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『Yahoo!コンテンツディスカバリー』の仕掛け人が語る、ニュースと技術のイイ関係

タグ : yahoo!, コンテンツディスカバリー, ニュース, メディア 公開

 
「Yahoo! JAPAN」ニュース本部本部長の片岡裕氏

「Yahoo! JAPAN」ニュース本部本部長の片岡裕氏

SNSの定着、さらにはスマートデバイスの普及により、ここ数年、ユーザーのニュース閲覧行動に大きな変化が起きている。その影響は、国内最大のニュースポータル『Yahoo!ニュース』でさえ揺るがした。

1996年のスタート以来、右肩上がりの成長を続けてきたYahoo!ニュースだが、2009年末から数カ月にわたって、PV、UUとも前年同月比割れが続くという事態に陥ったという。時代の要請に応じてさまざまな施策を打ち、現在では2009年当時の2倍強までPVを伸ばしている。

そんなYahoo!ニュースが打ったさらなる攻めの一手、それが提携メディア企業のサイト回遊促進を狙った新プロジェクト『Yahoo!コンテンツディスカバリー』(以下、コンテンツディスカバリー)だ。

『コンテンツディスカバリー』は、これまで一律に表示していた記事の関連リンクを、独自のアルゴリズムを用いて、サイトを訪れるユーザーごとに自動で最適化するというもの。導入企業のサイト内回遊はもちろん、Yahoo!ニュースと提携サイト、さらには提携サイト同士もつなぐことで、サイトの枠を超えた回遊の流れを作る考えだ。

Yahoo!ニュースが『コンテンツディスカバリー』を始動した背景には、どんな問題意識があるのか。そしてユーザーのニュース閲覧行動は今後、どのように変化していくと見ているのか。プロジェクトの責任者であるニュース本部本部長の片岡裕氏に話を聞いた。

SNSとスマートデバイスがYahoo!ニュースに与えた4つの脅威

「SNSの普及により、『Yahoo!ニュース』を介さない情報の流れが拡大した」と問題意識を語る片岡氏

「SNSの普及により、Yahoo!ニュースを介さない情報の流れが拡大した」と問題意識を語る片岡氏

順風満帆な歩みを続けていたYahoo!ニュースにとって、SNSやスマートデバイスの普及が脅威となったのには、どのような理由があったのか。

片岡氏は、次の4つのポイントを挙げた。

【1】情報入手の起点が変わった
【2】情報を消費する着地ページが多様化・細分化した
【3】リツイートやいいね!によるシェアで、情報流通の仕方が変わった
【4】目的の記事を読んだらTLに戻ってしまう

「従来は、PCでYahoo! JAPANのトップページに来て、Yahoo!ニュースのトピックスから入ってニュースを回遊するというのが、主なユーザー動線でした。この流れに変化が見えてきたのが、私がニュース担当になった2009年の10月ごろです。まず、情報消費の起点がTwitterなどのソーシャルメディアになり、着地ページも個人ブログやまとめサイトなどの割合が増えました。さらに、Twitterのリツイート機能、Facebookのいいね!によるシェア機能が付加価値をつけて、情報流通の仕方そのものを変えていきました」

こうして、Yahoo!ニュースを介さない情報の流れが相対的に拡大していく中、もちろん、Yahoo!ニュースとしても手をこまねいていたわけではない。

UXを精査し、スマートフォンアプリをリリースして【1】の起点を押さえにいくとともに、個人の多様な意見を含む記事を提供する「Yahoo!ニュース個人」、SNSで盛り上がっている話題をテーマ単位でまとめて提供する「Yahoo!ニュースBuzz」を相次いで新設。【2】の時代に合ったコンテンツ作りに勤しんできた。

その結果、スマートデバイスとPCを合わせたPVは、2009年当時の2倍強に成長した。だが、提携サイトを含めた課題として考えた場合、それでも依然としてネックになっているのが、【4】の問題だという。

「ユーザーは、Facebookなどを通じた友人とのコミュニケーションの中で、関心のある記事をクリックしてサイトを訪れるので、その記事を読み終わると再びTLに戻ってしまう。そこで、ユーザーにとっての新たな『発見』となる記事を提供し、サイト内や提携サイト間を回遊してもらうことを狙ったのが、今回の『コンテンツディスカバリー』による仕掛けです」

細分化されたユーザーのニーズに応える関連記事レコメンド

「Yahoo!コンテンツディスカバリー」を導入した際の提携サイト間の情報流通の流れ(「Yahoo! JAPAN」提供)

「Yahoo!コンテンツディスカバリー」を導入した際の提携サイト間の情報流通の流れ(「Yahoo! JAPAN」提供)

Yahoo!ニュースはもともと、提携メディアサイトから記事の提供を受ける替わりに、関連リンクを通じてトラフィックを送るというエコシステムを築いてきた。

『コンテンツディスカバリー』は、この関連リンクによる結びつきを強化するとともに、各メディアサイト同士も有償で関連リンクを表示し合える仕組みを導入することで、エコシステムをより強固にすることを目指したものだ。

その肝となるのは、関連リンクの選定を自動化する、米タブーラ社製エンジンのアルゴリズム。これまでとの最大の違いは、サイトを訪れたユーザーによって、表示される関連リンクが変わることだ。

ユーザーの行動履歴やアクセスしたデバイス、時間帯、記事の鮮度等の情報を基に、多様化、細分化したユーザーの関心に最適な関連リンクを表示する。

「例えばイチロー選手に関する記事の関連リンクを考えた時、以前であれば、イチロー選手、あるいはメジャーリーグに関する記事が選別され、ユーザーに一律で表示されていました。ですが、記事を訪れた人の中には、野球選手としてのイチロー選手の成績に注目している人もいれば、イチロー選手のライフスタイルに興味がある人もいるかも知れない。新しいエンジンでは、こうした文脈に応じて異なる関連リンクを自動で表示できるようになっています」

レコメンドの精度、カスタマイズについては、今後、提携メディアサイトの意向を受けてチューニングしていくが、今年9月の本格始動に先立ってテスト導入したあるサイトの例では、導入前との比較で3倍近いCTRを記録しているという。

「実際にテストしてみて感じたのは、新しい記事に偏りすぎることなく、半年以上前の記事がニュースにひもづいてレコメンドされることがあり、実際にそういう記事がよく読まれているということです。そのため、月日が経っても色あせない良記事や、当時は多くの人の目に留まらなかった記事が日の目を見るといった効果も期待できます」

米国では主要メディアが導入した例が複数あり、ユーザー数の多いハフィントンポストと動画に強いAOLが結びつくことで、多くのユーザーに高単価な動画広告を閲覧してもらうといったビジネスモデルも、すでに生まれているという。

技術が進化しても変わらない本質とは

「これまでのパッケージは今後ますます意味を成さなくなる」と片岡氏は言う

「これまでのパッケージは今後ますます意味を成さなくなる」と片岡氏は言う

「一つのサイトの中にカテゴリがあり、そのまた中に記事があるというパッケージが従来のニュースサイトの形でした。しかし、ユーザーが求める情報が多様化・細分化し、情報消費の起点と流通が変わっていく中で、外から着地点である記事ページに来て、読み終わったら帰っていくという行動パターンは、今後さらに増えていくと思われます。ですから、これまでのパッケージは今以上に意味を成さなくなっていくと思っています」

その時、ニュースサイトが生き残るために必要なこととは何だろうか。

一つは、「コンテンツディスカバリー」が目指す、サイト単位ではない興味関心で結ばれた新たなくくり。

そしてもう一つは、記事単体だけではなく、付加価値を付けることによって質を高め、いかに他媒体と差別化された体験を提供できるかだと片岡氏は言う。

「結局、最終的には付加価値を含めた記事の質が、媒体の価値につながっていくのではないでしょうか。(あいまいだった記事の価値を測る)指標として、滞在時間や記事がしっかり読まれたかどうかという視点はいずれ入ってくると思っていて、すでに社内でも議論が行われています」

取材・文/鈴木陸夫(編集部) 撮影/赤松洋太




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