味ある人と直接つながるいい機会になったと思う。

ツアーの引率をすることで、Maker Faireの運営スタッフと、ゲストたちが直接話す機会にもなっていた。

Hackerspaceシンガポールを訪れ、運営のルーサーから説明を受ける

Hackerspaceシンガポールを訪れ、運営のルーサーから説明を受ける

今年のシンガポールのMakerフェアは、昨年に比べて5~6倍の1万8000人規模の来場者を集め、MiniからFeacherdと言われる大きさになったことにふさわしいフェアとなった。

教育に関する関心の高さに支えられている現状から、シンガポールに多いテクノロジーベンチャーたちのネットワークに役立つようになることで、さらに拡大することが予想される。

実際に、教育省が管轄するMakerFaireのチームと、ベンチャー企業へのファンドなどを行うIDA(Infocomm Development、日本の総務省や経産省に近い)とは連携を取っている。来年はさらに拡大するフェアとなることが予想される。

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