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「エンジニアとして、サービスの多産多死は考えられない」トランスリミットが実践する、スマホゲームのヒットを支える組織戦略

タグ : Brain Dots, トランスリミット, 高場大樹 公開

 
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(写真左から)CTOの松下雅和氏、代表取締役社長の高場大樹氏、CTOの工藤琢磨氏

2014年1月に創業したトランスリミット。その第1弾サービスとしてリリースされたiOS・Androidスマートフォン向け対戦型脳トレゲーム『BrainWars』は、2015年7月時点で1300万ダウンロード突破。その海外ユーザ比率は95%という実績を残した。

さらに2015年の7月6日にリリースされた第2弾となる頭脳系ゲームアプリ、描く脳トレ『Brain Dots』はリリースから10日で全世界100万ダウンロードを突破。韓国・台湾・香港・マカオのApp Storeにてゲームカテゴリ無料ランキングで首位を獲得したという。

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2015年7月6日にリリースされた第2弾ゲームアプリ、描く脳トレ『Brain Dots

なぜ、トランスリミットは「100作品の中で1つヒットが出れば御の字」とも言われるスマホゲームの領域で、ヒット作を連発することができるのか。

その秘訣を同社代表取締役社長の高場大樹氏に聞いたところ、リリースへの考え方と、組織体制に秘密があることが分かった。

最近では、工藤琢磨氏と松下雅和氏のダブルCTO体制やGitHubでの就業規則の公開など、先駆的な取り組みを行うトランスリミット。そのヒットを支える要因について聞いた。

“100個中99個を捨てる”ビジネス的な発想がない

まずはリリースへのこだわりについて、エンジニア社長である高場氏の考えはこうだ。

「サービスを出す頻度や数にはいっさいこだわっていません。完全に一球入魂型。良いサービスを作ることだけにフォーカスして、確実に当てにいく。今後もこの戦略は継続します。

サービスの多産多死って辛いと思いませんか?100本リリースして1~2本ホームランが出れば良いという考えを持っている方も多いと思いますが、これはビジネスサイドの意見だと思うんです」(高場氏)

モバイル向けゲーム開発の世界では、「数を打つ」ことを前提に、その中からヒットタイトルが1本でも出れば収益として黒字になるというのが定説として語られている。この考えに、エンジニアである高場氏は相容れないものがあるという。

「ヒットしなかった99個の屍も、エンジニアやデザイナーが本気で作っています。だから、失敗して良いサービスなんてあるはずがないんです。確実にヒットを狙って時間を掛けてでも良いモノだけを世に出す。そこに数は必要ありませんよね?僕自身がまだエンジニアとしてやっていますが、99個のサービスをつぶしたくない。だから、品質にとことんこだわって、成功するサービスしか作りたくないんです」(高場氏)

2015年4月、CTOに就任した松下氏はこう続ける。

「僕はこれまでにもいろいろな会社を経験していて、経営者が品質をこだわり抜くことやプロセスを見てくれないことも目にしていました。仕事をした上で、後悔してしまうこともありました。トランスリミットは、自分の考えを高場に伝えた上で、ユーザーに最善だと思う解決策を考慮し選択できる環境なので、社内でも良いサイクルが生まれていると思いますね」(松下氏)

技術者集団として、自身の“子ども”であるサービスに対して妥協は許さない。この考えのもと、トランスリミットのゲームは生まれている。

「品質を上げるためならば、リリース日も平気で1週間~2週間ズラしています。これは僕の甘さだとも自覚していますが、中途半端な出来のものを分かっていながら世に出すことはできません。しかし、延々と伸ばしても意味がないので、優先順位を付けた上で最大限努力して良いものを作る。世の中に出しても恥ずかしくないクオリティまで完成度を高めてからでないと絶対にリリースしません」(高場氏)

ダブルCTO体制が生んだメリット

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2人のCTOの仕事に生まれた変化とは?

数ではなく質にこだわるというトランスリミット。では、実際にヒット作を支えるチーム構成に対してはどうか。

トランスリミットは2015年4月からCTOが2名という体制になった。もともとエンジニア集団として組織を拡大することを見据えていた高場氏にとっては大きな決断ではなかったという。

「CTO1名体制の時はCTOというよりも職人肌のプロフェッショナルというイメージでした。が、2名体制になってからは、それぞれが責任を持って組織を担うようにマインドが変化しましたね」(高場氏)

CTO2名体制について、その決定を聞いた工藤氏、松下氏の2人はどう感じたのか。

「最初はそもそも私がCTOで、松下が後からCTOに加わった形。1人の時はCTOというよりもリードエンジニアという働き方でした。手を動かし続けるため、マネジメントがあまりできていないという課題を感じていましたね。2人になったことで、1人が技術に集中している間にもう1人が組織やマネジメントを担う。また、相談もできるようになった点も大きいと思います」(工藤氏)

「工藤はフロントエンド、僕はサーバサイドというように得意領域が異なるので、とても勉強になります。技術的にも成長したいという気持ちがあるので、教え合ったりもしていますよ」(松下氏)

いわゆる日本のCTOと言えば、組織課題を解決する存在となっていることが多く、プログラミングから離れているケースが珍しくない。一方、海外ではプロダクトを磨くCTOが多いだという声もある。トランスリミットのダブルCTO体制は、その両方と異なるものだ。

高場氏が考えるダブルCTO体制の意図はこうだ。

「今後も社員数は増やす予定ですが、エンジニア比率を8~9割に保ちたいと考えています。このチーム構成でリーダーとなり得る人材はエンジニアである必要がある。CTOという形でエンジ二アのリーダー格を明確にすることにより、技術的に強い組織を作っていきたいと考えています。CTOが複数いることによって、1人の能力値に依存し過ぎず、最も合理的な判断をすることができます」(高場氏)

なぜ、ここまで技術者集団を目指し続けるのか。それは、高場氏が会社を興す上で学生時代から考えていたことに紐付いている。MicrosoftやGoogle、Apple、Facebookなどの世界的なIT企業は創業者がエンジニアであり、社内もエンジニア比率が高い。

この点を踏まえ、世界的に活躍する会社にするためには、「エンジニア中心の組織を作らなければいけない」と構想した。結果生まれたのがダブルCTO体制だ。

エンジニアならではの“無茶振り”を実現する技術集団

高場氏はトランリミットの起業以前、サイバーエージェント時代から、コードを書きながら企画立案を行っていたという。そこでは、技術的な再現性を意識しない企画職の声に違和感を感じていたという。

ただし、技術実現性を意図しない突拍子もないアイデアから、優れたサービスが生まれることも珍しくないという見方もある。ほぼ全員がエンジニアというトランスリミットのチーム構成が、マイナスに働くことはないのだろうか。

「アイデアという意味では企画職と変わらないような軸のものも出てきます。ただ、技術的に可能であることをベースとしたアイデアが多い傾向にあることは事実です。技術的のことを理解した上で、実現したいことオーダーするのが、トランスリミットの開発スタイルですね。技術的に可能そうであれば、前例の無いことでもオーダーするので『え?そんなことできるの?』というような無茶振りもたくさんありますよ」(高場氏)

今回リリースされた『Brain Dots』にも、高場氏の無茶振りが詰まっているという。

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Brain Dots』開発中に行った2つの打ち手とは?

大きくは2つ。まず、サーバを設置せずにデータを保存する仕組み作り。次にゲーム開発と平行し今後の展開を見据えて、独自ライブラリも開発したことだ。

なぜ、『Brain Dots』にはサーバが必要なかったのか。この理由について高場氏はこう語る。

「Webサービスって基本的にサーバが必要になります。僕たちが作っているサービスは世界基準のサービスなので、どうしてもレイテンシの問題が課題となります。日本、アメリカだけでなく、ブラジル、アフリカなど国境に関係なく遊んで欲しいと考えると、サーバの設置場所は悩みの種です。多くの選択肢がある中で、どこかにサーバを置くよりも、そもそもない方が良いのではないかという結論に至りました。サービスがアプリベースであることから実現することができました」(高場氏)

世界基準のゲームを作る——。この視点でサービスを考えると、各国の通信インフラも意識しなければならない。サーバが存在しなければアプリをダウンロードしただけで遊べるようになる。外部のクラウドストレージを活用することで、アイデアを実行に移した。松下氏はこう語る。

「『Brain Dots』はバックアップの仕組みをサーバではなく、iPhoneは『iCloud Drive』、Androidは『Saved Games』というプラットフォームのクラウドストレージを使うことでセーブデータの保存を実現しています」(松下氏)

スマホがオンラインにつながるとセーブデータがクラウドストレージ上に保存され、オフラインであればデータはゲーム内に一時保存されている状態になるという。こうした技術をベースとした発想は、非エンジニアでは出てくることは難しいと高場氏は考えている。新しい技術や技術トレンドを追っているからこそ、発見できる解決策でもあるためだ。

そして、独自ライブラリ開発についてはこう続ける。

「アプリを継続的にリリースする上で、必要な機能は共通化できると考えました。例えば、課金やSNSへのシェア、ビデオ撮影、広告。その全てを共通化した独自ライブラリを開発しながら『Brain Dots』を2カ月半で開発しました。今後は開発したライブラリを活用できるので、『Brain Dots』と同等の規模であれば、この半分の期間で開発ができるでしょう」(高場氏)

また、今回の『Brain Dots』開発の最後の1ヶ月間は、『BrainWars』からエンジニアを引き上げたという。サービスごとのチーム体制は敷いていないそうだ。

「リリース1カ月前からリリース後の落ち着くまでは全員が『Brain Dots』に専念しています。トランスリミットのサービスは僕たちみんなのサービス。勝負を掛けるときは全員で挑み、全員で成功体験を味わうんです」(高場氏)

ソースコードで語り合えるチームであり続ける

このようにトランスリミットが徹底的に品質にこだわるのは、「ユーザーに届いた時の反応」を最も重要視しているためだ。この点を社内で最も強く持っているのは工藤氏だという。

「以前、ソーシャルゲームを作っている際、キレイなコードを書くことだけにフォーカスしている時期がありました。自分がメインのエンジニアとして1つのゲームをリリースしたのですが、ユーザーが全く付かなかった。

プログラムはキレイに書けたし、バグも全然出てこない。にも関わらず2カ月でサービスはクローズ。この時点から技術的な完成度よりもユーザーにどう届くのか?この点を最も意識しなければいけないと感じましたね」(工藤氏)

企画職から機能を依頼されたとしてもユーザーのことを考えた場合、意味をなさないこともある。この経験から、工藤氏はユーザーの反応を第一に考えた開発を行うことを信念とした。この転機からイチエンジニアとしてではなく、企画やサービス設計についての目線を持ったそうだ。

品質、ユーザーの体験についての強いこだわりを持つ3人がエンジニアのトップであり、組織をリードする存在として、事業を推進しているトランスリミット。今後の目指す方針について、高場氏はこう語った。

「僕が考えているのはサークル(円)型の組織。中心に僕がいて、みんなが取り囲んでいるようなチーム体制ですね。ピラミッドのように頂点まで意見が上がってこない、または偏りがあるような組織にはしたくないと考えています。みんなで1つのチームとして、ユーザーのことを考えたサービスづくりをしていきたいと思っています。組織が拡大するにつれ課題はつきものですが、100人規模くらいまでは、全員が一丸となっているようなスタイルで頑張ってみたいですね。

今後も1人ではなく、工藤、松下、僕の三重奏で力を合わせてテクノロジー・ドリブンで事業を推進していく。ドキュメントベースではなく、ソースコードベース、また運営目線だけでなく、ユーザ目線で語りあえる組織として、今後も良いモノを作っていきたいと思います
」(高場氏)

取材・文/川野優希(編集部) 撮影/赤松洋太




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