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LINEの次はこれかも…注目のビデオメッセンジャー『unda』を開発した徳井直生氏が、シリコンバレーで学んだこと

タグ : 500Startups, LINE, unda, アプリ開発, シリコンバレー, メッセンジャー 公開

 

「技術も通信もこんなに発達したのに、いまだに多くの人が文字とキャラクターだけでコミュニケートしてるのっておかしいと思わないかい?」

昨年10月、友人のオスカー・ヤッセル・ノリエガ氏から初めてこんな話を聞かされた時は、正直ピンと来なかったという。その後、Skypeでミーティング中、ノリエガ氏の住むメキシコで「一緒に新しいメッセンジャーアプリを作ろう」と誘われた時も、乗り気にはなれなかった。

それでも、徳井直生氏は今、ノリエガ氏が考案したスマートフォン向けビデオメッセンジャー『unda』のプログラマーとして、米シリコンバレーにあるシードアクセラレーター500 Startupsで開発に勤しんでいる。

徳井氏はそれまで、日本国内で主に広告プロモーションを手掛けるテクノロジー集団Qosmoの代表を務めていた。実験的DJイベント『Brain Disco』のシステム開発など、【アート×音楽×テクノロジー】のプロジェクトで豊富な実績を持つ名の知れた存在だ(弊誌が以前紹介した脳波ヘッドフォン『mico』の開発にもかかわっていた)。

一方のノリエガ氏は、ラテンアメリカ初のアニメストリーミングサービスや、ビデオゲームニュースサイトなど、数々の事業を立ち上げてきたメキシコのシリアル・アントレプレナーである。

2人は米のスタートアップイベント『SXSW 2012』で知り合い、いつか一緒に事業をやろうと話していたものの、具体的な進展はなかったという。なのになぜ、今回、「ピンと来ない」状態だったはずの徳井氏は、共同創業者として北米でチャレンジをすることにしたのか。

そこには、LINEやWhatsAppのようなメッセンジャーアプリとは異なる「新しいコミュニケーションスタイル」を生み出せるかもしれないという期待があった。

目指すはSMSの再発明。『Vine』の急成長も追い風に

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今年に入ってから日本、メキシコ、シリコンバレーと世界を飛び回る生活を送っている徳井直生氏

「スマートフォンで利用できる動画コミュニケーションツールには、すでに『Skype』や『FaceTime』などがありますが、どれもリアルタイムのコミュニケーションを前提としている。つまり、利用中はお互いに時間を拘束されるわけです」

そこで『unda』は、約10秒の短い録画メッセージをやりとりすることに特化したメッセンジャーアプリとして開発した。

「リアルタイムでコミュニケーションを取らなくてもいいので、長時間画面の前で拘束されることもありません。こうした“非対称なコミュニケーション”を動画で実現するのが『unda』の特徴。僕らが目指しているのは、いわばSMSの再発明なんです」

最近ユーザー数を急拡大させているTwitterのショートビデオ共有アプリ『Vine』やFacebookが発表した『Video on Instagram』がソーシャル志向なら、『unda』が狙うマーケットは家族や恋人、親友同士のような深い絆で結ばれた者同士の1対1のコミュニケーション領域だ。

例えば親友をパーティーに誘う時、テキスト+写真でメッセージを送るより、サクッとワンアクションで撮った動画を送った方が雰囲気も伝わっていいんじゃないか。例えば恋人同士が、文字を打つよりも簡単に「おはよう」と動画で伝え合えたら、忙しい朝の時間帯でも手が空いた時に表情を見れるし喜ぶんじゃないか――。

『unda』のアイデアを生んだノリエガ氏に、こうした説明を何度もされる中で、徳井氏の気持ちは徐々にメキシコへと向かうようになっていった。

失敗を重ねた「動画コミュニケーション」が、なぜ今注目されるのか

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『unda』開発で技術者としてこだわったのは、動画の低パケット化と片手で操作できるUI設計とのこと

冒頭で紹介したノリエガ氏とのSkypeミーティングが行われたのは、2012年11月。その直後、徳井氏はQosmoの経営を一時的に同僚に託し、メキシコシティーへ飛んだ。

そこで、ノリエガ氏と、デザイナーとして仲間に加わったルイス・ロペス氏とともに構想の具現化に着手。2週間で『unda』のプロトタイプを完成させ、それから半年も経たないうちに、500 Startupsへ開発拠点を移すことになる。

500~がインキュベートするのは、約3カ月置きに採択される25~30のサービスだけ。なかなかの狭き門である。『unda』がそこに選ばれたのは、ある幸運があったからだ。

「今年5月の第1週、500 Startupsのメキシコ支局の仲介で、イベントのためメキシコに来ていた500 Startupsの創業者デーブ・マクルーアにピッチする機会を得たんです。彼はオスカーのプレゼンを聞いてすぐ、『(次期採択チームの選抜は終わっていたが)今ならまだ間に合うから、すぐシリコンバレーに来い』と強く誘ってくれました」

本来、500~のプログラム参加には書類提出や審査が必要だ。『unda』はそうしたプロセスをすべてスキップして参加することになったという。それだけ、期待が大きいということだろう。

だが、それを手放しで賞賛できない「過去」もある。シリコンバレーに限らず世界中で、これまでいくつもの動画コミュニケーションサービスが生み落とされたが、ほとんどがスケールすることなく消えていった。

あのショーン・パーカーが2012年に立ち上げた動画チャット『Airtime』ですら、ほとんど評判を聞かないような状況だ。にもかかわらず、『unda』がマクルーア氏に高評価を得たのはなぜなのか。

「タイミングが良かったんでしょうね。通信環境の整備と、新興国におけるメッセンジャー市場の拡大が追い風になっているのは確かです。LTEによる高速通信網は、先進国だけでなく中南米やアジアの中核都市にも広がり始めていますし、これらの国々ではメッセンジャーアプリの人気もとても高い。

そんな流れの中で『Vine』のようなビデオ共有アプリが出てきて、先日は『Glide』というイスラエル生まれのビデオメッセンジャーが約7億円の資金調達に成功するなど、マーケットもずいぶん整ってきた。1、2年前まで動画コミュニケーションを取り巻いていた環境とは、劇的に変わっているんです」

「ホッケースティックを目指せ」500 Startupsで受けた助言の意味

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From Ryan Tir
徳井氏が500 Startupsのメンターにアドバイスされた比喩は、どんな意味を持つのか!?

では、徳井氏自身が500 Startupsの一員になってみて変わったのは何か。それはシリコンバレー流のGrowth Hackに対する考え方や、開発の進め方だと徳井氏は言う。

「KPIに対する考え方や資金の使い方について、500 Startupsのメンターから直接学べるのはすごく刺激的。でもそれ以上に、すごいアイデアを持った若者たちがMVP(Minimum Viable Product/実用最小限の機能だけ作るという考え方)に基づいてプロダクトを開発し、ユーザーが付けばVCが大きなお金を入れてスケールさせるという、シリコンバレーならではのエコシステムを目の当たりにできたのはとても面白い経験でした」

メンターを務めるVCや起業家たちに教わったことで印象に残っているのは、スタートアップが開発する新サービスが成長していく上で最初の試金石となるのは、ダウンロード数やPV、調達額ではなく、「アーリーアダプターとのエンゲージメントの強さ」だということ。

「『unda』がメッセンジャーアプリだから、というのもありますが、ダウンロード数を2000伸ばすことよりも20人のコアユーザーが密に使ってくれる方が価値が高いと言うんですね。そこからサービスの改善に活かせるような情報も得られますから。だから、直近はDAU(デイリーアクティブユーザー数)を高めるには何が必要か、みたいな議論を重ねています」

現在の徳井氏は、今年7月末に予定されている“卒業試験”の準備に追われている。マウンテンビューとサンフランシスコ、ニューヨークの3都市を回る投資家向けのプレゼンイベント「Demo day」が目前に迫っているからだ。

「メンターからは『ホッケーステイックを目指せ』と強く言われています。これは、スティックが描く曲線のように、あるタイミングで急角度で上昇するグラフ数値を何かしら準備しろ、という意味です。7月のデモまでに、それを何で証明できるか。現在、一緒に開発してくれるプログラマーも募集中(問い合わせのmailはコチラ)だったりと、まさに勝負どころです」

短期決戦だが、話をする徳井氏の顔に悲壮感はない。それは、ビジネスとしての期待以上に、シリコンバレーという刺激的な場で純粋に「作ること」への楽しさを感じているからかもしれない。

取材・文/武田敏則(グレタケ) 撮影/伊藤健吾(編集部)




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