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「知らなかった」じゃ済まない!? 2013年の著作権法改定に伴って、技術者が知っておくべき「情報倫理」3つの基本【連載:五十嵐悠紀⑲】

タグ : エンジニア, ライセンス, 情報倫理, 技術者, 著作権法, 違法ダウンロード 公開

 
天才プログラマー・五十嵐 悠紀のほのぼの研究生活
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筑波大学  システム情報工学研究科  コンピュータサイエンス専攻  非数値処理アルゴリズム研究室(NPAL)
五十嵐 悠紀

2004年度下期、2005年度下期とIPA未踏ソフトに採択された、『天才プログラマー/スーパークリエータ』。筑波大学 システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻 非数値処理アルゴリズム研究室(NPAL)に在籍し、CG/UIの研究・開発に従事する。プライベートでは二児の母でもある

2012年10月より著作権法が一部改正され、違法ダウンロードの刑罰化が始まりました。その中の一部はつい先日、2013年1月1日より始まっています。みなさんは何が変わったかご存じですか?

普段の仕事の中でも、うっかり忘れてしまいそうになる法律関連の情報。特に著作権の問題はあらゆるところで氾濫しているので気を付けたい

わたしは今学期(2012年後期)、お茶の水女子大学理学部情報科学科にて、「情報倫理」の授業を非常勤講師として担当しています。この授業は、高校の教員免許「情報」を取得する人は必修の授業で、情報を専門とする人が身に付けておくべき内容を取り扱っています。

例えば、先に挙げた著作権法もその一部です。ほかにも、ネット上のエチケットや時事ニュースも取り上げます。先日起きたIPアドレス乗っ取りの事件も、みんなで新聞を読み、何が争点か、どうしてこのようなことが起きたのかなど、さまざまなことをディスカッションしました。

「違法」や「刑罰」なんて言うと、ちょっとカタいイメージもありますし、自分とは縁遠いことのように思いがちです。しかし、実はとても身近なことだったりするので、「知らなかった」では済まされなくなってきたのも事実。

そこで今回は、先の法改正の内容を踏まえて、モノづくりにかかわるすべての方に知っておいてもらいたい、情報倫理の3つの基礎知識についてお話ししたいと思います。

1. 著作権 ~社内資料やプレゼン資料にも氾濫~

■ライセンスを受けるための検討過程での絵のキャラクター利用はOKに

これまでは企画提案段階の資料にキャラクターを利用する際に、必ず著作権者に承諾を得る必要があったのです。しかし、今回の法改正により、「ライセンスを受けるための検討過程でのキャラクターの利用」であれば、著作権者の承諾なしに企画提案ができるようになりました。新しいWebサービスを企画・開発する際に、気兼ねなくキャラクターを使った提案ができるため、企画の自由度もきっと増すでしょう。

■無料で使える著作権フリー素材は、本当に著作権フリーか?

企画書やプレゼンなどで「無料で使える著作権フリーの画像」を使うことは多いですよね。その際、その素材の「何がフリーか」をきちんと確認しているでしょうか? 商用利用可なのか、著作権表記が必要なのか……。特にそうした画像を編集して使う時は、しっかり規約を読みましょう。基本的にフリーでネット上に置いてある画像であっても、改変・編集は不可なものが多いからです。何気なく作っている会議用資料やドキュメント、プレゼン資料なども、今一度、見直してみましょう。

■技術試験のためのテレビ録画は合法に

例えば、新製品のレコーダーを開発した時に、そのレコーダーがきちんとテレビ番組を録画・再生できるかをテストすることは必須です。これまでは、こうした技術開発時の音声や映像などの録画は「複製」にあたり、著作権者の承諾なしで行うことは違法でした。しかし、今回の法改正で権利者の承諾は不要になったのです。これによって、技術開発がしやすくなるのは言うまでもありません。

2. 違法ダウンロード ~違法・合法の境界線はあいまい~

■違法動画の視聴は合法、ダウンロードは違法

違法動画をYouTubeやニコニコ動画などで見るとどうなるのでしょう? これらの動画サイトでは「ストリーミング」という配信方法を用いて動画を視聴します。つまり、PC内部にはキャッシュが作成されますが、これは「快適に視聴することのみを目的としている」ため、「ダウンロード」には該当しないとのこと。たとえ違法な動画を視聴してコンピュータの内部にキャッシュができたとしても、刑罰の対象にはなりません。もちろん、そのキャッシュをDVDに焼いて保存(複製)してはダメです。

■購入したDVDを自分のPCに落としたら違法

これまではユーザーが購入したDVDを自分のPCに落とす限りにおいては、私的複製として認められてきましたが、改正後は違法になりました。DVDにはほとんどにコピー防止機能(コピーガード,アクセスコントロール)が付いており、この保護技術を回避しない私的目的の純粋なリッピングだけが適法となったのです。さまざまなデバイスでDVDの動画を見たいユーザーには非常に不便になったともいえるでしょう。また、CDにはコピーガードが付いていないので、「これに該当せず合法」と政府から発表されています。

■違法・合法を見極めるエルマーク

意外と知られていない? エルマークは安全にダウンロードできる証

違法動画かどうかの見分けは、素人にはなかなか分からないものが多いです。正規の音楽・映像配信サービスを行う事業者に与えられるマーク「エルマーク」というものがあります。ご存知でしたか? このマークが付与されているサイトからのダウンロードは安全であると言えます。

このように、これまで違法にすべきではないようなものが違法であったり、「Aが違法だったらBも違法ではないの?」と思うようなことが違法ではなかったり……。この分野の法律はまだまだ現実におけるさまざまな事象についていけてないような印象です。

おそらく、今後も法改正を何度も重ねていくことになるのでしょう。

ほかにも身近な例はいろいろ存在します。プレゼンで他人が作った動画を流す場合はどうでしょう? この場合は、すでに公表されている動画かどうかがポイントになります。

また、音楽を作っているわけでもないし、本を出版しているわけでもないから「著作権」など自分には関係ない、とお思いの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、プログラムのソースコードも著作物です。デジカメで撮った写真にも著作権があります。そう考えると、著作権の問題はわたしたちの身近ないたるところに潜んでいるのです。

3. 発信情報の信頼性は高い?

ほかにも、情報倫理の授業では、「情報の信頼性」についても講義を行いました。その情報の出自は何か、は非常に大事です。

正確な信頼性を得るためには、内容に関して専門に扱っている団体や、実績・信頼性のある団体からの情報を得るように心掛けることが重要です。ほかにも、複数のメディアで検証することも大事で、1つのメディアからの情報だけでなく、複数のWebページや書籍・新聞など読み比べてみることも信頼性を高める方法です。

同じ事件でも見る人によって、「提示目的」や「表現方法」などが異なるため、「発信者の意図」を見抜く力を養えます。

東日本大震災の際には、本当に必要な情報のほかに、デマの情報も出回っていたのを覚えているでしょうか?災害情報が信頼できる情報源としては新聞、テレビ、インターネットのニュースサイトと続きますが、Twitterなどで情報を拡散する場合にも注意が必要です。

その情報が、直接見聞きした情報なのか、誰かの又聞きなのか……。TwitterやFacebookからの情報をそのまますべて鵜呑みしてしまうのではなく、きちんと出自を確認する習慣を身に付けるといいでしょう。

特に、リツイートは自分が情報を再発信する立場にもなるので、その情報が本当に正しいものであるのか、自分が発信する立場として今一度考え直す必要もあります。

情報化社会が進み、情報を受信する側としての情報リテラシーに加えて、一般の人々にまで「情報を発信する」ことを意識したリテラシーが必要になってきています。情報の便利さだけでなく、怖さも再認識して「情報」を上手く扱うことが求められる時代。

エンジニアの方々やWeb業界に従事している方々の中には「当たり前じゃん」と言う方はいらっしゃるかもしれませんが、本当に情報を適切に扱えているかは分かりません。

一人一人が自分自身の身近な問題として考えることが大事な情報倫理。この機会に、周りの人とディスカッションしてみてはいかがでしょうか?

>> 五十嵐悠紀さんの連載一覧はコチラ




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