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ゲームが人生のようなのか、人生がゲームのようなのか。(前編)【連載:川田十夢】

タグ : AR, AR三兄弟, ゲーム, 川田十夢, 拡張現実, 筐体設計 公開

 

ふと思いついたアイデアが、頭から離れない。それは「拡張現実は、現実空間をまるごとゲームにしてしまえるような、新しいコントローラーとして再定義できるのではないか」というものだ。ゲームについて、ARについて、こんなふうに思ったことはなかった。ビデオゲームというリアリティの起源と進化を辿り、コントローラーという手触りの変遷を鑑み、偉大なるゲームクリエイターたちの初期宇宙を巡り、現実とリアリティを直列でつなぐ次世代コントローラーの可能性について、考えたい。

ビデオゲームの起源と進化、コントローラーの変遷。つまり前史。

最初に断っておく。ゲームの起源だとか、時系列を追った進化の歴史だとか。ここよりも詳しい記述のある本は、膨大にある。ボードゲームの起源ともなると、うっかりエジプト文明まで遡らなくてはならない。吉村作治とハナマルキの協力が必要不可欠となってしまう。僕の関心は、冒頭に述べた通り。拡張現実が新しいコントローラーになり得るかどうかの1点のみ。プログラムで再現可能な仮想世界を、どういう形のコントローラーを使って制御してきたのか。どうやってプレイヤーを熱中させてきたのか。その背景には何があったのか。まずは、コントローラー部分に絞った話を前史として展開する。

1958:世界最古のビデオゲームは、オシロスコープに表示された。

電視遊戯大全によると、世界最初のビデオゲームは、1958年に生まれたTennis For Twoであるらしい。ウィリアム・ヒギンボーサムというアメリカの物理学者が発明した。タイトルの通り、対戦型のテニスゲーム。画面はテレビではなく、オシロスコープであった。当時のコンピュータは、現在のようなデジタルではなく、アナログが主流だった。アナログ信号は、直流成分・交流成分・周波数・位相に分解されるものだから、ゲームを写し出す装置としてオシロスコープが選ばれたのは、妥当だったのであろう。

時間と電圧を物理的に制御するボリュームつまみと押しボタンだけのコントローラーで、世界最古のビデオゲームを操作していたなんて、物理法則を大いに含む現実をゲームにしたい僕からすると、夢のある話だ。ちなみに、Tennis For Twoというゲーム名は、映画のタイトルTea for Twoを捩ったものである。生まれたばかりのビデオゲーム。いわば人工リアリティの先輩格にあたる映画に対して、敬意を表したのだと思う。

1962→1978:ジョイスティックの登場と、ショットボタンの平面化。

MITの学生だったスティーブ・ラッセルが、1962年にSpacewar!というゲームを作った。ボリュームつまみではなく、上下の動きと左右の動きを別々にコントロールするように設計されていた。確かにボリュームつまみと比べれば大いなる一歩であったが、宇宙船を操縦しているかのようなリアリティを完全に獲得するには至らなかった。タイトーからスペースインベーダーが発売される1978年頃には、ジョイスティックと呼ばれるコントローラーがゲームに採用され、ここではじめてバラバラだった上下左右の操作がひとつになった。また、ショットボタンは、これまでの突起型ではなく、大きく平らになった。ジョイスティックとショットボタンによって適えられた操作性が、スペースインベーダーというゲーム空間に、プレイヤーを没入させる大きな要因となった。

1970→1974:光線銃シリーズが示した、コントローラーの可能性。

ゲームセンターに据え置きだったスペースインベーダーなどのアーケードゲームが、のちに体感ゲーム(エレメカ)へと枝分かれするきっかけを作ったのが、1970年に任天堂から発売された光線銃SPである。拳銃の形をしたコントローラーの銃口に、懐中電灯で使われる小さな電球が埋め込まれており、引き金を引くとそれが点灯し、ギロチンシャッターで光を閉じる。的(まと)に埋め込まれた太陽電池が、一瞬の光をセンサーのように察知し、アクションを起こす。とてもアナログで、物理的な構造をしたコントローラーである。任天堂は、この機構を基にして光線銃をシリーズ化、レーザークレーやワイルドガンマン、ダックハントといったゲームを世に送り出した。中でもワイルドガンマンは、バック・トゥ・ザ・フューチャー2でもクラシックゲームとして登場するくらい、世界レベルでインパクトを与えるゲームとなった。

このあとも、モグラ叩き、UFOキャッチャー、ハングオン、アフターバーナー、スペースハリアー、電車でGO!、ビートマニアなど、長い歳月をかけて数多くの体感ゲームが発売されてゆくわけだが、現実に実在する銃のような道具に形状を模して作られたコントローラーで、ゲームを楽しむ構造が物理法則(厳密には光学的な原理)を以て1970年に確立されたということが、ここでは特筆すべき点である。

1980→1989→1996:ゲーム&ウォッチ、ゲームボーイの誕生とポケモンが開示した通信の可能性。

体感ゲームとして大型化する筐体とは別に、小型化と携帯を主眼に於いて液晶を使って開発が進められたのが、1980年に任天堂から発売されたゲーム&ウォッチである。液晶で携帯といえば電卓くらいしか存在していなかった時代、サラリーマンが携帯ゲームで遊ぶというのは、とても恥ずかしい行為であった。任天堂の開発課長であった横井軍平はこれに配慮し、サラリーマンが電車で隠れながら親指だけで遊べるゲームとして、横型筐体と2ボタンがベースとなるゲーム&ウォッチを考案した。

ゲーム&ウォッチは、公式タイトルとしてトータル60種類ほど発売されたが、筐体とゲームが一体化している以上、複数のゲームを楽しむには複数の筐体を持ち歩かなければならなかった。ファミコンのヒットでマルチソフト化のニーズが高まったこともあり、1989年にゲームボーイが発売された。ゲームボーイには通信ケーブルが装着できる機能があり、主に対戦用として使われた。テトリスやドクターマリオなど、通信機能を使った対戦ゲームは人気となったが、この通信ケーブルを全く違った使い方をして爆発的ヒットを飛ばしたゲームが1996年に誕生した。ポケットモンスターである。それが今までのゲームと決定的に違っていたのは、対戦ではなく交換の用途にケーブルを使うというアイデアだった。集められないものを集められるようにするということであったし、聞こえないものを聞こえるようにすることでもあった。

1982→1983→2004:ドンキーコングが、ファミコンとニンテンドーDSの起源である。

十字キー(正式名称:十字ボタン)は、1982年に発売されたゲーム&ウォッチのドンキーコングに、はじめて搭載された。ジョイスティックのように突起がない分、かさ張らない。スムーズにゲーム&ウォッチ市場に投入することができた。やがて、この十字キーは1983年に発売されたファミコンに搭載され、ABボタンの形状が□から○になったりしつつ、家庭用ゲームのコントローラーの基礎は完成した。ドンキーコングが画期的だったのは、十字キーだけではない。2004年に発売されるニンテンドーDSに先駆けること22年前に、2つの画面によるゲームシステムをすでに確立させていた。厳密にいうと前作のオイルパニックが2画面の元祖であるのだが、ボタンが左右に移動するための押ボタン2つしかなかったので、広い画面を十分に生かしきれていたとは言えない。どちらかというと、前述のゲーム&ウォッチとゲームボーイの流れの話である。ここではドンキーコングを、十字キーとDSの起源と定義する。この起源の話と、ゲーム&ウォッチとゲームボーイを分けて説明する意味が分からない者が、Wii Uのような露骨な失敗を招いたと予想している。唐突に結論だけ示すと、視認性と操作性を限る楽しみと、拡げる楽しみは同居しないのである。

2007→2012:iPhoneの誕生とソーシャルゲームの台頭

ソーシャルゲームと呼ばれる一連のゲーム群も、無視できない。ゲームシステムごと発明しているタイトルがひしめき合っている。

パズル&ドラゴンを例にとって話を進める。これひとつ取っても、これまでのゲームとは全く違う構造を為しているのが分かる。まず、(これはパズドラだけに限った話でもないが)画面とコントローラーが一体化している。ニンテンドーDSのように、操作系統が分かれてもいない。キャラクターの動きを邪魔するような指の配置は、まずあり得ない。魔界村やドラクエなど、多くの人気ゲームタイトルの移植が、この当たり前の特性の違いを理解せずに失敗している。パズドラは、特にこの辺りを上手に切り分けてコントローラーを設計してある。切り分けているのは、操作性だけではない。プレイヤーの特性の一つである時間感覚についても、上手にゲームに組み込んである。課金によってプレイヤーが購入しているのは、物語ではなく、時間である。効率と幸運をお金で買う必然が、プレイヤーには少なからず存在する。移動中や仕事の合間などといった細切れの時間の中で、プレイヤーはソーシャルゲームを楽しんでいる。

と、まずはここまでを、ビデオゲームとコントローラーの前史とする。以降も、膨大なゲームハードが生まれているが、ここでは既に挙げたものと同類のコントローラーであるものとして扱う。複雑化するコントローラーにも、高次元化するグラフィックにも、ワイヤレスになってスピーカーがついてAR機能も搭載されたPS4にも、ここでは用がない。ここで重要なのは、コントローラーの歴史が、すなわち虚実をつなぐ入力と出力と通信、そしてそれを適える筐体の歴史であったという側面である。(後編へつづく)

AR三兄弟の微分積分、いい気分。

AR三兄弟・長男 川田十夢(@cmrr_xxx

1976年熊本県生まれ。1999年メーカー系列会社に就職、面接時に書いた『未来の履歴書』の通り、同社Web周辺の全デザインとサーバ設計、全世界で機能する部品発注システム、ミシンとネットをつなぐ特許技術発案など、ひと通り実現。2009年独立。開発者、そしてAR三兄弟の長男としての顔を持ちつつ、ユニークな文体で作家としても活動。2013年、情熱大陸 出演。編集者 佐渡島庸平と発明マネジメント会社トルク設立。作・演出・開発をつとめる舞台『パターン』を成功させるなど、ふたつの意味で活躍の舞台を拡張している。http://ar3.jp/




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