エンジニアtype - エンジニアのシゴト人生を考えるWebマガジン http://engineer.typemag.jp 『エンジニアtype』は、エンジニアとして働いていく上で知っておきたい、役に立つ情報をお届けする“キャリアニュース”サイトです。業界・技術・企業や現役エンジニアの最新動向から、「この先エンジニアの身に何が起こるか」を一歩先読んでお伝えします! ja Copyright c 2014 Career Design Center Co., Ltd. All Rights Reserved. 20170509T041136 //type.jp/et/log/wp-content/themes/engineertype/images/common/logo.png //type.jp/et/log/article/20160318type 【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/article/20160318type Fri, 18 Mar 2016 13:55:29 +0000 本記事にアクセスしてくださり、誠にありがとうございます。

弊誌『エンジニアtype』は、2016年3月18日にデザインとコンセプトをリニューアルし、サイトURLも以下のものに移転しております。最近の記事を引き続きご一読いただける際は、こちらにアクセスしていただければ幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます。

http://type.jp/et/feature/

『エンジニアtype』編集部一同

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『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649 アニメイトラボとgumiが行った「社会人インターン」仕掛け人が語る、実践5つの下準備 //type.jp/et/log/mag/archives/49637
//type.jp/et/log/article/20160129 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/article/20160129 Fri, 29 Jan 2016 16:57:54 +0000 読者の皆さまへ

平素は『エンジニアtype』をご愛読いただき誠にありがとうございます。

さる1月8日にお伝えしておりました通り、弊サイトは2016年1月31日で更新を一時停止し、リニューアル致します。その準備のため、本リリースをもちましてコンテンツ掲載をいったん休止させていただきますので、何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。

本件の詳細と、メールマガジン会員情報の取り扱いに関しましては、以下をご覧ください。

>> 『エンジニアtype』コンテンツ更新の一時停止と、リニューアルのお知らせ

記事配信の再開は【2016年3月】を予定しております。日取りが決まりましたら、『エンジニアtype』のTwitterアカウントおよびFacebookページで真っ先に皆さまへご報告致します。

■Twitter:
https://twitter.com/Etype_mag

■Facebookページ:
https://www.facebook.com/Etypemag/

引き続き、皆さまのお役に立てるような情報発信をして参る所存ですので、変わらぬご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。主催イベントの一つである『キャリアごはん』も、継続して運営して参ります。

なお、今回のリニューアルでは、サイトデザイン刷新のほか、主に2つの変更点がございます。

【1】サイトURL

今後は、転職サイト『@type』( http://type.jp/ )内にブランドを移管して、記事配信を行って参ります。新URLは、リニューアル完了時に上記のSNSアカウントでお知らせ致します。

【2】媒体コンセプト

これまで、弊サイトは【旬の技術屋インタビュー・サイト】というコンセプトを掲げ、エンジニアをはじめ「技術で何かを創る人たち」が持っているシゴトの経験則、キャリア形成の経験知を配信して参りました。

リニューアル後は、キャリア形成や転職の一助となるような記事をさまざまな切り口で企画・配信していくことに加えて、ユーザーの方々との双方向コミュニケーションを前提にしたエンジニア向け課題解決コンテンツなども提供していく予定です。

リニューアルという身勝手な理由ながら、しばらくの間皆さまとコンテンツを介して交流できなくなりさみしく感じておりますが、再開後、Webやリアルな場であらためてお目にかかれることを願っております。これからも、『エンジニアtype』および『@type』をどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

2016年1月29日
株式会社キャリアデザインセンター
『エンジニアtype』編集長 伊藤健吾
編集部一同

※本件についてのお問い合わせ先は、こちらをご参照ください

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649 アニメイトラボとgumiが行った「社会人インターン」仕掛け人が語る、実践5つの下準備 //type.jp/et/log/mag/archives/49637
//type.jp/et/log/article/crashfever 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/article/crashfever Fri, 29 Jan 2016 15:00:04 +0000 ユーザーの目が肥えたこともあり、資金面・人的側面の両方で今まで以上に多くの投資が必要になっているネイティブゲームの開発。

昨年7月にJOGA(Japan Online Game Association – 日本オンラインゲーム協会)がまとめた『JOGAオンラインゲーム市場調査レポート2015』によれば、いまやスマホゲームの開発費は平均で1億円を超えている(参照記事)。

とはいえ、「少人数の開発体制」でもやり方次第でヒットを生むことができると示す事例はいくつかある。その一つが、ユナイテッドとワンダープラネットが共同事業として開発・運営しているネイティブソーシャルゲーム『クラッシュフィーバー』だ。

スマホ画面をタップしてパネルを壊し、「連鎖」や「フィーバー」でバトルに勝つというシンプルな操作法がユーザーの興味を引き、2015年7月のリリースから公開3カ月で100万ダウンロードを、約半年の今年1月には150万ダウンロードを突破。開発元のワンダープラネットは、この人気タイトルを当初6~10名の小規模チームで作り上げた(※リリース後は20名規模に人員を増やして運用している)。

「ウチはベンチャーなので、そもそも多くの人員を割くという選択肢がなかった」と語るのは、同社のプロデューサーである鷲見政明氏。ワンダープラネットは少数精鋭のチームでどのように人気タイトルを生み出したのか。

ゲーム開発におけるヒットの方程式は「やっぱ、ない」との名言通り、鷲見氏は「面白さを作り込む部分は試行錯誤するしかなかった」と明かす。だが、『クラッシュフィーバー』の開発プロセスを紐解いていくと、特徴的なステップを踏んでいたことが分かった。

4つのステップを踏んで「面白さ」を作り込んでいく

(写真左から)ワンダープラネットの取締役CTO村田知常氏、エンジニアの藤澤健治氏、同じくエンジニアの桐島昌吾氏、プロデューサーの鷲見政明氏

(写真左から)ワンダープラネットの取締役CTO村田知常氏、エンジニアの藤澤健治氏、同じくエンジニアの桐島昌吾氏、プロデューサーの鷲見政明氏

そのステップとは以下の4つだ。

【1】α版を作成して事業化を検討
【2】β版で必要最小限のゲーム構成を開発
【3】β-2版で付加機能を検討・開発
【4】リリースに向けひたすら不具合を潰していく

2014年の春ごろから企画し始め、【4】のバグ潰しには約2カ月を要したそうなので、【1】~【3】までを約1年で行った計算になる。

鷲見氏いわく、β以降は面白さを「確認」するフェーズで、αの時点でいかにコンセプトをブラッシュアップするかが最初のカギだったと言う。

「クラッシュフィーバーでは、コアターゲットをゲーム好きな20~30代男性に、周辺ターゲットを文化系の学生に設定して、『世界で最も気持ちいい、4人でやれるパズルRPG』にするというコンセプトを決めました」

ただ、これを企画書に落としたところで実際に「どう面白いのか」を説明できないだろうし、チーム内でもどこが開発の肝になるのかを共有できない。そこで、α版をモックで作って皆で感覚を共有できるようにした。

ちなみにこの時、社内では別のゲーム企画も同時に進んでおり、α版を試した結果、経営判断で『クラッシュフィーバー』の開発が正式に決まった。同社の取締役CTO村田知常氏によると、「ワンダープラネットでは事業化を検討する際、できるだけα版を基に判断するようにしている」という。

プロトタイプを試作して良しあしを判断するのは一般的なプロダクト開発でもよくあることだが、その後の長い開発工程をムダにしない意味でも、α版を基に事業化を検討するのは理に適っているだろう。

ハプニングから学んだ大量アクセスのさばき方

ユーザー数が大きく伸びたことで得た「学び」も多数あったと話す開発チームの面々

ユーザー数が大きく伸びたことで得た「学び」も多数あったと話す開発チームの面々

その後、β版、β-2版とフェーズを区切って開発を進めたのは、ゲーム内の各要素をきちんと作り込むための施策だった。主にフロントエンドの開発を担当していた藤澤健治氏は、「パネルをタップして壊す時の破片の飛び散り方など、細かい部分を試行錯誤しながら作っていた」と話す。

このフェーズでは、少人数の開発体制がむしろ奏功したという。

「10人くらいのスモールチームだと、1人1人の意思疎通がしやすい。プランナー、デザイナーとも『相手の顔が見える』状態で作業を進めた方が、作り込んでいく際のスピード感も保てます」(藤澤氏)

特に『クラッシュフィーバー』の場合、企画~開発段階ではどちらかと言うとユーザーのリテンションを重視した設計をしていたため、βとβ-2における詰め作業がいっそう重要視されていた。

こうして無事にリリースされた『クラッシュフィーバー』は、開発陣の仕事ぶりもあってか、すぐに好評を博した。実はこの時、想定以上のアクセスがあってサーバがダウンし、少しの間メンテナンスに奔走するというハプニングもあったという。

「有識者の知見をいただきながら、サーバエンジニアだけでなくアプリエンジニア、つまりクラッシュフィーバーのエンジニアが一丸となって対策をしました。この時の経験・ノウハウは、今も高トラフィックに対する仕組み構築とパフォーマンス改善に活かされています。そして何より、この経験はチーム全体の絆も強めました」(村田氏)

当時ユーザーとしてプレイしていた桐島昌吾氏は、このメンテナンス時の話を聞き、自身も一緒に開発に携わりたいと思いその後ジョインした。

「サーバサイドは主にAWSを活用しています。基本構成はNginx+PHP、データベースにMySQLとDynamoDB、キャッシュにRedisです。ごく基本的な構成ですが、ログの取得などメイン処理に関連しない部分はAWSのサービスを活用して非同期で行うなどの工夫をしています。スケールの限界を作らないインフラづくりに取り組んでいます」(桐島氏)

他にも、まだまだ多いとはいえないチーム人数を考慮して、Gitのブランチ運用やホットデプロイなど開発・運用をしやすくする仕組みづくりも進めているという。

今年1月29日からは、あの『初音ミク(雪ミク)』とのコラボイベントも実施しており、運用は今まで以上に忙しくなるだろう。これまでの学びの成果が試される。

取材・文・撮影/伊藤健吾(編集部)

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 アニメイトラボとgumiが行った「社会人インターン」仕掛け人が語る、実践5つの下準備 //type.jp/et/log/mag/archives/49637
//type.jp/et/log/article/animatelab_internship アニメイトラボとgumiが行った「社会人インターン」仕掛け人が語る、実践5つの下準備 //type.jp/et/log/article/animatelab_internship Thu, 28 Jan 2016 11:43:30 +0000 仕事で難題に突き当たった時、「他社の人は一体どうやっているのか?」と思ったことがある人は、心の中で手を挙げてみてほしい。

とりわけエンジニアリングの世界において、個人・企業の技術ブログやQiitaのような情報共有サービスが重宝されるのは、「他社の開発を参考にしたい」というエンジニアが数多くいることの表れだろう。技術コミュニティに参加する人も、最初の動機は似たようなものかもしれない。

だが、残念ながら本当に業務で使えるテクニックはWebや勉強会ではなかなか手に入らない。実際の仕事現場に身を置き、「人」と「課題」に向き合いながら取り組まなければ、使えるスキルとして身にならないからだ。

その意味で、2015年4月にピクシブとドリコムが行った「社会人交換留学」は多くのエンジニアの注目を集めた。転職せずに他社の開発現場で働けて、そこでの学びを自社に持ち帰ることができるという取り組みの結果は、以下のブログなどで披露され話題になった。

>> ドリコムさんに「社会人交換留学」してきました – pixiv inside

>> ピクシブさんに「社会人交換留学」してきました – blog.onk.ninja

この交換留学を企画した1人が、現在アニメイトラボで最高技術責任者を務める小芝敏明氏だ。

アニメイトラボの最高技術責任者・小芝敏明氏

アニメイトラボの最高技術責任者・小芝敏明氏

当時、ピクシブの開発マネジャーをしていた小芝氏は、後にドリコムからピクシブに留学することになる大仲能史氏と意気投合し、1週間の交換留学を上層部に提案。諸々の準備を整え、実施にこぎ着けた。

こうした背景があったため、2015年6月から最高技術責任者として着任したアニメイトラボでも、さっそく交換留学を企画。同年7月には、少し形を変えて、ゲーム開発会社のgumiと受け入れ型の「社会人インターンシップ」(他社のエンジニアを一定期間インターン生として受け入れる取り組み)を実施している。

今回はこの時の経験を基に、社会人インターンのメリットや、実践する際の留意点を話してもらった。

実は「受け入れる側」の学びがとても大きい

エンジニアの「交換留学」や「社会人インターン」を構想したきっかけを語る小芝氏

エンジニアの「交換留学」や「社会人インターン」を構想したきっかけを語る小芝氏

「ピクシブとドリコムさんとのエンジニア交換留学をやってみて自分自身が感じたのは、実際に留学する社員だけでなく、留学生を受け入れる側にもさまざまな好影響があるということでした」

こう語る小芝氏自身、ドリコムからやって来た大仲氏の仕事ぶりを通じて、特に対人マネジメントのやり方について学んだと話す。

どちらかというとソリストで、「マネジャーとしては『仕事を任せて口出しせず』が僕のスタンスだった」と明かす同氏は、大仲氏のチームの巻き込み方を傍目で見つつ、夜通し議論する機会も経て、メンタリングの大切さを改めて実感したという。

「短い時間でもいいからキチンと1on1をするとか、メンバーと接する時間を増やすことで結果的に組織全体のパフォーマンスを上げられるんだと気が付きました。頭では分かっていたけど実行できていなかったことが、見事に腹落ちした感じでしたね」

その後着任したアニメイトラボは、まだ設立から2年弱、開発チームは小芝氏の着任から1から採用を進めて現在10名規模という小所帯。チームでパフォーマンスを上げていくアプローチが、前以上に必須となった。そこで改めて交換留学を実施することを考えたが、「当時はエンジニアの人数が1桁台と少なく、当社から留学生を送り出せる状態になかった」ことから、前述した受け入れ型のインターンシップを思い付く。

興味を示してくれた人の中にgumiのインフラエンジニアがおり、会社経由で公式に交渉した結果、約2カ月間、だいたい夜の19:00~22:00に出社するという取り決めで実施が決定。週2~3日のペースで、アニメイトラボが手掛ける各種サービスのインフラ整備を一緒にやっていくことになった。

「ピクシブとドリコムさんとの交換留学の時同様、今回もたくさんのことを学びました。ゲーム運用で行われている高負荷対策や、AWSを使ったスケーラブルなインフラ構築など、僕らの事業ドメインではなかなか経験できないことがたくさんありましたから」

もちろん、インターン生として来たgumiのエンジニアにも、何かしらの“おみやげ”を提供しなければWin-Winの取り組みにはならない。そこで、アニメイトラボ側は自社のインフラ環境をほぼすべて公開して、運用体制の見直しやインフラレイヤーのコード化を共に行ったという。

何より大事なのは「テーマ設定」

今回の取材を受けた理由を、「前から温めている『ある構想』を世に広めたかったから」と話す

今回の取材を受けた理由を、「前から温めている『ある構想』を世に広めたかったから」と話す

自社の開発環境を社外のエンジニアにさらけ出すというのは、なかなか勇気のいる行為だ。この点も含め、社会人インターンシップを実施する際の留意点は以下の5つだと小芝氏は話す。

【1】事業ドメインが異なる企業と行う

【2】NDA(秘密保持契約)などの契約を結んでおく

【3】専用のSlackチャンネルを用意するなど、コミュケーション環境の整備

【4】上長や経営陣と取り組みの趣旨と意義を握っておく

【5】お互いに実施テーマを明示化しておく

この中で、【1】~【3】は想定の範囲内といえる内容だが、小芝氏によると意外と大事なのは【4】と【5】、特にテーマ設定は成否のカギを握るという。

アニメイトラボとgumiが行ったインターンシップは夜限定の2カ月間。「本業」を持つエンジニアを招聘することを考えれば、実施期間は短くなって当然だ。

だからこそ、何を目的に実施をするのかを具体的に明示しておくことが、関わるステークホルダー全員にメリットをもたらす上で重要になる。

「ドリコムさんとの交換留学では『お互いの開発文化の差を知る』というテーマを、gumiさんとのインターンシップでは『事業ドメインの違うインフラ運用を体験してもらう』というテーマを設定していました」と小芝氏は言う。そうしないと、受け入れ側として何を提供し、参加側は何を得るのかという部分が曖昧になってしまい、短期間で成果を挙げることはできないだろう。

「こういう取り組みは、『行きたい!』、『やりたい!』という人こそ多いものの、目の前の仕事が忙しいことを理由に、実際に行動に移す人は案外少ないものです。ピクシブで交換留学希望者を募った時も、立候補まで踏み込めたエンジニアはそんなに多くありませんでした。ですから運営側がキチンとテーマを設定し、行動に移す意思が固いエンジニアを募らないと成功しないと思います」

逆に言えば、しっかり“要件定義”をしてこれらの面をクリアにすれば、「あとはテンプレート化して、もっとカジュアルに行うことができるものになるはず」と期待する。

「個人的には、さくらインターネットさんのようなホスティング系のソリューションベンダーや、トレジャーデータさんのようなデータ解析企業などともご一緒してみたい。また、僕がかつていたSIerの世界からSEを受け入れるのもアリだなと思うんです。僕自身、SEをやっていた時は本当の意味でお客さまの気持ちを理解していたとは言い難かったですから。SEが自社サービスの運営経験を積むのは貴重な糧になると思っています」

こうした希望や取り組み実績を業界内に広めていくことで、小芝氏は「もしかしたら世の中をHackすることにつながるかも(笑)」と取材を締めくくった。道は開ける、意思があれば。

取材・文/伊藤健吾(編集部) 撮影/川野優希

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/tks-20 ついに韓国でもメイカームーブメントが!「Mini」が取れたメイカーフェアソウル2015に行ってみた【連載:高須正和】 //type.jp/et/log/article/tks-20 Thu, 28 Jan 2016 09:14:56 +0000
高須正和のアジアンハッカー列伝

高須正和(@tks

無駄に元気な、チームラボMake部の発起人。チームラボニコニコ学会βニコニコ技術部DMM.Makeなどで活動中。MakerFaire深圳、台北、シンガポールのCommittee(実行委員)、日本のDIYカルチャーを海外に伝える『ニコ技輸出プロジェクト』を行っています。日本と世界のMakerムーブメントをつなげることに関心があります。各種メディアでの連載まとめはコチラ

エンジニアtypeがリニューアルするということで、1年あまり続けてきたこの連載も最後になりました。さまざまなコメントをいただき、誠にありがとうございました。

ちょうどこのタイミングで、この連載でレポートしてきたようなアジアのメイカーズ事情を、井内育生さん・きゅんくん・江渡浩一郎さん・山形浩生さんらニコニコ技術部深圳観察会の面々とまとめた『メイカーズのエコシステム』という書籍が出ます。

深圳のエリック・パンやシンガポールのヴィヴィアン・バラクリシュナン大臣といった、過去登場した人たちの活躍ぶりと、日本との関わりが描かれているので、ぜひご一読ください。

さて、最終回の今回は、お隣の国・韓国ソウルのメイカーをレポートします。

2015年10月10~11日の2日間、ソウル市の南カンナムエリアに近いGwacheon National Science Museumにて、『Maker Faire Seoul 2015』が開かれました。

今年から「Mini」が取れてフルスペックのメイカーフェアとなったのを機に足を運んできました。

ソウルにメイカーフェアがやって来た

アドバルーンの上がる会場。屋外にはテントがいっぱい

アドバルーンの上がる会場。屋外にはテントがいっぱい

筆者はアジアのメイカーイベントによく参加するが、中国人やマレーシア人はよく見るけど、韓国人のメイカーを見ることは少ない。クラウドファンディングなど、オンライン上でもあまり見かけた経験がないため、これまでソウルのメイカームーブメントの感じがつかめずにいた。

2015年の6月、この連載でも何度か紹介したシリコンバレー・深圳のベンチャーアクセラレータHAXを訪問した時に、代表のCyril Ebersweiler(シリル・エバースワイラー)から

「今年はもう2回もソウルから大規模な訪問団が来てて、パク大統領に直接呼ばれて話に行ったりもした。もともと、優秀な人間ほど大企業に入るカルチャーだから、スタートアップがもてはやされるわけじゃなかったけど、今は世界が多様化してきているし、あの国は決まると早いからね」

と聞いた。その言葉通り、メイカームーブメントが一気に普及するのではないかと感じさせてくれるフェアだった。

とても大きな科学館Gwacheon National Science Museum。中にはメイカースペースもある

とても大きな科学館Gwacheon National Science Museum。中にはメイカースペースもある

「ホビー」「学生」「スタートアップ」とバランスのとれた展示

出展は193組、あいにくの雨で客足は2日間合計で5673人だったが、さまざまなバックグラウンドを持つ出展者が集まっていた。

最初に目にとまったのがこれ。ぜひ下の動画を観てほしい。木製の海と船。とてもよくできている。

上の船は木製のハンドルを回すと、波打つ海に揺られる船のジオラマが、船も海もダイナミックに稼働する。下部のギア含めてすべて木で作られていて、設計のアイデアも工作精度も必要になる作品だ。2カ月程度で完成させたという。

思わず現地からTwitterに上げたところ、多くのMakerから賞賛のリプライが届いた。

こちらは金属を3Dプリントする3Dプリンタ。金属の3Dプリントは珍しく、メイカーフェアに出すレベルの人たちがやってるのはさらに珍しい。どうやって実現しているのかと思ったら、なんとアーク溶接で金属を繰り出し、盛り上げて3Dプリンティングする仕組みだった。

アーク溶接で金属3Dプリントを!

アーク溶接で金属3Dプリントを!

プリントアウトされた金属

プリントアウトされた金属

この形の3Dプリントそのものは以前からある形だが、実際にメイカーフェアで見たのはソウルが初めてである。アルゴンガスを使った溶接なので、ガスが拡散しないようにするなど、実際に作るためのノウハウが必要なものだと思う。きっちりと作って展示しているところにクオリティの高さを感じた。

アーク3Dだけでなく、普通の3Dプリンタももちろんたくさん展示されている。

韓国製の『ZENTRA 3D』というデルタ式3Dプリンタ

韓国製の『ZENTRA 3D』というデルタ式3Dプリンタ

変形するドローンやバッドモービルのようなバイクも

会場の端には網で囲われた空間があって、ドローンの飛行スペースになっている。良いアイデアだと思ったのが、この変形するドローン。

ソウルの学生が作ったこのプロジェクトは、輸送時はローターガードを外側に向けスーツケース型に畳むことができ、飛行する時は広がってクアッドコプターの形になる。

輸送時は取っ手の付いたスーツケースぐらいの大きさに折り畳める

輸送時は取っ手の付いたスーツケースぐらいの大きさに折り畳める

広げると飛行できる。ケージ内の限られたスペースの中で見事に飛行していた

広げると飛行できる。ケージ内の限られたスペースの中で見事に飛行していた

開いたり閉じたりするのもサーボで駆動させているため、飛行時にその分の荷重が負担になると思ったが、見事に安定して飛行していた。大きいドローンは、さらに大きいケースで囲んで運ばなければならないので、これはグッドアイデアだと思った。

こちらは映画『バットマン』に出てくるバッドモービルのような電気自動車。車輪はスクーターからの流用で、DIY感あふれるプロダクトだった。

バッドモービルのような電気自動車

バッドモービルのような電気自動車

下の写真はプロダクトデザインを手掛ける学生の作ったIoT歯ブラシ。電動歯ブラシにセンサを取り付け、十分に磨かれたかどうかを判断して、歯の形の人形が笑ったり泣いたりする。

歯磨きの習慣化はよく言われるテーマだし、人形のように形を持ったものがアクションするのは、よりアピールする力がありそうだ。

歯ブラシとガジェットを組み合わせたもの

歯ブラシとガジェットを組み合わせたもの

3Dプリンタで外装、ワイヤーとサーボで動作を作っている義手。ロボティクス義手は多くのメイカーフェアで見かけるアツいテーマ

3Dプリンタで外装、ワイヤとサーボで動作を作っている義手。ロボティクス義手は多くのメイカーフェアで見かけるアツいテーマ

森翔太さんの仕込みiPhone的な何か? と思いきや、テルミン的な音色のアナログ入力シンセサイザー

森翔太さんの仕込みiPhone的な何か?と思いきや、テルミン的な音色のアナログ入力シンセサイザー

こちらはプロの犯行っぽいプロジェクト。工作機械にレンガを積ませて壁を作らせる。会期終了時にはけっこう積み上がっていた

こちらはプロの犯行っぽいプロジェクト。工作機械にレンガを積ませて壁を作らせる。会期終了時にはけっこう積み上がっていた

メイカーフェア東京にもあるダークルームもあり、メディアアート系のMakerが作品を展示していた。

3Dプリンタで作った人形と懐中電灯を使った作品

3Dプリンタで作った人形と懐中電灯を使った作品

これは人形に懐中電灯で照らすと、向こうのスクリーンに影が映り、その影が突然アニメーションを始める作品。懐中電灯の光も人形の影も全部プロジェクタで作ってある。

日本ほか海外からのメイカーも活躍

ソウル~東京間は、正規料金でも往復2万円台、2時間半でフライトできるので、金曜夜に東京を出発して日曜夜には帰ることができる。東京のメイカーにとって、最も身近な海外フェアになるだろう。そのせいか、日本からも何人かのメイカーが参加しており、それぞれ人気となっていた。

台北、山口など、各地のメイカーフェアに出展している、みうさんの「おにんぎょうづくり」ワークショップ。ソウルの中古街で素材を買い付けて新作を展示

台北、山口など、各地のメイカーフェアに出展している、みうさんの「おにんぎょうづくり」ワークショップ。ソウルの中古街で素材を買い付けて新作を展示

ソウルのメイカーが作ったロボットハンドとペアショットを撮るロボティクスファッションクリエイターのきゅんくん。現地テレビの取材を受けるなど人気だった

ソウルのメイカーが作ったロボットハンドとペアショットを撮るロボティクスファッションクリエイターのきゅんくん。現地テレビの取材を受けるなど人気だった

こちらも各地のメイカーフェアでおなじみ、オープンソース化した羽ばたき飛行機を展示しているFablab北加賀屋の高橋祐介さん。後日ソウルのFablabに訪問するなど、交流を持っていた

こちらも各地のメイカーフェアでおなじみ、オープンソース化した羽ばたき飛行機を展示しているFablab北加賀屋の高橋祐介さん。後日ソウルのFablabに訪問するなど、交流を持っていた

スウェーデンのメイカーが生んだStrawbeeを台湾で展開中のアメリカ人ジェイソンときゅんくん。シンガポールからは僕も参加

スウェーデンのメイカーが生んだ『Strawbee』を台湾で展開中のアメリカ人ジェイソンときゅんくん。シンガポールからは僕も参加

何人かのメイカーは、ソウルの運営チームがメイカーフェア東京や深圳で直接声を掛け、集めたという。僕も招聘などで少し手伝ったりしている。

今後も逆にメイカーフェア東京に出展しに来るソウルの人が増えたり、両方のコミュニティがより近くなるといいと思う。

>> 高須正和氏の連載一覧

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/fukuyuki42 何かを発信し続けていれば、人生はいい方向に変わるもの【連載:村上福之】 //type.jp/et/log/article/fukuyuki42 Wed, 27 Jan 2016 11:38:40 +0000
村上福之のキャラ立ちエンジニアへの道

株式会社クレイジーワークス 代表取締役 総裁
村上福之(@fukuyuki

ケータイを中心としたソリューションとシステム開発会社を運営。歯に衣着せぬ物言いで、インターネットというバーチャル空間で注目を集める。時々、マジなのかネタなのかが紙一重な発言でネットの住民たちを驚かせてくれるプログラマーだ

エンジニアtypeがリニューアルするということで、僕の連載も今回で最終回ということが決定し、非常に寂しい思いをしています。今までの長い4年間の連載を振り返って何かを書こうと思いましたが、非常に思い入れがあるので、正直、書きにくいです。

「キャラ立ちエンジニアへの道」というテーマで連載を依頼されてから、正直キャラ立ちが何なのかよく分からないまま41回も原稿を寄せてきました。そんな僕が最終回の寄稿で伝えたいことは、結論から言いますと、「何かを発信していれば、人生はいい方向に変わるもの」だということです。言いたいことはそれだけです。

初回の連載記事で出版が決まる

4年前のある日突然、エンジニアtype編集部から連絡があり連載を開始することになりました。実はぼくにとって初めて寄稿料をもらって連載を持つ仕事でした。非常にうれしかったです。

編集部に宣材写真がほしいと言われたので、六本木の写真スタジオに9800円で宣材写真を撮りに行ったら、プロフィールのところにあるようなテラテラ光ったホスト風のプロフィール写真になりました。どうも、その六本木の写真スタジオは普段はキャバ嬢の写真を撮っているスタジオでしたので、ぼくの写真もキャバクラの写真のように本人と似ても似つかないものになりました。

で、最初に書いた記事は以下の記事です。

>> 非コミュプログラマーが独立するのに必要なたった2つの勇気

この記事は、技術しか分からないサラリーマンだったぼくが独立してさまざまなトラブルに遭遇しながら会社を登記して仕事をもらうまでの話です。ひどい記事です。

何がひどいかと言いますと、エンジニアtypeは転職サービスの会社が運営するサイトなのに、いきなり独立について書いているわけです。よくもこんな記事を掲載してくれたと思います。しかし、脂の乗ったエンジニアが読みたいと思う記事を考えたら、転職か起業だろうと思い、僕の経験だったら起業の話だということになりました。おかげさまで、けっこうなエンジニアの方々に読んでいただける結果となりました。

そんな中、フリーの出版の編集の方がこの記事を読んで、ぼくに初めての著書の執筆依頼をくれたのです。

「コンパイルとかNULLとか単語が分からないですが感動しました」と言われました。そこまで意味が分かってないのに、どうして自分の文章が評価されたのか全く分かりませんが、おかげで本当に、この連載とブログのまとめ本『ソーシャルもうええねん』が出版され、下記の表紙に帯で煽っているようにAmazonで総合1位を獲得しました。

>> 非コミュプログラマーが『ソーシャルもうええねん』を出版するまで(前編)

>> 超アナログな出版業界に戸惑う僕を救った、ソフトウエア業界の太古の神話

ソーシャルもうええねん

一般書を出版するということは、その人にとって運命を変えることが非常に多いです。なぜかというと、「本を出版する人=比較的ちゃんとした人」と思われるからです。いかに素晴らしいことをしていても、ブログやWebメディアの記事だと、ネット業界の外ではちゃんとしていない人だと思われがちです。一方で、本にして全国の書店に並ぶと、ちゃんとした人と思ってもらえますし、メディアへの露出回数も増えます。

僕の場合も同様に、本を出版する中で、いろんな人にあったり、助けられたり、講演会に何度も呼ばれたり、誰かを好きになったり恋をしてきたわけです。時には、不思議な出会いで自宅に新興宗教のご本尊を設置されたりしました。本当に本を出版するといろんな体験ができます。エンジニアtypeのおかげです。

伝統的な日本のメーカーに対する思い

他のベンチャー出身の執筆陣よりも、ぼくは伝統的な日本企業でサラリーマンをやっていたり、伝統的大企業の受託案件をこなしていた時期が長かったので、日本の伝統的大企業の仕組みについて、よく記事にしていました。

これらの記事はけっこうPVを稼ぎ、書けばだいたい、その週のエンジニアtypeのアクセスランキングで1位になっていたと思います。

>> なぜ日本の伝統的メーカーは「エラい人のキーワードでモノつくる構造」を早くやめられないのか

>> さようならHTML5…。アメリカ人と日本人の標準化に差を感じる

>> 日本の大手メーカーが負けているのは、コストではなく時間

これらの記事は日本の伝統的メーカをけなしています。ぼくは日本の伝統的メーカーの“思想”を非常に尊敬しています。でも今は実態が“思想”から大きく離れているように思います。

日本のメーカーがユーザーの多種多様なニーズを聞いていたら、いつしか得意だった単一商品大量生産方式=水道哲学が崩壊しました。一方で、単一商品大量生産する手法でAppleなどが世界を制してしまいました。

闇研や社員稼業主義やアメーバ経営など、ボトムアップでフットワークの軽い思想だったのが、官僚主義と社内政治とコンプライアンス遵守の名の下に動きの遅い組織になってしまいました。一方で、GoogleやAmazonのようなフットワークの軽いネットワーク型組織が世界を席巻しています。

現在、あまり日本のメーカーに明るい未来を感じません。CESなどを見ていても日本の伝統的メーカーの存在感はかなり薄いです。

こうして日本メーカーの将来を憂うことを書いていると、いろんなメディアから日本の会社について、コメントやラジオ出演やインタビューや執筆を依頼されるようになりました。無駄に仕事の幅が広がったように思います。ブログにソースコードを貼るより、伝統企業を批判する記事の方が一般的なメディアには興味を持ってもらえるようです。

禅寺での修行~4日間の禁スマ生活で得たもの

お気に入りの思い出は、編集担当のころくさんと京都の禅寺へ修行に行ったことです。

>> 禅寺修行に想う~プライドを叩き潰されないと、人もコードも成長しない

ご存知のようにスティーブ・ジョブズも禅に傾倒していました。ころくさんの誘いでぼくも三泊四日の禅修行をしました。足るを知る、人間起きて半畳寝て一畳天下取っても二合半と言う世界です。圧倒的に無駄なものを削ぎ落とす思想に触れ、自分の思考に大きな影響を与えたと思ってます。

また、4日もスマホを触らないでいると異常に精神が軽くなりました。修行の中で今まで会うことのない人にたくさん出会い、多くを学びました。これもまたエンジニアtypeの連載がなければ絶対やらない体験だったと思います。一つ残念なことは、この禅修行の記事のPVが著しく低く、あまり読まれなかったことです。ただ、数字にならないものを多く得たように思います。

岐阜取材と地方格差

また、連載の番外編として編集長と岐阜に行ったことも1つの思い出です。

>> ある高校生プログラマーのリアル~Macとボクと、時々、ふくゆきさん

ここでプログラミング学習中の高校生との対話を書いています。記事の中には書いていませんが、地方格差とは何かっていうのを思い知らされるわけです。インターネットがこんなに広まっていても地方との情報格差は想像以上に大きかったのです。

ゲームやSNSやLINEやスタンプなどを消費するカルチャーは地方にも十分に普及していますが、生産するカルチャーは届いてないように見えました。ぼく自身もともと田舎者なので、地方に情報や熱量が思ったより伝わってないことを改めて知らされました。それよりも、編集長と名古屋のあつた蓬莱軒でひつまぶしを食べたことの方が思い出深いですが。

「何かを発信していれば、人生はいい方向に変わるもの」

そんなわけで、何かを発信していると、いろんなことが起こるわけです。これを読んでいる皆さんも、人生で悩んだら、何でもいいから発信してみてください。何かを発信し続けていれば、どこかで誰かが見てくれて、何かを得られるのではないかと思います。

ただ、4年間もエンジニアというテーマだけで書くのはつらく、原稿が遅れに遅れ、編集担当のころくさんに迷惑ばかり掛けていたのは否めません。

今までありがとうございました。

エンジニアtype編集部の皆さまにも心から感謝します。

>> 村上福之氏の連載一覧

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/efair-0130 2016年、いよいよ転職市場にもIoT普及の兆しが~1月30日エンジニア転職フェア出展企業に見る[PR] //type.jp/et/log/article/efair-0130 Tue, 26 Jan 2016 10:52:27 +0000 From GotCredit

From GotCredit

テクノロジーの世界で、毎年必ずと言っていいほど登場するバズワード。ここ1~2年で言えば、IoT(モノのインターネット)や人工知能、VR、FinTechなどがその代表例だろう。

こうしたトレンドは、実際にビジネスとして盛り上がるまでには一定のタイムラグがある。転職市場も同様で、新技術・有望ジャンルがアーリーアダプターに注目されるフェーズがひと段落した後、事業化が本格的に進み出すタイミングで各社が採用に動き出す。

この観点から予測するなら、少なくともIoT領域においては今年2016年が「普及の転換点」になることが間違いなさそうである。

弊サイトの姉妹メディアである転職サイト『@type』が1月30日(土)に開催する『エンジニア転職フェア』の出展企業を見ると、IoTビジネスの実現に向けてITとモノ、ソフトウエアとハードウエアの垣根を越える“越境者”を求める企業がにわかに増えているからだ。

今回、企業説明用にブースを出展する企業を眺めると(出展企業一覧はコチラ)、ソニーがITエンジニア募集企業として、アマゾン ジャパンがモノづくりエンジニア募集企業として名を連ねており、京セラのソフトウェアラボも「IoT」をキーワードに人員募集を行っている。

>> 参考記事:「日本がIoTで世界をリードする」世界初のカメラ付きケータイ開発者が、京セラ新研究所の設立に賭ける思い

また、フェア内で開催される無料セミナーでは日本IBMが【IBM Watson – 加速するIoT時代とIT業界の未来】と題する講演を行う。タイトルに「未来」と銘打ってはいるものの、同社でワトソン製品開発を手掛けるソフトウェア開発研究所のエンジニアが登壇し、すでに他社と協業で開発を進めている内容を公開する予定だという。

水面下で動いていた各社のIoTビジネスが、徐々に形になっていく過程を知ることができるだろう。

異分野転職の活性化で、求められるスキルや経験はどう変わるのか?

ちなみに、既存の技術領域と別領域がクロスオーバーしたような開発を行う企業が“越境者”を求める動きは、今後IoTのみならずさまざまな側面で進んでいくと見られる。

前述したアマゾン ジャパンは、セミナーで同社の物流オペレーションプロセスの設備面とシステム面を支える「ACES」と呼ばれる事業部について説明することになっている。モノづくりエンジニアの募集でブース出展することと合わせて考えれば、ACESが目指す次世代の物流プロセスを実現するには、同社の持つソフトウエアの開発力とハードウエアの知見両方が求められるのだろう。

他にも、当日の無料セミナー枠ではGMOペパボ、freee、VOYAGE GROUP3社のCTOが【エンジニアが根付く企業に学ぶ組織運営術】をテーマにパネルディスカッションを行う予定となっている。今年のエンジニア採用の動向や、技術者に求められるものがどう変化していくのかも含めて、会場でウォッチしてみては?

開催概要

【会場・日時】
2016年1月30日(土)11:00~18:00
東京ドームシティ・プリズムホール(東京都文京区後楽1丁目3−61

>> 事前登録制。1/29(金)までに事前登録をしてご来場いただいた方には、QUOカード1000円分プレゼント!

【セミナー席数】
100席(事前登録制)

【セミナースケジュール】

■第1部:11:30~12:15/転職ノウハウセミナー

キャリアアドバイザーに学ぶ!転職成功への実践的レクチャー
~市場価値(強み)を知るための方法~

[講演者] 株式会社キャリアデザインセンター
キャリアアドバイザー 長谷川敬

■第2部:13:30~14:30/パネルディスカッション

働き方、環境づくり、キャリアアップ支援
~エンジニアが根付く企業に学ぶ組織運営術~

[パネラー]
GMOペパボ株式会社 執行役員CTO 栗林健太郎氏
freee株式会社 CTO 横路隆氏
株式会社VOYAGE GROUP 執行役員CTO 小賀昌法氏

■第3部:15:00~15:45/企業講演-1

IBM Watson – 加速するIoT時代とIT業界の未来

[講演企業] 日本IBM

■第4部:16:30~17:15/企業講演-2

出展企業の採用担当者に聞く!
2016年求められるエンジニアとは

[講演企業] アマゾン ジャパン

>> エンジニア転職フェアの詳しい情報はコチラ

文/伊藤健吾(編集部)

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/proever テスターからベンチャーCEOに。ナレッジベースシステム『ProEver』開発者がシリコンバレーで学んだこと //type.jp/et/log/article/proever Tue, 26 Jan 2016 09:30:03 +0000 ProEver, Inc.のCEO古屋征紀氏

ProEver, Inc.のCEO古屋征紀氏

2014年は、正月から憂鬱な気分だった。それまで数年にわたって一緒に製品開発を行ってきた同僚のエンジニアが、年末休暇中に「会社を辞める」とメールしてきたからだ。

この話の主人公である古屋征紀氏は当時、プロジェクトマネジメント支援を軸とした各種のPMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)ソリューションを提供するマネジメントソリューションズで、とあるツール開発のプロダクトマネジャーを務めていた。務めると言っても、チーム再編やメンバーの入れ替わりといった紆余曲折があり、長く開発を担当していた古屋氏がチームをリードする立場となったのだった。

2007年に同社の合弁会社へアルバイト入社して以来、テスターやエンジニアとしての現場経験しかなかった古屋氏に、そこからプロダクトとチームを立て直すのに必要な知恵は備わっていなかった。

だが、最後の1人となり途方に暮れていた彼の人生はここから激変する。

新たなプロダクト開発を託されてシリコンバレーに足を運ぶようになり、2014年の秋には現地で出会ったエンジニアと共に機械学習を用いたナレッジベースシステム『ProEver』のプロトタイプ開発に着手。約1年後の2015年11月に無事β版をローンチし、マネジメントソリューションズの100%子会社となるProEver, Inc.のCEOに就任した。

「この1年間で、僕の価値観は天動説から地動説になるくらい変わった」と話す古屋氏は、シリコンバレーで何を学んだのか、詳細を聞いた。

「開発者を辞めよう」と思っていた時期に掛けられた一言

元テスターだった古屋氏が、シリコンバレーに行くことになったいきさつは?

元テスターだった古屋氏が、シリコンバレーに行くことになったいきさつは?

その前に、彼の経歴をざっと振り返ろう。

「そもそも僕は、プログラミングに触れるようになった時期が遅かったんです。社会人になるまでは、ド文系の人間でした」

大学院では哲学を学んでいた。在学中に日本でブロードバンドが普及し始め、ITやインターネットに強い関心を持つようになったものの、学歴上IT業界への就職は縁遠いと感じていたという。

そこで知人伝いでIT系の仕事を探したところ、まだ創業間もなかったマネジメントソリューションズを紹介され、関連会社のアルバイトから始めることに。最初はテスターをやりながらソフトウエアのイロハを覚え、徐々に受託開発、自社製品の開発へと活動の場を移していく。

冒頭に記した転機が訪れたのは、マネジメントソリューションズが開発・運営していたプロジェクト管理ツールの開発時だ。プロジェクトマネジメントをITの側面からも支援しようと、JIRAやRedmineのようなツールを開発していたが、大きく普及するには至らず。追い討ちをかけるように、開発メンバーも減っていった。

このままだと、会社にいる価値のない人間になってしまう。いっそ、開発者を辞めて社内の情報システム部員にでもなろうか……。そう考えた古屋氏は、プロダクトの今後と自身の去就について社長の高橋信也氏に相談する。すると、意外な答えが返ってきた。

「高橋はその時、米国法人の立ち上げでカリフォルニアのサンマテオに移住していたんですね。それもあってか、『一度失敗したくらいで何をクヨクヨしているんだ』、『ITにおける世界の最先端はもっと競争が熾烈だぞ』と。要は、エンジニアとしてマインドセットを変えろと叱られたのです」

この一件をきっかけに、シリコンバレーへの道が開かれることになる。

「1時間もムダにできない」と足を運んだセミナーで、後の盟友と出会う

ベイエリアに出張していた時期のオフショット(本人提供)

ベイエリアに出張していた時期のオフショット

高橋氏の言う「世界の最先端」を肌身で体感するために、その後の古屋氏は出張ベースでたびたびベイエリア(サンフランシスコ市内~シリコンバレー一帯のIT企業集積地)を訪ねることになる。

会社から「事業開発担当」という肩書きを与えられ、ある時は高橋氏の家に住み込みで、ある時は2~3カ月ホテル住まいをしながら、ひたすら見聞を広めていった。

エンジニアとして何も作らず、社費で出張を続けることに後ろめたさを感じ、高橋氏に詫びたこともある。しかしその時も、「投資というのは失敗しても恨みっこなしだから投資なんだ」、「だから、現状を詫びるより『何を生み出すか』にフォーカスしろ」と檄を飛ばされた。

「あのころは英語もままならない状態でしたが、1時間もムダにしちゃダメだと思い、現地の大小さまざまなセミナーやミートアップに通いまくっていました」

この行動が、後に『ProEver』を共同で開発することになる台湾出身のエンジニアJay Hsueh氏との出会いを生んだ。

当時のHsueh氏は、世界的な半導体サプライヤーであるNXPセミコンダクターズで働きつつ、機械学習に精通する起業家として複数の社外プロジェクトにも携わっていた。

「彼とは、Facebookの人が登壇するUI/UX関連のセミナーで出会いました。偶然隣の席に座っていたJayに話しかけられたんです。その後何度か会ううちに、彼が機械学習エンジンの開発をしていると知り、何か一緒にやれるかもしれないと感じました」

Jay Hsueh氏と出会ったころに撮った一枚

Jay Hsueh氏(写真右)と出会ったころに撮った一枚

Hsueh氏との交流は、古屋氏にある種の自信をもたらすことにもなった。それまでメディアや書籍でしか触れることのなかった機械学習を、目の前にいる人が「普通に」駆使してプロダクト開発をしているという事実。

これが、先端テクノロジーを自分事としてとらえるきっかけになった。

「Jayと会ったセミナー然り、比較的小さなミートアップだったとしても、日本にいると雲の上の存在と感じるような会社の人たちが普通にやって来て、会話することができる。シリコンバレーに行って一番変わったのは、まさにこういう環境で得られる自信でした。フィギュアスケートで誰かがトリプルアクセルに成功すると、その後に他の選手も飛べるようになるじゃないですか? あれと似た感覚かもしれません」

Done is better than perfect.

こうして得た知見と、高橋氏やHsueh氏との度重なるブレインストーミングの結果生まれたのが、『ProEver』の構想だ。

このサービスは、プロジェクトマネジメントで直面する課題に対する事例やその解決策をCGMとして収集し、機械学習を搭載した独自エンジンがユーザーの状況に合わせてレコメンドするというもの。ユーザーが自身の職歴や現在手掛ける案件でのポジションを登録した後、サイトに「質問」を入力するだけで、最適な解決法が記された投稿をマッチングして表示してくれる。

いわば、プロジェクトマネジメントに関する集合知を機械学習エンジンが“メンター”代わりになって提示し、人それぞれに異なる課題を解消するサービスといえる。各種PMOソリューションを提供しているマネジメントソリューションズの事業とも、シナジー効果が見込めるものだ。

まだβ版ながら、すでにテスト導入する企業からいくつかの要望が寄せられており、徐々に手応えを感じているという。古屋氏は今後、それらの声を踏まえて新機能を開発し、正式版のリリースを予定している。

シリコンバレーでは、Hsueh氏と2人でホテルに缶詰状態になってコーディングしていた時期も(本人提供)

シリコンバレーでは、Hsueh氏と2人でホテルに缶詰状態になってコーディングしていた時期も

「プロトタイプの開発中はインドの会社へオフショアをしていた時期もありました。でも、こういう前例のないサービスづくりでは、要件も朝令暮改で変わっていきます。なので、途中からは僕とJayの2人で開発をしてきました」

そのHsueh氏は、ProEver, Inc.の共同創業者兼取締役として、近日来日することになっている。強力な仲間を得て、日本のみならず英語圏での普及も見据えて開発とマーケティングに注力していく。

「マーク・ザッカーバーグの有名な言葉の一つに“Done is better than perfect.(完璧を目指すよりも、まずは終わらせろ)”というものがありますが、新規プロダクトの開発で大切なのは、まさにこれだと実感しています。今は、分からなかったことが分かるようになるのが楽しい時期。CEOとしてもまだまだ未熟ですが、常に学びながら『ProEver』を育てていきたいと思っています」

取材・文・撮影/伊藤健吾(編集部)

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/fintech-fshin えふしん氏が考える、日本におけるFinTech普及のカギとは //type.jp/et/log/article/fintech-fshin Mon, 25 Jan 2016 12:02:42 +0000 2015年元日に、日経新聞紙面に「FinTech」の文字が躍ってから約1年。

金融系サービスを扱うスタートアップが次々と登場し、そのサービス自体はもちろん、ブロックチェーンのように付随する技術もホットワードになるなど、さまざまな分野のエンジニアから注目を浴びている。

そんな中、「EC・決済最新動向」をテーマに2016年1月17日に開催された『TechLION vol.24』では、ビジネスサイド・セキュリティサイドの有識者を招き、FinTechに関するトークが展開された。

ゲストの1人として登壇したのは、EC出店プラットフォーム『BASE』や、オンライン決済API『PAY.JP』を提供する株式会社BASEのCTO、えふしんこと藤川真一氏。

えふしん氏のトークでは、自らがFinTechを手掛けるスタートアップのCTOという立場だからこそ見える、日本でFinTechを普及させるための持論が話された。

24回目を迎えた『TechLION』。会場は多くの観客で埋め尽くされた

24回目を迎えた『TechLION』。会場は多くの観客で埋め尽くされた

日本社会とFinTechの相性はイマイチ?

日本で「FinTech」という言葉が耳目を集めるきっかけとなったのは、2014年2月のビットコイン交換所Mt.Goxの倒産だろう。

その影響で、ビットコインと聞くといまだネガティブなイメージを抱く人がいるかもしれない。しかし、そのビットコインのバックグラウンドの技術が今、注目を集めている。えふしん氏はその技術「ブロックチェーン」について、次のように話す。

「僕の解釈では、ブロックチェーンとは世界各地にサーバを置き、相互監視のもと、取引の記録を蓄積することで改ざんリスクやデータ消失のリスクを分散する技術。これを用いれば、人間が介入しなければできなかった与信審査などの仕事を自動化できるかもしれない」

事実、先行するアメリカのFinTechサービスが対象としているユーザーは「機械化しないと、とてもじゃないけど手が回らない人たち」だとえふしん氏は言う。

「人間が介入しなければいけなかった仕事をFinTechで補えるようになると、その恩恵を一番受けるのは低所得者向け融資や中小企業への融資の与信など、案件数が多い仕事です。また、金融技術が完成していない国ともFinTechはマッチします。金融技術が成熟している国は、規制が多く、破壊的技術が生まれにくい。そもそもインターネット産業は発展途上国との相性が良いんです」

えふしん氏がFinTechと相性が良いと考えるのが、低所得者向け融資を手掛けるビジネスだ。しかし、日本では次の理由から相性が良くないかもしれないとえふしん氏は予測する。

「普段、日本で暮らしていると感じませんが、例えば、大学生でもクレジットカードを持てたり、ローンを組めたりと、日本はとても信用力が高い国。また、金利の上限が決められているなど、貸金業者においての規制が強く、他国のようにはいかないかもしれません」

大手金融会社との協業から得た学び

では、日本でFinTechが成立するにはどのような条件が必要なのか。えふしん氏は、日本のネット企業が金融ビジネスに参入して成功している例として、楽天の例を挙げた。

「楽天カードのビジネスモデルはFinTechの教科書と言ってもいいくらいの好例だと思います。楽天カードの特徴は、低い審査条件でカードを作れるものの、滞納などの不備があった場合はすぐに凍結されるということ。また、利用者にリボ払いをアピールし、金利を稼ぐという収益モデルをとっています。さらに上手なのは、楽天市場や楽天銀行など、グループ内でカードの利用機会を多く作っていること。これらのビジネスモデルはサブプライム層を相手にした時のリスクを運用とテクノロジーでクリアした最たる例と言ってもいいでしょう」

では実際、えふしん氏が携わる『BASE』と『PAY.JP』では、どのようにしてFinTechの潮流を作ろうとしているのか。

「『BASE』と『PAY.JP』において共通するビジョンは、お金や経済の流れを作ることなんです。『BASE』は実店舗がEC化する入り口として使ってほしい、『PAY.JP』は誰もが簡単に決済できるようになってほしいという思いがあります。だからこそ、手数料は0円にできるだけ近づけて、超薄利多売でより多くの人に利用してもらい、大きな潮流を作りたいと思っています」

この手数料を0円に近づけるという収益モデルは、大手金融会社との対話から見出したものだ。

「大手と組むことで得た気付きは大きい」と話すえふしん氏

「大手と組むことで得た気付きは大きい」と話すえふしん氏

「現在は三井住友カードなど、大手金融系企業とパートナーシップを結んでいます。加盟店審査の厳しさ、避けられない手数料の部分、ネット特有ビジネスとの折り合いの難しさなどを知りました。もちろんこれは、金融業なら避けては通れない道だと思うのですが、一方で、インターネットの時代ではもっと良い方法があるんじゃないかとも思うんです。この信頼性の担保を僕らで行うことができないかと模索しています」

そのために、将来的にはビッグデータ解析を用いた、事業戦略も構想しているという。

「すごく難しいことなのですが、『このお客さんは悪いことしないよ、信頼できるよ』ということをテクノロジーで証明できれば、もっと価値の高いサービスになると思っています。また、『PAY.JP』の加盟店であるショップの方々が、どのような商品が売れているのかなど、スコアリングして判断できるロジックを作ることができれば、それに付随するリスクなどもまた、スコアリングできるようになるはず」

技術オンリーではなく、技術+ビジネス視点で信用を勝ち取る

大手金融系企業と協業することによって、見えたことはこれだけではない。それは、日本でFintechスタートアップを起業する上でも、踏まえておかなければならない周囲の「期待」とも言えるものだ。

「パートナー企業が僕らに期待していることの一つに、ミッションクリティカル性とスピード感の両立があると思います。大手企業がFinTechを始めようとすると、いきなり数千万人規模の対象ユーザーを抱える可能性がある。金融はミッションクリティカル性が高いため、スタート時点での規模が大きければ大きいほど、システムを改善する際のリスクも大きくなりますよね。つまり、スピード感をもって改善を施しにくくなる。対象ユーザーが少なくスタートできるのは、スタートアップならではの強みなんです」

UXを速やかに改善し、スマホやネットユーザーを取り込めることは、大手にはできない、スタートアップだからこその生きる道だ。しかし、技術力は必要条件に過ぎないとえふしん氏は続ける。

「もし日本でFinTechのスタートアップを起業したい人には、エンジニアサイドだけでなく、ビジネスサイドの人間を入れることを薦めたいです。『PAY.JP』は『Pureca』というサービスをM&Aで獲得して作ったサービスですが、その『Pureca』と『BASE』はどちらも学生が興した会社です。『Pureca』が立ち上がりに苦戦した原因はいきなりクリティカルな金融という分野に手を出したことが大きかったんじゃないかと思います。一方で、BASEはある種CMSの提供というアプローチで、ビジネスマターの部分を解決するようなスタートでした」

この違いがその後の2社の明暗を分けたとえふしん氏は推測する。

「『Pureca』を作っていたのは超ギークなチームで、すばらしい技術力を持っていました。その技術力と、弊社の鶴岡(裕太氏、BASE株式会社CEO)がBASEという会社で作ってきたビジネス人脈が合わさって『PAY.JP』としてリリースできた。テクノロジーは必須ですけど、ビジネスを知っているということも重要で、その視点がないと信用を得るのは難しいという面もあります。もし、金融業界出身者にチームにジョインしてもらえるのなら、それがベスト。技術力+ビジネス力で信用を実現しようと考えたのが『PAY.JP』です。金融という分野で仕事をしていく上で一番大事なのはやはり、『信用』でした」

これを踏まえ、えふしん氏は日本でのFinTechスタートアップの成功の道筋を次のように示した。

「もしテクノロジードリブンでガンガンいきたいのなら、ブロックチェーンや暗号通貨など、いまだ一般化していないテクノロジーの時代を見据えて先取っておくのがいいのではないでしょうか。また、BASEのように今までのスキームを技術で置き換えるサービスで、ビジネスの人たちを味方に付ける方法は、日本にはマッチしているといえるかもしれませんね」

文/佐藤健太(編集部) 撮影/TechLION事務局

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/retrip RETRIPを1年半で月間1400万UUにした20代プロデューサーが、次に仕掛ける「おでかけ体験のハブ構想」とは? //type.jp/et/log/article/retrip Fri, 22 Jan 2016 09:16:42 +0000 2011年設立のベンチャー企業trippiece(トリッピース)が、2016年に入り新たな動きを見せようとしている。

同社の名が知られるきっかけとなった旅のSNS『trippiece』は、ユーザーがオリジナルな旅行プランを企画し、そのプランに共感した人たちと一緒に旅をすることで体験をシェアし合うというもの。CEOの石田言行氏ら創業メンバーが描いたビジョンは多くの旅好きの心をつかみ、23万人がユーザーとして参加、これまでに何千件もの「シェアトリップ」を実現してきた。

しかし、順調にユーザー数を伸ばし、JTBなど大手企業との事業提携にも成功する一方で、収益拡大には苦戦。ユーザーが作成した企画を旅行会社がツアー化し、実現することで手数料を得るビジネスモデルは成長の踊り場に差し掛かっていた。

そこで次の一手として構想を練ってきたのが、2014年6月にリリースしたオウンドメディア『RETRIP(リトリップ)』のサービス化である。

旅とおでかけ情報のキュレーションメディア『RETRIP』

旅とおでかけ情報のキュレーションメディア『RETRIP

便宜上「オウンドメディア」と書いたが、現在のRETRIPを一言で形容するのは難しい。

海外旅行についてのコンテンツマーケティングを行う目的で始めたこのメディアは、「旅」と「おでかけ」情報のキュレーションメディアに進化することで、今ではtrippieceを上回る月間1400万以上のユニークユーザーを獲得している(同社調べ)。

「この領域のキュレーションメディアでは国内最大級」(同社広報)というその勢いは、例えば【大阪】【ハワイ】【ラーメン】などのGoogle検索キーワード順位で、主要な旅行サイトやグルメサイトより上位表示されるほどだ。

また、外部からまとめ記事を投稿するキュレーターを募り、記事閲覧数に応じて広告収入の一部を還元するインセンティブプログラムを導入したことで、CGMとしての顔も持ち合わせるようになった。承認制にもかかわらず、キュレーターの人数は個人・法人を合わせてすでに4桁を越えているという。

記事の投稿主にとって、RETRIPは自ら情報発信することで観光客の増加や地域活性化のきっかけを作れる場であり、報酬を得ることもできるプラットフォーム的な場所になっているのだ。

今後はこの特徴を強化・発展させて、旅行会社や地方自治体、飲食事業者などとも連携を深めながら、ユーザーと観光地、ユーザーと地域をつなぐハブとして生まれ変わる予定だ。

この「ハブ構想」の実現に向けて、すでに社内のエンジニアチームはスマホアプリやバックエンドの開発を進めている。事業責任を担っているのは、同社取締役で25歳のRETRIPプロデューサー田中勝基氏だ。3年半前、デザイナーとしてtrippieceに入社した彼は、リリースから約1年半の間にどんな打ち手を採ってきたのか。その仕事ぶりに迫る。

モチベーションは「スケールすること」への渇望

trippiece取締役で、RETRIPプロデューサーの田中勝基氏

trippiece取締役で、RETRIPプロデューサーの田中勝基氏

実は入社時に田中氏の肩書きがデザイナーだったのは、形式だけのことだった。

父親は経営者で、起業と倒産、復活のすべてを経験した猛者。その影響もあってか、自身も学生時代からアントレプレナーを目指すようになる。

実際、19歳の時には地元・北海道で不動産や通信商材を扱う会社を興してもいる。そこから上京→trippiece入社に至った理由は、親戚が海外でやっていたWebサービスの急成長を知り、インターネットのすごさを改めて実感したから。自身の事業もIT領域へのシフトを試みたものの、失敗。その後上京を決意し、住み込みで働けそうなWebベンチャーを探した結果、CEOの石田氏と意気投合してtrippieceに入社したのだ。

寝袋を持ってオフィスに押しかけ、その後は昼夜を問わず働く毎日。モチベーションは「スケールすること」への渇望だ。Webの世界は、打ち手さえ正しければ一気にサービスを拡大できる。田中氏は、次第にデザイナーの範疇に収まらない幅広い業務をこなすようになっていた。

そうして任されたのが、RETRIPの運営。急成長の秘密を聞くと、「ユーザー、キュレーター、広告主の3者が求めていることをやってきただけです」と答える。

「小手先でPVを伸ばす方法もないわけではないですが、それではユーザーやブランドが定着しませんし、成長面でも中長期視点で見ると遠回りになるだけ。trippieceの持つさまざまな資産を有効活用すれば『旅とおでかけ情報』の領域でNo.1になれるとずっと思っていましたから、実際にNo.1になるまで、やれることを全部やるしかないと」

採ってきた施策は、例えばこんな内容だ。SNSや各種メディアへの記事配信を増やしてユーザーとの接触機会を最大化すること。効率的に検索流入を増やすためのサイト内部設計を行うこと。キュレーターと投稿記事数を増やすために、専用のCMSをスクラッチ開発すること。スケールするために必要なことすべてを一気に考え抜き、それらを「ただ順番どおり実行してきた」と言う。

CGMが直面しがちな画像の不正利用問題に対しても、独自CMSに著作権フリーの画像やクリエイティブ・コモンズ対応のものを選びやすくする機能を搭載するなどして、仕組みを整備してきた。

無論、田中氏がすべての運用や機能開発を1人で行ってきたわけではない。資金や人材が潤沢にあるわけではないベンチャーならではの環境下、経験の乏しいスタッフを即戦力化する仕組みづくりも並行しながら、戦略の実行力を高めてきた。

自身もフロントエンドのコードを書きながら、外部提携をスムーズに進めるためのAPI開発や、スマホユーザーの利便性を高めるアプリ開発など、エンジニアと理解の齟齬なく仕事を進めるための仕様は画面1枚に至るまですべて作る。

実行に移す上で足りない知識は、その都度調べ、自分で試しながら覚えてきた。「人に何かを説明するのが苦手で……」と言う通り、戦略や成果を大仰に語ることもない。でもその柔軟さこそが、固定概念にとらわれないという点で彼の強みなのだと感じさせる。

地方再生や地域活性化の一助に。Webに閉じないビジネスを作りたい

今の興味は、次第にリアルな世界やチームにも向かいつつあるという

今の興味は、次第にリアルな世界やチームにも向かいつつあるという

RETRIPが1000万ユーザーの大台を越えた時も「それほど感慨はなかった」と明かす田中氏。ならば彼の見ているゴールはどこにあるのか。

一つは特定領域でNo.1のプロダクトを生み出し、「ドーンと規模が取れるビジネスに発展させる」こと。No.1になれる領域でNo.1になれなかったら、次の展開もない。そう考えているから、今はまだ「最初の通過点にもたどり着いていない」と言う。

そしてもう一つは、Webテクノロジーの力を使って今以上にリアルな世界を盛り上げることだ。

地方出身の田中氏にとって、シャッター商店街や客足の減り続ける観光地が抱える苦悩は他人ごとではない。だからこそ、RETRIPを「観光とおでかけのハブ」に進化させることで、地方再生や地域活性化に一役買うことができればと考えている。

「前に、鹿児島の百合ヶ浜に住む方から『RETRIPを見て来たという観光客が増えた』と言われたことがあったんですけど、たぶん、RETRIPをやっていて一番うれしかった瞬間はあの時でした。PVが増えることより、例えば友だちがLIINEグループでRETRIPの記事をシェアしながら休日のプランを話しているのを目にする方が、よっぽどうれしいですね」

今後のハブ構想で目指すのは、まさにこういう瞬間をもっと増やすことだ。情報を起点に旅券・イベントのチケッティングや物品購買がシームレスにつながり、ユーザーの観光体験、おでかけ体験をアップデートしていく――。そのために必要なことも、田中氏はその都度学んでいくだろう。

「最近は、チームじゃなきゃできないことをやりたいという思いも強くなってきました。RETRIPは今、社内のエンジニアと編集部だけでなく、外部のキュレーターや仲間も含めた“ゆるいつながり”が一つのチームになっている状況です。この輪をもっと大きくしながら、早く次の通過点にたどり着けたらいいなと思っています」

スケールすることへの渇望は、まだまだ尽きないようだ。

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取材・文・撮影/伊藤健吾(編集部)

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/tomkawada12 人工おかあさんは、実家を出るときにビットコインを持たせてくれるのか?【連載:川田十夢】 //type.jp/et/log/article/tomkawada12 Fri, 22 Jan 2016 07:46:39 +0000 s_12_1

この連載は、読者層であるところのエンジニアへ向けた手紙のつもりで書き始めた。プログラム越しに現実世界と接続することの楽しさ、虚しさ、苦しみ、喜びについて書いてきた。流浪のプログラマとしてプロジェクトごとに数々の大企業を渡り歩く敏腕から、覚えたてのプログラムでようやくひと仕事終えた若手まで。エンジニアという仕事は、世間一般に理解されにくい。顔も表情もない世界だと思われている。そんなこと全くないのに、おかしな話だ。

すべての記事の更新が止まり、事実上の廃刊となるエンジニアtype(※編集部注:更新停止とリニューアルのお知らせ詳細はコチラ)。最終回となる本稿では、実際に触れてみて明らかになった人工知能の可能性について掘り下げつつ、読者を取り巻く明るい未来について、要するに「伊藤編集長、担当の小禄くん、おつかれさまでした。エンジニアtypeというマインドは不滅です!」について、書きます。

触れる前のイメージと、触れたあとのイメージ

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人工知能について。メディアが変な煽り方をするものだから、人間の職業を奪うだけの悪者のように感じている人が多い。僕がイメージする人工知能は、むしろ逆。学習のさせ方や表情の与え方によって、人間ひとりひとりの経験や感覚を尊重することになる。記録できないものが記録できるようになり、買えなかったものが買えるようになる。感覚とは何か、痛みとは何か。天才はなぜ天才なのか。人間に対する理解が深まる。母を想うように、人工知能を大切にする時代は必ずやってくる。

どんな新しい技術であっても、まずは触れる前にイメージを膨らませておきたいものだ。人間の想像は、GoogleMapのように拡大縮小ができる。逆にいうと、それができないイメージは、点に過ぎない。文化や時代、文明といった大きなスケールで印象を残せない。つかの間の夢花火、私の心は夏模様、夢が覚めて夜の中、永い冬が窓を閉じてしまう。

季刊猿人という、文化から文明のサイズまで丁寧にあつかうフリーペーパーがある。僕はそこで、占いコーナーを担当している。未来の星座を勝手に占おうという趣旨。ユーモア仕立てであるものの、技術に触れる前のイメージとして適切なのでひとつ紹介したい。2年前の冬に書いたものだが、だいたい2045年まで使えるものとして設計してあるのでまだまだ新しい。最初に出てくる触覚プログラマは、文字通り触覚に特化したエンジニアだ。視覚、つまりディスプレイに触れるスマホのような筐体に次に備わるべきは触覚によるフィードバックであり、その開発とデバッグを担う職業が生まれるのは必然である。【健康運】の欄で、「デバッグのやり過ぎ、皮膚炎に注意」とある。現代のプログラマが目と腰に強い負担を感じているのと同じく、未来のプログラマは皮膚感覚の疲労を覚えることになる。他にも、生体認証デザイナー、オキュラス建築家、Photoshop探偵、ビックデータ占い師など、興味深い職業に関する記述があるが、それは紙面で確認してほしい。最新号では、まさに人工知能の使い道について先回りして占っている。

ゴッホより普通にラッセンが好きって、本当ですか?

イメージを十分に膨らませたあとに開発者が行うべきは、実際に技術に触れてみて現実に落とし込むことだ。触れてもいない技術について雄弁に語るのは、予想屋さんに任せておけばよい。僕たち開発者の仕事は、人類の多くがまだ触れていない冷たい印象の技術に、温かい表情を与えることなのだ。

まずは、A Neural Algorithm of Artistic Stlyeという論文で明らかになったアルゴリズムについて書いておこう。任意の画像からパターンを分析・学習してスタイルを確立、モデルとなるコンテンツ画像を根拠に結果を出力するというもの。つまり、画家の画風を学習して、好きな画像を絵画にしてくれるということでもある。具体的な実装には、Neural-Styleを使った。Ubuntu(アフリカのズールー語で「他者への思いやり」を意味する、とにかくやさしいLinux系OS)とTorch(ディープラーニング:深層学習を実装するためのC++ライブラリ)と CUDA SDK(NVIDIAが提供するGPU向けのC言語の統合開発環境)さえ用意すれば、わりと簡単に動く。そのため、世界中のプログラマによって肖像権と著作権を無視したフリーダムな試みが実装されている。技術展開のパターンは、だいたい萌芽とともに出尽くして、あとは制約という名のダウンスケールへ向かう。旬なうちに旬な話題を、まずは扱っておくべきなのである。

「ゴッホより普通にラッセンが好き!」「ピカソより普通にラッセンが好き!」という絶叫とダンス。一発ギャグとして普通にテレビから流れてきたときは、たいそう驚いた。そのまま美術史の教科書に載せてもらいたいと思った。でもきっとそれは叶わないし、多くの一発ギャグがそうだったようにやがて飽きられてしまう。永野の功績を讃えて、絵画として(自分なんかホント生意気なんですけど)残してみることにした。

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左から、人工ゴッホ、人工ピカソ、人工ラッセンに描いてもらった。個人的には人工ピカソが描いた永野がいちばん好みだが、当事者はどう感じるのだろう。Twitter越しに確認してみた。忙しいのか、気持ち悪いと思われてしまったのか、いまのところリアクションは何もない。

当事者がよく思わない問題について

画風を人工知能に覚えさせて、さまざまな対象をスケッチしてもらうのは楽しい。技術者が一方的に楽しくても、当事者が楽しくないのであれば、技術は浸透しない。モデルであるところの永野からのリアクションはなかった。では、ゴッホとピカソとラッセンはどう感じるだろうか。説明を間違えると、きっとおもしろく思わないだろう。こんなもの、自分の作品の劣化コピーに過ぎないじゃないか。きっと苦情が出てくるし、権利保持者から訴えられる可能性だってある。これは画家に限った話ではない。もはや人工知能は、音楽や小説などといった芸術分野から、投資や法律や医療にまつわる産業分野まで、多くの領域に及んでいる。正しい正しくないの倫理的な判断さえも、人工知能が司る時代が、遅かれ早かれやってくる。技術開発はもちろん大切だが、当事者とどういう会話を重ねてゆくのかも、重要になってくる。

人工知能が流行ると、予防医療が進む。交通渋滞が減る。

機械やプログラムがこれまで担ってきたのは、ざっくり言うと自動化だ。自動販売機は硬貨を投入するだけで温かいコーヒーを無人で提供してくれるし、ETCや自動改札機の登場によって狭い空間での人間の立ち仕事は少なくなった。時代がひとつ進むたびに、反発は必ず生まれる。自動改札機が導入されたときも、当事者であるところの職員からは、強い反発があった。しかし、すっかり自動改札機が浸透した現在では、どうだろう。新入社員にうっかり切符きりを強要したら、自ら辞めていってしまうのではないか。利用者からしても、いまさら切符の時代には戻れない。自動化が進むたびに、自分がやらなくてもいい仕事をスキップできるようになる。スキップして生まれた余白から、人間にしかできない新サービスや時間の余裕が生まれてくる。歴史が証明している。

深層学習によって拡張された人工知能は、これまでのような単なる自動化を担うだけではなく、より専門的かつ超人的な特定の人間の経験を、何かに宿したり持ち歩いたりできるようになる。ニーズの面から逆算すると、待ち時間が必要なサービス全般が、よりカジュアルに利用できるようになる。たとえば、病院に行くのは面倒臭い。待ち時間も長い。休みを取ってまで足を運ぶイメージが湧かない。本当に危ないときにしか、病院のお世話にならなくなる。結果的に、予防医療という意味で遅れてしまう。国が負担する保険料が嵩張る。本当に危ないときにだけ、救急車を呼ぶ。環八と甲州街道が混み始める。時間を取り戻そうと、ドライバーは高速道路で無茶な運転をする。事故が増える。予防医療の遅れが、渋滞を呼ぶ。悪魔の循環プログラムである。

病院に行くまでもないけど、ちょっと心配なことは人工知能で済ませたい。膨大な待ち時間の末に、医者と対面しなくてはいけない医療行為は、どう考えても敷居が高い。人工ドクターが内蔵されたカジュアルな医療機器で、自分がどんな状況か事前に確かめたい。あらゆるセンサーを搭載した、医療行為の自動販売機があってもいい。処方箋がプリントされて、処方された薬がその場でバタン。その場で買えたらもっといい。

これ、私がやらなくちゃいけない仕事ですか?

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当事者の話に戻そう。カジュアルな医療行為が広く一般に浸透したとして、医者はどんな実害を被るだろう。きっと大きな被害は受けない。それどころか、忙しすぎる現在の状況とプレッシャーから解放されて、心の余裕が生まれるに違いない。

プロフェッショナルの誇りがあればあるほど、「これ、私がやらなくちゃいけない仕事ですか?」と感じる場面がある。存在を聞きかえすような無粋な行為を、その人に頼むしかないというだけで、簡単にしてしまう。これもまた悪魔の循環だ。もしもまだ生きているとして、ピカソに「日本に芸人の永野っていうのがいてですね、彼があなたに敬意を表してお笑いのネタにしてて、ぜひ彼をモデルに絵を描いてもらいたいのですが、いかがですか?」「ちなみに永野は、あなたよりもラッセンが好きらしいです。普通に」と伝えたら、彼はどう感じるだろうか。全世界で有名な彼のことだ。このオファーが許されるならば、対応しなければならない注文は無限にある。ミステリアス・ピカソというドキュメンタリー映画を見ただけでも、彼が一枚の絵を描き終えるまでに相当の迷いと時間が必要であることがわかる。その前提のもとで、カジュアルにピカソの画風を楽しめる人工知能が存在したらどうか。人工ピカソが一枚絵を描くたびに、著作権料が本人や家族に入るとしたら。それが世界各国で無限に繰り返されたら。誰も損をしない仕組みではないだろうか。

ピカソはほんまに天才か?

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開高健が圧倒的な熱量をもって、自らの美意識について一切の妥協なく書き下ろした『ピカソはほんまに天才か?』というタイトルの本がある。その内容は映画・コマーシャル・デザイン・絵画など多岐にわたる。この文章が書かれた1984年、没後11年が経過し、ピカソが天才であることを誰も疑わなくなっていた。無条件に作品を賞賛した。そんな状況のなか、もはやピカソの絵画は、そのものから受けるエネルギーを失っていると開高は評した。確かに、多くの画家が影響を受けたかも知れない。そんなことは私には関係ない。一枚の絵画として目の当たりにしたときの印象は、限りなく薄い。「単なる煽動家に過ぎなかったのではあるまいか」とまで書いてある。時代性を前提とすると、痛快な指摘であるものの、少し寂しい気持ちになる。

ピカソの絵を、同時代にリアルタイムで鑑賞した者が感じた衝撃を、一枚の絵画から推測することはできても、復元することはできない。絵の具が退色するのに比例して、衝撃のエッジは時間とともに失われてゆく。しかし、現在に題材とすべきモデルが存在して、それを人工ピカソに描かせてみたらどうだろう。少しでも評価は変わらないだろうか。確固たるスタイル、そして独創的な色彩を生み出したパブロ・ピカソという孤高の画家への敬意が、装いも新たに時代を越えて広がってゆかないだろうか。そして、人工知能として蘇った人工開高は、同時代感覚をもってどのように評するのだろうか。こんな想像を巡らせるのは、果たして不遜なことだろうか。

イメージと予想は、大きく異なる。予想屋は、虚数を実数のように提示するのが仕事。当たらなくても責任は取らなくてよい。エンジニアは、実数から虚数を導くのが仕事。起きながらにして、夢を見なくてはいけない。それを、現実に示さなければならない。あなたが抱くイメージが、すなわち未来を象ってゆく。連載はここで終わる。だいじょうぶ、あなたがいれば世界は明るい。

AR三兄弟の微分積分、いい気分。

AR三兄弟・長男 川田十夢(@cmrr_xxx

1976年熊本県生まれ。通りすがりの天才。1999年メーカー系列会社に就職、面接時に書いた『未来の履歴書』の通り、同社Web周辺の全デザインとサーバ設計、全世界で機能する部品発注システム、ミシンとネットをつなぐ特許技術発案など、ひと通り実現。2009年独立。開発者、AR三兄弟、公私ともに長男。2011年 TVBros.連載『魚にチクビはあるのだろうか?』スタート。2013年 情熱大陸、2014年 舞台『パターン』作・演出・開発、2015年 NHK『課外授業 ようこそ先輩』。J-WAVE『THE HANGOUT』毎週火曜日23時30分から絶賛放送中。東京藝術学舎にて、2016年2月6日7日集中講座『拡張現実全論』開高もとい開講。申し込みはすでに締め切り、満員御礼。お楽しみに。
https://twitter.com/cmrr_xxx
http://ar3.jp/

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//type.jp/et/log/article/fshin45 最終回に寄せて。あらゆる転機は連続の中で生まれていく【連載:えふしん】 //type.jp/et/log/article/fshin45 Thu, 21 Jan 2016 11:28:56 +0000
えふしんのWebサービスサバイバル術

藤川真一(えふしん)

FA装置メーカー、Web制作のベンチャーを経て、2006年にGMOペパボへ。ショッピングモールサービスにプロデューサーとして携わるかたわら、2007年からモバイル端末向けのTwitterウェブサービス型クライアント『モバツイ』の開発・運営を個人で開始。2010年、想創社を設立し、2012年4月30日まで代表取締役社長を務める。その後、想創社(version2)を設立しiPhoneアプリ『ShopCard.me』を開発。2014年8月1日からBASE(ベイス)株式会社のCTOに就任

皆さんこんにちは!エンジニアtypeのリニューアルに伴い、今回の連載が最終回になります。

思えば最初の連載は2012年の4月から。まだモバツイを運営するマインドスコープ株式会社を経営していた頃なんですよね。

スマホ世代の人たちには、モバツイと書いてもピンと来ないかもしれませんが、Twitterを携帯電話で楽しむサービスでした。本家モバイル版の登場よりも2年ほど早く作って、100万人を超えるたくさんのユーザーさんに使っていただいたサービスです。

この連載の打診を受けた時は、いろいろな状況変化の中で、出直すためにマインドスコープを譲渡する交渉のまっただ中でした。いろんな会社に足を運び、モバツイを一番活かしてくれる会社さんを探して、同じくTwitterクライアントを作っていたjig.jpさんに譲渡しました。

譲渡が完了した後に書いた記事がこちらになります。

>> 起業することとは、社会的意義を作り、社会にクサビを打っていくこと

ギークではない、という葛藤

2016年1月時点で、モバツイはjig.jpさんが引き続き運営してくれています

2016年1月時点で、モバツイはjig.jpさんが引き続き運営してくださっています

ただ、モバツイは僕がPaperboy&co(現・GMOペパボ)という会社に勤めていた時に作ったサービスで、決して起業しようなどと考えて作ったものではありませんでした。

会社員をしながらモバツイを作った理由は、当時のTwitterがバグだらけで、日本語の送信がままならず、「そんなことをユーザーに意識させるのは馬鹿馬鹿しい」と思ったから。

要は、身近な問題を解決するというアプローチで作ったヘルパーアプリがモバツイだったんです。

まだペパボに在籍していた時、岡田有花さんに取材いただいたのが以下の記事です。

>> 「休む時間もないけど楽しい」15万ユーザーが使う「movatwitter」を1人で支えるには(ITmediaニュース)

その後、起業することにしてマインドスコープを経営していく中で、良いことも難しいこともいろいろ経験しました。そして、マインドスコープを譲渡して改めて会社を設立し、自分でアプリを作ったり、ツイキャスにエンジニアとして参加したり、BASEにCTOとしてジョインしたり……と続くのですが、その間ずっと、一つの重大な問題に悩んでいました。それは、

「自分はギークではない」

ということ。僕は家で一つの技術を研究し、そのことをQiitaに書いたり、GitHubでライブラリやツールを公開するような行為があまり得意ではありません。それよりは、技術を手段としてとらえて、モバツイのようにプロダクトを作ることを考える方が好きだったのです。

KMDへの入学、そして連載最多PVの記事が生まれた理由

今は、BASEの取締役をやりながら、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)に通っています。もし僕がギーク寄りの人間だったら、コンピューターサイエンス系の大学院に通っていたかもしれません。ですが、あえて技術寄りの大学院には行きませんでした。

きっかけは、『TechLION』という技術者向けイベントで、現在の指導教官である砂原秀樹教授と一緒に登壇したことです。

イベントの中でKMDの説明をお聞きしていたら、自分が課題としていた技術とデザインの関係性、KMD風に言えばポリシーとマネジメントを融合させて何かを生み出す、イノベーティブな人材を育てるという教育方針が刺さりました。

砂原教授が登壇された際のTechLION vol.8の様子は、イベントスタッフブログに載っています

砂原教授が登壇された際のTechLION vol.8の様子は、イベントスタッフブログに載っています

さっきも書いたように、昔から、技術は何かを実現する手段だととらえていて、プロダクトをいかに生み出すかという部分に興味がありました。最近、家族に言われて改めて気が付いたのですが、僕は画期的で新しいモノを生み出すことよりも、問題解決の視点で困っている人を助けることの方が好きなのだそうです。

だから、GitHubを通じて何か新しいモノを世に問うというより、もう少し上位レイヤーで、人間や社会が困っていることを解決するために技術を活用したいというプロダクト思考が強いのだと思います。

今風に言えば、技術を活用したUXを考えるのが好きだということです。

2013年にKMDの授業で浦沢直樹さんの話をお伺いした時は、それまで自分が抱えていた課題を言語化していただいたような感じがして、授業が終わった後にすぐさま以下の記事を書きました。

>> エンジニアが作るネットサービスのアイデアがしょぼいワケ

編集部に聞いたら、これが僕の連載で歴代1位のPVだそうです。確かにこの記事は非常に反響が大きかったと記憶しています。

自虐的な表現をしても仕方ないのであえて書きませんでしたが、当然、ここで言う「エンジニア」とは自分のことも含んでいるわけです。良いプロダクトを作るにはどうしたらいいのか、という葛藤の旅は今も続いています。

仮に、ギークではないということを自分の技術的な限界点としてとらえるならば、代替案としてプロダクトマネジメントのスキルを重視したくなります。事実、最近は技術書とマネジメントの本があったら、ついついマネジメントの本を優先して読んでしまいます。

これはけっこう大きな分岐点だと感じていて、いわゆる35歳定年説の議論につながる部分かもしれませんね。振り返ると、過去の連載でもこんなことを書いています。

>> 35歳定年説をぶっとばせ

>> 「プロダクトマネジャー」と「職人的開発者」という2つのキャリアパス

あがき続けていると何かが見える可能性が高い

相応に長くこの業界で生きていると、経営者でも技術者でも、「すごい!」と言われる人たちと仲良くなる機会が増えていきます。彼らと話すといろんな学びがある半面、「絶対にこの人たちの真似はできない」と思うこともどんどん増えていきます。

それが歳を取るということなのかもしれません。知見が広がることで、自分の限界範囲を決めてしまったり、過剰なコンプレックスからやるべきことを避けてしまったりしがちです。

失敗体験を学んでいくと、どうしてもそうなっていくのは、ある程度仕方のないことと言えます。己の限界を知り、この先の人生を考えるのが40代前半の特徴とも言われていますし。

そこで頑張って自分の色を付けていくことが、社会的評価や能力の向上と連動していればいいのですが、自分の色を付けていった結果「他人が使いにくい人間」になるのは良くないことだと思っています。

特にネット業界は、自分より若い世代が中心です。それゆえに、自分より若い人に評価されることが重要です。

From Jean-Pierre Dalbéra 革新的なネットサービスは、ほとんど若者が産んでいます

From Jean-Pierre Dalbéra
ネットサービスの開発でスターになるのは、ほとんどの場合、「次の世代」を担う若者たちです

若い人は、自分が歳を取った時の姿を想像することができませんし、面倒くさい年上を扱うのも得意ではありません。テレビで、ダウンタウンがベテラン俳優と対等に付き合う映像が流れてきますが、あのような振る舞いができる若者はそんなに多くないです。

であれば、自分の方が付き合いやすい、話しやすい、使いやすい人間であり続けることが、生存戦略として重要ではないでしょうか。

彼らと同世代のエンジニアが持っていない色を付けていくことが必要になりますし、同時に、こだわりを増やし過ぎて偏狭な人間にならないことが大切なのかなとも思っています。

しかも僕は、人間関係を合コンのように紡いでいくリア充アプローチが得意ではないので、自分の武器となるプロダクトに語ってもらって存在を知ってもらう、もしくは、自分自身がプロダクトを語るアプローチで若い世代と話す機会を増やすというのが、まぁ常套手段かなと思うわけです。

そういう意味では、技術と付き合い続けて、アウトプットにつなげていく努力は引き続き不可欠なのですが。

ちなみに今回、BASEがメルカリ社に資本参加いただいたのをきっかけに、メルカリのプリンシパルエンジニアであるkazeburoさんに技術アドバイザーを務めていただくことになったんですね。一度もお会いしたことがなかったのですが、ネット上でkazeburoさんがしてきた発言やアウトプット、そしてネットから見える周りの評価が素晴らしすぎて、うちにもアドバイスをいただきたいなと思っていたんです。そこで、資本参加を機に僕のワガママをメルカリ社に打診してもらったら、快諾してくださったという流れです。

こういうつながりが生まれる点が、技術やアウトプットを通してコミュニケーションが成立しているというインターネットの面白いところだなと思います。

最後に

アウトプットという意味では、エンジニアtypeの連載も、僕のコミュニケーション上の武器として大変助けられました。連載を書く機会がなくなってしまうのはさみしい限りです。

ネット上での情報発信を続ける意欲はありますので、さまざまな手段で、皆さんとつながる機会を増やしていきたいと思っています。エンジニアtypeの連載がなくなる分、何かをアウトプットするエネルギーは13年続いている自分のブログに寄せていくことになります。

>> F’s Garage

この連載は、エンジニアtypeの問題解決視点を持って書いていた部分もあるので、自分のブログを書く場合はまた違った問題意識を見つけていく必要があるなーと思っています。

はてなブックマークやSNSのシェアでF’s Garageをお見かけいただいた際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。これからもよろしくお願いします。

>> えふしん氏の連載一覧

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/taimei-7 エンジニアを料理人に例えて、「優秀」の定義を考えてみる【連載:TAIMEI】 //type.jp/et/log/article/taimei-7 Wed, 20 Jan 2016 09:18:40 +0000
TAIMEIの「Innovation Roadmap」

小俣泰明(TAIMEI)@taimeidrive

NTTコミュニケーションズなどのITベンダーでシステム運用やネットワーク構築の技術を磨いた後、面白法人カヤックでディレクターを担当後、上場企業の取締役に就任。2012年8月にスマートフォンアプリ・ソーシャル領域に特化した開発・運営を行うトライフォートを共同設立、代表取締役Co-Founder/CTOに就任。2015年末に退任し、現在は次の展開を準備している

2016年あけましておめでとうございます。エンジニアtypeがリニューアルするということで、半年間続けてきたこの連載も最後になりました。今までご一読いただき本当にありがとうございました。

最終回ということで、今回は原点回帰してエンジニアのあるべき姿について考えてみました。

よく言われる「優秀なエンジニア」の「優秀さ」とは何なのでしょう。

最新技術を追い続けてキャッチアップすることなのか。一つの技術をとことん極めることなのか。それとも、フルスタックの名の下で全ての領域に幅広く精通することなのでしょうか。

定義は人それぞれあるかもしれません。ただ、僕の定義は、どれも少し違います。一番に考えなくてはならないのは、「誰のための技術か」だからです。

その料理は、誰のために作っているのか?

技術そのものは完成された料理(サービス)ではありません。技術をエンジニアではない人に押し付けたところで、調理前の食材を出して「これはすごく美味しいんです」と言っているようなものです。

From WorldSkills UK  “食材”の良しあしだけで勝負しようとするエンジニアではダメ

From WorldSkills UK
“食材”の良しあしだけで勝負しようとするエンジニアではダメ

しかも、相手はサービスを使ってくれるユーザーだけではありません。開発フェーズによって、ステークホルダーが変化する場合もあります。その度に、エンジニアは対象となるステークホルダーが理解できる形に料理して出さなけれはなりません。

例えば昨今注目されているAIやFinTechなども、機械学習やブロックチェーンそのものについてステークホルダーに語り、技術的な優劣で物事を判断することにはあまり意味がありません。

誤解しないでほしいのは、最新技術を学ぶこと自体を否定しているわけではないということ。エンジニアが素材を学ぶことは、美味しい料理を作る上で欠かせません。それでも、「誰のために」が抜け落ちてしまったら、学びの価値は著しく下がってしまう。ここが、とても大事なポイントです。

エンジニアが陥りがちなのは、技術だけを並べ立てて、「塩コショウくらい、後で加えるのは言わなくても分かるよね?」となること。それではダメだと思うのです。僕らは料理人であるべきで、食材(技術)を並べるスーパーの店員ではないのです。

相手は「味」というレイヤーでしか良しあしを判断できないため、出てきた料理がまずかったらもう口にはしません。たとえ、構想しているサービスがすごい技術を要するもので、“焼き加減”次第で最高のモノになる可能性があるとしても。上司だったり、決裁者であったり、ユーザーに対しても、「味」として一番美味しいものを提供する必要があります。

そういう理由で、冒頭で書いた

・最新技術を追い続ける
・一つの技術をとことん極める
・全ての領域に幅広く精通する

というのは、すべて調理法の一つでしかないと思っています。

最終的に美味しい料理を振る舞うことがゴールならば、調理法を誇っても意味がありませんし、調理法の良しあしを吟味して結局何も進まないという状況に陥るのが一番危険な状態です。

技術はあくまで手段でしかなく、目的とは違うと理解することが大切です。

現代の技術はほぼ全て、世の中に存在するものから生まれている

次に、料理人たるエンジニアが扱う技術そのものを革新することが「あるべき姿」なのかという点についても考えてみましょう。

この答えは、イノベーションとは何か?という問いについて考えるのに近いのかもしれません。

ほとんどの技術は、全て「すでにあるモノの使い回し」、もしくは「カスタマイズ」で出来上がっています。研究開発で技術的に新しいモノを生み出そうとしている場合も、その大多数は、すでに先人が作り上げたレール上にある技術のカスタマイズに過ぎません。

まれに、世紀の発明といえる本当にイノベーティブな技術が誕生することもありますが、往々にしてすぐビジネスにならないモノが多いです。自動車が誕生してから、一般社会を変えるまでにはそれなりの時間を要したことを考えればお分かりになるでしょう。

From Patrick Metzdorf 自動車は「発明」だが、それが社会に普及して革新を起こすまでには多くの「カスタマイズ」があった

From Patrick Metzdorf
自動車は「発明」だったかもしれない。でも、社会に普及して革新を起こすまでには、多くの「カスタマイズ」があった

もし発明家を目指したいというエンジニアがいたとして、その人の挑戦を否定するつもりはありません。ただ、過去のほとんどの技術が「使い回し」か「カスタマイズ」の産物だという事実から考えれば、世紀の発明家になれる人は本当にごくわずかだというのもまた事実です。

となると、改めて、大多数のエンジニアにとっての「あるべき姿」とは何なのでしょうか?

それは、先人が創り出したものを引き継いて、カスタマイズし続けることなんじゃないでしょうか。過去の技術のルーツを知り、先人が生み出してきたものを、その時代にあったやり方で先に進めていくことこそが、多くのエンジニアの役割なんじゃないかと。

すでにある技術を組み合わせて、誰かにとっての新しいイノベーションを生み出していく。それで良いんです。他社や他人が作ったソリューション、SDK、ライブラリを否定し、すべてを自分(自社)で作るようなスタンスは、技術発展のレールからは外れた行為。その先に待っているのは、行き先の違った目的地だけです。

オープンな世界の中で、「誰か」のために技術を駆使する

そもそも現代のエンジニアリングでは、他人が作った技術が「敵」ではなくなっています。

他社技術や他社のソリューション、SDKなどを使う行為は「依存」であり、リスクになると言われた時代もかつてはありました。そして「差別化」という大義名分の下、多大なコストを費やして独自開発を行ってきました。日本国内の企業は、特にその傾向が強かったように思います。

でもそれが、結果的に日本企業のガラパゴス化を推し進める形になったのは、多くの人が認めるところでしょう。

OSSの隆盛を見ても、今はこういった「閉じた開発」より、企業や国を超えて協力し合う「オープンな開発」が主流になっています。おそらく、この十数年で生活レベルが上がり、他社・他者を蹴落として富を勝ち取るという時代ではなくなったからだと感じています。

ですから、このオープンな世界を味方につけながら、「誰のために」を意識して技術を駆使することが、今の時代の優秀さなのだと思います。

ステークホルダーは、家族でもいい、親友でもいい、社内の同僚でもいい。技術で身の回りの人に喜び、感激を与える人になりましょう。「誰のために」を考えることから始めましょう。その結果として、エンジニアのシゴト人生が素晴らしく、一生幸せなものになるのだと僕は信じています。

最後に、小俣個人としては「モノづくりで多くのステークホルダーを救う」をコンセプトとした制作集団を立ち上げることになりました。企業サイトはこちらです。創業メンバーとして戦ってくれる仲間を募集しています。

少しでも興味を持っていただいた方は、ぜひ、小俣泰明のFacebook、もしくはTwitter(@taimeidrive)宛てに気軽にご連絡いただければ幸いです。もっと深い話ができればと思っています。

以上、最後まで読んでくれてありがとうございました。そして、連載執筆の打診をくれた川野さん、編集長の伊藤さんにもお礼を。ありがとうございました!

>> TAIMEI氏の連載一覧

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/yuki-igarashi48 この5年で女性のキャリア支援はどう変わったか~育児サポートや女子会普及の一方で課題も【連載:五十嵐悠紀】 //type.jp/et/log/article/yuki-igarashi48 Tue, 19 Jan 2016 08:50:16 +0000
天才プログラマー・五十嵐 悠紀のほのぼの研究生活

明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 講師
五十嵐 悠紀

2004年度下期、2005年度下期とIPA未踏ソフトに採択された、『天才プログラマー/スーパークリエータ』。日本学術振興会特別研究員(筑波大学)を経て、明治大学総合数理学部の講師として、CG/UIの研究・開発に従事する。プライベートでは三児の母でもある

エンジニアtypeのリニューアルをもって、私の連載も今回で最終回となりました。

エンジニアtypeの創刊時から、連載記事を書かせていただき早5年。これまでご愛読いただいた読者の皆さまには、心より感謝しています。

過去記事を振り返ってみると、コンピュータグラフィックスやユーザインタフェースの研究者としての視点から書かせていただいた記事もあった一方で、女性研究者・育児中のママとしてワークライフバランス的な側面から書かせていただいた記事もありました。

今回は、この5年間で女性のキャリア支援がどのように変わってきたのか、連載を振り返りながら、考えてみたいと思います。

仕事場での託児所併設が増加

エンジニアtype創刊の2011年4月。日本は東日本大震災の直後で情報が飛び交う中、Twitterでの情報通信の利便性と、信頼性の欠如した情報が飛び交うという負の側面の両面から、情報管理の必要性がさまざまな場所で議論させるようになりました。そして、家族という絆を改めて感じる時期でもありました。

私は東日本大震災が発生したあの瞬間、『インタラクション』という学会に参加するためにお台場・日本科学未来館の7階にいました。

震災が起きてすぐに、当時2歳だった息子と合流。というのも、学会併設の託児所が用意されていたため、地元の保育園ではなく、会場まで連れてきて預けていたのです。

From Kids Work Chicago Daycare 最近は企業内・施設内の託児所も増加傾向に

From Kids Work Chicago Daycare
最近は企業内・施設内の託児所も増加傾向に

震災直後の混乱する交通状況の中、地元に戻れたのは21時半を回っていました。地元の保育園に預けていたらこの間どんなに不安だったか。この時ほど、学会併設の託児所がありがたいと思ったことはありません。

その後、学会併設の託児所はとても増えてきました。情報処理学会の全国大会でも託児所併設になりましたし、独立行政法人日本学術振興会の講演会・懇親会でも託児所併設でした。

職場保育園も普及してきましたし、大学では祝日授業の日や入試業務の日には託児所が開設されるようになっています。

預け先の種類の増加

連載スタート時は2歳だった息子も早7歳。下に2人の弟妹が生まれ、私は3人の母となりました。

この間、大学敷地内保育園、一時保育専用保育園、地域のファミリーサポートサービス、公立保育園、私立幼稚園、公立幼稚園、小学校に学童保育と、たくさんの種類の場所と人に支えられて、育児と仕事の両立を行ってきました。

私立と公立の違い、認可と無認可の違い、幼稚園と保育園の違い……。多くの選択肢の中で、揺れ動く親御さんが多いのが現状です。最近では待機児童緩和のために幼稚園でも預かり保育を導入する地域が増えてきました。

我が子の通う幼稚園でも18時までの預かり保育があり、年末年始休暇以外はお盆時期も含めて預かっていただけるため、保育園以外の選択肢も選べました。来年からは8時からの早朝預かりも始まるということで、さらに利便性が高まりそうです。

3歳児神話(3歳までは手元で育てた方が良いという意見)や、幼稚園教育の重要性を説く祖父母世代からの圧力などもよく耳にしました。そして、幼稚園と保育園の教育方針、預かり方針の違いから、保育園から幼稚園に移られたり、幼稚園から保育園に移られたりというご家庭にも何度も遭遇しました。

我が家では今は3人別々の施設に預けていますが、「自分の人生一度きり。何事も前向きにたくさんの経験をさせてもらいたい」と思い、毎日を過ごしています。

別々の施設に預けるメリットはなんといっても地域での顔の広さ。あっちのご両親もこっちで会うご両親も知り合いばかりです。「子育ては親育て」とも言われますが、子育てをしている期間はさまざまな人との出会いがあり、本当に助けられてきました。

イクメンの増加

連載で取材をさせていただいた、「イクメン研究者」の平井重行准教授(写真右)

連載で取材をさせていただいた、「イクメン研究者」の平井重行准教授(写真右)

中でも明らかにこの5年間で変化があったのは、イクメンの増加だと私は思います。

保育園の送り迎えがお父さんとお母さん半々なのはもちろん、幼稚園では年々送り迎えにお父さんがいらっしゃるご家庭が増えてきて、今年度はついに専業主夫の方も登場。幼稚園の役員もこなすお父さんも現れました。もちろん女性の活躍も増えており、PTA会長が女性という小学校も増加しました。

特に平日イベントの行事では、どうしても休むのは「お母さん」となりがちだった数年前に比べて、お父さんの参加率が上がってきました。

エンジニアtypeで対談させていただいた、平井重行准教授のイクメントークも記憶に残っていらっしゃる方は多いのではないでしょうか。

>> ベビーカーを押して出勤するイクメン研究者が目指す「育休の一般化」

国会議員が育児休暇を取ると宣言したことで起きた騒動。これも、社会に議論を呼び起こす一端となったと思います。

育児だけでなく、介護にも使える支援を

そして、私自身は母が祖父母を介護する姿などを通して、育児だけでなく介護も避けては通れないと気付かされた5年でもありました。

最近では、育児中の女性研究者支援だけではなく、介護中の人でも使えるような支援が必要とされています。育児はある程度育てば手から離れていくので少しずつ楽になっていくようにも思いますが、介護は何年続くか分からない大変さの中、そしてなかなか周りに説明をできない・したくないという方々も多く、どんな支援が求められているかを洗い出しづらいというのが現状のようです。

働く男女にとって、育児や介護がしやすいような働き方、職場にするためには具体的にどんな施策が必要なのでしょうか。数十年後には大介護時代が来るとも言われる日本。具体的にどんな施策が必要なのか、意見を出していく必要があります。

制度としてだけでなく、実際に使える支援として整えていくために、動き出している職場もとても増えてきました。

キャリアの悩みをシェアできる「女子会」の普及

2014年にお話を伺った土井美和子さんの「キャリアトーク」は今も参考にしています

2014年にお話を伺った土井美和子さんの「キャリアトーク」は今も参考にしています

こういった状況を踏まえつつも、働く女性がどのようにキャリア形成をしていけばいいのかを考える「女子会」も、増えたように思います。

私が女性研究者の集まる学会のランチタイムを利用して『Women’s Luncheon』という女子ランチ会を開くようになったのも、2013年から。この様子もこれまで、記事として掲載させていただきました。

例えば以下のような内容です。

>> 紀元前3000年前からの課題を解決!?ピアス革命を起こした女性起業家から学ぶ発想術

>> サービスの転換期が分かる「Webサイエンス」が盛り上がる理由

>> Microsoftの研究者として北京で就職した日本人女性に学ぶ、目標達成のための図太い生き方

>> キャリア35年、東芝で「女性初」を作り続けてきた研究者が若手に伝えたい、3つの壁の破り方

>> ワーキングママから学ぶ、仕事と育児でストレスを溜めない3つの意識+α

これらの中でも、キャリア35年の東芝・土井美和子さんに語っていただいた

・常に「前例を作る」という姿勢で仕事に臨む
・リスクを見込んで仕事を組み立てる
・仕事と家庭以外の「第3の場」を作る

の3つの柱は、私自身いつも頭の片隅に置いています。

今年2016年も開催が決まっており、5人のお子さんを持ちながらも医師としてご活躍する吉田穂波先生にゲストトークをしていただく予定です。

>> 開催概要はこちら

実はこの女子ランチ会は、アメリカACM学会主催のUIST (User Interface Software and Technology)などをはじめとする国際会議で行われていたWomen’s Luncheonを意識して、「日本にもこういう場があったらいいな」と思い、始めたという経緯がありました。

今年のUIST2016(http://uist.acm.org/uist2016/)は、東京で開催されます。UISTのWomen’s Luncheonのローカル担当にもなりました。

こういったつながりをうれしく思う一方で、国際的な取り組みをどんどん日本にも取り入れていきたいとも感じています。

女性エンジニアの増加と、これからの5年

最後に。少なくとも私の身の回りでは、女性エンジニアが急速に増えているように思います。また、IPAの未踏事業でも女性視点に立った提案が増えています。

IT業界では長らく「業界の女性比率は2割程度」と言われてきましたが、この定説も徐々に様変わりしているように感じています。

一方で、工学分野の女性研究者・大学教員は日本ではいまだ1割に満たず(参考記事)、そういった観点からのキャリア支援施策も求められていたりします。

内閣府男女共同参画局では、働く女性のための政策や支援、企業の支援、女子学生のためのイベントなど多岐にわたって「男女共同参画」といった視点で情報がまとめられています。

これからの5年はどうなるでしょうか。東京オリンピックが2020年に開催されます。日本がますます男性も女性も活躍しやすい世の中になりますように。

>> 五十嵐悠紀さんの連載一覧

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/1923_bokudora 月商4億円到達のスマホゲーム『ぼくとドラゴン』開発陣が、“空白の6カ月”で学んだヒットを生む組織学 //type.jp/et/log/article/1923_bokudora Mon, 18 Jan 2016 10:45:27 +0000 新規リリースしたタイトルが半年以内に200以上も終了するという調査結果があるように、年々競争が激しくなっているスマホゲームの世界。

そんな中、各種スマホアプリの企画・開発・運営を行うベンチャー企業イグニスが初めてリリースした3Dゲーム『ぼくとドラゴン』(※)は、2015年2月のリリースからおよそ1年で月商3~4億円を稼ぎ続ける人気タイトルに成長している(※開発・運営はイグニスの100%子会社となる株式会社スタジオキングが行っている)。

同社は2014年に上場するまで、エンタメやツール系のネイティブアプリを量産することで幅広く広告収入を得てきた。その驚異的なヒット率については以前弊誌でも取り上げたが(以下参照)、現在は中長期的に安定した収益源を確保すべくスマホゲーム事業も拡大中。その最初の一手としてリリースしたのが『ぼくとドラゴン』である。

>> 過去17回「App Storeで1位」を獲得したイグニスがやっている、勝率7割でTOP10アプリを生み出す4つの秘策

売上だけを見れば、これまでの歩みは上々と言えるかもしれない。だが、イグニスのCTOでスタジオキング代表も兼務する鈴木貴明氏は、「リリースまでの道のりは想像以上に大変だった」と明かす。

2013年12月から企画・構想を始めたものの、納得のいくモノづくりができず、「約6カ月を経た後にすべてを見直した」そう。開発はもちろん、20数名いるチームの体制、中途エンジニアの採用基準まであらゆるものを変更したという。

この“空白の6カ月”に何があったのか。その後に鈴木氏が取った善後策も含めて話を聞いた。

スキルベースの分業制&納期優先のマネジメントが仇に

イグニス代表取締役CTOの鈴木貴明氏

イグニス代表取締役CTOの鈴木貴明氏

『ぼくとドラゴン』の開発コンセプトは、「スマホネイティブなユーザー層に、戦略性とソーシャル性の高いゲーム体験を提供する」というもの。

このコンセプト自体はリリースまで変わらずに持ち続けていたが、いざ開発を始めてみると、どこが面白いのかが分からない状況のまま約半年が過ぎていったという。

「3Dの使い方はヘタだったし、UIもイケてない。まるでガラケー時代のソーシャルゲームを3D化しただけのような出来で、このゲームならではのコアなユーザー体験は何なのか?をチームみんなが模索しているような感覚でした」

今振り返ると、最初の6カ月間で犯した失敗は以下が原因だったと鈴木氏は言う。

・トップダウンのチーム運営
・メンバーの保有スキルで役割を決め、分業制に
・納期を優先したマネジメント

イグニスにとって『ぼくとドラゴン』は初の大規模なゲーム開発。チームには「3D技術に詳しい人」、「エフェクトが得意な人」など開発に必要なスキルを持つエンジニア・デザイナーがそろっていたものの、本格的なスマホゲームをゼロイチで作ったことのある人は鈴木氏を含めてほぼ皆無だったという。

また、中途採用したエンジニアの中には前職で受託開発に従事していた人が多く、「ゲームの面白さを詰めるより、決められた納期に間に合わせるような開発スタイルになってしまっていた」そうだ。

「最初は僕がタスクの優先順位付けまで入り込んで開発を進めてきましたが、クライアントサイド、サーバサイド、イラスト、デザインとすべてがバラバラに動いている状況を変えられずにいました。僕自身、猛烈に反省したのを覚えています」

全員面談の末に見出した、4つの打ち手

そこで、鈴木氏はいったん過去の積み上げをすべて捨て、改めて「面白さ」を作り込むためにチームを再編する。具体的に、採った施策はこうだ。

【1】約2週間かけて、全メンバーと面談
【2】各メンバーの意見、嗜好を踏まえた上で役割を変更
【3】鈴木氏を含めた選抜メンバー4人でコンセプト合宿を実施
【4】目標を再設定し、「放置ゲーム×リアルタイムバトル」のコアとなる体験づくりを追求

まず、【1】の面談と【2】の役割変更を行った理由は、「スキルで役割を分担するのではなく、各要素を一番考え抜いている人にリーダーを任せるやり方に変更するため」(鈴木氏)。

結果、クライアントサイド担当のエンジニアが企画にも一過言持っている、3D技術の担当者がストア内のトップセールスゲームのトレンドに精通しているなど、異なる仕事領域に適性があることが分かった。

約1カ月かけて行った1on1では「チームが抱えている課題について腹を割って話し合った」と言う

1カ月かけて行った1on1では「チームが抱えている課題について腹を割って話し合った」と言う

この面談内容を踏まえ、【3】のように『ぼくとドラゴン』の魅力を“再開発”するための選抜メンバーを絞り、開発計画を再考。彼らを企画やアートディレクションのリーダーに据えることで、20数名いた開発チームの一体感を高めていったのだ。

ちなみにこの時に決めた目標の一つが、「月商3億円を達成することで、ネイティブで一番面白いリアルタイムバトルゲームを目指す」というもの。冒頭で記したように、数字の上では無事に達成した形だ。

「結局は、チームメンバーそれぞれが本気になれるポイントを探って適材適所でチームを再編成することが、単なる3Dゲームから面白い3Dゲームにするためのカギでした。この経験もあって、今は中途採用も『チームに足りないスキルを持つ人を採る』のではなく、『チーム内で担ってほしい責任とスタンス』を明確化してから募集を出すようにしています」

フェーズに応じてリーダーは変わる。多様な経歴の人が活躍中

なお、『ぼくとドラゴン』の開発中にリーダーを務めてもらった選抜メンバーは、リリース後新たな顔ぶれに刷新したと鈴木氏。その理由を尋ねると、「フェーズに応じて活躍できる人が変わるから」という答えが返ってきた。

「ゲームを作り込んでいる最中は、ユーザーテストやUXテストなどの結果を踏まえながらユーザーの『感情』を探ることが大切です。でも、アプリをDLしてもらった後は、ユーザーのプレイ結果という『数字』から次の打ち手を考えることも必要になります。そこで運用フェーズに強そうなメンバーをチーム内で選出してもらい、彼らをリーダーにすることで、改善のPDCAが高速で回るようにしたのです」

いわば【0→1】と【1→10】のフェーズそれぞれに適した人を選んだ形だが、「今回の経験を通して、新規開発にはゼネラリスト気質な人が、運用フェーズは専門職気質な人がリーダーを務めた方がうまくチームが回るということも分かった」と鈴木氏は語る。

『ぼくとドラゴン』開発中の“空白の6カ月”は、「僕自身の修業期間だった」と明かす鈴木氏

『ぼくとドラゴン』開発中の“空白の6カ月”は、「僕自身の修業期間だった」と明かす鈴木氏

こうした経験知を基に、イグニスでは今後、『ぼくとドラゴン』の海外展開や新規タイトルの開発に着手していく予定だ。それに伴い、開発チームの拡充にも取り組んでいる最中だが、スキル以上に「フェーズと役割にマッチするかどうか」を重要視していく姿勢に変わりはないという。

「当社は前職でBtoBサービスの開発に従事していたエンジニアが多いのですが、彼らは要件定義やスケジュール管理の経験が豊富だし、現在の選抜メンバーの1人も元・受託開発エンジニアが務めていたりします。いろんなバックボーンの人を一つのチームにしていく手法は、『空白の6カ月』を経て僕自身が学んだ点でもあるので、いろんな経歴の人にジョインしてほしいと思っています」

取材・文・撮影/伊藤健吾(編集部)

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/20160108 『エンジニアtype』コンテンツ更新の一時停止と、リニューアルのお知らせ //type.jp/et/log/article/20160108 Fri, 08 Jan 2016 10:03:57 +0000 読者の皆さまへ

平素は『エンジニアtype』をご愛読いただき誠にありがとうございます。

この度、弊サイトは2016年1月31日をもちまして更新を一時停止し、リニューアルすることとなりましたので、ご報告申し上げます。

2011年4月1日のオープン以来、弊サイトは【旬の技術屋インタビュー・サイト】というコンセプトを掲げ、エンジニアをはじめ「技術で何かを創る人たち」が持っているシゴトの経験則、キャリア形成の経験知を配信して参りました。

このコンセプトを決めた際に書いた媒体方針がこちらです。今後も、私たちなりに「創る人たち」のシゴト人生を応援していきたいという気持ちに変わりはありません。が、2016年2月以降は転職を検討するエンジニアの方々に向けてより直接的な情報発信を行うべく、転職サイト『@type』( http://type.jp/ )内にブランドを移管し、コンセプトもリニューアルして再出発することに致しました。

これに伴い、誠に勝手ながら、現行の『エンジニアtype』( //type.jp/et/log/ )は以下の通り更新を終了させていただきます。

■更新終了日
2016年1月31日(日)

■メールマガジン配信終了日
2016年1月29日(金)
(メールマガジン会員さまにご登録いただいた個人情報に関しましては、配信終了から1カ月以内に安全に破棄致します)

約5年間にわたり弊サイトのコンテンツをご愛読いただきましたこと、編集部一同心よりお礼申し上げます。合わせて、取材活動へのお力添えや連載の執筆、主催イベントへのご協賛など、さまざまな形で弊サイトの運営をご支援くださった方々にも厚くお礼申し上げます。感謝してもしきれません。

リニューアル後のURLや新コンセプトに関しましては、更新終了前に改めて弊サイト内でお伝え致します(※追記/2016年1月29日、リニューアル日程等の情報をこちらのリリースに記しました)。

2016年2月以降は心機一転、形を変えて、皆さまのお役に立てるような情報を配信して参ります。引き続き、『エンジニアtype』および『@type』をどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

2016年1月8日
株式会社キャリアデザインセンター
『エンジニアtype』編集長 伊藤健吾
編集部一同

※本件についてのお問い合わせ先は、こちらをご参照ください

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/payjp 「決済革命」は若さも武器に~平均年齢25歳のチームでFinTechに新風吹き込むPAY.JP //type.jp/et/log/article/payjp Thu, 07 Jan 2016 12:34:06 +0000 ブロックチェーンの話題がメディアを賑わすようになるなど、テクノロジーによるイノベーションの「次なる主戦場」として注目される金融業界。近年、この分野の改革に挑戦するFinTechベンチャーは続々と登場している。

中でも決済関連は、世界的に活況となっている領域だ。オンライン決済、ビットコイン、パーソナル決済と、さまざまな切り口のスタートアップが誕生している。

>> 参考記事:From Point-Of-Sale To Money Transfers: 109 Startups Disrupting The Payments Industry

ただし、市場が形成されると競争も激しくなるのが常。金融業界の歴史の長さや、そこで培われてきた独自の商習慣などに突き当たり、ビジネスとして軌道に乗る前に撤退を余儀なくされたFinTechベンチャーもすでに出てきている。

>> 参考記事:2015に終了した30のスタートアップとその失敗理由

そんな中、えふしんこと藤川真一氏がCTOを務めるBASEは、FinTech分野への足がかりとして2014年12月に開発者向けオンライン決済サービス『Pureca(ピュレカ)』を買収。昨年9月、新たに『PAY.JP(ペイ・ドット・ジェイピー)』としてEC事業者などへのサービス提供を開始した。

『PAY.JP』

PAY.JP

世界展開を進める『Stripe』や、LINEの子会社となった『WebPay』といった競合他社がしのぎを削るこの領域で、PAY.JPは新興ベンチャーを中心にユーザー企業を開拓中。さらに、今年は「支払い側」の使い勝手も考慮したサービスに進化すべく、開発を進めているという。

そんなPAY.JPの特徴の一つに、開発・運営に携わるチームメンバーの若さがある。

ピュレカ創業者で現・PAY.JP事業統括者である高野兼一氏(25歳)をはじめ、2016年春に新卒入社予定で現在は業務委託で関わるセキュリティエンジニアのクリストファー・スミス氏(23歳)、API開発を手掛ける藤本洋一氏(27歳)など、コアメンバーの平均年齢は25歳(※いずれも2015年12月の取材時)。

外部の開発メンバーには国内外の経験豊富なエンジニアがいるそうだが、クリストファー氏はまだ現役大学生とのことで、若さが際立つチーム構成となっている。

業界の特殊さから、銀行や証券会社で経験を積んだベテラン社員を招聘するFinTechベンチャーも少なくない中で、20代・業界未経験のコアメンバーで巨大産業の変革に挑むのは果たして可能なのか?

この問いに対して、主にビジネス面のアドバイザーを務めるえふしん氏は、「若いチームだからこそできるチャレンジがある」と断言する。既存の商習慣を打ち破るパワーこそが必要という言葉の裏側にある思いと、将来展望について聞いた。

多士済々の強みを持つコアメンバーたち

(写真左から)PAY.JPの藤本洋一氏、高野兼一氏、クリストファー・スミス氏、BASEのCTOえふしん氏

(写真左から)PAY.JPの藤本洋一氏、高野兼一氏、クリストファー・スミス氏、BASEのCTOえふしん氏

その前に、コアメンバー3人の経歴をざっと紹介しよう。

PAY.JP開発チームの中心人物である高野氏は、大学在学中にインターンとして金融系インターネット事業を手掛ける開発業務に携わったことをきっかけに、2012年にピュレカを起業。ファウンダーとして、「オンライン決済をよりシームレスに」というビジョンの具現化に奔走してきた。

このビジョンを形にする上で、最低限の要素として求められるのが強固なセキュリティだが、この分野の開発を担当するのがクリストファー氏。趣味でセキュリティ技術を学んだという同氏は、以前にWindowsのTelnetにあった脆弱性を発見、実績を買われてMicrosoft本社に招待されるなど、凄腕ハッカー並みのスキルを誇る。

PAY.JPは現在、クレジットカード決済のグローバルセキュリティ基準であるPCI DSSのVersion3.0に完全準拠した運用を行っており、この“土台”を支えるのがクリストファー氏というわけだ。

そして、2015年に加入したのが藤本氏。PAY.JPはPythonで開発されており、それが入社のきっかけだったという同氏は、2007年に友人数名とエンジニアグループnequalを立ち上げ、2011年2月には同グループのメンバーで株式会社クロコスを創設するなど(後、ヤフーへバイアウト)、20代にして豊富な経験を有している。

そんな3人の日常は、ひたすらサービス改善と発展に向けたコーディングをすること。作業中は開発に関わる以外の話をほとんどしないと明かす。

それでも、サービスに賭ける情熱は一様に高いとえふしん氏は感心している。

「一度、土曜日なのにアメリカにいる開発メンバーと開発の進め方について夜通しチャットで議論しているのを目撃して、『こういう熱さが武器だよなー』と感じたことがあります。普段は黙々とコーディングしているのに、設計思想についての議論になると延々と話し続けるようなチーム。この熱量はなかなかです」(えふしん氏)

「新しい与信管理」の実現には古い慣習に染まらない思考が必要

今後の展望について語る3人

今後の展望について語る3人

では、そんなギークなチームが目指す、PAY.JPの未来形とはどのようなものか。高野氏が「競合との差別化としてもぜひ実現したい」と話すのは、新たな与信管理の仕組みづくりだ。

「今春以降に予定している、カード利用者にとっても使いやすいサービスの実現へ向けて、与信管理の部分は開発の肝になります」(高野氏)

目指すゴールは、個人の信用情報をSNSを含むネット上のあらゆる行動履歴から予測し、独自の与信管理システムを構築すること。すでにLinkedInなど各種SNSの情報も加味した与信管理を行っている米Fintechベンチャーが数ある中で、その実現はけっして不可能ではないと高野氏は言う。

「これまでの与信管理基準は年収や利用実績が中心でしたが、SNSでのデータを活用した新しい与信管理システムづくりがEC事業者にとってもエンドユーザーにとっても使いやすいサービスになると思います。今は、どのデータをどう活用するか?の実証段階にあります」(高野氏)

また、オンライン決済の強みとして、継続的にデータを収集・解析し続けることでユーザーの途上与信にも革新を起こせるはずと語る。

最終的には、こうした仕組みを既存のプレーヤー=銀行やクレジットカード業者のシステムと連携させる作業が必要になるが、この辺の設計やビジネスディベロップメントはアドバイザーのえふしん氏がサポートしながら進めているそう。

既存の金融プレーヤー側も、こうしたFinTechを踏まえた“イノベーション前夜”の時期を迎えて少しずつ変わりつつあるとえふしん氏は話す。

「金融業界というと、これまでは我々のようなおじさん同士がビジネスの話をする印象でしたが、オンライン決済の分野は圧倒的に若い人が活躍する場です。古い商習慣に飲み込まれず、新しいスタンダードを作っていく意味でも、若いエンジニアのアイデアが歓迎されています」(えふしん氏)

“カジュアル決済”のデファクトスタンダードを獲れるか?

若いチームを見守るえふしん氏

若いチームを見守るえふしん氏

中・長期的には、メールアドレスや携帯電話番号だけでオンライン決済ができるようなシステムの構築を目指し、技術的な課題の洗い出しなどを進めているという。

えふしん氏にはPAY.JPの将来像に明確なビジョンがある。それは、「5年後、10年後の『ZOZOTOWN』を目指すようなEC企業を支援すること」だ。

Stripeのような競合もある中で、PAY.JPがコアユーザーにしていきたいのは、「例えばC2Cビジネスを展開するベンチャーのような新しい挑戦をする企業だ」とえふしん氏は言う。

そのためには、上記してきたような仕組みを開発し、「“カジュアル決済”のデファクトスタンダードになる」(高野氏)のが当面の目標になる。

事業の拡大に合わせて人員増も視野に入れているというが、えふしん氏は今のチームが持つ個性と若さは維持していきたいと考えている。

「このチームは、普段は開発のこと以外、全然話さないけれど、お互いを尊重し合い、かつサービスに賭ける情熱も持っている。ネット好きな若者たち特有の雰囲気というか、このまま“大人的判断”とは一線を画したままで突き進んだ方が、金融業界特有の商習慣に縛られず新しいことをやってくれると思います」(えふしん氏)

「僕に言わせれば、このチームは『パワースポット』。それぞれがパワーを与え合うような存在なんです」(クリストファー氏)

事業の未来は誰にも予測できない。それでも、PAY.JPのユニークさはFinTech分野で独自の存在感を発揮していきそうである。

今後、BASEでは社外の人と定期的に交流を持つ場として、カジュアルな交流会『BASE Drink』を行っていく(※第一回の開催日とテーマは以下)。次回以降、PAY.JPのメンバーによるFinTechや決済をテーマとしたセッションも開催予定とのことだ。興味がある人は、どんな「パワースポット」なのかをリアルな場で体感してみてもいいかもしれない。

≪『BASE Drink』第一回概要≫
■開催日:2016年1月18日(月)19時20分~
(場所等が明記されている申し込みフォームは以下URL)
http://connpass.com/event/24873/

■概要:今年1月4日に発表したメルカリ社との資本業務提携に伴い、BASEの技術顧問に就任したメルカリのプリンシパルエンジニア長野雅広氏(kazeburo)をゲストに迎え、CTOの藤川氏と下記のテーマでセッションを行う。

■テーマ:開発言語と仕事のやりがいと技術的好奇心の実現方法について/なぜ、長くPerlに携わり、Rubyでも高速なRackサーバを開発しているハッカーが、PHPを扱うメルカリに入ったのか?etc.を予定。

取材・文/浦野孝嗣 撮影/伊藤健吾(編集部)

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/github-osaka GitHub共同創業者が語る「メガベンチャー」までの軌跡~開発、採用、そしてコミュニティへの貢献 //type.jp/et/log/article/github-osaka Wed, 06 Jan 2016 12:02:54 +0000 GitHub共同創業者の1人であるScott Chacon氏を日本に迎え、ODI Osakaが主催したミートアップイベント『Osaka×GitHub MEETUP!!』が、昨年12月15日、大阪イノベーションハブ(OIH)で開催された。

Scott Chacon氏(※写真は2013年1月に弊誌がインタビューした当時のもの)

Scott Chacon氏(※写真は2013年1月に弊誌がインタビューした当時のもの)

日本は米国に次いでGitHubユーザーが多いことが知られているが、中でも関西方面はGitHubコミュニティの活動が盛んで、行政も和歌山県をはじめ、神戸市や大阪市が活用を進めている。

そこでは主にオープンデータの公開プラットフォームとしてGitHubが活用されており、今回のイベントもそうした流れで開催された。

当日は、Chacon氏と合わせて和歌山県情報政策課の坂野悠司氏より県での活用事例が紹介され、他にも大阪でアプリサービスを行うWarranteeのCTOを務める竹内宏佑氏からスタートアップ企業でのGitHubの活用事例が紹介された。

その内容をダイジェストで紹介しよう。

OIHによるオープンデータ関連の取り組みの一例。2016年3月5日にはInternational Open Data Dayに合わせたイベントも開催される

OIHによるオープンデータ関連の取り組みの一例。2016年3月5日にはInternational Open Data Dayに合わせたイベントも開催される

「自分がお金を払ってでも欲しいモノ」を作ろう

最初に、Chacon氏からGitHubの創業経緯などがあらためて紹介され、参加者のエンジニアやスタートアップに向けた具体的なアドバイスも話された。

「自分たちが欲しいツール」を作るため、4人のソフトウエア開発者によるオープンソースプロジェクトとしてスタートしたGitHubは、最初の頃はサイドビジネスとして運用されていた。その後、オープンソースが注目を集めるようになり、企業から「GitHubを使いたい」という声が多数挙がったこともあり、ビジネスになると判断したそうだ。そのタイミングで全員が元の仕事を辞めて、GitHubに専念するようになったという。

成り立ちはいわゆるスタートアップだが、「あえて自己資金で運営したことで、自由度が高く良いサービスを作ることができた」とChacon氏は振り返る。この時に出来上がった企業風土が、現在のGitHubの根幹を支えている。

創業から4年目で初めて外部から投資を受けた時の社員数は約150人に増えていたが、「当時欲しかったのは資金ではなく、投資家の経験だった」とChacon氏は語り、「スタートアップを始める人は、問題に遭遇した際に対処する方法などのアドバイスをできるだけ聞いた方がいい」と続けた。

また、よく「起業する時にどんなサービスを作ればいいか?」と聞かれるそうだが、同氏の回答は常に変わらないと言う。

「他の人よりも、自分がお金を払ってでも欲しいモノを作るべきです。私の場合は、それがまさしくGitHubというツールであり、自分が困っていることを解決するものでした」

採用ではスキルよりも「チームプレーヤー」を重視する

共同創業者の1人で現在はGitHubの社内環境の構築などにも携わっているScott Chacon氏は、採用に際し個人的にはチーム力やコミュニケーションを重視すると語っている

共同創業者の1人で現在はGitHubの社内環境の構築などにも携わっているScott Chacon氏は、採用に際し個人的にはチーム力やコミュニケーションを重視すると語っている

会場からの質疑応答の中には、GitHubが力を入れる「リモートで働く環境」に関する質問もあった。

GitHubは米国内のほとんどの州にエンジニアがいて、それ以外にヨーロッパ、日本、オーストラリアと世界中に社員がいる。チーム全員が分散して働いているという考え方で、リモートでも働きやすい環境を整えるのに力を入れている。

>> 参考記事:GitHub経営陣が明かす、プログラマーのクリエイティビティを最大限に引き出す方法

通常はオンラインでSlackなどを使ってコミュニケーションしているが、定期的にチームが直接顔を合せてリレーションシップを深めるという。オフィスの代わりにチャットルームを使い、非同期での会話や情報共有を行えるようにすることが、会社としての強みにもなっているそうだ。

そんな職場でも自律的に仕事のできる人を集める採用とはどんなものか?という質問が続き、Chacon氏は「社員のマネジメントについては、社員数が多いためできるだけシンプルにして、チームリーダーの方針に任せている部分もある」と答えた。

チーム間の異動も比較的簡単にできるようにしており、実際に異動は多い方だとも。

「仕事の状況は常に変化するし、人間関係も大事。人の異動は、経験をチーム間で共有し、化学反応で良い作用を生み出すものと考えています」

なお、採用方法については、リモートで働くというのを考慮して「オンラインで社内コミュニケーションができる能力」を重視しているそうだ。

「電話面接や技術面接、オンサイトでも面接をしっかり行うが、テクニカルなスキルよりも他の人を尊重できるかという点を個人的には重視している。その理由は、個人ができることはチームに比べると少ないから」とChacon氏は明かす。

「会社を成長させ続けるモチベーションを維持するには、同じ時間をたくさん共有し、会社以外でも交流するのが大事」とも語っており、GitHubではチームをいかに大事にしているのかがよく伝わってきた。

オープンデータ活用で感じた大きな2つのメリット

和歌山県ではオープンデータの公開に積極的にGitHubを活用していることが情報政策課の坂野悠司氏から紹介された

和歌山県ではオープンデータの公開に積極的にGitHubを活用していることが情報政策課の坂野悠司氏から紹介された

Chacon氏に続いて講演したのは、和歌山県情報政策課の坂野氏。同氏からは、2015年2月から始めたGitHubでのオープンデータ公開について紹介された。

坂野氏いわく、自治体がGitHubを活用するメリットは大きく2点あるという。

一つはオープンデータのニーズが把握でき、スターなどの機能で技術者がどう活用し、アプリ化したかなどが追跡できる点で、もう一つは世界中の技術者とフラットなコミュニケーションができることを挙げた。

具体的には、観光地の公共トイレや避難先情報などを公開しており、行政では国土地理院がオープンな入札にGitHubを活用しているので今後見習いたいとしている。

その他、図書館の貸し出しや津波浸水想定図、地価調査、さらに森林データをGeoJSONで公開するなど、開発しやすいフォーマットも採用している。『International Open Data Day』というイベントをきっかけに、開発者とのコラボレーションも行い、プルリクでのアドバイスを確認し、承認、再確認するという使い方もしているそう。

「県内のスタッフだけでオープンデータ化を進めるのは難しく、GitHubをプラットフォームとして、一緒に和歌山をオープンにしてくれる方を募集したいと考えています」

開発作業のムダを減らすツールとしての活用例

WarranteeのCTOを務める竹内宏佑氏からは開発現場でのGitHubの活用事例が詳細に紹介された

WarranteeのCTOを務める竹内宏佑氏からは開発現場でのGitHubの活用事例が詳細に紹介された

Warranteeの竹内氏からは、さらに具体的なGitHubの活用事例が紹介された。

そもそも会社で使い始めたきっかけは、「入社した際に過去のプログラムコードをひたすら見るという作業にムダを感じ、次に新しいエンジニアが入社した際に時間短縮できるよう、ドキュメントの整理を行うのにGitHubのWikiを使った」ことだったという。

API機能についてTIFFでドキュメントが書けるのが役立ったとし、具体的には「APIでどのようなシグネチャーを発行しているかを知るのにプログラミングを読む必要があったが、ドキュメントで補足し、iOSエンジニアがシグネチャーを知らなくても作業ができるようにした」そう。

結果的に外注先の発注にも活用できるようになり、その場合はgit-flowを使って共有するのが役に立つとも紹介された。

コミュニティあるところにGitHubあり

最後に再び登壇者全員に対して参加者から質疑応答が行われた。オープンにするプロセスをどう構築するかという質問に対し、坂野氏は「まず公開しようという風土を作るのが大事なのではないか」と答えた。

竹内氏は「活用する側からすると、公開フォーマットのばらつきが問題で、政府が統一化するといったことも必要かもしれない」とコメント。ちなみに和歌山県ではPDFはNGで、CSVを確保しているおり、エンジニアの力を借りて適切なファイルに変換するイベントも開催している。

最後に通訳を務めるGitHub日本法人の堀江大輔氏(写真左)も加わって会場からの質疑応答が行われた

イベント当日に通訳を務めたGitHub日本法人の堀江大輔氏(写真左)も加わり、会場からの質疑応答が行われた

GitHubでも今回のChacon氏の来日に合わせて、神戸、京都、東京の3カ所で『GitHub Patchwork』という、GitHubの基本的な使い方を学ぶワークショップを開催している。Chacon氏は

「GitHubが大きく成長した理由にコミュニティの存在があり、日本では行政や学校、企業での活用も多い。今後もできるだけコミュニティがある場所に直接スタッフが訪れ、そこからヒントを得たり、サポートを強化していきたい」

と言い、日本法人と力を合わせて支援していくというメッセージでイベントを締めくくった。

イベント終了後の集合写真

イベント終了後の集合写真

取材・文・撮影/野々下裕子

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/cto-book-kobayashi Aiming小林俊仁氏が、よりよいチームを作るために参考にしている本【連載:エンジニアとして錆びないために読む本】 //type.jp/et/log/article/cto-book-kobayashi Mon, 04 Jan 2016 10:28:44 +0000 株式会社Aimingの最高技術責任者・開発グループ ゼネラルマネージャーである小林俊仁氏

株式会社Aimingの最高技術責任者・開発グループ ゼネラルマネージャーである小林俊仁氏

業界でその名を知られるCTO(最高技術責任者)に、仕事に役立つ名著を紹介してもらうこの連載。第6回目となる今回は『剣と魔法のログレス』など、人気ゲームタイトルの開発で知られるAimingの小林俊仁氏だ。

今回、編集部が小林氏に依頼したテーマは「よいチームを作る上で参考になった良書3冊」。果たして小林氏は、どんな書籍を選んだのだろうか?

すぐ効く本と、後で役立つ本。2つのタイプを好んで読む

「大事だなと思うところに線を引きながら読みますね。あとあと自分で引いた赤線の部分を何度も読み返したりします」

じっくり読み込むタイプであると言う小林は、今回の選書にあたり、2つのタイプの本を織り交ぜて選んだと言う。技術書やビジネス書のように即効性を期待して読む本と、人生の岐路に立った時に初めてその真価が理解できるような本だ。順を追って紹介しよう。

よいチームを作るために参考になった良書3冊

小林氏が推薦する3冊のうち、1冊は「意外な」選出だ

小林氏が推薦する3冊のうち、1冊は「意外な」選出だ

【1】『アジャイルなゲーム開発 スクラムによる柔軟なプロジェクト管理』 クリントン・キース著 江端一将訳(ソフトバンククリエイティブ)

どうしたらスクラムやアジャイルがゲーム開発に馴染むんだろうと考えていた時にこの本と出会いました。

ゲーム開発って、最初に作った企画通りに作ればいいというものではなくて、作っては壊し、作っては壊しを繰り返していきながら、面白さを探っていくフェーズがどうしても必要です。

ですから、本書の「プロトタイピングの目的はゲームの面白さを探すことである」という考えにはとても共感を覚えました。この試行錯誤の結果がやがて仕様になり、結果的には数十人、数百人の人が関わるプロジェクトになる。

このフェーズに入ると、手戻りは相当なリスクを伴うようになり、むしろ歩調を合せるためにある程度型にはまった生産プロセスが必要になってきます。つまり面白いゲームを作ろうと思ったら、アジャイルとマスプロダクションを両立しなければならないわけです。

この本は、性質と目的が違う開発フェーズごとにスクラムをどう適用するかについて、具体的な事例と採るべき手法を詳しく解説してくれています。

例えば、EVE Onlineが100人を超える開発チームでリリース計画を行う例なども紹介されており、ゲーム開発のマネジメントで悩んでる人によく勧めています。

【2】『ソニー―ドリーム・キッズの伝説』 ジョン・ネイスン著(文藝春秋)

この本は、ソニーの経営陣がビジネス上の課題に対して、どんな判断を下したのかを知りたくて読み始めたのですが、結果として、理想的なエンジニア像について考えるきっかけを与えてくれました。

多くの人にとってエンジニアとは、単に技術にまつわる仕事をする人です。でも、戦後の焼け野原から会社を興した井深大さん、森田昭夫さんは、この本を読むと、圧倒的にプロダクト指向であり、とんでもない熱量でもって、世の中に価値を届けようとしていたことが分かります。

彼らはエンジニアであると同時に、プロダクトオーナーであり事業責任者、経営者です。なぜこれほどまでに異なる立場、視座が1人の人間のなかで共存できたのかには強く興味があります。

Aimingが職種や担当に関わらず活発な議論を奨励したり、クライアント、サーバの隔てなく幅広い技術の習得を勧めたりするのは、ユーザのために自分の担当や専門分野などにとらわれずどんどん「越境」してほしいから。エンジニアチームの育成や運営方針を考える上で、この本から得た影響は少なくありません。

【3】『愛するということ』 エーリッヒ・フロム著 鈴木晶訳(紀伊國屋書店)

「愛」に関する本ですが、チームのあり方やメンバーマネジメントを考える上で、一番影響を与えたと言っても過言ではありません。

「面白いゲームは仲の悪いチームから生まれない」というのが僕の信念なんですが、組織が大きくなると、どうしてもソリの合わない者同士の諍いや揉め事が増えてきます。

問題を起こした人を叱責したり、疎外したり、チームから外したりするのは簡単ですが、それで済ませてしまうのはあまりに短絡的ですし、学びがありません。彼らも大切な仲間である以上、できれば当事者として一緒に成果を出したい。こうした問題に直面した時、「人を愛することは、鍛錬によって誰にでも習得できる技術である」と説いたこの本のことを思い出しました。

誰かのせい、環境のせい、と言ってしまうのではなく、まず、能動的に愛すること。 本書が説くこういった姿勢は確実に活きていると思います。

組織マネジメントに「愛」を持ち出すのは、少々気恥ずかしいのですが、仲間のあるがまま、無いがままを受け入れること、それにより言い難いことでも言える関係を作ることは、強いチームを作る根幹部分です。

本書はその大きな助けになったと思います。

正しい判断を下すために本を読む

海外での経験も豊富な小林氏が見いだした「よいチームづくりに欠かせないこと」とは?

海外での経験も豊富な小林氏が見いだした「よいチームづくりに欠かせないこと」とは?

選書の理由や背景を一通り説明してもらった後、改めて、よりよいチームの定義を聞いてみた。

「仲間を受け入れ、何でも言い合える人間関係が基本。メンバー同士が信頼感で結ばれていなければなりません。その中で自分は果たすべき役割は、チームの中に芽生えた不信の芽をなるべく小さいうちに摘み、腹を割って話して適切に対処することだと思っています」

小林氏にとって読書は、仕事の進め方や仕事への取り組み方、他人との付き合い方について考える上で、とても大切な情報源であり、エンジニアチームを発展させ、さらによい方向に導くためにも役立っているようだ。

「性格的に『泥棒を見て縄をなう』ようなことだけはしたくないので、いざという時のために役立ちそうな知識や考え方を、自分の中に蓄えておきたい。だから本を読むんです。たとえ、すぐに役立たなかったり、ピンとこないことはあっても、知らず知らずのうちに身になるのが読書というもの。蓄積がなければ、問題に直面した時に正しい判断は下せませんから」

読書によって得られるものは他にもある。

「何のために本を読むのかと言うと、もちろん新しい知見が得られるということもあるのですが、それ以上に、自分の中にあるモヤモヤとした課題意識や解決への仮説がある時、本を読むと『やっぱりそうだよな』って思える、ということがあると思います。自分の行動が本によって強化されるというか、自信になるのですね。そういう意味でも、本を読むことをお勧めしたいですね」

中国で見つけた明代の文人の詩をあしらった小さな掛け軸。酒も好きだがそれよりも読書が好きな作者の心意気に共感し、自宅に飾っているという

中国で見つけた明代の文人の詩をあしらった小さな掛け軸。酒も好きだがそれよりも読書が好きな作者の心意気に共感し、自宅に飾っているという

>> 「エンジニアとして錆びないために読む本」連載一覧

取材・文/武田敏則(グレタケ) 撮影/桑原美樹

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/tks-19 ルンバ開発者と【農業×ロボット】の未来を立ち話!ニューヨークで見た、メイカーフェアの「らしい」活用法【連載:高須正和】 //type.jp/et/log/article/tks-19 Fri, 25 Dec 2015 12:20:00 +0000
高須正和のアジアンハッカー列伝

高須正和(@tks

無駄に元気な、チームラボMake部の発起人。チームラボニコニコ学会βニコニコ技術部DMM.Makeなどで活動中。MakerFaire深圳、台北、シンガポールのCommittee(実行委員)、日本のDIYカルチャーを海外に伝える『ニコ技輸出プロジェクト』を行っています。日本と世界のMakerムーブメントをつなげることに関心があります。各種メディアでの連載まとめはコチラ

2015年9月26から27日の2日間、ニューヨークの科学館であるHall of Scienceで『World Maker Faire 2015』が開かれた。入場者7万5000人以上、出展者600以上を数える大規模なフェアである。

世界のメイカーフェアで、地名ではなく「ワールド」と付いているのはここだけだ。メイカーフェア発祥の地であるベイエリアや、ハードウエア製造業の聖地・深圳のように、来場者や出展者でニューヨークを上回るフェアはあるが、ニューヨークの「ワールド」なメイカーフェアは世界中から話題の出展者が集まることで知られている。

ロボット掃除機ルンバの開発者が手掛ける緑化プロジェクト

今回も、科学館の回りにある広大な野外スペースにブースが設けられ、世界中から出展者が集まっていた。いわゆる有名人も多くいるが、ステージ上ではなく、普通にブースを出しているのは興味深いし、まだプロジェクトが固まっていない段階で展示しているのも面白い。

僕が惹かれたのは、「知能ロボット」ブースのこのプロジェクトだ。

太陽電池を背負ったロボットが、野菜を蹴飛ばしている。外装は全部3Dプリンタだし、しばらく見ていてもどういう動きをしているのか分からなかったが、看板には「園芸ロボットを、ルンバの開発者Joe Jones(ジョー・ジョーンズ)が」とある。

さっぱりした、さほど混雑してないブースと大企業が結び付かなくて、ちょっと話しかけてみた。

太陽電池を搭載した園芸ロボットのプロトタイプ

太陽電池を搭載した「園芸ロボット」のプロトタイプ

すると、デモをしていたのはジョー・ジョーンズ本人だった。

「太陽電池と、農地でも走る走行機構があれば、とりあえず外で使えて無限に動くロボットが作れる。今回持ってきたのはプロトタイプで、今はあるスペースに効率的に種を蒔くことを考えている。新しい場所だと、人工知能で地形を判断するみたいなことはできないだろうけど、ちょうどいい間隔で種を蒔くぐらいのことはできるんじゃないかな。もちろん、砂漠の緑化もできるかもしれない」

これは問題の解き方が面白いと感じた。野外にランダムに動くロボットを放つというアイデアも面白いし、種蒔きというのも実際にできそうなプロジェクトだ。ジョーンズ氏はこのアイデアで、農業ロボットの会社を立ち上げたという。

ジョー・ジョーンズ氏。農業・園芸ロボのFranklin Roboticsを起業した

ジョー・ジョーンズ氏との2ショット。彼は農業・園芸ロボのFranklin Roboticsを起業したという

ジョーンズ氏のようなブースの出し方は素晴らしい。

メイカーフェアと、Kickstarterのようなクラウドファンディングは相互に補完し合うエコシステムだと思うが、単純にKickstarterにプロジェクトを公開後、プロモーションの手段としてメイカーフェアに出展している人が多い。それはそれで良い方法だと思うが、もっと粗っぽい段階のアイデアをとりあえず形にして、いろいろな意見を聞きながら進めるのはすごく「メイカーフェアでしかできない」やり方だ。

ちょうど向かいに、Meccano(メカノ)がブースを展示。メカノは今でいうMakeblockのような組み立て式のキットで、100年以上の歴史を持っている。最近はレゴ・マインドストームのようなロボットキットを売り出し、再ブームの兆しも見える。

メカノのブースでロボットと戯れる子ども

メカノのブースでロボットと戯れる子ども

同じく野心的なアイデアだったのが、「イタリアメイカーパビリオン」として大きなテントを構えていた、イタリアメイカーたちの超小型の光造形3Dプリンタだった。

光造形3Dプリンタは、光を受けると固まる材料に光を少しずつ当てて造形するタイプのもので、その光源にスマートホンの画面を使うことにより、すごく安い価格($99で考えていると言っていた)で提供したいのだという。

イタリアのプロジェクト、光造形3Dプリンタ

イタリアのプロジェクト、光造形3Dプリンタ

写真では分かりづらいが、iPhoneの上に置いてあるグレーの箱には透明の底が付いている。この箱をiPhoneの上に載せて、材料である液体を注ぎ、僕が左手に持っているシルバーの箱をかぶせると、シルバーの箱の方で硬化したモノをちょっとずつ引き上げるのだそうだ。

ただ、現段階ではシルバーの箱の中には何も入っていない、純粋なモックアップである。

Kickstarterで話題のプロジェクト

もちろんすでに話題になっているプロジェクトも展示されている。

間違えようもない音色で遠くからも存在感を出していたのはoneTesra。CDケースぐらいの設置面積しかない小型のテスラコイルだ。

oneTesraのデモンストレーション

oneTesraのデモンストレーション

2013年に公開されたこのプロジェクトは無事完成にこぎつけ、会場でもMIDIで音を鳴らせるテスラコイルキットを販売していた。

朝食の時に一緒になった彼は、TrydentというOpenROV(オープンソース水中ロボット)のキットを持って歩いていた。ブース出展には間に合わなかったのだが、目に付いた人にはぜひ見せて意見を聞きたいのだという。後で見てみたら、わずか10日ほど前にKickstaterで公開したばかり、出来立てほやほやのプロジェクトだった。

コンパクトで完成度の高い水中ドローン『OpenROV Trident』

コンパクトで完成度の高い水中ドローン『OpenROV Trident

Micro 3D Projectは、小型の炊飯器ぐらいの大きさ

Micro 3D Projectは、小型の炊飯器ぐらいの大きさ

上の写真は、こちらも話題になった小型の3Dプリンタ『Micro 3D Project』。その場でプリンタを販売していた。

DIYのさまざまな可能性が見える

メイカーフェアのいろいろなブースがスタートアップしてクラウドファンディングに行ったり、むしろ起業家が手段の一つとしてハードウエアを選んだりする中で、メイカーフェアがまるでCEATECのような産業見本市化する危惧も聞かれる。

実際に商用化しているプロジェクトもたくさんあるが、メイカーフェア内では商用・非商用のあいだの境界線はあいまいで、あまり気にされていないように思えた。

ジョーンズ氏の園芸ロボットは最終的には商用を目指すんだろうし、OneTesraやMicro3Dプリンタは完成して、社会にどう浸透させるかを目指す段階にある。

だが、メイカーフェアには、そういったサイクルとは無縁のDIYプロジェクトも多くある。

古いコンピュータゲームの展示ブース

古いコンピュータゲームの展示ブース

ATARIなど、古いコンピュータゲームの保存活動をしている人たちも参加していた。

広いクラフトブースでは、陶芸・木工・服飾・アクセサリー製作などのメイカーが出展していて、電子工作に負けず劣らず賑わっていた。多くのブースでiPadやiPhoneをレジにしてSquare端末で決済しているのが目立つ。

手工芸品を集めたクラフトブース

手工芸品を集めたクラフトブース

下のはニューヨーク市大学から、「パーソナルクラウド」という名義のジョークプロジェクト。本業はクラウドコンピューティングの研究だが、これは天気の情報に応じていろんな色に光る雲。

パーソナルクラウドを背負って歩く出展者

パーソナルクラウドを背負って歩く出展者

こちらはRaspberry Piがクラウド化されていることを可視化するために、プラスティックケースに包まれたRaspberry Piボードが、計算するたびに立ち上がるプロジェクト。まるでサーバルームに並ぶアクセスランプを見るようで、ちょっと感動を覚える。

「クラウドRaspberry Pi」と名付けられた展示

「クラウドRaspberry Pi」と名付けられた展示

個人的に大好きだったのが、この字を書いていくロボットカー。砂と送り機構を積んでいて、自走して地面に文字を書いていく。

路面に字を書きながら進むロボ

路面に字を書きながら進むロボ

文字の書体、精度ともに高くて、作るのにはけっこうな技術と労力がかかっていそうに見えるし、かつ、できた文字が砂ですぐ消えてしまうのもロマンチックだ。

軌跡が文字になって残っていく

軌跡が文字になって残っていく

続いて、下の写真は今回のメイカーフェアのシンボル的になっていたロボット。手から火を放つ。真ん中の窓に人が入っていて、棒を操って動かしているのが丸見えである。

メイカーフェアのシンボルとロケットのコントラスト

メイカーフェアのシンボルとロケットのコントラスト

ハイテクノロジーではないし、ビジネス的に大きな成功を収めそうなものでもない。でも、作者がこれを作ることを楽しんでいるのは伝わってくるし、こういう試みを愛する人たちがメイカーフェアに集まってくる。

それは「DIYでない巨大ロボ」を見るのとは、共通性もあるがまた別の視線だ。

どこのブースも、作ってるものは違うし、作り方も、作る目的も違うものの、「DIYを楽しんでいる」という点でのみ共通している。そしてそれは、出展者同士や出展者と参加者をつなげるのにけっこう役立っているように思えた。

その意味で「DIYを楽しむ人のお祭り」というメイカーフェアの性格を、どのブースも体現しているように思えた。

告知です

2016年1月末ぐらいに、一部この連載で扱ってきたような、アジアのメイカー事情をまとめた書籍『メイカーズのエコシステム(仮)』が出る予定です。タイトルや出版日が決まりましたら、僕のTwitterなどで告知します。

>> 高須正和氏の連載一覧

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//type.jp/et/log/article/janog37 ネットワークエンジニアの「悲鳴」をみんなで解決する『JANOG』37回目の見どころは?【法林浩之×JANOG37実行委員】 //type.jp/et/log/article/janog37 Fri, 25 Dec 2015 10:41:43 +0000
お酒を片手に「一流エンジニアの人生論」を紐解くトークイベント『TechLION』のファシリテーター・法林浩之氏が旬のエンジニアを招き、コミュニティ運営についてや個人のキャリア形成について放談する連載企画。今回は、2016年1月20~22日に開催される『JANOG37 Meeting』の運営委員を務める2人をゲストに招き、開催準備の裏側を聞いた。
法林浩之のトップエンジニア交遊録

法林浩之

大阪大学大学院修士課程修了後、1992年、ソニーに入社。社内ネットワークの管理などを担当。同時に、日本UNIX ユーザ会の中心メンバーとして勉強会・イベントの運営に携わった。ソニー退社後、インターネット総合研究所を経て、2008年に独立。現在は、フリーランスエンジニアとしての活動と並行して、多彩なITイベントの企画・運営も行っている

2016年1月20~22日、ネットワークエンジニアが集結する日本有数のイベントとして定着している『JANOG37 Meeting』が愛知・日本特殊陶業市民会館フォレストホールを主会場に開催される。

『JANOG37 Meeting』のWebページはこちら

『JANOG37 Meeting』のWebページはこちら

1年に2回、日本各地で開催されてきた『JANOG』は、ネットワークオペレータをはじめネットワークインフラにかかわる機器・装置メーカーや、ソリューション提供企業の社員たちが、今まさに直面している課題や将来へ向けたロードマップについて熱い議論を交わすことで知られる一大イベント。

37回目の開催となる次回は、「みんなでつくるインターネット」をテーマに幅広いテーマのプログラムが組まれている。

>> プログラム一覧はこちら

JANOGの特徴は、このイベントを通して交流が始まった20~30代の若手たちが実行委員や運営委員となり、急速に“世代交代”が進んでいるという点。今回、久しぶりに実行委員として参画することになった法林浩之氏と、実行委員長の1人である古河ネットワークソリューションの神谷尚秀氏、そしてプログラム委員長のビッグローブ土屋太二氏らに集まってもらい、見どころ・聞きどころについて語ってもらった。

JANOG参加をきっかけに若手中心のメンバーが新しい担い手に

(写真左から)ビッグローブの土屋太二氏、古河ネットワークソリューションの神谷尚秀氏、法林浩之氏

(写真左から)ビッグローブの土屋太二氏、古河ネットワークソリューションの神谷尚秀氏、法林浩之氏

法林 実は僕、JANOGの第1回から何度か参加しているんですが、ここ2~3年でものすごく世代交代が進んでいるなぁと感じています。神谷さん、土屋さんはいつからJANOGに参加しているんですか?

土屋 僕が最初に参加したのが『JANOG28』で……。

神谷 僕は『JANOG31』でした。

法林 お2人とも、年齢は?

土屋 2人とも29歳なんですよ。

法林 僕はいろんなITイベントの運営に携わっていますが、神谷さん、土屋さんくらいの若さで運営の中心メンバーになる人って意外と少ないですよね。お2人は、どんなきっかけで実行委員会に携わるようになったんですか?

神谷 僕は初めて参加した時から、会場内のネットワーク担当者の1人として仕事をしていました。会社の先輩が何人か委員会をやっていて、スタッフ入りを勧められたんです。

『JANOG37 Meeting』の実行委員長を務める神谷氏

『JANOG37 Meeting』の実行委員長を務める神谷氏

土屋 僕もはじめは先輩に勧められて、でしたね。JANOGを通じて、ネットワーク回りの仕事をしている同世代の人たちと知り合えたことが、今回の役割を引き受けるきっかけです。

法林 JANOGに参加すると、もれなく友だちができる?(笑)

土屋 Web系の勉強会と違って、そもそもネットワーク関連の人たちが集まる勉強会やコミュニティって少ないですからね。その点、JANOGは日本の業界関係者が一堂に集まる会だし、社費で参加する人も多いから、社外のつながりを作りやすいんですよ。

神谷 ホントそうですよね。毎回数百人規模で同業の人たちが集まるイベントはそうそうない。これは声を大にして強調しておきたいメリットです。

土屋 夜に行われる懇親会も、若い人たち同士でコミュニケーションがとれるように席が用意されていたりと、けっこう配慮されています。

神谷 懇親会の“ぼっち対策”は充実していますよね。技術テーマ別にもラウンドテーブルが用意されてたりとか。

土屋 今回のJANOGも、その辺は踏襲しているので、新しい人脈づくりには最適だと思いますよ。

法林 JANOGは毎回、ホスト企業に会場を見つけてもらう形式なので、東京だけじゃなくて日本各地で開催されますよね。だからほとんどの人が出張で参加していて、懇親会の参加率もとても高い。

土屋 確かに、地方開催の時ほど懇親会への出席率が高いですよね(笑)。

「マイクの前に立てたら一人前」JANOGならではの真剣議論

イベント運営経験の豊富な法林氏(右)の経験談に聞き入る2人

イベント運営経験の豊富な法林氏(右)の経験談に聞き入る2人

法林 ところで、お2人にとって「参加者としてのJANOG」はどんな意味を持っていました?

神谷 僕の勤めている古河ネットワークソリューションはネットワーク用機器のメーカーなんですが、ネットワーク構築の現場って機器だけじゃ解決できない課題が多いんです。例えば新しい技術が出てきたとしても、それにちゃんと適用できるのか、保守・運用で考慮すべきことは何か、といったことが課題になります。そういう切実な問題を率直にディスカッションできる点で、JANOGはすごく貴重なイベントです。

土屋 毎回、プログラムで扱うテーマがインフラ面から運用面までとすそ野が広いのも特徴かもしれません。そういう場に集まる人たちとFacebookやTwitterでつながって、情報交換もできますし。JANOGでできたつながりが、今の仕事でのセーフティネットみたいになっている。その点が、すごくありがたいですね。

法林 JANOGといえば、各プログラムの会場にマイクが置いてあって、聴講者がそこに並んで発表者に質問する風景が特徴的ですよね。お2人は、マイクの前に立ったことがありますか?

土屋 はい。最初は大人たちがガンガン議論していて、怖かったですけど(笑)。

神谷 若手だと、「こんなことを聞いたら周りの聴講者たちにバカにされるんじゃないか……」と不安になりますよね。

土屋 でも、「自分が仕事で困っていることは、きっと他のネットワーク関係者も困っているはず」と思って質問する方がいいって、先輩に言われたのを覚えています。

神谷 ネットワークエンジニアの「悲鳴」をみんなで共有して、みんなで解決しようというのがJANOGのイイところ。業種も年齢も経験差も関係なく、オープンに議論できるのが魅力ですよね。

法林 副会長の平井則輔さんが、JANOGのブログで「マイクの前に立つ恐怖感」を乗り越えることを「第一宇宙速度を越える」と表現していて、面白いなーと思っていました。運営側としても、ぜひ多くの参加者が第一宇宙速度を越える経験をしてほしいですよね。

神谷 そうですね。仮にプログラム中に乗り越えられなくても、懇親会の場やBoF(Birds of a Feather/同じテーマに興味を持つ者同士による自由討論の場)で発表者に声を掛けるなどして、積極的に議論に加わってほしいなと思っています。

同時刻に10テーマのBoFを開催。懇親会で延長戦も?

プログラム委員長・土屋氏が語る「JANOG37の注目ポイント」は?

プログラム委員長・土屋氏が語る「JANOG37の注目ポイント」は?

法林 今、BoFの話が出ましたけど、参加者も登壇者も一緒になって課題の共有と解決を目指すという意味では、やはり目玉プログラムは2日目(21日)のBoFになりますか?

神谷 そうですね。2日目16:00からの1時間30分で、合計10個のBoFが同時に行われます。「ネットワーク防災訓練BoF」とか、「どんなテストしてる?(続)」みたいな前回好評だったプログラムもあります。みんな現場で一度は直面していそうなテーマなので、どれくらい議論が盛り上がるか楽しみです。

土屋 実はBoFを10テーマも同時開催するのは初めてなので、うまくいくかどうか我々実行委員も心配しています(笑)。

法林 で、終了後にそのまま懇親会で延長戦に突入する、という流れですね(笑)。他に、実行委員として今回肝入りの部分って何ですか?

土屋 参加者の声を大事にしようということで、事前にプログラム内容についてアンケートを取りましたね。それにLT(ライトニングトーク)のテーマについてもユーザーが“投票”できるページをWebサイトに設けました。

法林 投票でLTの内容を決めるっていうのはすごいですね。

神谷 イベントの運営でまず考えたのは、初めて参加する人、若手の人たちにもっと気軽に参加してもらいたいということでした。ですから、興味を持っている人、参加を検討している人がどんな話なら聞きたいか、議論に加わりたいかフィードバックをもらうための試みです。

法林 それだけ、ネットワークに携わる人たちが実際に直面している課題に向き合っていますよ、というアピールでもありますよね?

神谷 質問や議論という形ですけど、やっぱり「悲鳴」なんですよ(笑)。インフラ設計や機器開発、ソリューション提供、運用・保守といった立場の違いにかかわらず、すべてのネットワーク関係者の課題をみんなで共有して解決していきたいと思って決めました。

法林 お2人が個人的に注目しているプログラムは?

土屋 僕は個人的に3日目(22日)の「ソフトバンクネットワークの現状と今後」を楽しみにしています。あれだけの巨大ネットワークをどう運用して、どんなトラブル対応をしているのか、相当ホンネが聞けるというので楽しみです。

法林 大規模なM&Aをあれだけやっている会社ですから、現場では実際どうなのか気になるとことですよね。

土屋 それと、2日目の「JANOGで話題になったBGPネタのその後」も期待しています。実はこれ、アンケートを取った結果リクエストが多かったプログラムなんですね。過去に「JANOG」で取り上げたケースが、その後どうなったかが明かされる予定です。過去に取り上げたものもちゃんとフォローアップするという点で要注目ですね。

法林 プログラムを見てみると、本当に初心者からベテランまでが今、現場で直面していそうなテーマが多いですよね。

神谷 1日目の「TCP/IPチュートリアル(基本のTCP+UDP+ICMP/IP)」などは、実は初心者向けのようでいて、ベテランでも「基本を忘れるな!」というメッセージが込められているそうです。そういう意味で、いろんなネットワーク関係者にオススメです。

法林 TCP/IPが基本ということがだんだん忘れられているからね。新しい技術ばかりを追うのではなくて、基本についても押さえておきましょうというところが「JANOG」らしい。最後に、運営委員と実行委員を代表してアピールをお願いします。

土屋 本当の意味で、ネットワークエンジニアの「悲鳴」を共有して、課題解決のためのヒントがつかめる機会になると思いますので、初心者でも、初めてでも、1人でも、ぜひ参加してください! 絶対に行って良かったと思うはずです。

神谷 おんなじですね。どんなエンジニアも業務内容はネットワーク分野のごく一部分だと思うんです。でも「JANOG」で出会える人たちの仕事とどうつながっていって、どこのどんな課題に直面しているかがその場で学べます。ぜひご参加ください!

法林 今日は興味深いお話をありがとうございました。

>> JANOG37 Meetingの詳細情報はコチラ

取材・文/浦野孝嗣 撮影/伊藤健吾(編集部)

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//type.jp/et/log/article/kibana ログデータ可視化ツール『Kibana』に今も流れるPay it forwardのOSS的精神 //type.jp/et/log/article/kibana Fri, 25 Dec 2015 09:52:06 +0000 Kibanaとは、Elastic社が提供するログデータ可視化ツール。同社のメインプロダクトであるElasticsearch同様、世界中の企業で利用が進んでいる。ビッグデータ解析の時代において、今後ますます存在感を増していく可能性を秘めたプロダクトといえるだろう。

このKibanaは、現開発リーダーのRashid Khan氏が、2013年にElastic社にジョインするより前にOSSとして開発を始めたもの。以前インタビューした同社の創設者で現CTOのShay Banon氏同様、その開発哲学にはオープンソースコミュニティの影響が色濃い。

今年12月16日、東京・六本木で開催されたElastic社の技術カンファレンス『elastic{on} Tour 東京』で来日したKhan氏に、Kibana開発に至った経緯や今後の構想、さらには理想とするエンジニア像について聞いた。

自分が直面した問題は、きっと多くの人も抱えた問題のはず

Rashid Khan氏

Rashid Khan氏

―― エンジニアの仕事に就くようになった経緯を教えてください。

職業としてエンジニアをやるようになったのは、アリゾナ州立大学を卒業してJPモルガン・チェースに入社したのがスタートです。でも、私の人生はそれ以前から常にエンジニアのようなものだったと言えます。

実は母がAppleの社員だったので、小さいころからAppleのチャイルドケアセンターに連れていかれたものです。当然、そこにはさまざまなコンピュータがありましたから、エンジニア的なバックグラウンドはそのころに始まりました。

早くからプログラミングを学び、高校生のころにはコンピュータネットワークの修理やWebサイトの作成などのアルバイトをしていました。ティーンエージャーのころからオープンソースのプロジェクトにもかかわるようになっていきました。

―― 職業としてのエンジニアになって以降、JPモルガンに始まって、平和部隊(アメリカ連邦政府が運営するボランティア団体)やThe Village Voice誌など、幅広い業種にかかわっているようですね。

それは必ずしも意図したものではありません。

オープンソースプロジェクトのメンテーナーをやっていた経歴が目に留まり、JPモルガンに入った時はネットワークマネジメント部門の採用でした。その後、JPモルガンの買収もあり、Net AndroidというVoiceOverIP技術の小さな会社に移りました。

Net Androidでの仕事は少々退屈だったので、2年半で仕事を辞めて平和部隊でのボランティア活動に専念することにしました。

―― なぜ、突然ボランティア活動を?

The New York Timesを読んでいて、タイの地域医療課題に関する記事を目にしたのがきっかけです。その記事には、医師は各地域の看護師からの質問一つ一つに電話で回答しているという現状が書いてあって、「これは非常に効率が悪い」と思ったんですね。

そこで、同じ問題を抱えていたナミビアで、看護師やボランティアの人たちの電話番号をリスト化し、一つの電話番号で連絡が取れるようなプラットフォームを開発しました。

―― それからThe Village Voiceを経て、2011年にKibanaの開発を始めることになったんですね。どのようなきっかけがあったのですか?

The Village Voiceが使っていたインハウスのシステムで、毎朝早くからバグやエラーのアラートが鳴ることにうんざりしていたんです。ソフトウエアでこうした環境を改善できないかと考えるようになりました。

当時はこうしたバグやエラーの原因が一見しただけでは分からなかったので、その原因を突き止める必要がありました。これがKibana開発のトリガーになったんです。

きっかけはパーソナルな動機でしたが、当初からOSSとして公開する考えを持っていました。私がこういう問題に直面しているのだから、きっと他の人も同じ問題を抱えているに違いないと考えたのです。

2週間ほどかけてKibanaのベースとなるようなものを作り、LogstashのIRCで公開しました。そこで使ってくれた人たちを助けるところから、Elasticとの関係が始まりました。

素晴らしいアイデアを形にするのに役立つことこそ重要だ

kibanaについての日本語資料はこちらからダウンロードできる

kibanaについての日本語資料はこちらからダウンロードできる

―― Elasticに正式にジョインすることになったのはなぜですか?

Elasticの創設者であるShayが、最初にコンタクトしてきてくれたのは2012年10月でした。2回、3回と話をしたのですが、彼は本当にカリスマ的な人物で、すぐに「これは面白そうだ」と感じましたね。

そこでは主に、もし私がフルタイムでKibanaにかかわるようになったらどんなことが起こるかという話をしました。そこで、Shayも私も同じビジョンを描いていると気付いたので、2013年1月に正式にスタートすることになったんです。

―― そのビジョンとは?

ElasticsearchにKibanaが加わることで、ビッグデータの世界でこれまで実現できなかった本当の価値を提供したいという話をしました。そして、エンジニアだけでなく万人が使えるものにしたいという考えで一致したんです。

Shayも私も、「ソフトウエアをもっともっと簡単なものにしたい」という共通の考え方を持っていました。

良いエンジニアであれば独力でモノを作ることができますが、素晴らしいエンジニアが必ずしも素晴らしいアイデアを持っているとは限らない。素晴らしいアイデアを形にすることに役立つことこそが重要だと思っています。

―― エンジニアの中には、コードを書くことそのものにモチベーションを感じる人もいますよね。Rashidさんのエンジニアとしてのモチベーションは、世の中の役に立つこと?

エンジニアとは「モノを作るのが好きな人」のことだと思っています。私自身は、例えばガレージに行って自分の車をいじるのも大好きだから、その意味では生粋のエンジニアです。一方でコードは、あくまでそうしたモノを作るためのツールに過ぎない。

そして、そうやって作ったものでみんなを幸せにしたい、人の人生に役立ちたいということも常に考えています。

そう考えるようになったルーツは、おそらく小さいころに受けた母の教えにあるのではないでしょうか。母からは「人のためになることをしろ」、「人とシェアしながらやることを考えろ」と口癖のように言われてきました。

その考え方は、ティーンエージャーのころからかかわってきたオープンソースコミュニティそのものであるとも言えます。

私自身、コミュニティに入ってさまざまな人に助けてもらうことで、コンピュータのことをイチから学んできました。“Pay it forward”、つまり自分が助けてもらったら、「今度は自分が助ける側に」と考えるのがオープンソースの考え方です。

そうした場所で育った自分は、自然と「人を助けたい」と考えるようになっていきました。オープンソースコミュニティがなかったら、今日の私のキャリアはなかっただろうと思います。

トレンドを正しく理解するのは優秀なエンジニアの必要条件

10代のころからOSSコミュニティに携わってきたKhan氏が考える「優秀なエンジニア像」とは?

10代のころからOSSコミュニティに携わってきたKhan氏が考える「優秀なエンジニア像」とは?

―― Elasticのエンジニアにはどんな人が多いのですか?

全員がオープンソースのデベロッパーであり、例外なくクリエイターです。その中には素晴らしいコードを書きたいというモチベーションの人もいます。そして、全員が良いプロダクトを作り、それを大きくしていきたいと考えています。

自分のやりたいことをやっているという意味では利己的とも言えますが、それをやらせてくれる自由なカルチャーがあるのがElasticという会社です。

―― 利己的に自分のやりたいことを突き詰めることと、会社として物事を進めることは、時に相反することもあるのでは?

確かにそういう問題は起こり得ますが、チームには技術に専念したい人とともに、マーケットのことを理解して全体としてどうしていかなければならないかが分かる人材もいます。クリエイターのための自由度を確保しつつ、ビジネスとして前へ進むこととのバランスは常に意識しているところです。

それに、エンジニアの多くはElasticが会社になる前からElasticの製品にオープンソースのプロジェクトとしてかかわってきたデベロッパーですから、社員となった今は好きなことをやってお金をもらっているような感じですね。

―― オープンソースコミュニティにおける「優秀なエンジニア」を定義するとしたら?

技術の専門家であることは必要ですが、それだけでは不十分です。問題を見つけることができ、それをどのように解決するかを考えられることが重要です。

また、我々がエンジニアを採用する際には、候補者には必ず「今、業界で起こっていることを本当に理解しているか」を確認する質問をします。どのトレンドをフォローし、逆にどのトレンドをスルーすべきか。かなりの時間をかけて、プログラマーとしての資質を見ます。

シニアエンジニアのポジションには十分な経験も求めるし、我々の仕事に関するかなり突っ込んだ質問もします。スタック全体についてもそうだし、プロトコル、データベース、データストア、セキュリティ、テスト、デバッグ、アプリケーション……と質問は多岐に及びます。

通常、面接は4回から5回。1回の面接時間は30分で終わる時もあれば、2時間かかることもあります。一緒に働くからには楽しんで仕事がしたいので、できるだけたくさんのチームメンバーが直接話すことで、社交的な人かどうかもチェックします。

よりパワフルに、より拡張性のある方向へ

―― Kibanaは現状、どんな体制で開発しているのですか?

開発陣は全部で15人。何人かは1箇所に集まっていますが、それ以外は全米に散らばっています。テクニカルリードである私自身は、Elastic社においてKibanaが今後、どのような位置づけになるのかといったことについて時間をかけて考える立場にありますが、同時に実際の開発にも深くかかわっています。

―― Kibanaは今後どういう方向に進んでいくのでしょう?

先ほども言いましたが、万人にとって使いやすいものというのが一つのゴールです。かつ、もっとパワフルな、もっと拡張性のあるものにしていきたい。

我々は全てのオープンソースデベロッパーのことを大切に考えています。ElasticsearchやLogstashと同じようにプラグインを使えるようにすることで、デベロッパーが新しい機能を簡単に加えることができるようにしていきたい。

現状のKibanaはまだ「アプリケーション」ですが、将来はElasticスタック全体を管理することにも使えるUIにすることで、Elasticsearchなどを使うのにもコードやCLを使う必要がなくなるようにしたいと考えています。

―― チームはさらに拡大していく?

今も積極採用中です。かなり大きなチームになっていかないと、我々が思い描く野心的なゴールは達成できないと思っています。Kibanaチームにはまだいませんが、優秀でありさえすればもちろん、日本での採用も可能性はあるだろうと思っています。

取材・撮影/伊藤健吾 文/鈴木陸夫(ともに編集部)

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//type.jp/et/log/article/careergohan_report2 エンジニアとしてずっと新しいモノを作り続けていくには~旬の技術者4人が語るキャリア論【キャリアごはんvol.2レポ】 //type.jp/et/log/article/careergohan_report2 Thu, 24 Dec 2015 13:36:55 +0000 【2016年の「技術と働き方」先読みワークショップ】をテーマに開催した第2回キャリアごはん

【2016年の「技術と働き方」先読みワークショップ】をテーマに開催した第2回キャリアごはん

エンジニアtypeと@typeは12月17日、「技術と働き方の未来予測」をテーマに「第2回キャリアごはん」を開催した。パネルディスカッションとワークショップの2部構成で、前半のディスカッションでは以下の4人のゲストパネラーに「エンジニアとして、新しいモノを作り続けるためにはどうすればいいのか?」を聞いた。

楽天株式会社 技術理事 吉岡弘隆氏
■株式会社トレタ CTO 最高技術責任者 増井雄一郎氏
■株式会社ソラコム Cofounder&CTO 安川健太氏
■フリーランスiOSエンジニア 堤修一氏

国内外の大企業やスタートアップ、フリーランスとさまざまな働き方をしてきた4人は、キャリアメイクの面でどのようなことを意識し、実践しているのか。ディスカッションの内容をレポートする。

報酬だけで仕事は決めない。その後のキャリアにどう影響するか

近年はBLE技術関連の開発で実績を積み上げているフリーランスのiOSエンジニア堤修一氏

近年はBLE技術関連の開発で実績を積み上げているフリーランスのiOSエンジニア堤修一氏

フリーランスの堤氏は、昨年から2015年の前半にかけて、『WHILL』や『Moff』、ウエアラブルトランシーバーの『BONX』など、iOSアプリとハードウエアをBLEでつなぐ仕事に注力。BLE技術に関する書籍も執筆した。

そして、今年後半は2年前に試みたものの頓挫していた「海外で働く」を実現すべく、自費で渡欧し、ドイツ・バンベルクを拠点に1カ月にわたって現地のスタートアップで開発に携わった。

こうして自分がやりたいと思う開発を仕事にできているのは、「キャリアの転機のような大きな変化もあるにはあるが、それよりも日々の地道な積み重ねの方が大きい」と堤氏。そのために意識しているのは、「お金だけもらえる仕事をしないこと」と言う。

「たとえそのアプリを作ることが世の中にとって意義深くても、自分でなくてもいいと思えるような仕事を受けると、自分がどういうエンジニアなのかがぼやけてしまう。その仕事が実績に変わった時にキャリアにどのように影響するかは、常に意識するようにしています」

起点となる「最初の実績」については、「会社でがむしゃらに働いていれば、それが全て自分の経験になり、多かれ少なかれ実績はできる。それを日々積み重ねていくことで、だんだんと流れが生まれるのではないか」と話した。

GitHubが履歴書になる時代。手を動かしてプレゼンスを示せ

トレタCTOの増井雄一郎氏は、オープンソースでの活動を起点にキャリアを切り開いてきた

トレタCTOの増井雄一郎氏は、オープンソースでの活動を起点にキャリアを切り開いてきた

増井氏も、トレタで現職に就くまではフリーランスで活動したり、米国で起業したりと、自分が望む多様な働き方を実現してきた。多くの場合、その起点には「オープンソースの活動があった」という。

『Titaniam』などで知られる米Appceleratorに入った際には、同社の製品がオープンソースであったために入社以前からコミットしていたこと、GitHubのスターが社員の誰よりも多かったことが技術力の保証となり、言葉の壁を超えて評価を受けることができた。

「GitHubはいまや履歴書であり、アーティストにとってのポートフォリオのような役割を果たしている」と増井氏は指摘する。

CTOとしてエンジニアを採用する側に回った今、トレタでは「GitHubのアカウントを持たず、ソースコードを公開していない候補者は、会って話したところで技術力が測れないため、書類で落とすようにしている」と言う。

一方で個人としては、1年に1度「英語で講演すること」とともに「個人プロダクトを作って広く公表すること」を自らに課している。フリーランスから会社所属へと立場を変えた今も、自ら手を動かし、イチ技術者としてのプレゼンスを示すという視点は忘れていない。

「自分の新しい体験のための転職」がもっとあっていい

Ericsson、Amazonと海外の超大手企業を渡り歩いてきたソラコムCTOの安川健太氏は、「自分の新しい体験のための転職がもっとあっていい」と呼び掛ける

海外の超大手企業を渡り歩いてきたソラコムCTOの安川健太氏は、「自分の新しい体験のための転職がもっとあっていい」と呼び掛ける

転職、起業という道を選ぶことで自ら新境地を開いてきたのが、ソラコムCTOの安川氏だ。現職に就任するまでは、Ericsson、Amazonと海外の大手企業を渡り歩いてきた。

Ericssonのリサーチ部門にいたころから、「500億のデバイスがネットワークにつながる未来」を想定したサービスを考えたり、開発したりしていたという。その意味では、IoTプラットフォームを目指すソラコムまで一貫したテーマを扱っているといえる。

ただ、そうした未来を実現する上でカギになるであろうクラウド技術について、当時の安川氏は明るくなかった。社内の技術者に聞いても、専門外の技術について明快な答えをくれる人はいなかった。「であればむしろ“そっち側”に飛び込んでみよう」と考えたのが、異業種のAmazonへと転職したきっかけという。

一貫して海外で働いてきた安川氏は、「自分の新しい体験のために会社やポジションを変えるという転職が、日本でももっとあってもいいのではないか」と呼びかける。

もちろん、異業種に転職する上では過去の実績が実績として通用しないリスクもある。安川氏は「自分のキャリアを振り返ってアピールできそうな経験をつなぎ合わせ、チューニングするといったことは必要かもしれない」とも話していた。

今の時代、「石の上にも3年」はあり得ない

楽天・技術理事の吉岡弘隆氏は、自身の経験に照らして「目の前の仕事で結果を出すことも重要」と強調

楽天・技術理事の吉岡弘隆氏は、自身の経験に照らして「目の前の仕事で結果を出すことも重要」と強調

楽天で技術理事というポジションにある吉岡氏は、4人のパネラーの中でもエンジニアとしてのキャリアがひときわ長い。大学を卒業して入社したのは、米国に本社を持つDECの日本支社だった。

ソフトウエアエンジニアリングの世界に華やかなイメージを抱き、米国本社で働くことを希望して入社した当時の吉岡氏にとって、最初にアサインされたCOBOLのコンパイラ開発は「非常に地味で退屈なものに映った」という。

しかし、実際の開発に従事し、「頭でっかちだった」自分が技術的に未熟だったということを思い知ると、退屈に映った開発はむしろ非常に面白いものと感じられるようになった。

実践の中でエンジニアリングの「いろは」を学び、見よう見まねで技術力を向上させたことで、5年目には希望通りに本社から声が掛かるに至ったという。

「やりたいことをやるためには、目の前の仕事で結果を出すことも重要」と吉岡氏は強調する。

一方で、「現代の時間の流れにおいて『石の上にも3年』はあり得ない」とも話す吉岡氏。「増井さんが言うように、自分が興味のあるオープンソースに勝手にコミットするなど、主体的に行動することで、やりたい開発ができる立場に到達するスピードは加速するだろう」とアドバイスを送っていた。

新しいモノは「プロダクト愛」を感じるチームから生まれる

さらに話題は、新しいものを生み出せる「チーム」へと移っていった。フリーランスという立場上、さまざまなチームに入る機会がある堤氏から見ると、良いチームとそうでないチームには、差を感じるポイントがいくつかあるという。

中でも他のパネラー陣から共感を呼んでいたのが、「プロダクトへの愛を感じるチームかどうか」だ。

「例えば飲み会に行った時にプロダクトの話が一切出ないとか、作業が中途半端なのに時間が来るとすぐに帰ってしまうのを見ると、このチームでプロダクトのことを毎日考えているのはファウンダーだけなのではないか?と思ってしまう」(堤氏)

この堤氏の例に深くうなずいた安川氏は、「幸い、うちのチームはお昼に行っても飲み会に行ってもずっとプロダクトの話をしていて、そうした中から新機能のアイデアがよく生まれる。自分も楽しいし、みんなも楽しんでいるという状態が、新しいものを作る上では好ましいのでは?」と続けた。

午後3時に「お茶会」と呼ばれるメンバー同士のコミュニケーションの時間を設けているというトレタでも、「日常的な会話をしていても、自然と新機能やお客さんからのフィードバックの話に移ることが多い」(増井氏)と言い、やはり「新しいもの」はこうした他愛もない時間から生まれやすいという見解を示していた。

「行動すること」が自分の人生を明確に決める

ワークショップでは、参加者から募ったテーマについて、ゲストパネラーを交えてざっくばらんに語り合った

ワークショップでは、参加者から募ったテーマについて、ゲストパネラーを交えてざっくばらんに語り合った

パネルディスカッションの後には、それぞれのキャリアやチームのあり方などについて、参加者同士が食事をしながら相談し合うワークショップを行った。

この話し合いにはパネリストの4人も加わり、海外と日本のワークスタイルの違いや人生の目標の立て方、オープンソースへコミットする際の手順など、参加者から寄せられたさまざまな質問に回答した。

約2時間半に及んだイベントの最後、吉岡氏は「行動すること」の重要性を強調。「実際に行動することが自分の人生を明確に決める。その意味では、自分の意思でここに来ている皆さんはもっと自分を褒めていい。来年の技術トレンドなんて関係ない。他の誰でもなく自分の心の中にある何かに灯をともしてあげればいいのでは」と後輩たちを励ましていた。

取材/伊藤健吾 文/鈴木陸夫 撮影/佐藤健太(いずれも編集部)

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//type.jp/et/log/article/tomkawada11 天体をプログラムで再現したら、星が瞬く理由がわかった【連載:川田十夢】 //type.jp/et/log/article/tomkawada11 Thu, 24 Dec 2015 10:06:02 +0000 11_1

僕はプライドが高い。どのくらいプライドが高いかというと、朝に目覚めるやいなや、吐きそうになるほどだ。僕が何も手を下していない、定義していないにも関わらず、太陽は朝になると自動的に昇るし、重力は何の設定もなく存在し続けている。操作することさえ、ままならない。屈辱的な事実。忸怩たる毎日を過ごしているうちに、筆が鈍ってしまった。気がついてみれば15ヶ月もの間、連載を更新していなかった。

2015年11月7日から12月25日まで、六本木ヒルズで開催されている『星にタッチパネル劇場』が、動員記録を作るほどの大盛況。幕を下ろすこのタイミングで、やはり書いておきたくなった。開発者としての苦悩、そして喜びについてである。40歳に差し掛かろうとする人間特有のクライシスってやつだったかも知れない。ここに感覚と感謝をまとめて、カーテンコールの代わりとしたい。

休載時期のこと:ラジオ・レジスター・ポスター・舞台・テレビなど

連載を休んでいた間、いくつかの変化があった。まず、ラジオのレギュラー番組が始まった。J-WAVEでレギュラー番組をもつ開発者は、そう簡単に存在しないだろう。完全に浮かれていた。やってみると大変だった。数々の開発実績について話してゆけば、形になるだろう。それくらい軽く考えていた。とんでもなかった。過去の蓄積だけでは、ひと晩もたなかった。何しろ、声帯と感覚が直結のまま90分間喋りっぱなしである。通常のラジオであれば、曲やコマーシャルの間に気を抜けるかも知れないが、この番組『THE HANGOUT』に関しては、YouTubeLiveのカメラが回りっぱなし。加えて、普段使っているプログラムとは異なる言語(聴覚言語=ラジオ言語)を操らなければならない。ラジオのリスナーは、すでに数々の名番組を経験している。お笑い芸人、ミュージシャン、人気DJ、毒蝮三太夫、大沢悠里のゆうゆうワイドを天秤にかけて、時間を過ごしている。耳が肥えている。借りてきた雰囲気と聞きかじった知識で挑んでも、簡単に見透かされる。逃げも隠れもできない。普通の人の振りはできない。天才は天才として振舞うべきだ。「通りすがりの天才、川田十夢です」の挨拶から、始めることにした。1年以上続けたことで、ようやく構造がわかってきた。会話を軸とした、その日限りの読み切り。エッセイであり、小説であり、旅行記だと思った。作者は、僕であり、リスナーであり、楽曲を提供してくれるミュージシャンでもある。スタッフも含め、関わるもの全てが読者になりうる。誰かと過ごす大切な時間そのものである。好きな人をゲストに迎えたり、部分的に人工知能に任せたりしながら、なるべく永く続けてゆきたい。

実店舗のレジスターとバーコードリーダーを改造して、詩を出力できる装置を作った。『AR FASHION SHOW』や『感じる服考える服』などで何度か共演しているシアタープロダクツとの仕事。最果タヒ、辺口芳典、ウィリアム・シェイクスピア。時代を代表する作家の言葉が、商品に宿っている。買い物を終えてレシートをみると、詩が印字されている。生活様式と地続きであること、ファッションはそもそも劇空間への入り口であることが相俟って、よい装置になった。

森本千絵さんと一緒に手がけたのは、声にまつわる展示だ。彼女の仕事は神がかっていて、何度か森本マジックを目の当たりにした。多くの作り手が頼りにしている理由がわかった。我々は、ポスターの向こう側とつながる電話機を開発した。作・演出・開発を手がける舞台『パターン』を、2年連続で経験した。AR三兄弟が登場しない、役者に物語を委ねるというやり方に最初は戸惑った。いい役者に恵まれたこともあり、舞台の醍醐味が少しわかった。やがてそれは、フジテレビで深夜番組にもなった。東京ラブストーリーに出てた西岡徳馬さんと共演した。舞台でもテレビでも主演したマツモトクラブとは、小学校の頃からの親友だ。話せば長くなるので、また別の機会にしておく。AR三兄弟という名前のアプリをリリースした。特に人気は出なかった。NHKの『課外授業 ようこそ先輩』に出演した。30年ぶりに訪れた母校、小学生の間でいま一番なりたい職業がYouTuberだと知って、自分がヒカキンじゃないことが悔やまれた。自分に何が教えられるのか。想像の余白を拡張することではないか。成功か失敗かは、彼らが大人になって証明してくれるだろう。

以上が、この15ヶ月で起きた開発にまつわる出来事である。書こうと思えばそれぞれ1話ずつ書けるだけのエピソードがあるが、やはり筆が進まなかった。15ヶ月前に自分が書いた言葉が、手のひらが石に変わる呪文のように効いてきたのだ。

呪文を解く糸口となった森ビルさんとの会話

「変わりゆく季節を背景に、何を移植するか。どんな設定を与えるか。ワンパターンにならないような驚きをどこに配置して、ラストステージには何が待っているのか。人生について考えるように、その都度、考えてゆこう」

休載する前に自分が残した言葉。我ながら、重々しい。芯を食っている。厳密な指摘である。拡張現実というまだ誰も明文化してないようなものを相手にすると決めた以上、いつかは解決しなければならない難題。露骨に悩んだ。誰とも会話しない日が続いた。布団にくるまったまま目をつむって、それでも深遠に手が届かないから耳栓をして息を止めたりもした。そのまま気を失うこともあった。反比例するように、テレビ・ラジオ・雑誌に定期的に顔を出すようになった。企画は明らかに通りやすくなった。だが、あの難題を解決できる場所は見つからなかった。焦っていた。そんなとき、何度か対談したことのあるゲームクリエイターの水口哲也さんが、森ビルで行われるワークショップに招いてくれた。社風なのだろうか。水口さんの粋な計らいなのだろうか。どんな意見も受け入れてくれるようなオープンな雰囲気があった。呪文を振り払うように、自分のなかにあるアイデアについて明るく喋り倒した。六本木ヒルズの展望台、東京シティビューから眺める全景の街並みを拡張したい。季節を操作したい。夢と現実の間にあるスクリーンを発明したい。映画や小説の中に入りたい。時間も重力も忘れられる空間を作りたい。夢みたいな話に、真剣に耳を傾けてくれる人がいた。吉岡達哉さんと杉山央さんだ。何度か打ち合わせを重ねるうち、クリスマスシーズンの展示からテストケースを重ねて、段階的に実現しようということになった。あとから本人たちに聞いたところによると、わりと最近まで実現できるかどうか半信半疑だったらしい。僕はというと、闇の呪縛から解放されるかも知れないアイデアに夢中だった。夏のことだった。

テレビをスワイプしようとする子供たちの感覚がヒントになった

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機会という名の光を与えられたら、もう悩むことは何もない。通りすがりの天才の本領を発揮するのみ。課外授業で共演した小学生の親御さんたちと会話したとき、テレビを見ても画面をスワイプしたがるという話が印象に残っていた。どんなものでも、画面にタッチすれば操作できるという前提。子供たちの感覚をさらに拡げると、きっと星空だってタッチパネルから簡単に操作できる。『星にタッチパネル劇場』だと思った。次に、宇宙をプログラムで再現する方法について考えた。素材となるのは、窓面に照射するプロジェクションマッピング映像や効果音、そしてプログラムで制御するアニメーション。それらを30台以上のスマホから同時に操作できるようにしなければならない。サーバサイドの密な連携と同期が必要だ。インターネット寄りの技術のほうが好ましい。テレビリモコンのタイムラグはちょっと嫌だが、宇宙ほどの距離にある星の明滅を操作するのであれば、インターネットにかかる通信時間など問題ではない。WebGLとPaaS(Heroku)で、開発を進めることにした。

東京の夜景が持っているもの、持っていないもの

次に、タッチパネル側の機能について考えた。六本木ヒルズの展望台、東京シティビューから望む夜景は、デフォルトで美しい。ビルのサーチライトは都市の輪郭を点描のように明らかにし、幹線道路をたどる車のヘッドライトは時間の流れを忘れさせてくれる。何も新しく加える必要はない。星という漠然としたアイデアはあったのだが、それを正当化する理由がまだ見つかっていなかった。布団を被っていた日々、深い闇を思い出した。夜景を生かしながら、東京の空にはけして現れない満点の星を浮かべるのはどうだろう。部屋の照明を変えるみたいに、簡単に調整できたら。2等星までしか見えなかった空に、16等星まで現れたら。東京に居ながらにして、海外の都市の星空を見上げられたら。パリ、ロンドン、ニューヨーク、ホムス、シドニー、南極。ワンタップで世界旅行することができたら。星空がジュークボックスになったら。それはもう夜景を邪魔するものではなく、都市の余白を拡張するものではないか。ワンパターンにならない工夫を加えているうち、機能の数は最終的に16になった。

星空のナビゲーション:ラジオ機能に込めたもの

なかでも特別な思いで実装したのが、星空のナビゲーション。J-WAVE全面協力のもとで、ラジオ局の看板ナビゲーター(ジョン・カビラ / クリス・ペプラー / 別所哲也 / サッシャ / 大宮エリー / クリス智子など)が総出演してくれた豪華な機能。特に編成の手塚渉さん、制作の日浦潤也さんの尽力により実現することができた。ここには、ラジオそのものを拡張したいという、開発者としての目論見があった。僕が考えるラジオの未来は2通りある。ラジオの内側にまだ持ち込まれていないものを輸入するか、外側に持ち出されていないものを輸出するか。今回は後者のパターンを実行した。ラジオのナビゲーターは、森羅万象をナビゲートすることができる特殊な技能の持ち主だ。星座までのナビゲーションだって、お手のもの。きっと、美術館だって、博物館だって、東京の歴史だって未来だって、ナビゲートしてくれる。現実を媒介として機能する副音声は、ラジオが担い続けるべきである。

声帯から生み出される宇宙、すらぷるためという男

星にタッチパネル劇場では、効果音が重要なファクターになっている。担当してくれたのは、ヒューマンビートボクサーのすらぷるため。インザハウス(意味よくわかってないけど雰囲気で使ってみた)である。何しろ、世の中にまだ存在しない音を生み出さなければならない。星が明滅する、光量を調整する、東向きだった窓を南向きに変換する、UFOが飛来する。誰もまだ聞いたことがない音。UFOに至っては、円盤型・アダムスキー型・三角型の三種類を区別しなければならない。星がスターの形になったりハート型になったり、月が木星と入れ替わったりもする。経験値ではなく、想像力で音を生み出す作業。こんなこと頼めるの、すらぷるためしかいない。

彼とはラジオで知り合った。若き天才と会話するという5分間のコーナー、ボイスパーカッションと紹介を言い間違えると、語気を少し強めて否定してきた。「ヒューマンビートボックスの一部がボイスパーカッションで、楽器の種類みたいなものだから正確ではありません」ヒューマンビートボックスという技術に、誇りがあるのだと感じた。同時に、彼が担っている責任の大きさを感じた。そういう男が、信頼できないはずがない。「星が電灯みたいに点いたり消えたりする音って作れるかな?」と、軽い感じで聞いてみた。「すぐには出来ないけど、声帯をやり直して進化させるので、ちょっと待ってもらえますか」みたいなことを返してきた。ヤバいやつだなと思うとともに、大丈夫だと思った。結果的に、すらぷるためは、16の機能全てに効果音をつけた。マイクと自分の声帯ひとつで、サンキュー・インザハウス(これは確実に使い方間違っているけど感謝を込めて)。

プロジェクションマッピングは終わらない

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プロジェクションマッピングに関しては、吉川マッハスペシャル・阿部信明・吉田秀人の協力なくして、実現できなかった。公開の直前ともなると、連日朝方まで作業してくれた。窓に照射されたグリッド線を眺めては、あの柱の奥がズレている。もう少しどうにかならないか。ミリ単位の調整が続いた。僕にはその違いが全く分からなかった。眠たさもあった。プロフェッショナルの仕事だと思った。朝日が昇るのを何度か一緒に見た。「太陽のルーメン数、やばいな」僕らは同じところで何度も笑った。

今回の企画に取り組むにあたって、プロジェクションマッピングと名のつくイベントには、なるべく足を運んだ。僕らが開発する余地は、無限に残っていると感じた。どんな業界にも、いいものと悪いものが混在している。明らかに同じ素材を使い回して、場所も時間も人間も関係なく、ポエジーの所在も明らかにしないままただ投影しているのを見ると、悲しくなった。ARがブームになった時も同じだった。誰かひとりつまらないものを作ると、それだけで業界全体が退屈に感じられてしまう。飽きられてしまう。その一翼を担っているという責任感さえあれば、どんなに忙しくても手を抜かない。作品に関係した全ての人間・空間の可能性を拡張する仕事を、僕は続けたい。

BUMP OF CHICKENへの手紙

休載していた15ヶ月のなかで、ひとつ大きな仕事を手がけた。忘れていたわけではなく、特別な思いがあるから見出しをつけて書きたかった。BUMP OF CHICKENとの大仕事である。BOC-ARというスマホ向けのアプリケーションを共同開発し、ニューアルバムやライブと連動して、どんなアーティストも実装したことのないような機能を詰め込んだ。BUMPとの会話、会議、共演、全てが貴重な経験だった。彼らは、自分たちの楽曲へのこだわりだけでなく、どうやってリスナーに音楽を届けるかについて、常に頭を悩ませていた。リスナーの耳に届いて、響いて、はじめてBUMPの音楽は完成すると、藤原基央は語ったことがある。曲を作って、アルバムを作って、ライブやって、はい終わり。というわけにはいかないのだ。ベースのチャマのtwitterを読めば、一目瞭然だろう。ファンを待たせている自覚が、常にある。そして、リスナーもまた、BUMPの音楽を心待ちにしている。まさに蜜月、永遠に続く両想い。とても勉強になった。この密度のある関係性をそばで見ていたから、BUMPの音楽を簡単に使うことはできない。特に『天体観測』は、彼らにとっても、リスナーにとっても、大切な曲だ。いまだにライブで演奏され続けている代表曲でもある。今回の劇場に主題歌を与えるとしたら、やっぱりこの曲しかなかった。イメージを膨らませ、時間をかけて、東京の夜景に堂々と照射できるようなミュージックビデオを作った。窓にプロジェクションマッピングしてる模様を映像に撮って、彼らに届けた。喜んでくれた。公式につぶやいてくれたり、PONTSUKA!!(BayFMで毎週日曜日深夜3時から放送されているBUMPのレギュラー番組)で告知してくれたりした。15周年記念番組として放送されたPONTSUKA FOREVERでゲスト出演したときの対応が雑だったことなんて、もう微塵も気にならない。チームラボの猪子さんのことは丁寧に紹介するのに、AR三兄弟のことは「あれ」呼ばわり。それも、もはや全然気にならない。感謝を込めて、『三ツ星カルテット』と『Hello.world!』を、ジュークボックスの楽曲に加えた。マジでありがとう、BUMP OF CHICKEN。この年末は紅白、そして来年はスタジアムツアーと続きますね。健康とユーモアを忘れずに、またどこかで再会しましょう。

星空のメッセージボード

自分の名前をつけたマウスカーソルを星空に浮かべて、星座を探せる機能がある。ある日、定例アップデートのために現場に足を運ぶと、自分のカーソルを見失わないように加えた入力機能が、メッセージボードとして機能していた。そこには「AR三兄弟ありがとう」「通りすがりの天才、最高!」の文字。また別の日には、誰かの両親の結婚記念日を一緒に祝おうとする気持ちだとか、BUMP OF CHICKENのヒロくんの誕生日を祝うものだとか、「ますひでお」とだけ書かれた平仮名だとかが、毎晩のように浮かびあがった。開発者でさえ知らない使い方を、お客さんが発見してくれた。二度と見ることができない星空。開発者冥利に尽きる。来てくれた全ての人たち、本当にありがとう。あなたの想像力を信じてよかった。ひとりひとりの感想が、次の難題へ向かう勇気を与えてくれた。

最後に、星が瞬く理由について。

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わりと前のほうで記したように、この劇場を作り始めるまで、僕は暗闇のなかにいた。布団をかぶって、耳栓をして、息を止めて、暮らしていた。天体をプログラムで再現する。これが単なるプロジェクションマッピングの企画であれば、そこまでする必要はない。でも、僕が勝手に担っているのは拡張現実だ。誰に指名されたわけでもないのだが、代表としての自覚がある。責任がある。天体に嘘があると、東京の隠れた星空が見えたことにならない。デフォルトで美しい夜を汚すことになる。ヒッパルコス衛星が蓄積していた118,217個の星の位置を示す生データをもとに、天体そのものを完全再現した。不思議なことに、それだけでは星は瞬かなかった。何が悪いのか。星のテクスチャを変えても、仮想カメラのレンズを広角の状態にしても、星はいっこうに瞬かない。プログラムの天体にまだ存在しなくて、現実では当たり前に作用しているもの。暗闇の中で確かに感じたもの。ずっと前から自分の中に内在しているもの。それは季節、そして時間。現実と同じ時間の概念を、プログラムの天体に与えた。肉眼ではわからない距離を、星がゆっくり辿ってゆく。途端に、星が瞬き始めた。そうか、大気の揺らぎだ。止まった時間のなかでは、空気が硬直してしまう。気圧が発生しない。風が吹かない。布団を被ったままの宇宙では、呼吸ができない。耳に届かない。人間の心で響かない。つまり、そういうことだったのだ。ご理解いただけるだろうか。申し訳ないが、僕は通りすがりの天才。これ以上、説明の言葉は持ちあわせていない。星が瞬く理由がわかったということだけお伝えして、いったん筆を休める。連載は続く、実装も続く。よいお年を。

AR三兄弟の微分積分、いい気分。

AR三兄弟・長男 川田十夢(@cmrr_xxx

1976年熊本県生まれ。通りすがりの天才。1999年メーカー系列会社に就職、面接時に書いた『未来の履歴書』の通り、同社Web周辺の全デザインとサーバ設計、全世界で機能する部品発注システム、ミシンとネットをつなぐ特許技術発案など、ひと通り実現。2009年独立。開発者、AR三兄弟、公私ともに長男。2011年 TVBros.連載『魚にチクビはあるのだろうか?』スタート。2013年 情熱大陸、2014年 舞台『パターン』作・演出・開発、2015年 NHK『課外授業 ようこそ先輩』。J-WAVE『THE HANGOUT』毎週火曜日23時30分から絶賛放送中。東京藝術学舎にて、2016年2月6日7日集中講座『拡張現実全論』開講。お申し込みはこちらから。
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//type.jp/et/log/article/cybozulive_goodpatch Goodpatchの『サイボウズLive TIMELINE』開発に学ぶ、共同プロジェクトを成功させる4つのポイント //type.jp/et/log/article/cybozulive_goodpatch Tue, 22 Dec 2015 14:29:06 +0000 『サイボウズLive TIMELINE』のリニューアルを進めたサイボウズとGoodpatchの面々

『サイボウズLive TIMELINE』のリニューアルを進めたサイボウズとGoodpatchの面々

サイボウズがこのほど、コラボレーションツール『サイボウズLive』のスマホアプリをiOSとAndroidで相次いでリニューアル。『サイボウズLive TIMELINE』として再リリースした。

最大の特徴は、チャットツールのようなタイムラインを実装し、メイン画面に据えたこと。従来のサイボウズLiveは多くのグループウエアと同様、ToDoや掲示板などの各機能が前面に出たUIだったが、コミュニケーションを重視したデザインへと刷新した。

このリニューアルは、サイボウズGoodpatchの共同プロジェクトとして進められた。サイボウズにとって、UI/UX設計から他社と共同で行うプロジェクトは初であり、GoodpatchとしてもWeb、iOS、Androidを含む大規模な既存サービスのデザイン刷新は初めてのケースだったという。

ユーザーに受け入れられるかどうかの結果が出るのはまだ先の話だが、両社は今回のプロジェクトに一定の手ごたえを感じている。初めてづくしの共同プロジェクトがうまくいった要因はどこにあったのか。プロジェクトの中心メンバー4人へのインタビューからは、次の4つのポイントが浮かび上がった。

【1】1カ月半かけて徹底的に練り上げたコンセプト
【2】動くプロトタイプがプロジェクトの推進力に
【3】「最初の体験の質」を上げることにフォーカス
【4】成功の秘訣はコミュニケーションの質と量にある

【1】1カ月半かけて徹底的に練り上げたコンセプト

「徹底してコンセプトを練り上げたことで、その後の工程はスムーズに進んだ」とサイボウズLiveプロダクトマネジャーの大槻幸夫氏

「徹底してコンセプトを練り上げたことで、その後の工程はスムーズに進んだ」とサイボウズLiveプロダクトマネジャーの大槻幸夫氏

サイボウズLiveは、法人向けグループウエアの領域でシェアを伸ばしてきたサイボウズが、さらなる市場を求めて、PTAやマンション管理組合などの「これからチームになっていく人たち」に向けて提供し始めたサービスである。

プロダクトマネジャーの大槻幸夫氏によれば、社内の開発陣が手掛けた既存のスマホアプリは、法人向けグループウエアの機能やUIをほぼそのまま踏襲するものにとどまっていた。

リニューアルのプロジェクトは、こうした課題意識の下に立ち上げられた。今年4月、GoodpatchからUIデザイナーの日比谷すみれ氏とプロジェクトマネジャーの遠藤祐介氏が加わり、1カ月半という期間をかけてコンセプトの練り上げから着手したという。

当初から、スマホファーストに振り切る上ではコミュニケーション機能の実装がカギになるという発想はあった。問題は、それをどのような形で実現するか。まずはLINEやFacebook Messengerなどの既存アプリを調査し、並行して計40人以上の既存ユーザーを対象にしたインタビューも行った。

こうした調査からは、「法人向けサービスを手掛けてきたゆえの信頼感」、「情報整理や役割分担へのスムーズな遷移」といったサイボウズLiveの強みや、「ユーザー同士の関係は友達未満他人以上からスタートする」、「使い始めてもらうハードルが非常に高い」といった、想定するターゲットに向けてコミュニケーションツールを提供する上でのコアな課題が浮かび上がった。

これらの調査結果を掛け合わせてプロトタイプを作成し、チームメンバー全員が集まるミーティングを何度か繰り返すことで、「誰もが気軽に使えるコミュニケーションツール」というコンセプトが練り上げられていった。

サイボウズLiveとしては、ここまでの大規模なユーザーインタビューを実施したのは初めてのことという。

【2】動くプロトタイプがプロジェクトの推進力に

こうしてコンセプトを練り上げた上で機能やUIのデザインをスタートさせたが、現在の形に落ち着くまでにはさらなる試行錯誤があった。

当初は、チャットが要件ごとに複数のスレッドを持ち、それぞれに対してコメントをつけられるものとしてデザインしたが、これはまだ、既存の掲示板機能に引きずられた発想にとどまっていた。「誰もが気軽に使えるコミュニケーションツール」になるには、もっとシンプルにする必要があった。

機能検討途中のUI。この時点ではまだ既存機能に引きずられており、コメントに対して個別に返信したりいいねしたりできる仕様になっていた

機能検討途中のUI。この時点ではまだ既存機能に引きずられており、コメントに対して個別に返信したりいいねしたりできる仕様になっていた

何度かの作り直しの末、最終的にスレッドは一つのシンプルな形に。想定されるユーザーが所属するグループは平均して1、2個であることから、ファーストビューもグループの一覧ではなく、直近で使った(あるいは新着の通知がある)グループのスレッドとするデザインに変更した。

さらにブラッシュアップし、ファーストビューでは掲示板一覧なども見せない現在のものに近いデザインに

さらにブラッシュアップし、ファーストビューでは掲示板一覧なども見せない現在のものに近いデザインに

サイボウズLive・iOS開発責任者の柴田一帆氏は、法人向けのサービスと比べ、ターゲットと自分が乖離していることの難しさを常々感じていた。今回のコンセプトづくりを通じて、仮説検証のサイクルの重要性をあらためて実感したという。

サイボウズLiveのiOS開発責任者の柴田一帆氏は、今回のプロジェクトを通じてあらためて仮説検証の大切さを実感したという

サイボウズLiveのiOS開発責任者の柴田一帆氏は、今回のプロジェクトを通じてあらためて仮説検証サイクルの重要性を実感したという

一方、遠藤氏は既存サービスのリニューアルという新たな挑戦ゆえの難しさを感じていた。それは、スマホに移行するにあたり、サイボウズがこれまで築いてきたリッチな機能を、いかに説得力を持って取捨選択し、必要十分なものに絞るかということだ。

その点では、Goodpatchが提供するプロトタイピングツール『Prott』の果たした役割が小さくなかったという。

柴田氏は「思っていた以上にシンプルな提案には最初は面食らったが、実際に動く画面を見ながら説明を受けることで、納得感が得られた」と振り返る。

開発に着手する前に動くプロトタイプがあることは、社内調整という点でも役立ったと大槻氏が続ける。

「ユーザーターゲットを絞り、コンセプトがしっかり練り上げられていたことと、プロトタイプを作れたことが、既存の考え方から抜け出し、プロジェクトをスムーズに進行する推進力になりましたね」(大槻氏)

【3】「最初の体験の質」を上げることにフォーカス

新規開発においても、既存サービスをリニューアルする場合でも、理想ベースで話しているだけではアイデアはいくらでも膨らんでしまう。限られたリソースで最大限の効果を得るためには、優先順位をどのようにつけるかが重要だ。

今回のプロジェクトにおいて優先されたのは、「気軽にコミュニケーションができる」という「最初の体験の質」を上げることであり、それが形となったのがタイムラインという新機能だった。

GoodpatchのUIデザイナー日比谷すみれ氏(右)とプロジェクトマネジャー遠藤祐介氏。「最初の体験の質」の向上にフォーカスしたことも成功要因の一つと強調する

GoodpatchのUIデザイナー日比谷すみれ氏(右)とプロジェクトマネジャー遠藤祐介氏。「最初の体験の質」の向上にフォーカスしたことも成功要因の一つと強調する

日比谷氏によれば、グロースハックの「AARRR」でいうところの「Activation(利用開始)」と「Retention(継続)」をプロジェクトの肝と定義し、それ以外の優先度はいったん下げることとした。

「何にフォーカスするかがはっきりしたことで、チームの誰もが自ら意思決定をできるようになるため、進行はスムーズに。競合がもつ魅力的な機能であっても目移りすることなく、必要な機能の開発に集中することができた」(日比谷氏)

こうした割り切りもあって、スマホファーストで開発を進めた結果、既存のPCユーザーなどから不満の声が上がっていることは、もちろん認識している。タイムラインの実装はプロジェクトの第一歩であり、今後もユーザーの反応を見ながら継続的に改善していく予定だ。

グループウエアならではの機能との融合も、来年以降の課題として改善計画に入っている。

今回の『サイボウズLive TIMELINE』のプロジェクトには、数あるサイボウズのプロダクトの中で先駆けてリニューアルすることで、得られたフィードバックをほかのプロダクトにも浸透させるという、テスト的な意味合いも込められているという。社内の“常識”からすると「かなり大胆なリニューアル」(大槻氏)を断行した背景には、こうした指針が明確に打ち出されていたこともあった。

【4】成功の秘訣はコミュニケーションの質と量にある

共同プロジェクト成功の秘訣は、新規、リニューアルの別を問わず、間違いなくコミュニケーションの質と量にあると日比谷氏は言う。

今回のプロジェクトを進めるにあたっては、週に1回のメンバー全員参加の定例ミーティングを行ったが、それとは別に、Goodpatchの2人がしばしばサイボウズに来社し、開発陣と机を並べて作業した。

オンラインのコミュニケーションはサイボウズLiveとSlackを使って行ったが、業務上必要な会話以外にも、メンバーのプライベートな話題にも日常的に触れるなど、意識的にお互いを知る努力を重ねた。

その結果、受注-発注の関係ではなく、一つのチームのようにプロジェクトにあたることができた。信頼感と一体感が醸成されたことで、役割を超えて助け合うことができたし、作業のスピードも上がったと遠藤氏は振り返る。

Goodpatchでは現在、社内のデザインプロセスを策定中だが、その中でも、共同プロジェクトを成功に導く上で最も重要なのは、キックオフとチームビルディングであると位置づけられているという。

キックオフでクライアントにとっての課題が何かを知り、チームビルディングで信頼関係を築いていければ、チームとしてはうまくいく。今回やってみても、打ち出したいコンセプトに対してボトルネックになっている箇所を探し出し、それに対して解決策を提案するというフローは、新規開発の場合と何も変わらなかった。

「ユーザーの課題をベースに話せば答えは自然と見えてくるので、フォーカスすべきは、その前の部分だと考えています」と日比谷氏は話していた。

取材・撮影/伊藤健吾 文/鈴木陸夫(ともに編集部)

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/live2d-dev 広告ゼロで世界展開に成功~2D立体表現ソフト『Live2D』開発を支える「学会モデル」とは //type.jp/et/log/article/live2d-dev Fri, 18 Dec 2015 12:01:00 +0000 「Go Global」の旗印の下、自社製品で海外市場に挑戦する――。これは、プロダクト開発に携わるあらゆる人にとって、憧れのビジネス展開といえよう。

だが、とりわけIT業界において、日本発で世界展開に成功した企業は非常に少ない。ローカライズの壁や体制づくりの失敗など、要因はさまざまあるだろう。

そんな中、ゲームやキャラクター表現の世界で、国際的に知名度を高めつつある日本のベンチャーがある。2Dによる立体表現ツール『Live2D』を開発・提供する株式会社Live2Dだ。

2D立体表現ツール『Live2D』

2D立体表現ソフト『Live2D

このツールは、イラスト、マンガ、アニメなどの2D画像を、2D独特の形状や画風を保ったまま立体的に動かすという世界に類を見ない技術だ。

「イラストを3Dにした途端、かわいらしさが失われる」、「キャラクターの動きが変になる」といった課題を解消することで国内外のクリエータから好評を博し、今ではアジアを中心に海外での売上が2割以上を占めるようになっている。

しかも、個人・法人を問わず利用者はイベントや口コミ経由で広がっており、海外での広告活動は一切行っていないという。

なぜ、Live2Dは「プロダクトの魅力」だけで世界シェアを獲っていくという理想的なサイクルを回すことができているのか。その背景の一つには、同社が地道に築いてきたユーザーコミュニティとのつながりを活かした「学会モデル」という仕組みがあった。

積極的にコミュニティを運営する中で出てきた「コアなファンの社員化」

(写真左から)Live2D代表取締役の中城哲也氏と、チーフプログラマの阿曽直貴氏

(写真左から)Live2D代表取締役の中城哲也氏と、チーフプログラマの阿曽直貴氏

イラストやマンガの2次元キャラクターをディスプレイ上で動かすには、少しずつ変化をつけた絵を何枚も描いて動きを表現するか、3Dソフトを使って3次元化したモデルを動かす方法を採るのが一般的だ。だが、いずれも煩雑な作業が伴う上、動かしやすさを優先させる場合は見る者に原画とは異なるイメージを与えてしまうことがある。

2000年代半ば、ここに商機を見いだしたLive2Dは、旧社名であるサイバーノイズの時代から技術開発を進めながら、試行錯誤を繰り返してきた。

その過程は決して順風満帆なものではなく、一時期は社員が代表取締役の中城哲也氏たった1人になるような危機も経験しているが(参照記事は以下)、そこから国内外で知名度を高めるまでになった理由はひとえに「ツールの磨き込み」が奏功したから。

>> 参照記事:会社消滅寸前だったとあるベンチャーが、世界初の2D立体表現技術を完成できたワケ

学生時代からグラフィックソフト開発会社でアルバイトするなど、グラフィック領域で経験豊富な中城氏

学生時代からグラフィックソフト開発会社でアルバイトするなど、グラフィック領域での経験が豊富な中城氏

原画から切り出した顔や身体などの部位にポリゴンを割り当て、再構成したキャラクターを立体的に動かすというシンプルな操作方法や、制作したアニメーションを同社のSDKによってゲームやアプリに転用できる点などを理由に、現行バージョンの『Live2D Cubism』は概算で世界200作品以上のキャラクター制作に使われるようになったと中城氏は言う。

「日本ではバンダイナムコゲームスのPSP用ゲームソフト『俺の妹がこんなに可愛いわけがない ポータブル』といったビッグタイトルに採用されたことが普及のきっかけになりましたが、海外においても同様の好循環ができつつあります」

この好循環を生み出す礎が、同社が「学会モデル」と呼ぶ開発スタイルなのだ。

これは、「描いたイラストを動かす」ための基盤ツールを提供するだけではなく、海外で行われる技術展示会や自社が企画するコンテストなどを軸にユーザーコミュニティを広げながら、コミュニティメンバーと共に開発を進めていく手法である。

「当社はこれまで、Live2Dを使った創作活動に関わる方々が集まるイベント『alive』や、コンテスト型のイベント『Live2D Creative Award』などを通じて、ユーザーへの情報発信やQ&Aを活発に行うように心掛けてきました。それが国内外にLive2Dの熱心なファンを生み、いつしか『ディベロッパーとして入社したい』という人を生み出すようになった。こうした関係性を、社内で『学会モデル』と呼んでいます」

一般に学会は、国内外の教育機関や民間企業の研究者らが立場を越え、一つのテーマのもとに議論を重ねながら、その分野の発展に寄与することを目的としたコミュニティだ。この仕組みと同じように、同社では、「描いたイラストを動かす、という表現分野」そのものの発展を支援するため、基盤ツールだけでなく、情報、ノウハウ、交流の機会、発表の場を提供し、そのコミュニティを活性化している。

チーフプログラマとしてLive2Dの次世代版『Live2D Euclid』の開発に携わる阿曽直貴氏も、この「学会的なコミュニティ」によって自らの仕事が支えられているのを感じている。

「私たちの開発チームには、もともとユーザーとしてLive2Dを使っていたメンバーが大勢います。彼らの多くは自分で作品を作るだけでなく、Live2Dコミュニティで他のユーザーをサポートしたり、作品コンテストに参加していた人たちです。“中の人”以上にLive2Dを熟知した人も少なくありません」(阿曽氏)

開発チームにはこれまで、アメリカの名門カリフォルニア大学バークレー校出身のインターン学生や、インドネシアから入社した「元コアユーザー」が多数在籍してきた。直近でも、ドイツから来たエンジニアを社員雇用すべく動いているという。彼らはいずれも、各国のユーザーコミュニティの中心にいた人たちだ。

他にも、C++の中でも先進的なライブラリとして知られる『Boost』の開発に携わっている日本人エンジニアや、元ジブリの開発者など、そうそうたる経歴を持ったメンバーが集まっている。

「彼らに共通するのは、Live2Dのユーザーとして、プロダクトに対して強い思い入れがあること。その情熱が高じて、さらなる“磨き込み”に参画してくれるのです」(中城氏)

「開発の進め方にも『信長の鉄砲三段打ち』のような革新が必要」

こうして出来上がったLive2Dの開発チームは、必然的に多国籍な陣容になっている。

現在、現行版のCubismチームと次世代版のEuclidチームを合わせると10名ほどが在籍しているが、今後はさらに改善スピードを上げるべく人員拡大に取り組むという。

チーフプログラマの阿曽氏自身も、かつてはユーザーとして『Live2D』を利用する1人だった

チーフプログラマの阿曽氏自身も、かつてはユーザーとして『Live2D』を利用する1人だった

「まだまだ少人数の体制には変わりないので、開発のやり方自体は工夫し続けなければならないと考えています。僕らのような小さなベンチャーが世界標準のモノづくりをしていくには、織田信長の『鉄砲三段打ち』しかり、手法そのものを革新しなければなりませんから」(中城氏)

その一つとして挙げられるのが、クラウドソーシングを活用した「技術調査・検証作業の簡略化」だ。

近年、クラウドソーシングを活用した開発は珍しくなくなったが、Live2Dでは「ネット上に3人くらい部下を持つ感覚」(中城氏)で検証作業を外注しているという。

「エンジニアたちには、予算枠にとらわれずどんどん外部に発注していいと公言しています。新しいツールやライブリの調査やテスト、サンプル作成などに時間と人手を割くより、プロダクトの磨き込みに集中した方が、結果的に良い製品ができるはずです」(中城氏)

こうした体制を採るのは、将来への危機感があるからに他ならないと中城氏。

「Live2Dを支持してくれるファンは増えていますが、現状のLive2Dはまだまだ理想形から程遠い状態だと思っています。一方、3Dソフトの進歩も速いので、うかうかしていると『3Dソフトでいいじゃないか』という声が強くなることも十分に考えられる。そうなってしまってからでは挽回は困難です。ですから私たちは、常にやり方そのものを革新していく必要があるんです」(中城氏)

海外売上5割以上を目指して開発陣を強化

この「やり方」に関しては、エンジニアのみならず、ユーザーの立場に近いグラフィックチームの意見も汲み取りながら、日常的に意見交換をする場を設けているそう。今後は、本格的に需要が伸び始めた海外ユーザーへのサポートもいっそう力を入れる構えだ。

「世界展開はこの2~3年が勝負だと思っていますので、1年半後までに70名体制くらいに組織を大きくして、いち早く海外売上比率を5割まで引き上げたい。そのためにも、これまで以上にコミュニティとの関係を強化していくつもりです」(中城氏)

コミュニティの力を最大限に取り込み業績を伸ばしてきたLive2D。当面はキャラクターの360度回転にも対応する『Live2D Euclid』の正式リリースによって、国内外の市場を席巻することが目標になる。

そのためには、組織も次の段階へステップアップしなければならないだろう。

「昨年までエンジニアが3名で今年は10名程度ですから、組織が大きくなることによる問題はまだ表面化していません。とはいえチームはすでに多国籍化していますし、今まで以上のスピードで組織が拡大することは見えているので、部署間の意思疎通をスムーズにしたり、クラウドソーシングやコミュニティの皆さんの力を借りていく手法についても改善を重ね、考えを尽くさなければと考えています」(阿曽氏)

組織が成長することによって「学会モデル」がどう変化するか。ユーザーに愛されることで成長してきたLive2Dは今、世界市場でデファクトの地位を築くという新たな目標を前に、日々試行錯誤を繰り返している。

取材・文/武田敏則(グレタケ) 撮影/伊藤健吾(編集部)

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>>資産管理アプリ「Moneytree」と会計ソフト「弥生シリーズ」が連携開始
>>マネーツリーとTKCが業務提携

Moneytree上で最新の口座情報を表示するために独自開発したデータアグリケーションの技術を、『MT LINK』と名付けてAPIとして公開。提携企業とともに、エンドユーザー向けに新たな価値を生み出していく考えという。

彼らが思い描くFinTechの未来とはどのようなものなのか。従業員18人の小さなスタートアップは、どのような戦略でそれを実現していくというのか。Moneytreeの共同創業者の1人であり、現在は営業部長兼MT LINK開発責任者であるマーク・マクダッド氏に話を聞いた。

金融機関が「自社で全てやる」時代の終焉

Moneytree 営業部長のマーク・マクダッド氏

Moneytree 営業部長のマーク・マクダッド氏

—— 御社はこの1年、会計、金融系の企業と連係して大きな発表を連発しています。こうした連係の先に思い描いているFinTechの未来とは?

これからのFinTechを語る前に、これまでのFinTechについて話す必要があります。今でこそ金融機関さんやSIerさんにFinTechを持ちかけると乗ってくれるようになりましたが、去年、同じような提案を行ったある銀行さんに言われたのは、「FinTechなんてもうずいぶん前からやってきているよ」という言葉でした。

どういう意味か詳しく聞いてみると、それは「とある技術を使うことで、行内の業務が効率的になった」という話でした。確かにFinance+Technologyという意味ではそれもFinTechかも知れませんが、僕らが目指す未来はそうではありません。

今年は弊社に限らず、FinTech元年と言われるほどこの業界が盛り上がっています。それが意味するのは、「金融機関が自社で全てをやる時代が終わった」ということです。

これからは金融知識を持っている会社と、テクノロジーの知識を持っている我々のような会社がコラボレーションすることで、エンドユーザーとってにより便利な、できれば安いサービスを提供していくことが目的になっていくと思います。

——よく「APIエコノミー」という言葉を耳にしますが、APIのやり取りというのが、そうした構想を実現する上でのキーになっていく?

我々のサービスの強みはデータアグリゲーション。複数の口座などからデータを集める技術を持っています。これをAPIとして誰でも使えるように公開したのが、MT LINKです。同じように各企業が自分たちの強い部分をAPI化してくれれば、我々だけではできないことでも実現できるようになる。

先ほども申し上げたように、「ブランド囲い」をするプレイヤーは行き詰まり、良くも悪くも全てがオープンになっていく。それはエンドユーザーから見れば良いことです。自分の目的に最も合ったサービスをその都度、選べば良いわけですから。

一方で、企業側は全てをやろうとするのではなく、自分の強いところにフォーカスして磨いていくことが求められるでしょう。

そのインターフェースがAPIということです。Techの分野ではこうした話はすでに当たり前のことになっていますが、将来的には金融機関なども含めた多くの分野でAPIエコノミーは実現していくと思っています。

—— 金融機関の方でも、そうした未来に向けた動きがすでにあるのですか?

すでに公になっている例で言えば、NTTデータが10月に、共同利用型インターネットバンキングサービスの「AnserParaSOL」にAPI連携機能を追加すると発表しています。

同様に弊社でも、日本IBMとの連携を発表しました。IBMが持つBluemixのクラウド技術環境に弊社のAPIを接続し、銀行側が簡単に接続できるための準備を進めています。

Techの分野ではよく「disrupt」という単語が使われますが、我々が目的とするのはdisruptではありません。既存のエコシステムにジョインさせてもらい、我々の強みを提供することで、付加価値を生み出すということです。

自動化の文化がスタートアップ発の改革を後押しする

—— 「新しい付加価値」にはどんな例が挙げられますか?

Moneytreeに「フットワークの軽い連携」が可能な裏には、少人数で開発するためのさまざまな工夫があるという

Moneytreeに「フットワークの軽い連携」が可能な裏には、少人数で開発するためのさまざまな工夫があるという

IBMの勉強会でもお話したのですが、すぐに思いつくのは地方銀行にありがちな問題です。地方銀行にはよく、「一体型」といってキャッシュカードとクレジットカードが一緒になっているケースがありますが、「一体型」とは言っても実際にはそれぞれの基幹システムは別です。

そのため、財布に入っているカードは1枚でも、ユーザーは明細を見たいと思ったらそれぞれ違うサイトを参照しなければなりません。弊社のデータアグリゲーションを使えば、それを一つにするという提案が比較的簡単にできますね。

もちろん、銀行自身でもやろうと思えば基幹システムの統合は可能でしょう。でも、おそらくそれは億円単位のプロジェクト。システムを動かすのには検証も非常に手間が掛かります。我々のアグリゲーションであれば、それが2カ月程度できますから、非常に「フットワークの軽い連携」が可能であると提案できるでしょう。

—— 御社に「フットワークの軽さ」があるのはなぜでしょうか?

もちろん技術的には企業秘密が多いですが、「少人数であること」は一つのキーワードと言えるでしょうね。

人間はある面でどんなPCより優れた「機械」ですが、人数が増えるとどうしてもコミュニケーションに投資しなければならないコストが増えます。時間的にもそうですし、資料や根回しの手間がかかり、誤解を招く可能性も高まります。

弊社の従業員は現在18人。開発はその半分程度です。できるだけ少人数で回すために、毎回のように起きるプロセスは可能な限り自動化する文化になっています。

例えば、現在進行中の開発のスケジュールをポーズして、2日間は何を作ってもいいというHackDaysという社内イベントを定期的に実施しているのですが、そこでアイデアとして出るものにも、自動化の話は多いです。

また、少人数開発を実現するための取り組みとして、ベンダーさんが提供している技術を最大限に活用することで、自分たちはビジネス上、最も大切なところにフォーカスするということも心掛けています。

例えば弊社ではAWSを使っていますが、Amazonユーザーはどんどん下の層のことは考えないで済むようになっています。弊社のエンジニアも、どういう体制にするかのテンプレートを書いたり、自動化するプログラムを書いたりはしていますが、「EC2の台数を管理する」といった仕事をしている人はいません。

——自動化するプログラムを書いたり、新しい技術にキャッチアップしたりする手間はどう考えていますか?

当然手間はありますが、AWSの例で言えば毎年CTOが渡米してカンファレンスで勉強するようにしています。新しい技術はそれこそHackDaysだったり、社内ツールだったりで試してみて、使えそうなら実装するという流れです。

それに、手間が掛かるとは言っても、だいたいのエンジニアは新しくて面白そうな技術は「とりあえず使ってみたい」と考えるものですからね(笑)。

非Tech企業との橋渡しとしてSIerの存在価値は続く

—— 話をやや戻して、日本の伝統的な金融機関と交渉する上で超えなければならないハードルはどこにあるでしょうか?最初からうまくいきましたか? 

Moneytreeは設立して3年ほどが経ちますが、同じことを創業直後の3年前にやっていたら、おそらくダメだったと思います。似たような話を実際にしてみても、「発想としては面白いけれど、日本では現実的ではない」と言われることが多かった。

現在は金融機関の方でも、エンドユーザーに他の企業とは違ったバリューを提供しないとビジネスが成立しなくなるという危機感が高まってきています。なので、残るは技術的ハードルということになります。

例えば、今までクラウドを使ったことがない企業がクラウドを使い始めるのに、どうすればいいのか。そこはいろいろな工夫のしどころだと思いますが、弊社では既存のSIerと組むという手段を採りました。

IBMにはハイブリッドクラウドという商品がありますから、いきなりフルクラウドを使うのには抵抗があるという企業に対しては、まずは各社のオンプレミスのデータセンターにクラウドを設置することで仮想化技術を体験してもらう、といった提案ができます。

日本の場合は我々のようなスタートアップがダイレクトに働きかけるよりも、各企業から信頼を得ているSIerが間に入り、クッション役を果たしてもらった方がうまく浸透していくのではないかと考えています。SIerが持つ信頼と蓄積ノウハウは、将来的にも価値を持ち続けると思います。

—— 他に非Tech企業を巻き込んでいく上で技術的なハードルとなりそうな部分はありますか?例えば金融機関はセキュリティの問題にも敏感ではないですか?

たしかにその通りです。今まではクローズドだったAPIがオープンになっていくわけですから。ただ、「オープン」という言葉はしばしば誤解されているように感じます。オープンなのは仕様であって、誰でも使えるということではありません。誰が使えるかは認証の問題であって、セキュリティの話とは別です。

—— マネタイズに関してはどんな考え方をお持ちですか?

ここまで会計業界、金融業界の各社と実際にやり取りしてきましたが、ひと口に金融と言ってもいろいろな職種があり、その使い道は千差万別です。

我々はお客さまに合わせて、API連携することによってどのような価値が生まれるのか、といったコンサルティングまでを行っています。なので「API1本に対していくら」といった通り一遍の決め方はできない。ケースバイケースというのが質問に対する答えです。

我々はまだアーリーなステージにいるので、ユースケースを勉強しているところでもあります。なので現状は「オープン価格」のようなもの。事例を積み重ねていけば、いずれは「標準価格」を設ける方向に進んでいけると思います。

APIエコノミーの時代に求められるのは「T型」人材

Moneytreeの前にはIT人材派遣の仕事をしていた時期もあるというマルチなキャリアのマクダッド氏。APIエコノミーの時代に求められる人材とは?

Moneytreeの前にはIT人材派遣の仕事をしていた時期もあるというマルチなキャリアのマクダッド氏。APIエコノミーの時代に求められる人材とは?

—— そうした商談はどのような体制で行っているのでしょうか?

現状、営業担当は営業部長である私だけです。ただ、今後は金融機関向けの営業も増えてくるでしょうし、先日大きな投資を受けることもできたので、エンジニアとともに営業スタッフの採用にも力を入れていく予定です(Moneytreeの採用ページはコチラ)。

—— 商談にもかなりの技術的知識が必要かと思います。マークさんはエンジニア出身とお聞きしましたが、今もコードを書いているのですか?

いえ。ただ、コードレビューはするようにしています。メールに通知されるので思わず見てしまうという側面もありますが(苦笑)。

先ほども申し上げたように、我々がやろうとしていることには未知のことがまだまだ多いです。お客さまと話す中で新たなニーズが分かれば、それに応じて方向を細かく修正していかなければならない。APIに関してもアジャイルである必要があるということです。

例えば、複数のAPIをゲートウエイに統合するのは可能ですが、一つのAPIを分岐させるのは現状は技術的に難しい。ですから、将来提供することになるであろう機能のために、コード的にも可能性を残しておく必要があります。

その点、お客さまのニーズを一番敏感に感じ取れる私がコードレビューに参加することで、「この言語を使ってしまうとライブラリが限定されてしまうので、ビジネスのニーズに合わない」といった提言が素早くできます。

どんな組織であっても、階層的になってしまうと動きはどうしても遅くなります。私はオフィスでも常にCTOの隣に座っており、「今日はお客さまからこんな話をされた」、「近い将来こういうことも考えないといけない」という具合に、既存のロードマップに“横やり”を入れる立場でもあるのです。

—— 今後は営業スタッフを増やしていくとのことですが、御社の採用方針、ひいてはAPIエコノミーの時代に求められる人材像についてお考えを聞かせてください。

営業に関してはいわゆるテクニカルセールスと呼ばれる分野になると思いますが、実際の商談の場面では「このAPIはどういう意味?」と技術的な内容を聞かれることも多くなるでしょう。その度に「担当に確認します」と答えているようではスピード感は失われますから、商品の仕様書は全て理解しておいてほしいですね。

「理解する」というのは仕様書を全て読むというのではなく、「実際にAPI連携することができる」という方が近いかもしれません。だからできればコードを書ける人がいい。

社内ではよく「T型」人材が欲しいと言っているんです。幅広く何でもできる上に、何か一つ深い知識のある専門分野を持っている人。逆に専門分野だけに特化した「I型」人材は、だんだんと苦しくなっていくように思います。

—— 営業もできて開発もできるマークさんはまさに「T型」と言えますが、どんなキャリアを踏んだ人が「T型」になれるのでしょうか?

私自身は以前、IT系人材の派遣会社に勤めていた経験があって、そこで営業やコンサルティングを幅広く学びました。一方では幼少期から趣味で開発も行っていた。本業とは別に趣味の経験が活きる、というのはあり得る形かと思います。

またすぐに思いつく別の例は、技術者でありながらスタートアップをやろうとした経験のある人です。小さなアプリであっても市場に出した経験のある人は、嫌でも自然と販売や広報についても考えざるを得ない。

たとえ失敗に終わっていたとしてもいいんです。その大変さを理解していることが重要なように思います。

将来は人工知能アルゴリズムを用いて価値の「上積み」も

—— 将来的な構想について、お答えいただける範囲で教えてください。

先ほど効率的な開発に関する話をした中で、AWSが既存のサービスの上にどんどん新たなサービスを積み上げていっているという例を出しましたが、それと同じようなことをAPIの分野で考えています。

というのも、今出しているのと同じAPIをずっと提供し続けてたとして、10年先には同じことが銀行側にもできるようになっているかもしれない。なので、何か付加価値を出していかないと我々は生き残れないということです。

現時点で考えている「上の層=付加価値」としては、一つは、データアグリゲーション先をさらに増やすこと、もう一つは、アグリゲーションしたデータを分析した上で提供することです。

弊社ではアグリゲーションしたデータを分類するための自社製の人工知能アルゴリズムを開発済みなので、これに別のデータを適用することで、後者の価値を生み出すことも可能だと思っています。

—— 御社は日本のソフトウエア企業がなかなか果たせていない世界展開の目標も掲げていますが、APIを軸にした戦略はこれにどう絡んでいきますか?

その具体的な方法はまだ言える段階ではありません。ただ、APIは世界展開の一つのカギにはなるでしょう。APIは世界の共通言語。その気になればいくらでも他の市場に行くことができるだろうと思っています。

取材・文・撮影/鈴木陸夫(編集部)

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/mti_hcd 『music.jp』をユーザー本位のサービスに生まれ変わらせた新ワークフロー「UX決裁」って何だ? //type.jp/et/log/article/mti_hcd Wed, 16 Dec 2015 09:22:55 +0000 (左から)エムティーアイ ユーザーセンタードデザイン部インフォメーションアーキテクト 椎根史浩氏、ヘルスケア事業本部 事業企画部部長 堀口麻奈さん、ユーザーセンタードデザイン部ディレクター 宮地存氏

(左から)エムティーアイ ユーザーセンタードデザイン部インフォメーションアーキテクト 椎根史浩氏、ヘルスケア事業本部 事業企画部部長 堀口麻奈さん、ユーザーセンタードデザイン部ディレクター 宮地存氏

music.jp』は、2004年3月にガラケー向けの着うた配信サイトとしてスタートした、エムティーアイが開発・運営する老舗音楽サービスである。

10年を超える歳月を経て、今では音楽はもちろん、書籍や動画の配信も行う総合コンテンツ配信サイトへと生まれ変わった。

市場に合ったサービスへと変身を遂げるためには、その裏側で、サービス設計に対する考え方や、それを実現するための手法も大きく変えることを迫られたという。

ユーザー本位のサービス設計を実現するためにエムティーアイが独自に作成し、適用した新しいワークフロー、通称「UX決裁」とは何か?

スマホ時代に適応するため老舗音楽サービスが迫られた決断

堀口さん

ユーザーを中心に据えたサービスの再設計が求められたエムティーアイ。堀口さん以下UCD部のメンバーは、HCD-Netのセミナーに通うなどしてゼロからUXに関する知識を学んでいった

改革を中心で進めたユーザーセンタードデザイン部(以下、UCD部)部長の堀口麻奈さん(当時。現在はヘルスケア事業部、事業企画部長)によれば、ガラケー向けコンテンツを制作していた当時、エムティーアイはまだ、ユーザーを中心に据えてサービスを設計する意識が希薄だった。

ガラケーというプラットフォームの性質上、各キャリアの意向に沿ってさえいれば、サービスが伸び悩むことはなかったからだ。

「しかしスマホ時代になり、一気に自由度が上がったことで、私たちはユーザー数の伸び悩みという明らかな壁にぶつかりました。社内でも3年ほど前から、ユーザーを中心に据えてサービスを再設計する必要性が議論されるようになりました」(堀口さん)

そのための手法を学び、社内で広めていく役割を任されたのが、当時はまだ制作センターという名前だった現在のUCD部。堀口さん以下のメンバーは、HCD-Netのセミナーに通うなどして、UXに関する知識をゼロから身につけていった。

だが、従業員数800人近い会社で、約30人のUCD部が草の根的に文化を広めていくのには限界がある。そこで堀口さんは事業部側のトップに掛け合い、UXを重視した新しいワークフローをトップダウンで導入することを提案した。

事業部側の危機感が募っていたタイミングだったことも手伝って提案は受け入れられ、まずは同社の代表的サービスであるmusic.jpの事業部で適用されることになった。この新しいワークフローが、「UX決裁」と呼ばれているものである。

「機能ベース」の前に「価値ベース」で議論できるフロー

新しいワークフロー「UX決裁」とそれに必要なテンプレートは、外部の人間中心設計の専門家の協力も仰ぎつつ、山崎和彦氏らが提唱する『エクスペリエンス・ビジョン』をベースに作られた。

『music.jp』事業部で導入した「UX決裁」のワークフロー(※現在は使われておらず、ブラッシュアップしたフローに変更中)

『music.jp』事業部で導入した「UX決裁」のワークフロー(※現在は使われておらず、ブラッシュアップしたフローに変更中)

最大の特徴は、企画立案時に「ユーザーに提供する価値」を明文化し、それを評価するプロセスを採り入れたことにある。

「これにより、従来はいきなり『機能ベース』で行われていた議論の前に、本来あるべき『価値ベース』の議論ができるようになった」と堀口さんは言う。

従来のフローでは決裁は企画立案時の1度だけで済んでいたが、新しいフローではその後に続く工程でも都度、決裁が必要な形に変更された。

この変更により、機能はユーザーに対して価値を提供するものになっているか、UIはどうか……といった具合に、常にユーザーに提供する価値を軸にして進めることが可能になった。

浸透のため、時には評価者、時にはファシリテーターに

宮地氏

事業部内にUXセンターを設け、宮地氏らUCD部のメンバーが兼務することにより、現場での浸透を図った

当時の『music.jp』事業部は100人規模の大所帯。実際の運用にあたっては、事業部内にUXセンターを新設し、UCD部が兼務する形をとって、浸透を図った。

UXセンターの現場推進者を務めた宮地存氏は、「従来より工程が増える上、手戻りも多いため、最初は現場からの反発は大きかった」と振り返る。

こうした初期のハードルを超えるため、宮地氏は企画を評価する立場ではあったが、同時にファシリテーターとしての役割も果たすことになった。

指導するだけでなく、時には企画を通すための書類づくりを代行することもあった。日常的にユーザーテストや市場調査に基づいた資料を参照しながら議論してみせることで、事業部のメンバーも次第にその有用性に気づき、UXを重視する文化が醸成されていった。

「初めは企画が突き返されることに納得のいっていなかったメンバーも、成功事例が積み重なることで、考え方を変えていってくれた気がします」(宮地氏)

成果は他部署にも波及。ボトムアップの動きが実を結ぶ

椎根氏

『ルナルナ』を担当した椎根氏は、トップダウンとボトムアップの動きがうまくかみ合ったことを、今回の改革の一番の成功要因に挙げる

エムティーアイのもう一つの代表的サービスである女性の健康情報サイト『ルナルナ』事業部が置かれた状況は、『music.jp』の場合とは少し違った。

もともと10人ほどの小規模な事業部だったこともあり、UCD部の椎根史浩氏らが中心となって進めた草の根的な啓発活動の成果は、徐々に浸透していた。ユーザーテストの実施を提案する声が現場側から上がるほどに意識は高かった。

「定性・定量データに基づく詳細なペルソナ設計が行われておらず、機能・案件ごとの場当たり的な施策になってしまっていることへの危機感はもともと高かった。でも煩雑な手続きがネックになって、なかなかテストを実施できずにいたんです」(椎根氏)

こうした下からの突き上げに加えて、『music.jp』での一定の成功を受けて会社としての姿勢が明確になったことにより、2年前に大規模なデプスインタビューを行うことができた。

その結果、「妊娠したい」という欲求だけでも6種類に分類できることなどが新たに分かり、「どのタイプに対してどのような価値を提供していくのか、あるいは提供しないのかを徹底的に話し合い、ブレない方向性を共有できるようになった」(椎根氏)という。

下流から上流へと立場を変えた制作センター

UCD部の前身である制作センターは、事業横断的にUI制作を一手に請け負う、社内の「受託Web制作会社」のような役割だった。

その存在は、サービスを作るという制作工程全体で見れば、「下流」に甘んじていたといえるだろう。そんな制作センターがUX的な文化を会社に広めるという重要なミッションを担うことになったのには、まだUIとUXがひとくくりに考えられていた時代背景もあった。

しかし本来、UXを考えるというのは、制作工程の「最上流」に位置づけられるものである。今回の改革を進行していく中で、UCD部のメンバーの働き方にも変化が生まれた。

ガラケー時代からの社員である椎根氏は今、「自分のアイデアが企画に反映されるという未体験のやりがいを実感している」といい、「自社サービスがやりたくて受託開発会社から転職してきた」宮地氏は、ようやく自社サービス開発の喜びを謳歌するに至った。

制作センターはUXという武器を手にすることで、制作工程の「下流」から、「上流」に入り込む存在へと変貌を遂げたのだ。

過程には失敗も。改革はまだ続く

全員

サービスの現状にはまだまだ満足していない。堀口さん(右)は事業部側へと立場を移し、さらなる改革を推進していく

堀口さんは当初、座学とワークショップからなる全社研修という「正攻法」でのUX文化の浸透を試みた。

1回3時間、7日間にわたるカリキュラムで、概論から始まり、デプスインタビューやジャーニーマップの作成方法といった実践的な内容までを含むもの。ワークショップでも自社の事業を題材にするなど工夫を凝らしたが、関心は持ってもらえるものの、実際の事業にはなかなか結びつかなかった。

それ以前には、専門家を招いて講演を依頼したりもしたが、「どれも現実と理想のギャップがありすぎて、その日限りのものに終わってしまっていた」(椎根氏)。

トップダウンのワークフロー導入という強攻策を打つに至ったのは、こうした試行錯誤を経て、何より実践を積み重ねることの重要性を知ったからだ。

『music.jp』や『ルナルナ』の事例からフィードバックを得て、よりブラッシュアップしたワークフローを全社に適用する動きはすでに始まっている。

そしてこの改革を主導した堀口さん自身も、新たな挑戦に足を踏み出している。

「ここまで改革を進める中で、伝道師やファシリテーターなどさまざまな役割を果たしてきた自負はあります。それでもアウトプットとして今出しているサービスを見ると、まだまだユーザー中心のサービスになり切れていない。その理由の一つには、事業部側の立場や事情を理解し切れていなかったから、ということもあったのではないかと感じています」(堀口さん)

自ら志願してこの9月からヘルスケア事業部へ異動したのは、その表れ。今後は事業部側から、さらなる改革を進めていくつもりと話している。

取材・文・撮影/鈴木陸夫(編集部)

<堀口さんらも取得した「人間中心設計専門家」認定制度が受験者を募集中>

HCD-Netが運営・認定している「人間中心設計専門家」は、ユーザビリティ設計の専門スキルを評価し認定する、日本で唯一の人間中心設計の資格認定制度として、年々注目度を高めている。

これまでは独学で実践してきたUX設計のノウハウを体系化して学びたい、認定資格の取得で仕事上の糧にしたいという人は、応募を検討してみては?

■応募期間は2015年12月25日(金)まで。詳しい募集要項はコチラ。
>> 人間中心設計(HCD)専門家 資格認定制度

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/yuki-igarashi47 「ネット上のつながり」便利さとリスクを、一般人はどう考えればいいのか【連載:五十嵐悠紀】 //type.jp/et/log/article/yuki-igarashi47 Tue, 15 Dec 2015 09:00:40 +0000
天才プログラマー・五十嵐 悠紀のほのぼの研究生活

明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 講師
五十嵐 悠紀

2004年度下期、2005年度下期とIPA未踏ソフトに採択された、『天才プログラマー/スーパークリエータ』。日本学術振興会特別研究員(筑波大学)を経て、明治大学総合数理学部の講師として、CG/UIの研究・開発に従事する。プライベートでは三児の母でもある

2011年3月に起きた東日本大震災の際、携帯電話がつながらなくなる中、Twitterが情報インフラとして活躍したのは記憶に新しいでしょう。

このような経験を経て、市町村や小学校・幼稚園・保育園などでTwitterによる情報配信を始めるケースも多くなりました。子どもを持つ親に対して、学校側から「フォローするように」と言われることも増えました。こういった取り組みは、親としてとてもありがたいものですが、果たして本当にフォローしてもいいのでしょうか?

今どきTwitterのフォローを躊躇する人は少ないかもしれませんが、例えば防犯の側面で考えた場合はどうでしょう。

誰がどのアカウントをフォローしたかという情報は、設定次第ではネット上のあらゆる他人に見えています。自分の住んでいる市町村のアカウントをフォローする。子どもの通う小学校や幼稚園のアカウントをフォローする。これだけで、「この人は大体この辺りに住んでいて、○歳くらいの子どもがいるんだな」と推測できてしまいます。

もし、職業的に家の所在を突き止められると何かしらの弊害があるという人や、どうしても所在を特定されたくないという人の場合、ここでの正解は「自分だけが分かる形でブックマークする」です。しかし、フォロワーにも見える形でカジュアルにSNSアカウントをフォローしてしまっている人が多いというのが現状ではないでしょうか。

今回は、ソーシャル時代のインターネットにおける情報管理と必要なリテラシーについて書いてみたいと思います。

断片情報でもかき集めればいろんな側面が見えてくる

From Marc Smith ソーシャルネットワーク上での「つながりデータ」が持つ意味とは?

From Marc Smith
ソーシャルネットワーク上での「つながりデータ」が持つ意味とは?

上ではTwitterの例を挙げましたが、匿名で情報発信しているつもりでいても、友人A、友人B、大学からの公式情報など複数の側面からの断片的な情報が集まることで、個人を特定したり、プライバシーを立体的に浮かび上がらせたりすることができるのです。

例えば、アメリカのネットビデオレンタル大手のNetflixがコンテストのために公開した「匿名の貸出履歴のデータ」と、誰でも閲覧可能な映画データベースサイトの「書き込み情報」から、利用者の特定が可能になるという論文が発表されて問題になりました。

>> 参考記事:WIRED「NetFlix Cancels Recommendation Contest After Privacy Lawsuit」

この例のように、人と人とのつながり=ソーシャルグラフを可視化したり、断片的な情報をつなぎ合わせたりすることで、そこに「見えてくるつながりや情報」があります。私たちはこういったことを意識しながら利用する必要があります。

実名SNSの代表的存在となったFacebookでは、公開・非公開の他に細かく設定することができます。「自分の情報の共有範囲」というプライバシー設定ガイドを見たことがない人は、今一度チェックしてみてください。

さまざまな情報操作の現実

次は少し違った切り口で、ソーシャル時代のインターネットを考えてみましょう。

そもそもネットに出ている情報とは、何かしらの「偏り」があるものです(これはネットに限らず、他のメディアや現実社会も一緒ですが)。例えば何気なく使っている検索サイトや口コミサイトは、情報操作されているケースが少なくありません。

私は子どもを持つようになって初めて産婦人科選びや小児科選びをする際、口コミサイトを参考に選んだものの、その口コミには大小さまざまなバイアスがかかっている(情報に偏りがある)ことも意識していました。

悪い点は載せず、良い情報だけに偏っている口コミサイト、管理者がOKを出したものしか掲載されないサイト、口コミはすべて表示する方針でメリット・デメリットひっくるめて開示されているサイト……。サイトによって、掲載される情報は異なっています。そして、利用規約にその方針が書かれているサイトと、書いていないサイトの両方があります。

Amazonや楽天といったECサイトを使う際も、口コミを見てから購入する人は多いと思いますが、今年の4月にはAmazonがやらせの高評価レビューをつけるサクラに対して裁判を起こしました。口コミを書くと送料無料やオリジナル粗品がプレゼントされるような場合、口コミ投稿数が多く、なおかつ、そういった口コミは良い点が書かれがち、という点にも注意する必要があります。

このように、利用する我々はこれらが「操作された情報」であることを認識して使う必要があるのです。そして、ソーシャルWebがとても便利な世界である反面、どうやってリスクと付き合っていくのかを子どもたちやネットに詳しくない方々にも伝えていく必要があると思っています。

Googleなどにおける検索サイトでは、ログインして検索するか否かで検索結果が異なります。情報があふれる現代で、ログインした人のこれまでの検索履歴や登録情報などから推測して、なるべく早く目的の検索結果が得られるようにするための工夫です。

自分の履歴だけでなく、似たようなものを検索したり購入したりしている別の人々が、次にどのようなものを知りたいかといった情報も使っています。

これは一見、すごいメリットのようにも思えますが、一方的な見地に立った情報しか手に入りづらくなるこの状況は「フィルターバブル」と言われ、自身のいる範囲から遠い情報に到達しづらくなるという欠点もあります。

全米ベストセラーの日本語訳『閉じこもるインターネット』(早川書房)では、このフィルターバブル問題を詳しく述べています。

今後のつながりと法規制

これまでの事例から、ソーシャルWeb上での「つながり」に関するリテラシー教育が必要なことは分かっていただけると思います。

スマホの普及などで、手軽にSNSに投稿したり、ニュース媒体への意見投稿が行えるようになった今、こういったコミュニケーションの変化によって我々の「つながり」や「情報」はどうなっていくのでしょうか。そしてそれにしたがって、必要となる法規制はどのように進んでいくのでしょうか。

大学の教養課程(1~2年生対象)などでは、情報リテラシーや情報倫理などという講義が情報系だけでなく文理問わずに増えています。

私も2013年から、ネット上のつながりに関する議論を、ジャーナリストであり法政大学准教授である藤代裕之先生を筆頭に、関係する多岐に渡る分野の人たちとともに行ってきました。そして、その議論をまとめた『ソーシャルメディア論:つながりを再設計する』を著者12人で執筆し、今年10月に出版しました。

この本は、大学の授業で使ってもらいやすいようにと、講義のコマ数にあわせて全15章から構成してあり、それぞれの分野の人が章ごとに執筆しました。共著者全員が集まり、ポイントを解説する発売記念イベントが今月19日(土)に法政大学で行われます

また、最近では小学1年生の我が子の友だちに携帯電話を持ち始める子が増えてきました。そういった背景からも、リテラシー教育の必要性は小学生にまで低年齢化していることを実感させられます。

総務省はICTメディアリテラシーの育成として小学生向けに平成19年度から普及を図っています。バンダイナムコゲームスでも「小学生向けネットリテラシー教育」を行っています。

一方、届かないのは高齢世代。今後の課題でしょう。

ある意味とっても身近な情報管理の話。自分の身の回りの「情報」について見直してみると共に、ぜひ今一度、ご家族で話し合ってみてはいかがでしょうか?

>> 五十嵐悠紀さんの連載一覧

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//type.jp/et/log/article/fukuyuki41 仕事でまったくやる気が出ない時に僕がやる6つのこと。2015年、冬【連載:村上福之】 //type.jp/et/log/article/fukuyuki41 Mon, 14 Dec 2015 09:47:20 +0000
村上福之のキャラ立ちエンジニアへの道

株式会社クレイジーワークス 代表取締役 総裁
村上福之(@fukuyuki

ケータイを中心としたソリューションとシステム開発会社を運営。歯に衣着せぬ物言いで、インターネットというバーチャル空間で注目を集める。時々、マジなのかネタなのかが紙一重な発言でネットの住民たちを驚かせてくれるプログラマーだ

毎度のことながらやる気がない。この原稿も書く書くと言いつつ、5日くらい真っ白のままでした。

思い付きでWebサービスを作るにも、フラッと企画を思い付くにも、初期衝動が高まっている状態だと何も考えずにサクッとできるんですけど、基本的にやる気がない時は当然モチベーションも上がりません。コードも書く気が起きませんし、文章を書く気も起きません。

しかし、そんなことでは仕事ができない人間として同僚から煙たがられ、会社はクビになり、どこからも仕事をもらえず、お金がなくなって路頭に迷ってしまいます。

そこで、少しでも多くのやる気が出なくて困っているプログラマーのモチベーションを仕事に向け、日本の国力を高めるために、僕がやる気の出ない時にすることリストの2015年度版を書いてみます。

僕はこのやり方で、名前を指定するだけで芸能人に年賀状を出すサービス『いきなり年賀状』をだいたい3日で作ってリリースしました。

これを見て、少しでも日本の生産性とGDPと幸福度が上がれば、それ以上幸せなことはありません。

【1】FacebookとTwitterとはてブにアクセスできないようにする

FacebookもTwitterもはてブも生産性を落とす原因にしかならないので、hostsを編集して、アクセスできなくするように設定します。SNSはスマホ限定にします。

MacではHostsというアプリで編集します。
http://permanentmarkers.nl/software.html

Windowsの場合は、Hosts File Managerで設定した方が楽です。
http://softwarefactory.jp/ja/products/hostsfilemanager/

下記のように追記すると、Fb/Twitter/はてなブックマークが使えなくなります。

127.0.0.1 facebook.com
127.0.0.1 www.facebook.com
127.0.0.1 www.twitter.com
127.0.0.1 twitter.com
127.0.0.1 b.hatena.ne.jp

ただし、Facebookメッセンジャーは仕事でも使うことがあるので、それはmessenger.comで代用します。これは、Facebookのメッセしか動かないサイトです。ただし、hostsを書き換える前に、一度、ログアウトしないとログインできません。

【2】パソコンから離れて紙にTODOを細かく書く

パソコンは何でもできすぎて作業に集中できない。そこで、紙とペンだけ持って、近くのカフェに行くなり、ビルの屋上に行くなりして、TODOリストをまとめる。紙に書くと、何だかんだで、やる気が出るような気がする。こんな時代でも紙は重要です。

手元に紙とペンがない時は、『Wunderlist』を使っています。
https://www.wunderlist.com/ja/

ドイツ生まれのTODO管理サービス『Wunderlist』

ドイツ生まれのTODO管理サービス『Wunderlist

これは、スマホとWebとMacで使える非常にシンプルなTODOアプリです。ごちゃごちゃしてなくていいです。しかも、友だちともTODOを共有できるので何かと重宝しています。

iOS版、Android版、Web版、Chrome版、Mac版、Windows版があり、すべてにTODOを共有できるのですばらしいです。

ただ、やはりテンションが落ちている時は、TODOリストを紙に書いた方がいいです。

【3】TODOを定型作業か非定型作業か分ける

TODOリストを作ったら、定型作業なのか、非定型作業なのかに分けます。

また、すぐできることなのか、場所に関係なくできるのか、手間が掛かることなのか、カテゴライズします。このようにカテゴライズすることで、段取りを組みやすくなるのです。

【4】TODOを細切れにする

TODOを細切れにします。できれば10分以内で終わる作業に分けていきます。

特に精神的に病んでいる時は、本当に何をしなくてはいけないのか分からなくなるので、「パワーポイントを起動する」、「ファイルメニューから新規作成を選ぶ」とかまで書いてあるくらい具体的です。

と言っても、そもそも、それを書く集中力も大変なので、具体的に書きすぎて力尽きることがあるので注意してください。

【5】タイマーアプリをペースメーカーにして作業する

愛用しているポモドーロタイマー

僕がよく使っている『pomodoro Time

タイマーアプリを使って、10分、20分の細かい時間を計ります。シンプルに作業の制限時間をつけたい時は、Macの場合、『pomodoroTime』というアプリを使って制限時間を設定します。
https://itunes.apple.com/jp/app/pomodoro-time-focus-timer/id973134470?l=en&mt=12

今からやる作業の制限時間を書いて、自分を追い詰めます。

WindowsやLinuxだと、『TeamViz』などがありますが、あまりシンプルではありません。
http://www.teamviz.com/downloads/

Windowsでシンプルさを極めているのが『ミニタイマー』というアプリで、シンプルすぎて使いやすいです。愛用しています。
http://www.vector.co.jp/magazine/softnews/070313/n0703134.html

【6】何やっていいのか分からない時は、お風呂に入る

お風呂は命の洗濯です。濁ったソウルジェムを綺麗にするにはお風呂しかありません。

これは地域によりますが、銭湯があれば、さっさとお風呂に入るべきです。東京は、何やかんやで銭湯やサウナが多いので、助かります。

「ちょっとこれから銭湯いってくる」と思ったそんなあなたに、近くの銭湯の場所を確認できる銭湯マップはこちらです。
http://www.1010.or.jp/map/

ただ、仕事中に銭湯に行っていいのかどうか、かなり難しいところです。

職場が自由な雰囲気ですと、問題ありませんが、そうでないことも多いです。

個人的には、非常にお堅い会社にいた時でも、普通に銭湯に行ったり、漫画喫茶でモチベーションを上げたりしていました。

>> 参考:仕事中に銭湯へ行くときに気をつけたい7つのこと

まとめ: TODOリストのご利用は計画的に

パソコンで作業をしていると、パソコンは何でもできすぎて、作業に集中しにくいと思います。目的意識と時間制限を決めて、キーボードを叩かないと、どんどんいらんことばっかりして、作業が進みません。

一番よくないのは、「何やっていいのか分からない」状態です。それを避けるためにTODOリストを作るわけでして、段取りを決めないと時間がどんどんなくなって、おっさんになって、死ぬわけです。

がんばろう。

しかし、このように「仕事をするためのタスク」がだんだん増えていくと大変です。チケットの優先順位を見て、TODOリストの整理と、紙へ書き出して、ポモドーロタイマーを設定して、それで疲れてお風呂に入っていたりすると、すぐに1日経ってしまいます。

それでも、仕事をした気になってしまうから、不思議です。

毎日TODOリストばかり書いていて、仕事した気になって、仕事ができない人間として同僚から煙たがられ、会社はクビになり、どこからも仕事をもらえず、お金がなくなって路頭に迷ってしまわないように、僕もがんばりたいと思います。

>> 村上福之氏の連載一覧

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/kazuaki_seki 「技術は僕を何者にでも変えてくれる」映像作家・関和亮氏が肩書きを持たない理由 //type.jp/et/log/article/kazuaki_seki Fri, 11 Dec 2015 11:41:44 +0000

奇妙な音を立てながら、空中に姿を見せるリアル・インベーダー。彼らは地球に残された最後のエネルギー源、『カップヌードル』を奪うためにやってきた侵略者だ。世界を代表して立ち向かうのは、世界の“Air-K”錦織圭選手。ラケットから放つボールで、インベーダーを次々に撃墜していく――。

これは、日清食品『カップヌードル』の新CMとして放送されている「錦織VSドローンインベーダー」編の内容だ。

その名の通り、出てくるインベーダーの一部はドローンを使って飛ばしており、CGと実写を融合させた斬新な映像が話題を呼んでいる。

この動画の総合演出を務めたのは、映像作家の関和亮氏。スチールカメラマンとしてキャリアをスタートさせた関氏は、近年、ミュージックビデオ(MV)など動画の世界にも活躍の場を広げてきた。Perfumeやサカナクションといった人気アーティストのMVで、彼の名を知った人も少なくないだろう。

そんな関氏が手掛ける映像と切っても切り離せない関係なのが、最新テクノロジーである。2014年、ドローンを用いた空撮と編集ナシの“一発撮り”で話題を呼んだOK Goの『I Won’t Let You Down』のMVも、彼の手掛けた作品だ。カップヌードルのCMでも、インベーダーがドローンに乗った不思議な世界を、違和感なく作り上げている。

なぜ関氏は、最新技術を映像に自然に取り込めるのか。クリエイターとしてデジタルテクノロジーとどう付き合ってきたのかも含めて、その秘訣を聞いた。

ドローンを使うことでリアリティを演出できた

「錦織VSドローンインベーダー」編の撮影秘話を語る関氏

「錦織VSドローンインベーダー」編の撮影秘話を語る関氏

―― まずは「錦織VSドローンインベーダー」編の見どころというか、作り終わっての感想を聞かせてください。普段はMVを多く手掛けておられますが、今回のようなCM撮影は何か違いはありましたか?

MVでは企画段階から関わりますが、今回のCMでは(電通の)安達和英さんが先に企画を固めていたので、映像演出のフェーズから参加しています。なので、「なぜ錦織君がインベーダーを打ち落とすのか?」と聞かれても答えられません(笑)。ただ、ぶっとんだ世界観ですごく面白いし、すぐにやってみたいと思いました。

―― ドローンを使うというアイデアは?

それも企画段階で決まっていましたね。CGだけでもインベーダーを表現することはできますが、ドローンを使った方がリアリティのある映像づくりができるから、と。

今、ドローンっていろんな使い方をされていて、軍用兵器としても使われていますよね。だから将来、ドローンが人間に対して反乱を起こすことだってあり得るかもしれない。そういう意味でも、リアリティがあって刺激的な映像ができそうだなぁと。

―― 苦労した点はどこですか?

最初はインベーダー全部をドローンに乗せて飛ばそうと考えましたが、制御する際のWi-Fi環境など技術的な課題がいくつかあって、実際には特注のドローンを数台使って撮影しています。錦織君がいきなり命中させたのには驚きましたね(※編集部注:その時の様子は、以下のメイキング動画の1:20辺りで見ることができる)。

また、苦労というか、ゲームでは2次元で表現されていたインベーダーの動きを、3次元に変換して表現するのには頭を悩ませました。今回の撮影前に改めて『スペースインベーダー』で遊んでみたのですが、あの動きをドローンで表現しようとすると、いろいろと矛盾に突き当たるんですよ。

例えば、ゲームでは敵のインベーダーが横に動きながら、ジリジリと(プレーヤーが操作する移動砲台に向かって)迫ってくるじゃないですか。あの世界観をそのまま3次元に変換するのはとても難しい。プレーヤーを敵のビームから守る壁にしても、そもそもインベーダーとどういう位置関係で存在しているのか?みたいなことをずっと考えていました。

―― では、ドローンの飛ばし方にも工夫が必要だったのでは?

そうですね。このプロジェクトには技術協力でRhizomatiksさんが入っていたので、彼らとも相談しながら、試行錯誤しました。

デジタルとアナログを行き来しながらアイデアを膨らませる

―― OK Goの『I Won’t Let You Down』のMVでもドローンを使っていましたが、新しいテクノロジーを作品に取り入れる際、関さんなりのこだわりはあるのですか?

いえ、特にないんですよ。「こういう映像を作りたいからこの技術を使おう」ということもあるし、技術からヒントを得て映像のアイデアを広げていくこともあります。

『I Won’t Let You Down』のMVは、「たくさんの人をワンカットで撮りたい」、「最後は上空からのシーンがほしい」というアイデアが先にあって。だったら最初からドローンで撮影するしかない、という結論になりました。

―― 逆に、テクノロジーから着想して企画を練る時はどうやるのですか?

例えばサカナクションの『アルクアラウンド』のMVは、Adobeの『After Effects』でやれるような映像処理を実写で表現できないかな?と考えたのが企画の発端になりました。最初と最後がループするような表現にしてみたのも、CGで映像制作をする時にそういうテクニックを使うことがよくあるからです。

これまでいろんな手法を駆使して映像制作をしてきた経験を、実写に落とし込んでみたらああいう形になったというか。テクノロジーを通じて、新しい映像表現を「発見」したという言い方が近いかもしれません。

―― デジタルとアナログを行き来するようなイメージ?

そうかもしれません。だから、映像づくりに最新技術を持ち込むのに強いこだわりがあるわけでもないんですよ。ドローンを使うことに対しても同じで、僕は単純に、見る人が「これは何だろう?」と感じたり、刺激的なものを作りたいと思っているだけなので。

―― では、映像作家として心掛けていることは何かありますか?

しいて挙げるなら、制作に関わるいろんな人とコミュニケーションを取りながら作るようにしていることくらいです。

ちょっと話が変わってしまいますが、MVを作る作業って、本来とてもおこがましい行為なんですよ。だって、人様が作った楽曲が持つ世界観や雰囲気を、映像として表現するわけじゃないですか。僕自身がアーティストではないのに、ですよ(笑)。

だから、作品のクオリティを高めるのは当たり前のこととして、「自分が納得できない作品は世に出せない」みたいなこだわりは、持っちゃいけないと思うんです。

今回のようなCM制作も同じで、自分のアイデアだけでアウトプットを考えていたら、大勢の人にとっての面白い映像は作れないと思うんですね。だから、制作現場で僕が出したアイデアに対して「違うんじゃない」と言われた時は、コミュニケーションを重ねながら「なぜこの人は『違う』と思ったのか?」を考えるようにしています。

異なる意見、進化するテクノロジー…すべてに対して柔軟でありたい

関氏が映像作家として心掛けている、ある「スタンス」とは?

関氏が映像作家として心掛けている、ある「スタンス」とは?

―― 「違い」の理由を因数分解するようなイメージでしょうか?

ええ。対話を重ねる中で新しい気付きを得ることもあるし、「じゃあ、こういう理由でこの演出の方がいいんじゃない?」と説得することもあります。自分の考えと他人の考えの間を行き来することで、新しい何かを作ることができると思うんです。

人は刺激を求めるので、それまで見たことのないものを見たがります。だから、「昔こういう映像の作り方をしたから、これが正解」みたいな考え方はナンセンスで。過去を超えないと、見ている人は面白いと思ってくれない。

ではどうやって超えるかというと、自分の中にはない視点を持っている人と話をして、アイデアを取り入れていくしかないんだと思います。

カップヌードルのCM制作でも、日清食品さんや、『スペースインベーダー』の開発元であるタイトーさんの意見など、いろんな人の声を参考にしながら作成しました。

―― どんなやりとりだったのですか?

最初は今の映像よりクールな印象に仕上げる予定でしたが、日清さんから「もっと派手に爆発させてもいいんじゃないか」とご意見をいただきまして。一般的に、企業CMや商品CMのクライアントは過激な演出を嫌がる傾向があるのに、日清さんは違いましたね。

それから、「音でもCMを盛り上げてほしい」というリクエストがあったので、冒頭でインベーダーが登場する時の効果音はあえてちょっと耳障りな感じにしています。インベーダーが攻めてくる感じが、よりリアルに表現できたんじゃないかと思っています。

もし僕が思った通りに作っていたら、もっとサラッとした仕上がりになっていたと思いますよ。

―― 柔軟なスタンスなんですね。最初からそういう姿勢で仕事に取り組んできたのですか?

もともと「これが僕のスタイル」というものは持っていないんですよ。これまでの仕事も、スチールカメラマンもやるしグラフィックデザインもやるし、映像監督もやるしアートディレクションもやる、といった感じで続けてきたので。

映像づくりにしても、特定の撮影手法とか、一つの方法に固執はしていません。アウトプットが変われば、作り方も変わるからです。自分のスタイルがない分、フレキシブルに対応したいんです。

映像作品をアウトプットできる場所はすごく増えたし、制作に使えるツール類もこれだけ増えた時代に、一つの肩書きで一つの仕事だけを続けていくのが正解なんだろうか?とも思います。

―― そう思うようになったのはいつごろから?

分かりやすいターニングポイントがあったわけではないです。ただ、2000年代にいろんなデジタル撮影のテクノロジーが広まってきたころ、今話したようなことを真剣に考えたのを覚えています。だから、技術が僕を変えてくれたとも言えるかもしれません。

技術が進歩して、ハードウエアも安くなったことで、映像づくりを1人でやれる部分がすごく増えたわけじゃないですか。それでいろんなことを試しているうちに、依頼される仕事の幅も広がっていった。だから、柔軟でありたいと思うようになったのかもしれません。

―― 関さんの名刺には「肩書き」がないですよね?これも、柔軟さというか、特定の仕事に縛られたくないという思いから?

そうなんですよ。

―― じゃあ、「関さん=ドローンの映像監督」みたいな括られ方をするのもイヤ?

はい(笑)。括られたくないし、自分自身のことを「○○クリエイター」みたいに定義したくないんです。

―― お話ありがとうございました!

取材/伊藤健吾(編集部) 文/片瀬京子 撮影/桑原美樹

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/c2c3 未開拓マーケットで「ゼロイチ」する際の肝は何?メルカリ×チケットキャンプ×ココナラに学ぶ開発の心得 //type.jp/et/log/article/c2c3 Thu, 10 Dec 2015 12:50:25 +0000 東京・渋谷にあるミクシィを会場に行われたイベント『CtoC×ENGINEER 伸びているC2Cサービスの開発の裏側を公開!』

東京・渋谷にあるミクシィを会場に行われたイベント『CtoC×ENGINEER 伸びているC2Cサービスの開発の裏側を公開!』

2015年もいよいよ師走。今年はIoTやFintechなどさまざまな新分野で、成長軌道に乗り始めるベンチャーが台頭した1年だった。

その一つとして注目度を高めているのが、C2Cサービスを展開する企業群だ。「スマホ×フリマ」の新市場を開拓し、今では日米で2500万ダウンロード、億単位の利益を生むまでになった『メルカリ』や、今年3月にミクシィグループとなり、テレビCMを開始するなど好調のフンザ(『チケットキャンプ』運営)、オンラインのナレッジECマーケットという新領域を切り開いた『ココナラ』など、多種多様なC2Cビジネスが花開いた。

世界的に知名度を高めるUberやAirbnbのようなシェアリングサービスも広義のC2Cビジネスと捉えるなら、いよいよ「成長産業」への階段を昇り始めたと言えるだろう。

11月末、メルカリ、フンザ、ココナラの3社が合同で行ったイベント『CtoC×ENGINEER 伸びているC2Cサービスの開発の裏側を公開!』では、現在の成長を手にするまでの苦労が事業面、開発面の双方から語られた。この3社の“エピソード・ゼロ”から垣間見えたのは、模倣できる競合がほぼない状態からサービスを軌道に乗せるためのポイントだ。

「MVP」はどのジャンルのサービス開発でも重要

イベント第1部の模様

イベント第1部の模様

イベントは2部構成で行われ、第1部では

■株式会社メルカリ 代表取締役社長 山田進太郎氏
■株式会社フンザ 代表取締役 笹森良氏
■株式会社ココナラ 共同創業者/取締役 新明智氏

の経営トップ3名が、事業面での裏話を披露した。しかし、「サービスを成長させる上で『これが転機になった』という明確な打ち手はなかった」(メルカリ山田氏)という言葉通り、3社ともに軌道に乗るまでの戦略に特筆すべき新規性はなかったという結論に。

フンザの笹森氏も、サービス開始当時をこう振り返る。

「チケットキャンプのリリースから5カ月くらいは、ユーザー数も流通額も“さざ波”程度の変化しかなかった。しいて転機を挙げるなら、1年目にサマソニのチケットだけがやたらと売買された時期があったのを背景に、ベンチャーとしてはけっこうな大金を使って『SUMMER SONIC 2015』の公式スポンサーになったこと。この協賛で一気に知名度が高まったものの、最初からこうした打ち手を考えていたわけではない。C2Cにはこれといったブースト施策がないと思う」

米のソフトウエアエンジニア、フレデリック・ブルックスの「銀の弾などない」という名言しかり、新たなマーケットの開拓といっても愚直に仮説検証と改善を繰り返す以外に道はないということだった。

とはいえ、セッションの中で共通して出ていたのが、「ゼロイチ」を行う時期は徹底して特徴を絞り込む戦術が功を奏したという話。3社が「サービス開始の時期にやっていたこと」をまとめると、こんなポイントがあぶり出された。

■メルカリ

・最初は開発チームのマンパワーも少ないので機能を削りまくって、タイムラインと商品ページだけの構成で始めた。

・その後、一気に出品数が増えたことで、振り込み申請機能などの機能は後付けしながら課題を解消していった。

■チケットキャンプ

・C2Cのサービスは売り手/買い手の両方がいないと成立しないので、サービス内で「人のいる気配」をどう出すか?にはこだわった。具体的には、レーティングレビューや購入履歴の見える化の部分。

・チーム内で「KPI2倍ルール(設定したKPIが2倍以上伸びそうな施策かどうか?で、新機能開発を検討すること)」を設け、この基準をクリアしなそうな機能は付けないという約束事を徹底した。なので、最初は退会機能すらなかった。

■ココナラ

・クローズドβで始めたサービスを、正式リリース時に完全に作り直した。理由は、β版のリリース後「頭で考えた施策はほとんど刺さらない」と実感したから。

・最初は「コミュニティっぽさ」を重視して開発していたが、反面「(ナレッジECとしての)買える感」が薄れてしまった。結果、正式リリース時は購入ボタンのUIを試行錯誤したり、「ワンコインの500円から購入できる」という特徴にフォーカスした。

リーンスタートアップで提唱される「MVP(minimum viable product)」は、C2Cであろうと別ジャンルであろうと有効だということが言えるだろう。

3社ともに「技術選択」にこだわりを見せる理由

東京・渋谷にあるミクシィを会場に行われたイベント『CtoC×ENGINEER 伸びているC2Cサービスの開発の裏側を公開!』

イベント当日は70名の定員を上回る盛況ぶりだった

では、開発面でゼロイチからの成長に必要な取り組みはどんなものだったのか?第2部に登場した

■株式会社メルカリ プリンシパルエンジニア 鶴岡達也氏
■株式会社フンザ 取締役/CTO 酒徳千尋氏
■株式会社ココナラ 取締役/CTO 恵比澤賢氏

の開発リーダー3名の話で印象的だったのは、少人数で開発スピードを上げ、PDCAの回転率を高めていくための「技術選択」についてだ。

ココナラの恵比澤氏は、同社がCakePHP&SQLで開発を進めている理由を「最初に作った人が最もやりやすいものだったから」と説明。今も、「チームで話し合って『最終的に担当者が責任を持てる技術』しか採用しないようにしている」と明かした。

リリース当時は創業者を含め3名、現在もエンジニアは5名体制というフンザの酒徳氏も、「チケットキャンプはPython&Djangoで開発しているが、これはPythonistaである僕が一番理解しているものだったから。技術選択では、『何があっても誰かが責任を持てる』という技術しか選ばないようにしている」と言う。

メルカリの鶴岡氏は、これらの点に加えて「学習コストの少なさ」にも注目していると続ける。

「新規サービスを開発する上で重要なのは、人が増えていった時に、どのエンジニアも同じようにスピーディに開発できること。だから、メルカリはPHPの内製フレームワークを使って開発していて、今もできるだけ単純なフレームワークの組み合わせでやるようにしている」

むろん、その後エンジニア採用を進めていく上で「人材を確保しやすいかどうか?」という視点も重要であり、鶴岡氏は「新会社のソウゾウでは『将来性を考えた上でもPHPだけでいいのか?』と議論し、Goで開発をやっている」と話す。

いずれにせよ、「新しいから」、「便利そうだから」という理由だけで技術選択をしないという点は気を付けたいところだ。

「勢いがある事業じゃないと技術的な挑戦も減る」

ほかには、「会社全体でオープンな議論を推奨しているので、ポジションを問わず機能改善や追加への意見が言える雰囲気づくりを大事にしている」(ココナラ恵比澤氏)、「1人1人が裁量を持って開発に取り組めるように、最低でも1カ月に1度は上長と1on1で面談をする文化を根付かせた」(メルカリ鶴岡氏)など、チームで「いかに改善スピードを維持するか」にフォーカスした発言も。

妙手より確実さと速さを重要視する施策が肝心ということだろう。

最後に行われた参加者とのQ&Aセッションでは、「サービスの理想形を模索している段階でも心折れずに開発を続けるには?」という質問に対して

「『サービスが伸びている』という事実が最もモチベーションを上げるので、ビジネスサイドの要望にはできるだけ『できない』と言わない」(フンザ酒徳氏)

「やっぱり、勢いがある事業じゃないとテクニカルなチャレンジも減るので、伸びている事業開発に携わることがすごく大事」(メルカリ鶴岡氏)

と答えるなど、ゼロイチフェーズから成長軌道に乗せるまでのメンタリティについても有益な経験知が披露された。今後、3社は「アプリ領域に攻め込んでいきたい」(ココナラ新明氏)、「ユーザーの音楽嗜好と連動させながらチケット売買をプッシュしていくような世界観を目指す」(フンザ笹森氏)、「グローバル展開の強化でメルカリならではのモバイルエコシステムを築いていきたい」(メルカリ山田氏)などと、新たな打ち手にも着手していく構想という。

新たな一大産業に成長する兆しが見えてきたC2C領域。今後も注目だ。

取材・文・撮影/伊藤健吾(編集部)

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/taimei-6 過熱気味なCTOブームに一言物申す【連載:TAIMEI】 //type.jp/et/log/article/taimei-6 Tue, 08 Dec 2015 08:15:12 +0000
TAIMEIの「Innovation Roadmap」

小俣泰明(TAIMEI)@taimeidrive

NTTコミュニケーションズなどの大手ITベンダーでシステム運用やネットワーク構築の技術を磨いた後、面白法人カヤックでディレクターを担当。その後、2009年4月に上場企業の取締役に就任。2012年8月にトライフォートを共同設立、代表取締役Co-Founder/CTOに就任。スマートフォンアプリ・ソーシャル領域に特化した開発・運営を展開している

今回もエンジニアtypeの連載にお付き合いいただきありがとうございます。

先日、CTO忘年会という各社の最高技術責任者が集まる会に参加しました。

ここでは採用技術の話や組織論といった多岐にわたるテーマを、素晴らしいCTOの方々から聞くことができます。

CTO会は長く続いていますが、今回は5~60もの人が集まりました。つまり、「5~60社の技術トップ」が集まったことになります。ITベンチャーの勢いを改めて認識させられましたが、それと同時に、「CTOという職種って何なんだろう?」と考えさせられる良い機会になりました。

最近は、「最高技術責任者」という肩書きが付いているだけで、特殊な会合に参加できたり、「すごい人だ!」となる傾向があるように思います。でも、集まっている人たちの話を聞くと、会社の規模も違えば、要求される技術スキルも違います。

大企業の場合、CTOはたくさんいる技術者の中で1人しか選ばれないポジションですが、だからといってCTO以外の技術者が優秀ではないというわけではありません。

そこで今回は、「肩書き」より「果たす役割」が重要だという話をしたいと思います。

最新技術は、あくまでも選択肢の一つでしかない

エンジニアtype内検索で「CTO」関連記事を探すだけでも、1800件近くの記事がヒットします

エンジニアtype内検索で「CTO」関連記事を探すだけでも、1800件近くの記事がヒットします

CTOの仕事とは何か?という壮大なテーマについて考える前に、まずは分かりやすい事例から書きましょう。

CTOは会社における技術の最高責任者なので、自社が手掛ける製品やサービスにどんな技術を採用するか?という点に裁量があります。ここで求められるのは最新技術の知識。課題解決をする手段を多く持っているほど、CTOとしての能力が高いと言えるでしょう。

ただ、ここで誤った判断が生まれやすい。目的なく「最新技術を採用することが正しい」という誤りです。

最適解は必ずしも最新技術ではありません。最新技術を常に知っておく必要はありますが、それはあくまで選択肢を増やすため。そして、最新技術のメリットを知ることで、レガシーシステムのデメリットを把握するためです。

抱えている課題に対して最新技術がマッチしているかというと、実はそうではないという状況が往々にしてあります。そのマッチしてない部分が、大きなデメリットを引き起こす可能性があるわけです。

また、技術は宗教じゃないということにも気を付けなければなりません。AWSが好き。オープンソースが好き。Windows系は嫌い。Railsは神! といった宗教じみた判断で、技術選定をする人が非常に多いように感じます。

そういったCTOほど、競合技術の評価を怠ります。

例えばオープンソース信者は、Windowsサーバをインストールすらしていないケースが多いです。そんな状態で、果たしてオープンソース技術を正しく評価することができるでしょうか。

おそらくこのケースでは、「ライセンスフィーが高い」、「ブラックボックスだから」ということで、ググった程度の知識で評価をすることになるでしょう。CTOはその程度の知識で技術の優劣を判断してはならないし、宗教的な好き嫌いで判断をすることで、結果としてビジネスの勝率を下げることにだってつながってしまうのです。

技術選定における5つのポイント

CTOに求められる能力の一つは、そういった“技術宗教”にとらわれることなく、手掛けるビジネスの勝率を上げられるかどうかという観点で技術選定をすることです。時に、自分の好きな技術をも捨てる勇気が必要になります。

もう少し具体的な判断基準として、用いる技術選定における5つのポイントを挙げておきます。

【1】エンジニアの確保の容易さ

【2】参考文献、情報の多さ(正確には質の高い情報があるか、情報の増加スピード)

【3】組織への浸透が可能か?(現在のチームに対して浸透ができるほどのコミュニケーションが取れるか。そういった柔軟な組織であるか?)

【4】採用技術自体の体制。更新(バージョンアップ)速度が目的のビジネススピードにマッチしているか?

【5】技術者メリットではなくユーザーメリットになっているか?

最後の【5】は、僕自身への自戒も含んでいます。このライブラリを使っていると楽しいし、開発も楽だし、バグとか防ぎやすいし、メリットだらけ!……みたいな判断で、技術者へのメリットしかないものを採用してしまいがちだからです。

しかし、僕の経験上、こうした判断はビジネスの勝率にあまり影響しません。逆に管理コストが増えて、体制が膨れ上がって動きが遅くなるなどのデメリットを生むことになりかねません(ライブラリなどについては、メンバーから「入れたい」という要望が来ることも多いため、ある程度現場に裁量を持たせるのも必要かもしれないですが)。

CTOの力量が最も表れるのは「平時の課題解決」

From Sylvain Kalache CTOの本来の力量とは、技術選定やチームビルディングの力だけでは測れないと思う

From Sylvain Kalache
CTOに本来求められる力量とは、技術選定やチームビルディングの側面だけでは測れないと思う

話を元に戻して、CTOでなくとも、ある程度の組織規模になっている企業で開発リーダーや技術マネジャーをしていると、CTOと同じような能力を求められます。

つまり、CTOという肩書きがなくても、役割として小さなITベンチャーのCTOと同レベルの判断力を求められるケースは多いのです。

では、そういう人たちに要求される「判断力」とは何か?それは、「課題解決の道筋」を見つけることです。

ビジネス上の課題が見えている状況であれば、難易度はそれほど高くはありません。難易度が高いのは、むしろ課題が見えなくなっている状況の時。現状がうまく回っていて、多くの人が満足している状態の時です。

ここから潜在的な課題を見つけ出し、さらなる成長に向けたアクションプランを作ることができるか。そして、そのアクションの重要性を、組織、チームに浸透できるか?それこそが腕の見せ所になります。

特に業績が良く、目先の業務がうまく回っているような企業だと、そこからさらに上を目指すというモチベーションを生み出すのはなかなか難しいものです。しかし今のIT業界、満足したらそこで成長が止まります。半年もすれば競争力に影響し、 簡単に業界内順位もひっくり返ってしまいます。

「今の状況に満足せず前に進み続けること」

この状態を維持することが重要で、これは口で言うほど簡単なことではありません。こういう状態の時に解消しなければならない課題とは、「徹夜を続けて課題に取り組めば解決できる」といった類のものではないからです。

先ほど書いた技術選定の例一つを取っても、この視点で課題解決ができる人、現状に満足せず前に進もうと考えられる人は、CTOという肩書きの有無を問わずとても優れた技術者です。

優秀なエンジニアを目指すのであれば、ぜひこのマインドを持って前に進んでほしいと思います。「肩書き」にしばられるのではなく、「役割」としてチームに何を与えているかに注目して、仕事をしてほしいです。

「役職」ではなく「役割別」に技術者が集まる会合が必要だ

ということで、本当は「CTOだから偉い」、「すごい技術者だ!」なんてことはなくて、本質的に技術者が目指すべきは「今の会社の中で何を役割として果たすか?」ということなのです。

モチベーションアップのために、CTOや最高技術責任者といった肩書きを付与するケースが多すぎる現在。CTO本来の役割をこなし、CTOになるべくしてなった者と、偶然社内にその肩書きの人がいなかったからなったという人との差は大きなものがあるように感じています。

極端に言えば、すでに「CTO」という肩書きが、技術者の能力を図る手段にはなっていないのです。

僕としては、「CTO会」という役職で括られた会合ではなく、「役割別」に技術者が集まるような会合が必要だと感じています。

最後まで読んでいただいた方へ。ぜひ、「役職別」の会合ではなく、企業を超えた「役割別」の部会設立に僕と一緒に動いてくれたら幸いです。

ありがとうございました。

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/qiita_oikawa 及川卓也氏をプロダクトマネジャーに迎えIncrementsが構想する「Qiita3.0」とは? //type.jp/et/log/article/qiita_oikawa Mon, 07 Dec 2015 10:24:08 +0000 GoogleでChromeの開発などに携わったエンジニアである及川卓也氏がこのほど、技術情報共有サービス『Qiita』などを運営するIncrementsに加わった。

Microsoft、Googleと世界を舞台に活躍してきた大物技術者が、転職先として社員わずか13人のスタートアップを選んだことは、少なくない人に驚きをもって受け止められた。詳細はまだ明かせないということだが、及川氏をプロダクトマネジャーに迎えたIncrementsは、「Qiita3.0」とも呼ぶべき未来構想を描いているという。

(写真左から)この11月にIncrementsに加わった及川卓也氏と、代表取締役社長の海野弘成氏

(写真左から)この11月にIncrementsに加わった及川卓也氏と、代表取締役社長の海野弘成氏

2012年の会社創業とともにローンチした『Qiita』は、直後に1度ピボットを経験した後は、現在の「ノウハウ共有サイト」として右肩上がりの成長を遂げてきた。現在では月間200万UU、投稿された記事は10万件を超えるなど、日本のエンジニアコミュニティにすっかり定着している。

そんな『Qiita』が進む次のステージとは、どのようなものとして構想されているのか。代表取締役社長の海野弘成氏と及川氏に話を聞いた。

コミュニティとプロダクトは『Qiita』の両輪

—— はじめに、及川さんが今回Incrementsに加わることになった経緯について教えてください。

海野 Incrementsではこれまでエンジニアを厳選して採用してきました。なので、優秀なメンバーはある程度そろっている。次はプロダクトを強化すべきと考えて、プロダクトマネジャーというカテゴリーで考えた時に浮かんだのが及川さんでした。

エンジニアをマネジメントする上では、エンジニアだったりエンジニアコミュニティだったりを理解している必要がありますが、マネジメントができて、さらにそうした理解もある人というのは、なかなかいるものではありません。

及川 共通の知人を通じて海野さんと会い、そこでディスカッションを重ねる中で、『Qiita』や会社として向かっている方向性が、私自身がやりたいと考えていたことと非常に近いと感じるようになりました。

これは、Googleを辞めるよりも前の話です。誰にも言ってはいませんでしたが、Googleを辞める時点でIncrementsに入ることはすでに決めていました。

—— 海野さんが及川さんに期待するプロダクトマネジャーの役割とはどのようなものですか?

及川氏をプロダクトマネジゃーに迎えた海野氏が期待する動きとは?

及川氏をプロダクトマネジゃーに迎えた海野氏が期待する動きとは?

海野 プロダクトマネジャーの責任はプロダクトを成功させること。そのためには営業だったりマーケティングだったりとさまざまな要素が絡んできますし、それはプロダクトによっても違います。

『Qiita』の場合はやはり、エンジニアコミュニティを理解するというところが一番難しい。

エンジニアには皆、根っこに性善説というか、「世界をより良くするために自分の技術を使いたい」と考えるところがあると思うのですが、これは感覚的なものなので、学習して身に付けられるものではない。それを理解してコミュニティを育てるということ、かつ社内のエンジニアメンバーと良いプロダクトを作るために協調してやれるという、両方を期待しています。

—— コミュニティとチームをマネジメントしつつ、プロダクトがどうあるべきかを決めるまでを1人でやるのは難しいことではないですか?

及川 『Qiita』にとってはプロダクトとコミュニティは両輪だと思っていますから、プロダクトを考えることとコミュニティを考えることはオーバーラップしますし、それをやるためにはチームとしてうまくやらなければならない。全てそろって進められないようでは成功はないと思っています。

Incrementsは、チームといっても自分を含めて14人とまだまだ小さい。なので、メンバーと一緒に働くことがそのままチームマネジメントだとも言えます。1人で籠ってスペックを考えていてもできっこないし、今のコミュニティを知らないことには何も作れない。プロダクトだけを見続けることで可能になる打ち手もあるでしょうが、それ以外を見ることで見えるものもあるということです。

情報を「集める」フェーズから「価値を高める」フェーズに

すでに月間10万件以上の投稿があるという『Qiita』が次に目指すものとは?

すでに累計10万件以上の投稿があるという『Qiita』が次に目指すものとは?

——お2人の間で盛り上がったという今後の構想について、お話いただける範囲で教えてください。『Qiita』はどのように変わっていくのでしょうか。

海野 僕らが『Qiita』を出すまでは、技術情報を発信したり共有したりする場所がかなり限られていました。

『Qiita』を出し、さらには『Kobito』やAPIを公開することによって環境を整え、いかに情報共有してもらうかに腐心してきたのがこれまでのフェーズです。

そうした場が徐々にできてきて、いろいろと活用できるデータがそろってきたので、今後は共有された情報の価値をいかに高めるか?というフェーズに入ると思っています。

及川 『Qiita』にはすでに10万件以上の投稿がありますが、中には古くなったり埋もれてしまったりして、死蔵してしまっているものも少なからずあります。これを再発掘する、あるいは情報を追加するなどして、鮮度を保つということをやっていきたい。

しかも、それをコミュニティの力によって実行したいと考えています。

これまでは情報の正しさや鮮度を保つことが、投稿した書き手個人に委ねられていました。でも、それではあまりにも負担が大きい。『Qiita』が“情報共有のGitHub”のような存在になることで、この問題を解決できるのではないかというのが、私たちの考えです。

例えばオープンソースには「WIP(Work In Progress)」という件名を付けて作業中であることを示しつつ、途中経過もレビューしてもらうというやり方がありますね。『Qiita』においても、本人にとっては忙しい最中に残したメモ書き程度のものであっても、コミュニティに委ねればコンテンツとして育っていくかもしれない。

方法はいろいろあると思いますが、現在は頭の中にあるアイデアを少しずつ、チームのメンバーに共有している段階です。

成長意欲と承認欲求をトリガーにコミュニティを育んでいく

2人の間にもまだ「正解」はないというが、目指す方向性は一致しているという

2人の間にもまだ「正解」はないというが、『Qiita』の目指す方向性は一致しているという

—— 及川さんはこれまでも仕事の枠を超えてさまざまなコミュニティの中心にいましたが、構想するようなコミュニティはどのようにして育てていくつもりですか?

及川 Googleは存在自体が巨大な求心力でしたから参考にはなりませんし、どういう方法が良いのかは模索中です。ただ、適切なタイミングで生まれ、適切な方法で運営されていれば、コミュニティは自然と育っていくものではないかと思います。

どういう人が集まっているのかを理解した上で、共通のゴールを設定するのが大事なような気がします。何かしらのインセンティブは必要でしょう。それが何かはまだ分かりませんが、『Qiita』の場合は「そこに行けば成長できる」ということが一つのインセンティブになるのではと思います。

海野 「成長したい」とともに「人の役に立ちたい」という思いも、情報共有やオープンソースに参加する動機として挙げられると思います。これは、これまでに行った投稿者へのヒアリングなどから分かっていることでもあります。

僕自身が『Qiita』を作るに至った原体験も、まさにそうでした。ある言語の記事をブログに書いたら、その言語を作った人からコメントがついた。それが嬉しかったんです。ただ、個人のブログだとプレゼンスを得るまでのハードルが高い。そこを改善しようと思ったのが『Qiita』の始まりです。

—— 将来的にはどのようなコミュニティに育てていきたいとお考えですか?

及川 現状の『Qiita』のコミュニティはスマホやWebの技術者に偏っており、日本の技術者全体を反映したものにはなっていません。職業エンジニアが110万人とも120万人とも言われる中で、ネット上でプレゼンスを持っているのはそのごく一部。『Qiita』にいるのはそのさらに一部に過ぎない。

こうした現状を変え、技術者全体のコミュニティと限りなく一致させる方向にもっていきたいと思っています。

もちろん実際には完全に一致することは難しい。ただ、日本の技術者全体が相互に助け合って成長していく一つのコミュニティになるための努力はするべきだと思っています。

将来的には、アドバンストな人の集まりである『Qiita』の思想や文化を日本全体に反映させるといった方法で、世界における日本のプレゼンスを向上させることに貢献していきたいと考えています。

キャリアの棚卸しの末に行き着いた、イネイブラーとしての喜び

Googleを辞める以前から、Incrementsへの興味を抱いていたという及川氏

Incrementsへの転職前は、自身の今後について「棚卸し」をしたと話す及川氏

—— 及川さん自身はGoogleを辞めた後、プラットフォーマー的な役割であるIncrementsを選んだのはなぜでしょうか?

及川 FinTech、医療、シェアリングエコノミー……バーティカルなテーマは確かにどれも面白いですし、そういう事業を手掛ける企業に行くという選択肢も考えはしました。ただ、一時的にアドバイスする分には良いけれど、ずっとやり続けるのに果たしてモチベーションを保てるだろうかと考えたんです。

というのも、振り返ってみると、過去に在籍したMicrosoftにしてもGoogleにしても、自分はずっとプラットフォーム技術を作る会社に勤めてきた。人にアドバイスすることはあっても、自分自身の仕事としてバーティカルなことをやったことはなかったし、自分が面白いと感じてきたのも、Web技術を作って多くの技術者に使ってもらう、イネイブラーとしての役割でした。

仕事以外でもさまざまなコミュニティに関わってきましたが、それもイネイブラーとして啓発させてもらう立場と言うことができます。なので今回も、プラットフォーム技術を作るか、技術者を支える技術を作りたいと考えたんです。

もちろん、自分で起業することも考えました。ただ、そんな中で誘われたIncrementsが掲げる「ソフトウエア開発をよくすることで、世界の進化を加速させる」というミッションは、自分がやりたいことと近いもので、非常に共感できた。

だったらゼロから資金調達や採用といった自分が苦手なことをやるより、参加させてもらった方がより、自分の夢にも近づくと思ったんです。

—— 及川さんのような人でもキャリアの棚卸しをするものなのですね。

及川 当然です。キャリアの棚卸しは皆、絶対にやった方がいい。

人間はずっとハイテンション、ハイモチベートされた状態で働き続けることはできません。プロジェクトが終わってバーンアウトしたり、大きな組織変更があったりと、キャリアを見直すタイミングは必ずあります。そういう時、自分がこれまで何にエキサイトしてきたのかを振り返ることで、自分がやりたいことを見つけることができる。

MicrosoftからGoogleへ移った時も、Google内で職種転換した時も、私は必ずそうやってその後の道を決めてきました。

—— では、及川さんにとって、これからの取り組みはどういった点でチャレンジと言えるのでしょうか?

及川 Googleは素晴らしい会社でしたが、多くのものを自社のインフラでまかなえる恵まれた環境にありました。しかし、それは一歩会社の外に出てしまえば当然使えません。

一方でIncrementsは典型的なスタートアップ。誰でも手に入るものを活用し、ベストプラクティスを模索して常に実践を重ねている。こうしたことに足を踏み入れることがチャレンジであり、やりたかったことでもあるんです。

さまざまな企業や技術者からGoogleの開発事例を聞かれて答えても、「参考になりました」と言われるだけで、実際には変わらない。それはGoogleが特別な会社だと思われているからであり、実際に特別な会社だったからです。

その点、Incrementsは製品を通じてだけでなく、自分たちのプラクティスを通じて世の技術者たちを啓発していける会社だと思っています。14人の会社にできていることが、もっと大きい会社にできないはずがないですから、刺激を与えられる存在になれるのではないでしょうか。

海野 Incrementsでは「可能な限りオープンソースにする」という考え方を大切にしていますし、ブログやミートアップで発信する内容も、成功事例だけでなく、失敗や試行錯誤のプロセス自体を含んでいます。

僕らがやっているのは、プラットフォーマーとして外からコミュニティを作る、育てるというよりも、僕ら自身もその輪の中に入って、一緒にベストプラクティスを模索するということ。ここまで受け入れられて成長できたのはそうした思想があったからではないかと思っていますし、それは今後も変わらない姿勢だと思ってもいます。

取材・撮影/伊藤健吾 文/鈴木陸夫(ともに編集部)

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/hive_beats 渋谷・道玄坂で「天才」を探し続けるVCの話~メンタリング無双『#HiveShibuya beats』を行うSkyland Venturesの狙い //type.jp/et/log/article/hive_beats Thu, 03 Dec 2015 08:47:54 +0000 『#HiveSHibuya beats』の様子

『#HiveShibuya beats』の様子

普段の喧騒が嘘のように、人もまばらな朝8時の東京・渋谷。道玄坂を少し登ったところにあるビルの中に、1人、また1人と吸い込まれていく。

行き先は、ベンチャーキャピタルのSkyland VenturesEast Venturesが共同運営するオフィス『#HiveShibuya』だ。中ではSkyland Ventures代表パートナーの木下慶彦氏や同社アソシエイト兼#HiveShibuya管理人の岡山佳孝氏が、「吸い込まれてきた」人々と熱心に話し込んでいた。

話の内容は、起業における資金調達の相談からサービスグロースの施策について、学生へのインターン先紹介など多岐にわたる。そして、約15分が経つと別の来訪者に入れ替わり、再び相談が始まる。

木下氏によると、これを「毎週水曜日の朝、10セットを目安に欠かさず行っている」そう。目的は、VCとして新たな投資先を発掘することのほか、「天才を見いだすため」と言う。

彼の言う「天才」とはどんな人物なのか。『#HiveShibuya beats』と銘打たれたこの”メンタリング無双”の最中に行った取材内容を紹介しよう。

約3カ月で100件近くの「15分メンタリング」をこなす

(写真前列左から)Skyland Ventures代表パートナーの木下慶彦氏や、同社アソシエイト兼#HiveShibuya管理人の岡山佳孝氏

Skyland Venturesの面々。前列左が代表パートナーの木下慶彦氏、右が#HiveShibuya管理人の岡山佳孝氏

Skyland Venturesは主にシードステージのスタートアップを対象としたベンチャー投資をメイン事業に据えており、ほかにもIBM Blue HubやEast Ventures、PR TIMESなど複数の企業と協業しながらスタートアップをするU30の若者向けにコワーキングスペースの運営、イベント運営などを展開してきた。

過去、投資による支援を行ってきたスタートアップには、スマホ脳トレゲーム『Brain Wars』や『Brain Dots』とヒットタイトルを連発するトランスリミット、生鮮流通のAmazonとして知られる八面六臂、ショッピングメディアサービスの『KAUMO』など、成長著しいベンチャーも含まれている。

同社が#HiveShibuya beatsを始めるきっかけとなったのは、こうした実績もあり、同社のメンバーに相談したい、#HiveShibuyaへ一度訪れたいという人が増えたため。

「ベンチャーキャピタリストとして、将来起業したいと考えるすべての若者との接点を無駄にしたくない中で、毎週水曜午前、毎回15分という限られた時間でミーティングを繰り返すアイデアを思い付いたのです」(木下氏)

今年9月に始めたこの取り組みは、すでに100件近くのミーティング数になっており、その中から実際に投資へとつながった事例もいくつか生まれている。

また、岡山氏が「スタートアップの支援には優秀なエンジニアの発掘も欠かせない」という思いから約1年掛けて人脈を広げてきた結果、今は#HiveShibuyaをベースにクローズドなエンジニアコミュニティが形成されるに至っている。

Matzの言葉に見る、「天才性」とは何か

では、冒頭で記した「天才探し」とは何なのか。

木下氏はさる11月に#HiveShibuyaを訪れた世界的プログラマー、まつもとゆきひろ氏の言葉を引用しながらこう説明する。

#HiveShibuyaを訪れた際のまつもとゆきひろ氏(写真右)。他にも著名なエンジニアがここを訪れている

#HiveShibuyaを訪れた際のまつもとゆきひろ氏(写真右)。他にも著名なエンジニアがここを訪れている

「Matzさんは、『優れたプログラマーは育てるものではなく“発見”されるもの』とおっしゃっていました。僕らのやっている天才探しとは、まさにそういうことなんです」(木下氏)

天才とは、「例えば50年以上、毎日同じことを続けてやっていけるような逸材」であると続ける。この仮説を裏付けるべく、古今東西さまざまな分野で天才と称される人物のキャリアを調べたという木下氏は、「行為の連続性」という点で共通項があると確信したそうだ。

「Matzさんやメジャーリーガーのイチロー選手、(漫画『ONE PIECE』作者の)尾田栄一郎さんにしたって、最初から才能を世に知られていたわけではありません。でも、あることに没頭し、ひたすら続けてきたことで、次第に世に認められるようになった。僕はそういう『何かにひたすら打ち込み続ける逸材』を探し、ビジネスの世界で大きなことを成し遂げる支援をしていきたいんです。そう思い、beatsのようなクイックミーティングを通じて、多くの方との接点となる機会を設けています」(木下氏)

エンジニアに関して言えば、学生時代からプログラミングを毎日行い、その結果1人でサービスを作り続けてきたような若手にぜひ会いたいと言う。

「多くの人が何かを辞める理由は、たいていの場合『お金』か『年齢』です。僕はVCとして資金面でのお手伝いをすることができる。だからベンチャーキャピタリストとして、若い天才と一緒に新しい未来を作っていきたいと思います」(木下氏)

U30の“逸材コミュニティ”を生み出すべく奔走中

こうした取り組みに拍車を掛ける目的で、Skyland Venturesは近日「未来を創るU30の100人」を集めたイベントを開催すべく動いている。詳細が固まり次第、こちらのFacebookページで概要を発信していくそう。

「まだ知名度や大きな実績のない30歳以下の若手エンジニアや起業志望者などを募って、新しい何かを作っていく人たちのコミュニティを形成する」(木下氏)というのが狙いだ。

「将棋の羽生善治さんも、『努力をしている人のそばにいると、自然に良い影響が受けられるだろう』とおっしゃっています。僕の目標は、VCとして今後『誰も見つけていない50年何かをし続ける人』を探していくことです。そのためにコミュニティを作っていきます」(木下氏)

取材・文・撮影/伊藤健吾(編集部)

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//type.jp/et/log/article/wantedly_dev 「スタンドの代わりにデータで戦え」Wantedlyの“ジョジョジニア”育成に見る、強い開発チームの作り方 //type.jp/et/log/article/wantedly_dev Wed, 02 Dec 2015 11:54:33 +0000 (写真左から)ウォンテッドリーCEOの仲暁子さんと、CTOの川崎禎紀氏

(写真左から)ウォンテッドリーCEOの仲暁子さんと、CTOの川崎禎紀氏

企画立案から実装までのリードタイムを極限まで削り、検証・改善のサイクルを高速に回転させプロダクトに磨きをかける――。これは、イノベーティブなプロダクトを提供するスタートアップによく見られる開発スタイルだ。

しかし組織が成長段階に入った途端、こうした開発スタイルが機能不全に陥ってしまうことが往々にしてある。スキルや経験、考え方が異なる人間がチームに加わることで、創業以来続けてきたやり方が必ずしも効率的ではなくなってしまうためだ。

今年11月、ビジネスSNS『Wantedly』のOpen APIをリリースし、その前の9月には新たなプロジェクト用グループチャット『Sync(シンク)』ベータ版もリリースするなど攻めの姿勢を続けているウォンテッドリーは、2月に開発体制を大きく改めていたという。その理由は、まさに独自の開発カルチャーを維持、発展させながら、さらなるサービス拡大に取り組むためだった。

今回、同社CEOの仲暁子さんとCTOの川崎禎紀氏に、開発体制を見直した理由と創業以来どうやって開発チームを強化してきたのかを直撃したところ、出てきたのは“ジョジョジニア”の尊重と育成という聞き慣れないキーワードだった。

個を尊重するカルチャーの中で育まれた“ジョジョジニア”とは?

謎のキーワード”ジョジョジニア”について真相を明かす2人

謎のキーワード”ジョジョジニア”について、そう名付けた真相を明かす2人

「創業以来、サービス開発で大事にしてきた理念の一つに『Code wins Arguments』(コードは議論に勝る)がある」と話すのは仲さんだ。

「つまり上司にお伺いを立てたり、時間を掛けて議論をしてから機能開発をするのではなく、エンジニア自らが自分で判断してどんどん開発していってね、ということ。ウォンテッドリーは、創業からずっとこれを徹底することで、強いエンジニアリングチームを作ってきました」(仲さん)

彼らが議論より実際のサービスで仮説を検証し、改善につなげることを好むのは、その方がサービスの品質を確実かつ素早く高めることができるからだ。

「すべてGitHub上で行っている機能開発では、権限も極力現場に渡します。それもあって、ウォンテッドリーにはビジネスサイドと開発現場を取り持つディレクターがいないんです。サービス全体の方向性や戦略は役員会が責任を持って決めますが、戦術についてはエンジニアチームやエンジニア個人の判断に任せるようにしています」(仲さん)

こうした「個」を重視するカルチャーは、サービスが一定規模に成長し、絡み合うタスクを並行してこなすようなシチュエーションでも機能するのか?チームが空中分解してしまうリスクはないのか?

そう尋ねたところ出てきたのが、仲さん自身がお気に入りだという人気コミック『ジョジョの奇妙な冒険』になぞらえた“ジョジョジニア”というキーワードだ。

「現状に対する見解や採るべき打ち手について意見が衝突したらどうするか。ジョジョの登場人物たちが『スタンド』で戦うように、(ユーザーの利用結果としての)『データ』を駆使して相手に戦いを挑むんです。だからうちのエンジニアは“ジョジョジニア”(笑)。どちらの判断が正しいかはデータを見れば一目瞭然ですし、結果が明白に出るだけに対立しても感情的なわだかまりを残すこともありません」(仲さん)

こうしたカルチャーだからこそ、システムを支えるインフラのアーキテクチャーも柔軟な仕様にしているとCTOの川崎氏は続ける。

「新機能をすぐにリリースできるよう、サーバのインスタンスが簡単に作成できるのはもちろん、誰でも簡単にデプロイできる仕組みや、品質を保つためのテスト自動化もかなり進めています。また、Wantedlyの各サービスが載るアプリケーションサーバを、ユーザーに提供する価値ごとに分割しているのも、万が一システムに問題が生じた場合に全体に影響を及ぼさずに対処するため。インフラと開発カルチャーは、不可分な関係にあるのです」(川崎氏)

組織再編は、コミットすべき責任を明らかにするため

現在は『Sync』の開発をリードするCTOの川崎氏

現在は『Sync』の開発をリードしているCTOの川崎氏

こうした“ジョジョジニア”中心のカルチャーを保つのは、組織が小さいうちは比較的たやすいだろう。気心の知れた者同士であれば、たいていの問題は阿吽の呼吸で対処できるからだ。

ただし、組織規模が大きくなると、そうもいっていられなくなるのは冒頭で記した通り。そこで必要だったのが、チーム体制そのものの見直しだった。ウォンテッドリーの場合、それまでOS別(≒エンジニアの職能別)に組織していたエンジニアリングチームを、「ユーザーに提供する価値」をベースとした体制に再編したと川崎氏は説明する。

内訳は、

■個人と企業のマッチングやユーザーグロースに責任を負う【ユーザーグロースチーム】
■法人顧客の満足度を上げる【クライアントグロースチーム】
■グループチャット開発を手掛ける【Syncチーム】
■開発環境のオープン化や開発基盤の生産性向上を担う【インフラチーム】

という4チームだ。

この再編により、エンジニアが負うべき責任がより明確になったと川崎氏は強調する。

「iOS開発者、Android開発者がそれぞれ1人しかいないような状況であれば、職能でチーム分けする方が自然です。しかし人数が増える過程で、それまで起こらなかった課題が見えるようになってきました。サービス全体を良くする意識よりも、自分の担当する仕事を上手く回す意識の方が勝ってしまうという課題です」(川崎氏)

同社の開発チームは、2015年11月時点でインターンを含め約30名規模になっているという。組織が拡大していく過程で、全体最適より部分最適が横行しかねない予兆を見つけた彼らは、早期に手を打った。

「エンジニアの仕事って、特定の技術領域を極めることではないじゃないですか。法人顧客、個人ユーザーのどちらに対しても、等しく『価値を提供する』ことが仕事なんです。ただ、以前の組織体制ではそれが不明確だった。だから、自分の仕事がどの価値につながっているのか、今回の再編で改めて明確にしたのです」(仲さん)

週イチで行う1on1や「読み書きGitHub」で文化を継続発展させる

iOS、Android、Web、データ解析など、専門とするテクノロジー領域が機能別チームに分割・吸収されたことで、以前よりも組織を超えた知識共有に取り組むようになり、チーム間のつながりは強固なものになったと2人は振り返る。

事実、同社が社内の技術勉強会として行っている「速習会」は、インターンも含めさまざまな立場のエンジニアがテーマを掲げるようになり、今は週イチペースで継続されている。

「速習会」の開催内容はconnpassにも公開されている

「速習会」の開催内容はconnpassで公開されている

しかし、ウォンテッドリーの開発チームが創業時のような結束力を維持できているのは、組織再編や速習会だけが理由ではないようだ。

「自らの判断で開発を前に進めるためには、全員の意識を一つにまとめる必要があります。そのためにずっと取り組んできたのが、毎週必ず行っている1on1面談です」(川崎氏)

「1度に話す時間は15分~30分程度ですが、今後の方向性や事業戦略について話すほか、仕事の進捗、メンバーが課題に感じていることなどについても、ざっくばらんに話すようにしています。そうすることで意識のブレを最小限に抑えているんです」(仲さん)

メンバーとの1対1の面談は半期に1度、四半期に1度という会社が多い中、週に1度という高頻度で面談を行っているのは、全員に「自分が携わっているサービスにオーナーシップを持ってほしいから」と仲さんは話す。

「“ジョジョジニア”に活躍してもらうための土台づくりとも言えるのが、この1on1で行っている理念や戦略の共有です。人数が増えてくれば、さすがに負担に感じることもあります(笑)。でも、こうした取り組みがウォンテッドリー社内に『次のリーダー』を育てることにつながると信じているので、時間が惜しいとは思っていません」(仲さん)

さらに、“ジョジョジニア”たちがサービス開発をリードしていくカルチャーを維持していく意味合いも含め、全社を挙げて行っているのが、仲さんが「読み書きGitHub」と呼ぶ取り組みである。

「もともとコードを書く人間しかいない会社だったこともあって、今もエンジニア・非エンジニアを問わず、GitHubやSlackなどエンジニアが普段使い慣れているツールで日々の業務を回しているんです」(仲氏)

稟議書の提出やエンジニアへのサポート要請にもGitHubがフル活用されているため、ウォンテッドリーで働く全スタッフに必要なスキルは「読み書きそろばん」ではなく「読み書きGitHub」なのだ。

「メンバーはそれぞれ役割が違うだけで、同じ目標を目指している仲間。周辺でどんなことが行われているか理解し合うことは、しっかりしたサービスを作り、育てていく上でとても重要なことです。だから、手を変え品を変えしながら、知識や経験を共有する場を作っていきたいんです」(仲さん)

同社の行ってきた一連の取り組みは、開発カルチャーの醸成やチームビルディングに苦悩するスタートアップ関係者にとって有益な事例となるだろう。

取材・文/武田敏則(グレタケ) 撮影/竹井俊晴

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/gsacademy_kuribayashi 音楽の夢を奪われた男が絶望の淵でプログラミングと出会い、ジーズアカデミーを好成績で卒業するまで //type.jp/et/log/article/gsacademy_kuribayashi Wed, 02 Dec 2015 11:29:59 +0000 ジーズアカデミーを1期生として卒業、ジャズ・ギタリストからプログラマーへの転身を夢見る栗林緒氏

ジーズアカデミーを1期生として卒業、ジャズ・ギタリストからプログラマーへの転身を夢見る栗林緒氏

ジーズアカデミーTOKYOは、デジタルハリウッドがこの4月に開講した社会人、大学生の就職希望者、起業希望者を対象にしたエンジニア養成学校である。

約半年のカリキュラムは、プログラミングの基礎を学ぶところから始まり、最終的にはオリジナルのWebサービス・アプリを完成させて卒業となる。メンターは弊誌連載でもおなじみのえふしん氏ら、現役の一流エンジニアが務める。

11月、その1期生が卒業を迎えた。中でもトップクラスの成績で卒業した栗林緒氏は37歳。全くのプログラミング初心者で、それまではアルバイトや派遣社員として食いつなぎつつ、ジャズ・ギタリストとして身を立てる夢を追い続けてきたという。

多くの夢追い人がそうであるように、栗林氏も生活という現実を前に、道半ばにして音楽の夢をあきらめざるを得なかった。しかし夢を追うことを止めた後には、栗林氏が想像していた以上に厳しい人生が待っていた。

歩んできたキャリアや年齢がネックとなって仕事は見つからず、仮に見つかっても長続きしなかった。次第に自尊心は失われ、一時は「絶望とは何かを知り、生きる意味を失った」と言うまでの状態に陥ったという。

そんな「人生詰んだ」状態から再起し、生きることに前向きになることができたのは、「プログラミングと出会ったから」だと栗林氏は言う。プログラミングは彼に何をもたらしたのか。

夢を失った男が絶望の淵から生還するまでの軌跡を追った。

「やりたいこと」をかき集めてできた卒業制作

栗林氏の半生を振り返る前に、今回高評価を受けた彼の卒業制作作品『Spaaaace』を紹介したい(編集部注:現時点でChrome以外のブラウザでの動作確認は取れていないとのこと)。

この作品からは、彼の技術レベルの確かさだけでなく、プログラミングへのスタンス、ひいては人生へのスタンスを窺い知ることができる。

栗林氏がこの作品で挑戦したのは、距離判定複数音声チャット接続。現実世界と同様に、接続手続きを必要とせず、声が届く距離まで近づいたら自動でチャットが接続し、離れたら切断される世界観をプログラムで再現することを目指した。

栗林氏の卒業制作『Spaaaace』。表現したのは、3D空間内での距離判定複数音声チャット接続だという

栗林氏の卒業制作『Spaaaace』。3D空間内での距離判定複数音声チャット接続に挑戦した

制作期間は約2カ月。Webデザイナーとして働くかたわら、週末の空き時間を利用して開発を進めた。

全てが構想通りだったわけではなく、期間内に完成させることを優先して断念したこともある。

当初は人数制限のないチャット接続を構想したが、socket.ioによる音声mixの方法が見つからず断念し、webRTCにより最大4つのクライアント同士を直接peer to peerで接続させる仕組みを採用している。

また、3D空間内の座標情報の共有は、リアルタイムを目指して当初はクライアントから1秒間に60回サーバへと送信し、アクセス中の他の全クライアントへブロードキャスト送信していたが、複数人がアクセスした際に動作が重くなってしまう問題があった。最終的にはクライアント側からは1秒間に4回の送信に抑え、サーバからの送信を200ms毎に修正。擬似的にリアルタイムに座標が移動して見えるよう、クライアント側で処理をした。

他の卒業生の作品は何らかの課題解決に端を発したものが多かったのに対し、栗林氏の作品は「技術ありき」で作られていることにその特徴がある。

「周りの方々と比べてレベルの低い話で恐縮なのですが、発表会で話したもっともらしいストーリーは実は後付けで、本当は音声チャットをやりたい、リアルタイム通信がやりたい、サーバサイドでNode.jsを使ってみたいといった、自分が今技術的にやりたいことをかき集めて作ったのがこの作品なんです」

一つの機能を実装する過程で新たな技術への関心が芽生え、今度はその技術を使って新たな機能を実装する。その過程でまた新たな技術を知り……という繰り返しを期間ギリギリまで続けてできたのが、『Spaaaace』という作品なのだという。

技術との向き合い方は人それぞれだろうが、ビジネスの最前線で活躍するエンジニアに話を聞くと、「目的は課題解決であって、技術はそのための手段に過ぎない」という考えを是とする人と多く出会う。栗林氏のスタンスは(少なくとも現時点では)それとは異なるもののようだ。

尽きることのない技術への好奇心に突き動かされている、純粋なまでの「技術ドリブン」と言えるだろう。

夢を失った夢追い人はどうやって生きればいいのか

音楽をあきらめたことで一時は絶望を味わったと語る栗林氏

音楽をあきらめたことで一時は絶望を味わったと語る栗林氏

栗林氏がジャズ・ギタリストを志すようになったのは、大学時代の偶然の出会いがきっかけだった。

軽い気持ちで門を叩いた軽音サークルの一つ上の先輩に、プロとして活動しているギタリストがいた。ジャズ理論をロックに応用しているような人で、せっかくだからと思って教えてくれるように頼んだところから、栗林氏自身も奥深いジャズの世界にのめり込んでいった。

結局、大学は中退。ギタリストとして食べていくことを夢見て、アルバイトをしながら音楽活動を続けた。少しずつだが演奏依頼の声も掛かるようになり、27歳で本場ニューヨークに渡ってコロンビア大学のカフェテリアで演奏したりもした。ジュリアード音楽院の学生たちとも交流し、大いに刺激を受けた。

帰国後、「音楽のための時間を多く取れるように」と、あえて正社員にはならずに派遣社員として20代を過ごした。だが、経済的な事情から徐々に仕事にあてる時間が増えていき、その分当然、音楽に割ける時間は減っていく。

費やす時間が減ると、それと歩調を合わせるように音楽に対する情熱も減っていくのが感じられた。そんな折、人生観を大きく揺さぶる東日本大震災が発生。気付けば音楽よりも生活を第一に考える自分がいた。

30代も半ばに差し掛かっていた。音楽はもうあきらめて、一生を懸けてやっていく仕事に就こう。そう決心したが、一生を懸けてやろうと思えるだけの理由も覚悟もないから、結局どの仕事も長続きしなかった。

生活は多少楽になっても、音楽という夢を手放した今、自分を肯定できるものが何もないと感じていた。仕事の選択肢も徐々に限られていき、昨年9月からは3カ月間で160社に応募したが全て不採用に終わり、愕然とした。

自分にはもう価値がない。このままホームレスにでもなっていくんだろうな。人ごとのように、そんなことを考えていた。

プログラミングはどん底で出会った最高の遊び道具

ハローワークで職探しをする中で、求職者支援訓練の制度を知った。就職するための最後の道と考え、特にやりたいわけではなかったが「修了後の就職率が良い」と聞いてWebデザイナーコースを選んだ。この決断が運命を変えた。

HTML、CSSと学んでいくうちに、たった4日間だがjQueryのカリキュラムがあった。これがプログラミングとの出会いだった。それまでは静的だった世界が動きを持つことに感動を覚え、興味の種が一気にふくらみ始めた。

何より決定的だったのは、人生で初めて接したプログラマーであるjQuery学習コースの講師が、あまりに魅力的な人物に映ったことだ。

自分の要領を得ない質問も即座に頭の中で整理し、レベルに合わせて分かりやすく教えてくれる。ある種の「すり込み」を受けた栗林氏は、いつしか「自分もプログラマーになりたい」と強く思うようになっていた。

授業だけでは飽き足らず、ドットインストールのサンプルをひたすら書き写し、徐々にカスタマイズするなどして技術を習得していった。職業訓練を終え、今はWebデザイナーとして働く栗林氏だが、空き時間を使ってのプログラミング学習は完全に習慣化している。

音楽を奪われ、一度は生きる意味を失った。この先音楽と同じくらい情熱を注げるものなんて見つかるはずがないと思っていた。

そんな絶望の淵で奇跡的に出会ったプログラミングを、栗林氏は「最高の遊び道具」と表現する。

「プログラムはただの道具に過ぎないかもしれません。でも、そのポテンシャルが凄すぎる。業務システムも、ゲームも、アート作品だって作れる、あらゆる問題を解決できる凄いツールです。しかもそれが進化し続けている。今はできないことも、いずれはできるようになるかもしれないってことです。この先その過程をずっと経験していけると思ったら、夢中にならないではいられないんです」

見えない壁を自分で作っていないか?

「今の自分には少しだけ難しい課題が順序よく提示されたジーズアカデミーのカリキュラムは非常にタメになった」と栗林氏

栗林氏も卒業したエンジニア養成学校『ジーズアカデミー TOKYO

ギタリストを志していた時期、栗林氏がハマっていたのはジャズそのもの以上に、「ジャズ理論」というツールに対してだったという。

栗林氏によれば、理論を知っているのと知らないのとでは、ジャズの演奏における表現の幅は大きく変わってくる。そんな可能性を持った理論を研究し、開発していくのが何より好きだった。

これは、現在の栗林氏がプログラミングに対して示しているスタンスと酷似している。

その意味では、栗林氏はおそらくもともとプログラマーに非常に向いていたのではないだろうか。だから、プログラミングが情熱を注ぐにふさわしいツールだったとしても、同じような境遇にいる全ての人にとって「最高の遊び道具」になるとは限らない。

それを認めた上でなお、栗林氏は「自分と同じようにくすぶっている人がいるのなら、ぜひプログラミングに触れてみてほしい」と呼びかける。

栗林氏自身、以前はプログラミングは一部の天才たちのためのものだと思っていた。ジーズアカデミーで学んだのは、それが間違いだったということだ。

「一見複雑そうに見えるものも、いくつもの問題が絡み合っているからそう見えるのであって、順番さえ間違わずに学べば一つ一つの難易度はそれほど高くない」

栗林氏は実感を込めて言う。

「できるはずがない」という見えない壁を自ら作り出していた。ジーズアカデミーでの数カ月は、そうした見えない壁をすごい勢いで何枚も突破する毎日だった。こうした経験ができたからこそ、今後より深く足を踏み入れることでぶつかるであろうさらなる壁も、必ず乗り越えられると信じられる心境という。

一般的に、手段の目的化はネガティブな文脈で語られるものだ。しかし、確たる目的もないまま、覚えたてのスキルを誇るようにただ歩き回る赤ん坊以上に、幸せそうに歩く生き物がいるだろうか。そして大人はいつも、そうした子供たちの振る舞いにはたと気付かされる。

「技術ドリブン」でなければたどり着かない未来もあるような気がするのだ。

取材・文・撮影/鈴木陸夫(編集部)

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/fms_fujifilm 保守対応の常識を変え7年連続で社内表彰された男が語る「技術より大切な3つのこと」~富士フイルム メディカル敏腕FSEの仕事術 //type.jp/et/log/article/fms_fujifilm Tue, 01 Dec 2015 09:31:45 +0000 富士フイルム メディカル・静岡サービスセンターでセンター長を務める岡本康弘氏

富士フイルム メディカル・静岡サービスセンターでセンター長を務める岡本康弘氏

法人向けに自社製品を提供する企業にとって、ビジネスの生命線を握るのが導入後の保守・運用だ。顧客との信頼関係を築き、長期間お付き合いをしていく中で買い替え提案などを行うことは、事業を継続的に発展させる上で新規の導入以上に重要な仕事になる。

だが、保守やメンテナンス業務はともすると顧客要望に応える「御用聞き」をこなすので精一杯になってしまい、能動的に成果を挙げるのが難しい仕事でもある。

そんな保守・運用作業を、受け身ではなく攻めの姿勢で行うことで、目に見える成果を出し続けてきたエンジニアがいる。2002年に富士フイルム メディカルに転職し、今年で在籍14年目となる岡本康弘氏だ。

岡本氏は、同社が病院などの医療機関向けに提供している製品群のフィールドサービスエンジニア(以下、FSE)として埼玉、群馬、静岡と各地域で実績を上げ、現在は静岡サービスセンターのセンター長を務めている。「目に見える成果」とは、入社1年目から保守契約件数で全国トップクラスの成績を上げ、以後7年連続で社内表彰を受けたという実績だ。上記のように受け身になりがちな業務内容にもかかわらず、である。

彼はどんな仕事術で「攻めの保守・運用」を実現してきたのか? そこには、旧来の概念をくつがえすような仕事術がいくつか隠されていた。

専門的な技術知識がない転職直後からやってきた3つの取り組み

富士フイルムグループ内での主力事業に成長している富士フイルム メディカル

富士フイルムグループ内の主力事業に成長している富士フイルム メディカル

よく知られていることだが、富士フイルムグループが医療機器分野に注力し出した背景には、かつて銀塩写真用フィルム開発で培った技術力をX線フィルムの自動現像機などにも応用し、V字回復を期すという狙いがあった。

岡本氏が転職する2002年以前はまだX線フィルムの販売が中心で、システムの保守・メンテナンスにはそれほど注力していなかったという。

が、その後間もなくしてグループ内の主力に成長した富士フイルム メディカルは、デジタル化と製品の多角化を強力に推し進める。その過程で、FSEには製品導入先の医療機関に保守契約を進言し、より継続的なシステムサポートを実現することが求められるようになっていく。

岡本氏は、転職後すぐに活躍できた裏側に、こうしたビジネスモデルの変化があったと語る。

「当時の私の主な役割は、レントゲンシステムを中心とした自社製品のアフターメンテナンス全般でした。転職組ゆえ、製品知識に関しては社内の諸先輩方より劣っていましたが、お客さまが困っていることを丁寧に拾い上げながらサポートしていくのは私にもすぐできることだったのです」

一般家電と同じように、医療機器も導入(購入)から一定期間は無償の保守・メンテナンスに応じるケースが多い。富士フイルム メディカルのFSEのミッションは、「その後」を見据えた動きができるかどうかになる。具体的には、長期間の保守契約を結び、買い換え時にもまた同社の最新機器を導入してもらう「生涯顧客」を増やすことだ。

そのために岡本氏が力を入れてきたことをまとめると、次の3点になるという。

【1】 顧客の「期待度」に合わせたコミュニケーション
【2】 各種機器を「最も使う人」を見極める
【3】 関係部署のスタッフを積極的に巻き込むこと

有事対応よりも大切なのは「凡事徹底」

何度か転職の経験もある岡本氏が、FSEの仕事でも応用・活用している仕事術とは

何度か転職経験がある岡本氏が、FSEの仕事にも応用している仕事術とは

順を追って、それぞれの取り組みを紐解いていこう。

【1】 顧客の「期待度」に合わせたコミュニケーション

一般的に、製品導入後の保守・メンテナンスでは「有事対応」が優先されがちだ。医療機器は人命にかかわるモノも多く、不具合や故障が起こった際にどれだけ素早く対応するかが仕事の肝とされる。

だが、FSEがアフターサービスを提供する医療機関は、個人の開業医も含めると膨大な数になる。不具合が発生してから対応するのでは、時間がどれだけあっても足りなくなってしまう。

そこで岡本氏は、製品導入直後の機能説明や導入段階での保守契約提案など、「凡事」のコミュニケーションを積極的に行ってきた。顧客の期待度が一番高まっている時、すなわち製品導入直後こそ手厚くサポートすることで、「予防保守」につながるという考えからだ

「お客さまに当社製品をより良くご利用いただき、効率的に診療業務を進めていただく上でも、導入段階やその直後のコミュニケーションは必要不可欠なものだと考えています」

FSEは多忙な医師・看護師を相手にする仕事ゆえ、長時間かけてコミュニケーションを取ることが難しい場合もある。そういった際は、製品導入先に“診断ノート”を置くなどして使い方の疑問を書き込んでもらうように工夫しながら、ユーザーの声を拾い上げているそう。

こうした能動的なサポートが、信頼を獲得する第一歩になるわけだ。

【2】 各種機器を「最も使う人」を見極める

もう一つ岡本氏が日々実践してきたのが、「誰が導入した機器を使うのか?」をつぶさに観察すること。

高価な医療システムを導入する際、購入を「決める」のは院長であったりオーナーであったりするものの、実際の診療現場で「使う」のは専任の技師や看護師になることが多い。

そこで彼ら・彼女らを見つけ出して密にコミュニケーションを取り、使い方やメンテナンスについてのサポートを続けることで、長期的な保守契約を獲得することにつなげていった。

【3】 関係部署のスタッフを積極的に巻き込むこと

そして、【1】や【2】を前提に、不具合や故障が発生した際なるべく早く解決するのに必要なのが、この巻き込み力になる。

今は一口に医療システムといっても、画像処理技術から超音波技術、ネットワーク、クラウド、データベースの技術など、関連するテクノロジーは多岐にわたる。それらすべてを1人のFSEが事細かにキャッチアップするのは、現実的に難しい。だからこそ、保守対応時は設計・開発を含めた関連部署との連携が必要不可欠になるという。

また、同社のFSEは、顧客の声を各種製品の設計・開発部署にフィードバックし、品質向上や新機能開発にも貢献することが求められており、この力は本質的な“攻めの保守”を行う重要な要素となっている。

「ただし、私としては大仰なことはやってきたつもりはありません。基本的なことを、丁寧にやる。これが一番だと思っています」

例えば、頻繁に行われるという入社後の製品研修で講師役を務めた社員に質問をし、説明をしてもらったらキチンと感謝を伝えて顔を覚えてもらう。修理の際に設計部署のエンジニアから助言をもらった際には、必ず最後は岡本氏が送る御礼メールでやり取りを終えるようにする。

そんな小さな気配りの積み重ねが、岡本氏が転職直後から周囲の力を借りることのできた礎となっている。

「提案型の保守対応」ができれば、ワークライフバランスも改善できる

現在は複数のFSEのリーダーとして、自身の経験をチームに還元している

現在はFSEのリーダーとして、自身の経験をチームに還元している

ちなみに、【1】や【2】で挙げた、医療機器を使う側の気持ちを的確に汲み取るやり方には、前職での経験が活きていると岡本氏は話す。

「富士フイルム メディカルに入社する前は、ある工場で施設管理を担当していました。その時は工場の各種機器をメンテナンスしてもらう側にいたわけですが、故障発生時に安心して作業をお任せできたのは、『黙々と作業して1時間で修理してくれるサービスマン』ではなく、『現状を都度フィードバックしながら1時間半掛けて修理してくれるサービスマン』だったのです」

なぜ、修理に多少長い時間が掛かっても「現状を都度フィードバックしながら修理してくれるサービスマン」の方が信頼できたのか。当時の心境を聞くと、こんな答えが返ってきた。

「どこに故障の原因があって、あと何分で直るのか……といった情報を逐一報告してくれる担当者だと、こちら側は機器が稼働していない間に作業フローを変更するなど、さまざまな手を打つことができるからです。FSEの仕事も同じで、医師や看護師の方々が業務を進める上で困ることは何か?を常に確認し続けながら、先手を打って解決に向けたご提案をしていくことが、信頼につながるのだと思います」

現在は関係会社を含め15人のメンバーを統括しながら、自身が貫いてきたスタイルを若い世代へ伝える立場になっている岡本氏。その際によく話しているのが、「作業員になるのではなく、提案型のFSEとしてプロフェッショナルなサービスマンを目指せ」ということ。

「不具合や故障の連絡を受けてから対応するだけの『作業員』だと、お叱りを受けることも増えるし、目先の対応に忙殺されてしまいます。でも、凡時徹底で前もって的確なコミュニケーションを取るようにしていれば、緊急対応だけに追われることは減り、保守契約のご提案にもご納得いただける場合が多くなるのです」

20代前半で結婚し、家庭を持った岡本氏は、プライベートの時間を増やすためにも「プロの仕事」を追求して自分の裁量で働ける立場を目指していたと語る。結果的に仕事の効率化に成功し、転職後から今までそれほど残業をせずに業務を回すことができていると言う。従来のやり方を見直し、結果を出していくことで、理想のワークライフバランスまで手に入れた格好だ。

その仕事術は、富士フイルム メディカル社内の模範としてだけでなく、広く保守・運用業務に携わるエンジニアの参考になるだろう。

取材・文/浦野孝嗣 撮影/赤松洋太

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/careergohan_2 12/17、吉岡弘隆さん他4名のゲストをお招きして第2回『キャリアごはん』を開催します【2016年の「技術と働き方」先読みワークショップ】 //type.jp/et/log/article/careergohan_2 Fri, 27 Nov 2015 15:09:29 +0000

普段は意識することが少ない「キャリア」について、ごはんを食べるという日常行為と共に考える場を作ろう。そんな趣旨で、弊誌と「今よりもっと満足できる仕事」との出会いを応援する姉妹サイト『@type』が立ち上げたワークショップ型イベント『キャリアごはん』の第2回を、今年12月17日に東京・代官山で行うことにしました。

エンジニア同士が交流し、ごはんと悩みをシェアしながら仕事人生の次の一手を探るべく、「ワークショップ」にこだわったイベントにした理由は、初回開催時の告知記事にまとめているのでぜひご一読いただければ幸いです。

>> 僕らはなぜ『キャリアごはん』をやるのか。なぜ、中島聡さんと各企業の現場リーダーを初回ゲストにお招きしたのか

今年9月に開催した第1回イベントは、米シアトルから中島聡さんをお招きしたほか、大小さまざまなテクノロジー企業で現場リーダーを務める方々にゲスト参加をしていただき、【Web・アプリサービス「次のデファクト」を生む現場リーダーになるには何が必要!?】をテーマに開催しました。

年末開催となる今回は、テーマを

【2016年の「技術と働き方」先読みワークショップ】

に設定し、師走恒例の「来年予測」的な内容を踏まえた企画にしてみました。

>> 詳しい情報と応募は、こちらのconnpassページにて

ゲストは経験豊富&IoTやスマホ開発の最新トレンドを知る方々

第2回『キャリアごはん』ゲストの方々

第2回『キャリアごはん』ゲストの方々

ただ、単なるトレンド予測ならWeb上でやればよいことだったりもしますので、第2回『キャリアごはん』では「技術と働き方の未来予測」を入り口に

「エンジニアとして、ずっと面白い開発≒新規性のある開発に取り組み続けられる人になるにはどうすればいいのか?」

について、ゲスト・参加者の皆さんと一緒に考えていくような構成にしています。そこで第2回ゲストとして、以下の方々に参加のご依頼をしています。

【トークゲスト】
■ 楽天株式会社 技術理事 吉岡弘隆さん
■ 株式会社トレタ CTO 最高技術責任者 増井 雄一郎さん
■ 株式会社ソラコム Cofounder&CTO 安川健太さん
■ フリーランスiOSエンジニア 堤 修一さん

皆さんのキャリアについては、弊誌の過去記事などをご参照いただければと思います(お名前部分のリンクがそれです)。

なぜ、この4名をお招きしたのか。それは、吉岡さんのようなIT業界の大ベテランから、IoT、スマホアプリ開発などの最前線を走る方々に「技術の今後」について私見を伺いつつ、どうすれば“旬な開発”をやり続けられるのかを探っていく場にしたいと考えたからです。

それぞれが国内外の大企業やスタートアップ、フリーランスとさまざまな働き方を実践してきた方たちなので、キャリアメイクの面でも多様な切り口で議論をしていただけると考えています。当日は、

■ゲストの方々によるパネルディスカッション
■参加者の方々同士のワークショップ

という2部構成で運営する予定です。

>> 詳しい情報と応募は、こちらのconnpassページにて

イベント当日は以下のテーマでワークショップを開催予定

【Web・アプリサービス「次のデファクト」を生む現場リーダーになるには?】をテーマに開催した第1回『キャリアごはん』

【Web・アプリサービス「次のデファクト」を生む現場リーダーになるには?】をテーマに開催した第1回『キャリアごはん』

ワークショップでは、現時点の想定として

【1】技術・ビジネストレンドについて……最新技術をキャッチアップし続けるには?
【2】キャリア・働き方について……能動的に仕事を選べる人になるには?
【3】組織・チームづくりについて……チームで新規を生むための方法論とは?

などをテーマにグループ分けをして、ゲストの方々にもご参加いただきながら議論をしていきたいと考えています。

ただ、当日はご参加いただく皆さんから「ワークショップで話したいテーマ」を募り、柔軟に議題を変えていく予定ですので、「ゲストエンジニアにこんな話を聞きたい」、「他の参加者同士でこんな議題について話してみたい」というネタがありましたら、ぜひ会場でお寄せいただけると幸いです(テーマ投稿用のポストイットもご用意します)。

会場となるワークスペース『GOBLIN.代官山店』の大きさを考え、今回は80名限定のイベントとなります(応募多数の場合は先着順とさせていただきます)。

ご興味を持っていただいた方は、年忘れのちょっと前に改めてご自身の「仕事とキャリアの棚おろし」をする感覚で、ぜひご応募ください!

>> 詳しい情報と応募は、こちらのconnpassページにて

開催概要

【開催日時】2015年12月17日(木)19:30~22:00(19:00~ 受付開始)
※当日はビュッフェ形式のお食事をご用意しております。

【開催場所】『GOBLIN. 代官山店』(東京都渋谷区恵比寿西1-33-18 コート代官山 B1F)

【持ち物】お名刺1枚(当日会場で名札代わりにご利用いただきます)

【参加費】1500円(入場時支払い)
※領収書が必要な方はお申込受付時にお知らせ下さい。

【参加定員数】80名(先着順)

【参加対象者】
・最新技術・ビジネストレンドを勉強したいプログラマー
・今後のキャリア・働き方を模索中の20代~30代エンジニア
・新規開発における組織づくり・人材育成に興味のある開発リーダーなど
(採用担当の方のご参加は、ご遠慮ください)

【応募締め切り】
2015年12月15日(火)18:00
※お申し込みが多数あった場合は、先着順とさせていただきます。

>> 詳しい情報と応募は、こちらのconnpassページにて

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/mobcast 話題のゲームアプリ『【18】』を生んだ、モブキャスト「6つの仕込み」 //type.jp/et/log/article/mobcast Fri, 27 Nov 2015 07:36:30 +0000

(写真左から)モブキャスト取締役CCOの福元健之氏と、人事本部長の井上貴弥氏

『モバプロ』、『モバサカ』といったソーシャルゲームのヒットで知られるモブキャストが、ネイティブアプリへと主戦場を移そうとしている。直近では、テレビCMも始まったパズルゲーム『【18】(エイティーン) キミト ツナガル パズル』(以下、【18】)が好調だ。

ミステリアスパズルRPG 『【18】 キミト ツナガル パズル』

ミステリアスパズルRPG 『【18】 キミト ツナガル パズル

この『【18】』は、モブキャストとして初めてネイティブゲームへの大型投資を敢行したタイトル。企画立案時からプロデューサーを務める取締役CCOの福元健之氏は、「これまでに知見のないネイティブゲーム、かつ競合の多いパズルゲームということでチャレンジの要素は強かったが、絶対に外せないタイトルだった」と当時を振り返る。

栄枯盛衰の速いゲーム業界で生き残り、世界70億人にゲームを届けられる体制づくりとして、モブキャストでは2013年末ごろから「ゲーム開発力」と「人事評価制度」の両面でそれぞれ3つの大きな改革を準備してきた。『【18】』の開発は、その最初の運用例ということになるという。

中長期的視点に立ったモブキャストの打ち手とはどういったものなのか。順に見ていこう。

開発力向上のための3つの施策

まず、開発力向上の取り組みとしては、3つのモブキャスト独自の概念が挙げられるという。新しいゲームの企画は、「SVS」、「MSGD」、「D3」という概念に基づいて作られている。

これらは、「ゲーム開発にヒットの法則はないけれど、失敗を減らす法則はあるはず」(福元氏)という考えの下、その法則の中でヒット率を高めるために設けた基準だという。

【1】SVS(social victory space)

『【18】』のみならず、界隈で期待の高まっている新ルミネスの開発もプロデュースしている福元氏

SVSとは、負けず嫌いなユーザーがゲームに勝ってライバルに「ほめられたい」、「尊敬されたい」という欲求に直接的に応えるゲームやコミュニティを提供するという、同社独自のコンセプトだ。

モブキャストが昨年3月にリリースした新しいゲームプラットフォームサービスにも同じ名が付いている。各ゲームでの勝敗を元にユーザー同士の人間関係を表現し、“負けず嫌いの30代男性”をターゲットに、新たな価値を提供することを目指したものだ。

ユーザーに対してプラットフォームを提供するだけでなく、開発においても「SVSの文脈に沿ったゲーム設計になっているかどうか」が基準として明文化された。

「これまでモブキャストが作ってヒットしてきたゲームは結果的に、勝つ喜び、名誉を得る喜びに訴えかける作りになっていた。そういうゲーム設計が得意な企業であるということだと考えて、その方向性を明確にしました」(福元氏)

【2】MSGD(Mobcast Style Game Development)

大ヒット作が1本出れば企業の業績は急浮上、逆に出なければあっという間に危機に瀕するとされるのがゲーム業界。必ずヒット作が出る保証はどこにもなく、“打率”は3割程度で良しとされる世界でもある。

であれば、打席数を多くしようという発想から生まれたのが、短期開発を是とする2つ目の施策「MSGD」だ。

「ゲームの市場は1年も経てば大きく変わってしまう。だが、それが半年だったらどうか。同じモノを作るのだったら1年かけるより半年の方が絶対にいい。そのため、大人数を投入してでも短期で完成までこぎ着けるというものです」(福元氏)

具体的には、

・タイトルの枠を越えて使い回せる機能はモジュール化しておく
・開発期間を延ばす原因になる仕様変更は一切許さず、企画段階で決め切る

などの決め事を徹底している。

【3】D3

上記した「開発途中の仕様変更NG」といった決め事は、実際に高品質のゲームを作り込んでいく上で足枷になってしまう感もあるが、それを防ぐ意味でも設定されているのがこの「D3」になる。

D3の「D」はデザインの頭文字。モブキャストが大切にしている「ゲーム」、「SVS」、「サウンド」の3つのデザインを意味しており、それぞれ基準に達しているかどうかで企画を評価する。

中でも特徴的なのは、サウンドデザインに対する考え方で、例えば『【18】』では、一つのステージを進んでいくに従って楽器の数が増えていき、クライマックスに差し掛かるところでボーカルまでがそろって曲も最高潮に達するというもの。

「モブキャストのサウンドデザインへのこだわりは、良い音楽を使うというだけではなく、音楽でもユーザーを驚かせる工夫をするということを意味しています」(福元氏)

実際に、『【18】』は音楽への評価も高く、ユーザーからはサウンドトラックのリリースを望む声も多く届いているという。

人事評価・採用に関する3つの施策

こうした開発体制を支えるために、モブキャストでは人事評価制度や採用方法に関しても大きな変更を行っている。1つ1つのタイトル開発に多くの人員とお金が投じられる昨今、チーム力の向上は必須といえる課題だ。

以下に紹介する3つの施策は、チーム力を高めると同時に、際立ったエンジニア・クリエイターの能力も正当に評価することで、「組織と個」の両面で世界基準のゲーム開発をしていくための土台づくりとなっている。

今後は中途採用でもこれらの施策を徹底していくという。

【4】「モブキャストらしさ」を評価

現在『【18】』の開発に従事している約30人の開発メンバーのうち、7割がこの1年以内に入社している。やり方によっては、会社としての方向性がブレかねない急拡大といえるだろう。

そこで、能力評価と同じ重みづけで、会社の価値観と一致しているかどうかや個人としての仕事へのスタンスを評価するよう、評価基準を改めた。

モブキャストが掲げる「社員三箇条」

モブキャストが掲げる「社員三箇条」

同社が掲げる「社員三箇条」をベースに、ユーザーに対するおもてなしの精神や、チームのメンバーに思いやりをもって仕事に取り組めているか、はては挨拶ができるかどうか、時間通りに出社しているかといったことまでが重要な評価対象になる。

これに伴い、新入社員だけでなく、中途入社やベテラン社員も含めて、挨拶の仕方やお礼の仕方といった”モブキャストらしさ”の研修を課すようにした。

こうした施策は、「1人のスーパークリエイターに依存するよりも、誰が欠けてもチームとしてまずまず良いゲームが作れる体制の方が良い」(福元氏)と考えるモブキャストの姿勢の表れだ。

【5】プロ契約制度の導入

井上氏によれば、新人事評価制度はその人を市場価値に近い形で評価できるよう、会社の業績とは連動させないものになっているという

井上氏によれば、新人事評価制度ではその人を市場価値に近い形で評価できるよう、会社の業績とは連動させないものになっているという

とはいえ、前述のように「良いプロダクト」を作るためには優秀な人材を幅広く採用したいというのも本音。そこでこの11月から、新たにプロ契約制度を設けた。

新たな制度の下では、週2日勤務や完全な成果報酬など、その人に合った条件での契約が可能になる。

人事本部長の井上貴弥氏は、新制度のメリットを「当然だが優秀な人は引く手数多。従来の採用手法だけだと力を借りることができなかったトップクリエイターにも、新たな制度であれば参画してもらえる可能性が生まれる」と説明する。

【6】業界最高水準の給与に向けて

「優秀な人が働く場所を決めるのは、必ずしも報酬だけではないでしょう。やりがい、誇り、その仕事が持つ意義かもしれない。ただ、それに甘えずに正当な利益還元をしたいとも思っています」と井上氏。モブキャストでは業界最高水準の給与を公言し、それを実現するという。

従来の制度では、個人として成果を出していても会社の業績が悪いと給与を上げることが難しかった。新制度ではその人を市場価値に近い形で評価できるよう、会社の業績とは連動させず、独立して評価するという。

正当な評価を下すための仕組みとして、従来は上長が担っていたメンバーの評価を、プログラマーの評価はプログラマー職のトップが行うというように、同じ職種の人が行う形に改めた。

基準はあくまで基準。制度のブラッシュアップは今後も続く

どちらの制度も今年が運用初年度。優秀な人を公平かつ公正に評価すべく、今後も継続的にブラッシュアップしていくという。

福元氏は、「『【18】』の開発では細々とした失敗がたくさんあった。開発の際の優先順位をどう考えるかなど、こうした失敗を通じて得た学びも多い1年だったと思う」と振り返る。

実際のところ、開発面で上記のような基準を設けることの意義は、「誰がやっても同様のモノが作れる体制づくり」にあるのと同時に、基準があって初めて、良い悪いを判断したり、そこをあえて外したりといった動きが取りやすくなることにもある。

モブキャストではすでに、グローバル向けタイトルであるスマホ版『ルミネス』のプロジェクトが進行中だ。福元氏は「『【18】』で得た学びをどう活かすかが、モブキャストの今後を左右することになる」と気を引き締めている。

取材/伊藤健吾 文/鈴木陸夫(ともに編集部) 撮影/小林 正

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/pepabo_colorme 10年続くサービスは技術的負債をどう解決してきたのか?『カラーミーショップ』システムと組織改善の取り組み //type.jp/et/log/article/pepabo_colorme Thu, 26 Nov 2015 19:02:25 +0000 10周年を迎えた『カラーミーショップ』のシステム改善の取り組みなどについて語ったGMOペパボEC事業部の開発陣

10周年を迎えた『カラーミーショップ』のシステム改善の取り組みなどについて、テックカンファレンスで語ったGMOペパボEC事業部の開発陣

Webサービスを長く続けていると、いわゆる技術的負債から開発スピードが上がらなくなる局面を迎える。システム面のみならず、組織体制もフェーズに応じて適切な形に刷新していく必要があるだろう。少なくない開発チームがこうした問題に頭を悩ませている。

GMOペパボが運営するネットショップ開業・運用支援サービスの『カラーミーショップ』も節目の10年を迎え、こうした“痛み”と直面したという。国内導入店舗数ナンバーワンの老舗ECサービスは、どのようにして危機を乗り越えたのか。

11月12日に開催された同社のテックカンファレンスは、まさにこうしたテーマを扱うものだった。当日の模様をレポートする。

カート機能を切り離し、マイクロサービス化へ舵切り

10年サービスを運営する間には、顧客からのさまざまなニーズに応えるために機能がどんどん増える。機能が複雑化すれば開発スピードの減速にもつながる。組織が大きくなって分業も進むだろうから、仕様全体を把握できている人がいない状況にもなる。

そこで『カラーミーショップ』では、PHPのモノリシックな構成だった従来のシステムから、決済部分を担うショッピングカート機能を切り離し、AngularとRuby on Railsで新たに作り直すプロジェクトに踏み切った。将来的なマイクロサービス化を視野に入れた施策だった。

機能を切り離したことで、全体のシステムと新たなカートシステムとの間で、ユーザーのログイン情報を安全に受け渡しする必要が生じることになった。そこで活用したのが、JWT(JSON Web Token)と呼ばれるJSONの署名、暗号化の技術だ。

JWTを使った簡易SSOで徐々にシステムをリニューアルしている話 from Kazuyoshi Tsuchiya

発表者の@tsuchikazu氏によれば、JWTはOpenID ConnectなどのID連携周りで使われることの多い技術。JWTを使えば、複数のシステムが密結合になることなく、それでいて改ざんなどを防いで安全に情報の受け渡しができるという。

国内ではまだあまり事例がないが、ログイン以外にも活用の可能性はあり、引き続き注目したい技術とのことだった。

新しいショッピングカートシステムの開発にあたっては、デザインも一新された。担当したデザイナーの@shikakun氏は、新たなカートデザインに関する思いと取り組みを詩にのせて発表した。

ウェブサービスを開発するために詩を書いた話 from shika kun

従来はバラバラだったボタンサイズや色に関するルールを統一。理想のカート像を動画にして表現することで、チームメンバーの合意を取りながら作業を進めた。あらかじめカートのCSSフレームワークを作り、考えられる要素を全てスタイルシートに書き出しておくことで属人性をなくし、今後も継続的に改善できる体制を整えた。

今回のシステム切り離しで、決済までの画面遷移は従来の6画面から4画面まで減り、コンバージョン率は4%改善したという。

クラウド化に合わせインフラをイミュータブルに刷新

『カラーミーショップ』と並ぶペパボEC事業部のショッピングモールサービス『カラメル』も、2006年ローンチと歴史が長い。OSやPHPのバージョンは古いまま。サーバの構成管理はほとんど行われておらず、「秘伝の構築手順があればいい方という状態だった」(@yano3氏)。

そのため急激な負荷や規模拡大に対応できず、バージョンが古いために機能的な制限を受けたり、脆弱性対応のパッチが出なかったりと、恒常的に問題を抱えていた。

ペパボでは今年初頭に、各サービスのサーバをオンプレミスからプライベートクラウド「Nyah」へと移行するよう号令がかけられた。『カラメル』はこのタイミングで、インフラアーキテクチャの刷新に挑戦することになった。

こうしたアーキテクチャ設計においては安定性を重視して技術選定をしがちだが、自社の他サービスでの実績があったこともあり、最新のバージョンを採用。管理し切れなくなって数年後に同じ状況に陥らないよう、常に最新に追従しやすい構成を心掛けたという。

さらに、当初は予定していなかったが、最終的にはイミュータブルな構成にも挑戦した。こうした取り組みの結果、コマンド1発でWebサーバの構築も可能になり、インフラ担当者に依存しない体制が出来上がった。

今後はさらなる効率化に取り組むとともに、他サービスへの横展開も視野に入れているという。yano3氏は「同じ問題が生じないためには、継続して運用していくことも当然大事になる」と強調していた。

ママさんエンジニアが担う「普通に動く」ための運用と改善

ECサイトには何より「普通に」動くことが求められる。いかに仕様が複雑化しようとも、万が一にもシステムが動作しなくなるということは許されない。

それでも日々、ユーザー(ここで言うユーザーはショップオーナーはもちろん、購入者や購入を検討している人も含まれる)からは数々の問い合わせが寄せられる。こうした問い合わせの意図を素早く把握して問題を解決し、アラートが出れば場所と原因を特定して対応し、さらにはこうした問題が起こらないよう先手を打つ。

それら全ての泥臭い役割を担っているのが、2004年にペパボ初の女性エンジニアとして入社したayamiさんだ。

お客様の困ったを解決する運用のお話 from ayamii

ayamiさんは4歳の女児と5歳の男児を持つ2児の母で、勤務時間は他の社員とは異なる朝8時から17時まで。保育園への迎えがあるため残業することはできず、「限られた時間で最大限の価値を出すこと」を常に意識しながら仕事をしているという。

また、仮に自分が欠けてもシステムが「普通に」動くよう、自分がやったことは手順を添えてメモに残すなど、情報共有には気を使っている。さらには2度の産休を経ても最前線で活躍するayamiさんは「ママさんエンジニア」として社内のロールモデルのような存在にもなっており、決定までのプロセスや調べ方のコツなど、新人教育にも日々奮闘中という。

目的別のチーム制を敷き、スクラム開発で課題にあたる

開発スピードを維持し、継続的に新機能開発と不具合対応にあたっていくためには、システムの改善とともに組織の見直しも必要になってくる。ペパボでは個人の技術力向上のために技術基盤チームを設け、業界でも名の知れたエンジニアが新技術を社内で広めるなどして、メンバーの技術底上げを図っている。

一方では組織の拡大も必要になるが、ただ数を増やしただけではコミュニケーションコストの問題などから機能しない。大人数で開発するには大人数で開発するのに適した体制を作る必要がある。こうした組織面の取り組みについて@hikalin8686氏が発表した。

10年続くサービスでネクスト10年を戦うための体制作り from Hikaru Watanabe

ペパボでは役割ごとのチーム制を敷いており、不具合対応、新機能開発、売り上げ向上のための施策など、多岐にわたる役割を場当たり的に振るのではなく、チームごとに役割をはっきりさせて、単一の目的で動く体制にしているという。

チームはおおよそ5、6人のスクラムで開発を進める。スクラムのメリットは意思決定が早く情報共有もしやすいなどさまざまあるが、@hikalin8686氏は「タスクの見える化」と「チーム感の醸成」に大きなメリットを感じていると語った。

@hikalin8686氏は「10年もサービスを続けているとシステム的にも人的にも課題が出るのは自然の摂理。それを放置していたのでは開発スピードは落ちてしまう。改善するためには日々運用しているだけでなく、将来への投資という考え方が大事なのではないか」と総括していた。

取材・文/鈴木陸夫(編集部) 画像提供/GMOペパボ

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/finc-ed Railsを教える前にPHP研修をはさむ理由は?FiNCの「エンジニア育成インターン」が興味深い //type.jp/et/log/article/finc-ed Thu, 26 Nov 2015 10:15:49 +0000 (写真左から)FiNCの取締役CTO南野充則氏と、エンジニア大谷真史氏

(写真左から)FiNCの取締役CTO南野充則氏と、エンジニア大谷真史氏

Webサービス・アプリ開発の現場で、プログラマー不足が大きな課題になって久しい。

子どもや学生を対象としたプログラミングスクールなどが注目を集める中で、2012年4月創業のヘルスケアベンチャー、FiNC(フィンク)が長期インターンの一環として「最難関エンジニアインターン育成プログラム」を実施している。

これは、事前選考で厳選された少人数のプログラミング未経験者を対象に、Ruby on Railsを中心に開発スキルを身に付けてもらうというもの。45日間でWebアプリ制作を手掛ける実践的なスキルを身に付けてもらうことを目的としている。

今年は3期目となるインターン8人が研修を受けており、そのほとんどが文系出身の学生だそう。

彼らがわずか1カ月半でRuby on Railsを使ったWebアプリ開発ができるようになるまで育成するというプログラムの大きな特徴は、インターン経験者たちがカリキュラムを作成することと、研修内容が前半・後半の2部構成で成り立っていることだ。

このプログラムを主導する取締役CTOの南野充則氏と、インターン2期生として現在メンターも務めているエンジニア大谷真史氏に話を聞いた。

プログラムを学ぶ以上に「Webの仕組み」を知ることが肝心

Wantedlyに掲載している「エンジニアインターン育成プログラム」の募集ページ

Wantedlyに掲載している「エンジニアインターン育成プログラム」の募集ページ

まずは、同社が展開するインターン育成プログラムの概要を紹介しよう。

■研修第一部の内容

・Linux -Linuxコマンドの使い方を学ぶ
・vim -コーディング速度向上
・PHP(基礎) -一般的なアルゴリズム問題を解きながら学習
・MySQL -SQL文, DB概念を学ぶ
・RDB -DB設計を学ぶ
・HTML/CSS -基礎コーディングを学ぶ
・Web -Web/HTTPの仕組みを学ぶ
・PHP(応用) -MySQL利用, HTTP埋め込み, session
・Security -XSS, SQL injection, CSRF実装を学ぶ

■研修第二部の内容

・Git -Gitコマンドを学ぶ
・GitHub -GitHubを使ったコーディングを学ぶ
・Ruby on Rails -MVC, scaffold, migration, routingなどを学ぶ
・Ruby -アルゴリズム実装
・オブジェクト指向 -オブジェクト指向を理解する
・Rails test(scaffold) -実際に「掲示板」を作成してみる
・Rails test(generate) -掲示板作成
・Rails application作成test -最終的に任意のアプリケーション作成に取り組む

■実務参加に必要な追加研修

・GitHub
・RSpec
・DB応用
・Ruby/Railsでよく使うメソッド

Linuxコマンドに始まってPHPの基礎、MySQLやDB設計といったバックエンドに関する知識をベースに、具体的なプログラミングスキルを身に付けていく内容となっている。

インターン生には1期・2期の経験者がメンターとして付き、質問や疑問はインターンとメンターとの間で解決していく流れになっているが、さらに高度な課題は現役の社員が対応するという。

「前半が基礎的な知識を学ぶプロセスで、後半がWebアプリを作るというゴールへ向けてより実践的なプログラミングスキルに挑戦していく内容になっています。このカリキュラムを通して、インターンが自分からアイデアを出して新しいWebアプリづくりを手掛けてほしいという思いを反映しています」(大谷氏)

ここで注目したいのが、Ruby on Railsでのアプリ開発を習得する前段階で、PHPでのプログラミングを学習させる点だ。その理由を、南野氏はこう語る。

「インターン1期生の時にはPHPを学ぶ内容が入っていたのですが、2期ではあえて入れませんでした。その両方を経て、インターンたちのその後の成長を見てみると、PHPで基礎的なWebプログラミングを学んだインターン生の方が実際の開発現場に早くなじむというのが分かりました。そこで、カリキュラムを前半・後半に分け、Railsを学ぶ前にPHPでのプログラミングが身に付くような内容にしたのです」(南野氏)

つまり、ただ「プログラムを書くことのできる人」を輩出するのではなく、自ら新しいWebアプリを創造していけるプログラマーを育成するには、Webの仕組み自体を理解してからの方が効果的ということだろう。

プログラミング教育で「つまずきやすい3つの壁」をどう乗り越えるか

メンターは付くものの、「できるだけ独学を推奨している」(南野氏)という理由とは

メンターは付くものの、「できるだけ独学を推奨している」(南野氏)という理由とは

この特徴以外にも、育成に失敗しないためには「学習ペースを決めてメンターがサポートしてあげることも大事」と南野氏は付け加える。インターン1期・2期生のうち、途中でドロップアウトしてしまう学生が少なからずいたからだ。

南野氏によると、過去、うまくいかなかったケースは次のとおりだ。

【1】 課題1つ1つに期限を設けなかったので、知識・スキル習得レベルが把握できなかった

【2】 知識やスキルの習得にこだわるあまり、実践的なWebアプリ制作スキルが身に付かなかった

【3】 デキる人とそうでない人との差やブランクを埋める取り組みが足りなかった

ペースを決めるべき理由は、まさに【1】を解消するため。「45日間」とインターン期間を明示しているのもその狙いがあるという。かつ、【3】の個人差を解消するためには、インターン1人1人の習熟スピードや理解度に合わせたカリキュラムのレベルアップが課題だという。

そこで同社は、1期・2期での長期インターンを通して出てきた「よくある質問」を約200項目ほどにまとめて保管している。この“進化するQ&A”を読めば、たいていの疑問は解消できると大谷氏。

「インターン生はこのQ&Aを参照してできるだけ自己解決し、それでもクリアできない場合のみメンターや社員に解決手段を聞くようにしています。これも、『自ら考えてサービス開発ができるプログラマー』を育成するための取り組みです」(大谷氏)

FiNCでは中途でエンジニアを採用しているほか、このインターン育成プログラムも通年で随時募集し、実施している。モバイルヘルステクノロジーベンチャーとして、人間の心理的な機微まで踏まえてサービス提供していくために、「不足するプログラマーを自ら育成し続ける」という考えがあるためだ。

「プログラミング学習はダイエットと同じく、『継続は力なり』なんです(笑)。インターン経験者のその後を見ていると、良いプログラマーになろうと努力を続けている人は、良いパフォーマンスが出せるようになっています。最初は、良いWebアプリを作ろうなんて夢を持っていなくても、ただプログラミングがおもしろそうという動機でもいいと思います。一度、身に付けた知識をその後も高めていく熱意を持ち続けられる人を今後も募集していきます」(南野氏)

取材・文/浦野孝嗣 撮影/伊藤健吾(編集部)

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/secual_safie スタートアップがプラットフォーマーになるのは可能か?Secual×Safie「防犯IoT」2社の戦略 //type.jp/et/log/article/secual_safie Fri, 20 Nov 2015 08:00:56 +0000 (写真左から)Safie取締役の下崎守朗氏と、SecualのCTO東窪公志氏

(写真左から)Safie取締役の下崎守朗氏と、SecualのCTO東窪公志氏

IoTは一般的に「モノのインターネット」と訳されるが、IoT企業が作っているのは多くの場合、モノそのものではない。モノを含めたサービス全体が実現する世界観を提供しようというのが、彼らの目指すところだ。

世界観はビジネス的な言い方に換言すれば、プラットフォームということになるだろう。例えばスマートロックサービス『Akerun』を手掛けるPhotosynthは、法人化する以前から「HEMSの入り口になる」と公言していた

しかし、こういった壮大な構想を描けば、必然的に“敵”になるのはGoogleでありApple、Amazonなどの巨大なテクノロジー企業ということになる。極東の一スタートアップがこうした世界の巨人たちと伍して戦う術は本当にあるのだろうか。

そこで今回は、同じセキュリティー分野のIoTスタートアップとして注目を集めるSecualのCTO東窪公志氏と、Safie共同創業者で取締役の下崎守朗氏に登場してもらい、それぞれが考えるプラットフォーム構想について聞いた(両社についての詳細は以下の記事を参照してほしい)。

>>「貼るだけホームセキュリティ」のSecualが実践するマイクロタスキングは、スタートアップの採用難を解消するか
>>ソニー、グリー出身者が手掛けるクラウド型ホームセキュリティー『Safie』の水平分業型IoT開発とは

2社が考えるプラットフォームとは? 勝算、そこで求められる人材像は? 6つの疑問に応える形で対談してもらった。

【1】なぜIoT企業はプラットフォーマーを目指すのか?

下崎 Secualさんのことを掘り下げてお聞きする機会はなかったので基本的なことから伺いたいのですが、そもそもどうしてSecualを始めようと思ったんですか?

東窪 何か分かりやすいストーリーがあったというより、マーケティング的な観点から創出されたアイデアで、技術の発展によって低価格でやれそうなことと、安価でカジュアルなセキュリティーへのニーズがありそうだということ、その両方のタイミングが合ったということです。

汎用人工知能の研究にも携わってきた東窪氏。Secualのプラットフォーム構想にどう活かされるのか?

汎用人工知能の研究にも携わってきた東窪氏。Secualのプラットフォーム構想にどう活かされるのか?

下崎 セキュリティーを安価に、というところではSafieも一致していますね。防犯カメラはシステム的には簡単なのに、値段が高くて一部のお金持ちにしか手に入らないものでしたから。

ただ、Safieのユーザーさんには、自宅は既存の防犯サービスに入っているけれど、別荘にSafieを使いたいという人もいる。こちらが想定していなかった使い方を提案されることがあるのは、やっていて面白いですね。

東窪 新しいサービスの使い方は、ユーザーが自分たちで見つけていくものでもあると思いますね。

下崎 この前はあるビルのオーナーから、現行の警備員による警備から、機械警備とカメラの組み合わせに切り替えられないかと相談されたんです。普通は人間による警備が最上級だと思うんですが、完全自動化することで、いずれは入退室管理などにもつなげたいというニーズがあったようです。

ただ、最終的にはまるっと全てのサービスを網羅しているという理由で既存の大手サービスを導入することになった。

ここで例えば、SafieとSecualが一緒になっていたらどうだったか。IoT連合のようなものができて、大手並みにまるっと必要なものを提供できるようになったら面白いですよね。こうした発想がプラットフォーム化にもつながっていくのだと思います。

東窪 自分はこれまで、汎用人工知能の研究に携わってきました。Secualの当初の構想に人工知能の活用というものはなかったんですが、プラットフォーム化を視野に入れる中で人工知能という話が出てきた。

一つのセンシングデータのみを扱うのであれば簡単な機械学習程度で事足ります。でも、こっちからは映像データ、こっちからはセンサのデータ、またこっちからはカギの開け閉めのデータと、種類の違うものを統合するとなると、今話題のディープラーニングよりさらに一歩先に進んだ技術が必要になるからです。

ただ、そうするとGoogleと全面戦争するとかいう規模の話になってくるから、一スタートアップがどこまでやれるかは未知数なところもあります。

下崎 Googleの強みは、全てのデータが自然と集まるハブになっていることですよね。うちらはまだ小さいので、分散したデータをどう集めるかには、技術的な課題に加えて、会社の枠をどう乗り越えるかという課題もあるでしょう。

もっともそこは、大企業と比べればずっと薄い壁ではあるんですけど。

IoT企業と言っても、モノを作るだけではスマートフォンのアプリを作っている会社にモノがくっついただけで終わってしまい、それほど面白くない。うちも含めて、いわゆるIoT企業と呼ばれる会社は、みんなプラットフォーマーを目指すものだと思います。

Google傘下のNestが「IoT」という言葉を使っていないのは、もしかしたら、自分たちはモノづくりの企業ではなくプラットフォーマーを目指すのだという、ブランディングの意味合いが込められているのかもしれないですね。

【2】「勝機のありそうなレイヤー」をどう見極めるか?

下崎 注目しているプラットフォーマーはありますか?

東窪 面白いと思っているのはIFTTTです。最初に出てきた時はかなり興奮して、各地で話題にしたものです。IFTTTの社長は、Flickrなどを見ても完全にアーティスト気質。だからこそあれだけ領域横断性のあるサービスができるのでしょうし、でありながらテクノロジー的に尖ってもいる。そのギャップが面白いですね。

シリコンバレーからあんな人材が出てくるとは正直思っていなかった。(スティーブ)ジョブズ以来ではないですかね。

多岐に及ぶIFTTTの連携サービスラインナップ

多岐に及ぶIFTTTの連携サービスラインナップ

下崎 うちが最初にサービスをリリースした時点では、日本にはまだIFTTT対応のサービスがなかったので、その第1号を目指そうということになったんです。結果的には別の会社に先を越されてしまいましたが。

それまでは、プラットフォームとはいっても「つながるモノが限られた連合のようなもの」しかなかったですが、IFTTTはオープンで、本当のプラットフォームと呼べるものだと思います。

東窪 NestをGoogleが買収し、IFTTTのようなサービスも伸びてきている。すでにプラットフォームがどんどんできてきているので、これからはそのレイヤーが役割ごとにどんどん“薄く”なっていくだろうと思っているんです。

だから、ビッグプレーヤーが次々に現れる中で、どこのレイヤーが残るのかを見極める必要がある。

今、既存のWebの輪の中から、一方ではIoT、もう一方ではビッグデータや人工知能的なものがはみ出し始めている。そうやってデータ量が膨大になってくると、データはストリーミングモデルということになるでしょう。これはTwitterの変遷などを見れば容易に推測できることです。

こうやって大きくなった輪の中で、単体のプラットフォーマーが全てを担うのは限界がある。そこで、プラットフォームとプラットフォームをつなぐプラットフォームが、IFTTTということになると思います。

そんな中でSecualが目指すのは、IFTTTにストリームレベルの巨大なセンシングデータを上げるためのセンサープラットフォーム。世の中のIoTデバイスのほとんどは、それぞれの中で簡単な演算を行っていますが、より汎用的に使えるデータにするために、各デバイスから吸い上げたデータを人工知能によって演算し、合成して流すという役割を担いたいと思っているんです。

下崎 なるほど。うちはうちで、情報のロジスティック的なことをやりたいと思っています。ある企業が持っているデータを別のところに移せばとても高い価値を生むのに、技術的な制約で動かせなかったり、原石のような形に留まっているから使えなかったりするケースがたくさんある。それを適切な形に磨いてあげて、適切な場所へと流す役割をやりたい。

その最も原始的な形が、今取り組んでいるカメラ。これまで見えなかったものを見えるようにするわけだから。いずれはそれをもっと発展させた形にしたいと考えていて、その際には人工知能なり何らかのステップが必要になるでしょう。

そこをSecualさんがやってくれるのなら、お客さんに新たな価値を提供できるかもしれない。

【3】どこまで自前で開発するか?

下崎 実際、お客さんからはさまざまな要望が寄せられるんです。データの保存に関して、3カ月程度まで対応していたのですが、「すぐには活用しなくてもとりあえずアーカイブしたいので、1年、2年分といった長期に対応してほしい」という声が結構ある。

これまでのローカルストレージを使ったシステムでももちろん技術的には可能ですが、それをやるとリーズナブルな価格ではなくなってしまうので、現実的ではない。一方で、うちのようにクラウドを使って値段が安くなった途端、「ああ、それ前からほしかったんだよ」という人が現れるのも事実。値段は非常に重要ですね。

ただ、もっと安くしていきたいので、データをどう圧縮するかというのは一つの課題だと思っています。

東窪 Safieさんでは貯めたデータに機械学習的な判定をするアルゴリズムも独自で作っている?

既存のアルゴリズムを載せるにしても泥臭いチューニングは不可欠。「どこまで自力で開発すべきかにはジレンマもある」と下崎氏

既存のアルゴリズムを載せるにしても泥臭いチューニングは不可欠。「どこまで自前で開発すべきかにはジレンマもある」と下崎氏

下崎 まだそこまでやっていないですね。カメラに載っているものに手を入れているだけ。既存のものはそこまで精度が高くないですし、一方で自分たちで作るとなるとリソースも限られるので、そこにはジレンマがあります。

店舗で使っているユーザーさんからはよく、お客さんの人数をカウントしたいとか、プロフィールを取りたいといった要望があるので、そこもシステムに入れたいとは思っているんです。ただ、既存のアルゴリズムを入れるにしても、ポンと入れたら使えるというものではない。

前職で医療用画像処理のワークステーションをやっていた時も、一つ一つ違う生データを扱うので、きれいなアルゴリズムを書けるようなものではなく、泥臭い作業が必要で職人芸的な側面がありました。

技術者としてはそこが面白いし、技術力が上がるところでもあるんですが。

東窪 せっかく泥臭く調整した部分も、その2カ月後にはGoogleが使えるものを出してくる、とかよくありますしね(笑)。どう枯れていくのかは分からないから、そこにはジレンマがある。

超汎用的な人工知能が出るまで、少なくともあと数年の間は、既存のものを自分たちで泥臭くチューニングしていくことになるのでしょう。

下崎 いろんなユーザーさんと話していると、結構同じことを考えている人が多いことに気付くんです。例えば「駐車場で車のナンバーを取りたい」というのは想像の範囲でしたが、運送会社などでも出入りの管理をするために同じニーズがある。ナンバーを抽出して認知する技術さえあれば、いろいろな使い道があるということ。

リソースが限られている中、全てを自分たちでやることはできないので、そういうキーになりそうなところをうまく抑えていきたいですね。

【4】サービス全体の魅力を伝えるUIをどう作るか?

東窪 Makuakeで募集していても、IoTはまだまだテクノロジーに敏感な限られた人の世界なんだと感じるんです。

Makuakeのユーザーにはガジェット好きな男性が多い一方で、Secualが訴求したいユーザー像の一つと考えているのは、既存のセキュリティーに物々しさを感じているような一人暮らしの女性。そのズレを解消するために、当初は予定になかったギフトプランという売り出し方を追加したりもしました。

下崎 Safieも、日経新聞に「ソニーグループが出資」と掲載されたら、ソニーショップに買いに行く人がいた。そういう人はだいたいネットを使っていない人たち。今はまだ、「使える人」と「使いたい人」とがマッチしていないのだと実感しました。

クラウドファンディングサイト『Makuake』で支援を募集中のSecual。世界観をいかに一般ユーザーに伝えるかは課題の一つだ

クラウドファンディングサイト『Makuake』で支援を募集中のSecual。世界観を一般ユーザーにいかに伝えるかは課題の一つだ

東窪 Secualはセンサだから、最近でこそiPhoneの登場で以前より身近になったとはいえ、一般人にとってはカメラ以上にイメージがつかみづらいというところがあるようです。だからこそ、このセンサを持っていると、それがどこかにつながってこういう価値を生むんですというイメージをUIとして表現したい。

そういう意味でも、プラットフォームが必要だと考えているんです。

下崎 UIとモノを結び付けるのは非常に難しいですよね。というのも、技術的にはもちろん難しくないが、モノがあるとモノそのものがSafieであると勘違いされがち。何とかしてサービス全体がSafieであると分かってほしいのですが、目に見えるものが本質であると思われてしまう。

東窪 人工知能にしたって、多くの人はSiriのように受け答えしてくれるものがそうだと思い込んでいますからね。

下崎 どうにかして一般ユーザーの意識を変えていかないといけない。計算機も90年代にGUIを獲得することで革命が起きた。ソフトウエアという言葉も昔はフロッピーディスクやカセットをイメージする人が大半だったけど、今はそんな人はいませんから。

【5】プラットフォーマーとしての敵はどこにいる?

Nestをハブとするホームオートメーション・プラットフォーム「Works with Nest」

Nestをハブとするホームオートメーション・プラットフォーム「Works with Nest

東窪 僕らスタートアップが連合するとしたら、日本の大企業がよく行う「一式そろえて……」というやり方に対してはまだ戦い方があると思う。でも本当の敵はやはり海外で、Googleはそもそもがスタートアップのような存在だから、イメージが被って戦いづらい。

Nestのラインナップを見ると、今のところブランド力で攻めている感じ。IoTのイメージとは距離のある、おしゃれな家具のようなものがズラリと並んでいる。

下崎 Appleも怖いですね。プラットフォーム化が得意な印象はないけれど、デバイスとして広く浸透しているという意味ではやはり脅威です。

東窪 AppleTVは出来が良かったし、何より美しいという武器を持っているのがAppleですからね。

下崎 Googleの良いところはオープンなところだけれど、その分、こちらのデータはおそらく提供せざるを得ない。一方でAppleはクローズドだけれど、データをプライベートに使ってくれそうではある。モデルとしてはどっちもどっちという印象ですが、我々としてはその隙間を狙うということになるのでしょうか。

東窪 Amazonもいます。クラウドを抑えているし、ラストワンマイルの移動系に手を出していることも怖い。あとはショッピングモールとして、売れるモノ・売れないモノの趨勢を決めてしまえる立場にいるという意味でも怖いですね。

現行のオススメ情報のところをいじれば、「この商品を買ったらこの商品も自動で接続できます」みたいなこともできるわけだし。

下崎 ウチとしては、そこは逆にやってほしいところですね。Amazonの倉庫に入っていれば設定系まで自動的にやってくれるというのであれば、一般ユーザーとの間をつないでくれるかもしれない。AWSを使っていることもあり、協力関係でやっていくことはできないかと。

東窪 ユーザーの行動なしに認証するというのは一番難しいところだとは思いますが。

下崎 個人情報のように、「1度流出したら終わり」といった類の情報だとダメだと思いますが、利用料を返金すれば解決できるところもありそうです。何を守るかという観点にもよると思いますね。

【6】プラットフォームを担う人材像とは?

下崎 プラットフォームのいいところは、やるのに時間も労力も掛かるので、参入障壁が高いところ。Safieとしてはこの1年で何らかの形にしたいとは思っています。

会社間連携のような形では、すでに進んでいる話もいくつかある。カメラという明確な形がすでにあるため、お客さんの方から「もっとこういう形で使いたい」という要望をもらえるので、進みやすいという強みはあるんです。

東窪 今募集しているのも、プラットフォーム化を見据えた人材ですか?

下崎 そうですね。ただ、どういう人がいいのかというのは非常に難しい。うちは小さい会社だから全て引っ張ってくれる絶対的なリーダーがいるわけじゃないので、手を動かすだけのスーパープログラマーというのでもダメなわけで。例えば、カメラを見てそれがつながっている先まで想像できる人がほしい。

東窪 技術選定から、インフラに精通していることも重要でしょうし、周辺領域の情勢はかなり頻繁に動くので、そういうことに敏感なことも求められるでしょうね。お仕事には研究的な側面も出てくる?

下崎 画像処理系とか人工知能系は、いつ出すとは言い切れない分野なので、研究的な要素も当然入ってくるとは思います。何でもやれる自由なポジションですから、面白いことがやりたいと思っている人にとっては、これ以上ない分野ではないでしょうか。

プラットフォームを実現する上で、東窪さんが考えるキーファクターはありますか?人なのか、お金なのか……。

東窪 APIエコノミーが来るっていうことを認識していて、それに向けて準備をしている人はいるべきだと思います。ここが出したAPIを別のところが加工して、また別のところが使うといったことが、今後は普通になっていく。これからエンジニアの市場として確立していく分野だと思うし、欧米でも需要がある。

そういった未来予測ができている、ビジョナリーであることは重要であると思います。それがないと、せっかく作ったものも、6カ月後には利用価値がなくなってしまいますからね。

取材・文・撮影/鈴木陸夫(編集部)

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/spicelife リモートワーク導入で重要なのは「孤独を防ぐこと」spice lifeのイクメンエンジニア支援に学ぶチーム運営術 //type.jp/et/log/article/spicelife Wed, 18 Nov 2015 14:53:16 +0000

(写真左から)spice lifeのディベロッパー栗原勇樹氏と、開発部長の五十嵐邦明氏

今年11月は「テレワーク月間」。これは、総務省など関係4省が中心となって設立された「テレワーク推進フォーラム」が中心になって、在宅勤務やテレワーク、リモートワークの普及を目的にさまざまな推進活動を展開するものだ。

IT業界では導入企業が珍しくなくなったリモートワークだが、弊誌をはじめ各種メディアでもそのメリット、デメリットが具体的に取り上げられるようになってきた。その際、よく指摘されるのが、「在宅組」と「出勤組」間のチームワークをどう担保していくかという課題だ。

この課題をクリアするために、特にプログラミングを主業務とするエンジニアがリモートワーク制度を活用する場合は、GitHubをはじめ各種ツールを導入しながら遠隔での開発を推進している企業は多い。

2007年5月の設立で、Web上でオリジナルTシャツのデザインやオーダーができるサービス『TMIX』を展開するspice lifeも、子育て中の“イクメン”エンジニアをサポートもできるリモートワーク制度を本格導入している。

その運用で課題になったことなどを取材しながら、リモートワーク導入のコツを紐解く。

ただ「ツールを活用する」だけでは解消しない課題も

spice lifeが運営する、オリジナルTシャツをデザイン作成して購入できるファッション通販サイト『TMIX』

spice lifeが運営する、オリジナルTシャツをデザイン作成して購入できるファッション通販サイト『TMIX

spice lifeが本格的なリモートワークの導入を検討したのは、開発部の部長、五十嵐邦明氏が抱えていた“ある事情”がきっかけだった。

「私は花粉症がひどくて、スギ花粉のピークになる毎年2月ごろはどうしても集中力が低下しちゃうんですね。そこでテストケースとして、沖縄と台湾にそれぞれ2週間ほど滞在して、リモートワークをしてみました」(五十嵐氏)

結果、東京で働いている時と比べて1週目は約2倍、2週目は約5倍のタスクをこなすほどの効率アップが実現できたという。

このように、同社では実際にリモートワークを導入した際の費用対効果をしっかりモニタリングしている。

そして現在、このリモートワーク制度をフル活用しているのが、上記で紹介した“イクメン”エンジニアの栗原勇樹氏だ。

2014年9月に転職してすぐに妻の妊娠が分かり、出産後は完全リモート体制へとスムーズに移行するため、お試し的に週1~2日のペースで在宅による業務を続けてきたという。

「今は週のほとんどを自宅で作業する毎日です。プログラミングが中心の業務なので、期日までにやるべきことさえ明確になっていれば『働く場所が違うだけ』という感覚です」(栗原氏)

リモートワークの本格導入で活用したツールは、プログラミング関連ではGitHubが中心。他にビデオ会議用としてGoogle Hangouts、グループチャット用にIdobata、ドキュメント共有用にesa.ioなどを利用している。

spice lifeがグループチャットとして利用している『Idobata』

spice lifeがグループチャットとして利用している『Idobata』

「自宅で働く栗原はもちろん、会社にいるスタッフも慣れるまでは苦労しましたが、使っているうちに時間を決めるなど工夫して、今は問題なくコミュニケーションが取れるようになっています」(五十嵐氏)

ただ、PCモニタを通してのコミュニケーションだけでは、どうしても解消できない部分があったと栗原氏は明かす。

「開発に携わっているのは自分も含めてエンジニアが9人、デザイナーが2人というチームなんですが、特にデザイナーとの打ち合わせの場合はアナログで絵を描きながら話す方が早いので、そこは実際に会った方がいいと感じました」(栗原氏)

他にも、Google Hangoutsだと栗原氏の住まいも映し出されてしまうため、個人情報ともいえるプライベートな面への配慮なども課題になったという。

週一の食事代を会社が負担して「社員交流」を促す理由

もともとOSSコミュニティでの活動経験もあり、「リモート開発」への慣れがあったと言う栗原氏

イクメンエンジニアになる以前も、OSSコミュニティでの活動などで「リモート開発」への慣れがあったと言う栗原氏

その他、当然のことながら、リモートワーク制度のスムーズな導入・運用には経営陣ほか全スタッフの理解をはじめ、活用する側も協力的な姿勢で臨む必要がある。こうした相互理解の環境づくりを、spice lifeはどう工夫しているのだろう。

「実は当社は、もともとスタッフ同士がコミュニケーションを図れるように毎週水曜日のランチ代を会社が負担して、みんなで食べに行くようにしていました。夕食も参加は自由ですが、みんなで食事して飲める機会を設けています。ですから、リモートワーク制度の本格導入後も、スタッフ同士の距離は近い方だと思います」(五十嵐氏)

業務時間はフルリモートで働く栗原氏も、こうした機会にできるだけ参加することで、対面での近況報告やディスカッションに努めているという。

この施策の裏側には、自身もリモートワークを経験した五十嵐氏が痛感した「孤独」を解消するという狙いがある。

「Google HangoutsやIdobataを使っていても、リモートで働いている側はどうしても孤立しがちで、孤独感を覚えます。同じオフィスで働くことのメリットは、集中したい時には配慮してくれて、気分転換や息抜きしたい時にはお茶を飲んだり、雑談ができることです。どんな人間も、やっぱりそういう時間が必要なんですよね」(五十嵐氏)

この課題は、栗原氏も体感している。

「リモートワークを始めてみると、仕事やチームの仲間と距離があるという事実に気付くんです。それを解消するには、ツールの活用だけで満足するのではなく、週1日や隔週に1日といった割合でオフィスへ行き、リアルなコミュニケーションを図る必要があると思います」(栗原氏)

事実、完全リモートワークの立場である栗原氏も、定期的にオフィスへ顔を出す日を決めて実行しているという。

セルフモチベーター型でなくてもリモートワークは可能か?

「リモートOK」な開発現場をマネジメントする上で大切なことを語る五十嵐氏

「リモートOK」な開発現場をマネジメントする上で大切なことを語る五十嵐氏

多くのエンジニアを抱える企業が、リモートワークの導入や定着を目指す際に課題として挙げるのが、エンジニアのモチベーションをどう維持し続けていくか、である。

特に個人のスキルや技術レベルが成果を左右しがちなエンジニアの場合、セルフモチベーター型でなければリモートワークは難しいと言われる。

「私も、どんなエンジニアもリモートワークが可能だとは思っていません。実は、リモートワーク制度があってもオフィスに出勤して働きたいというエンジニアもいます。それぞれのワークスタイルがあっていいと思いますし、多様な働き方に対応していくのがマネジメントの責任だと思いますね」(五十嵐氏)

spice lifeの場合、開発を手掛けるエンジニアはOSSコミュニティに参加したことのあるメンバーが多い。Web上でのやりとりを通して情報の受発信を行い、フィードバックに応じて次のステップに進むという開発フローに慣れていることも、リモートワークを違和感なく受け入れている理由の1つだという。

「OSSの開発フローでは、他の人が何を手掛けていて、どのフェーズなのかを踏まえて、自分はどのフェーズまでをいつまでにやればいいのかを判断します。仕事がプログラミング中心なので言えることではありますが、自分と他のスタッフとの業務範囲の切り分けさえ明確なら、あとは相互理解の努力さえ怠らなければスムーズにタスクを達成できると思います」(栗原氏)

そして、リモートワークの導入・定着には、やはりスタッフ全員の相互理解が欠かせないと五十嵐氏は強調する。

「リモートワーク制度を活用するスタッフが罪悪感を持ってしまってはダメだと思います。そうならないよう会社としてのオフィシャルな姿勢を打ち出すのはもちろん、スタッフ全員がコミュニケーションツールを当たり前のものとして使いこなして、足りない部分はお互いに補い合うという職場環境を作っていくことが大事ですね」(五十嵐氏)

取材・文/浦野孝嗣 撮影/伊藤健吾(編集部)

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/ibs-global-bridge 海外オフショア「3つの壁」とは?IBS Global Bridgeが実践する、“グローバルチーム型”開発で壁を打ち破る方法 //type.jp/et/log/article/ibs-global-bridge Tue, 17 Nov 2015 09:40:27 +0000 写真左より、プロジェクトリーダーの山入端翔氏、ゼネラルマネジャーの仲本貴紀氏

(写真左より)プロジェクトリーダーの山入端翔氏、ゼネラルマネジャーの仲本貴紀氏

人員の確保のしやすさやコスト削減などの利点から、大規模なプロジェクトに挑む手段として定着したかのように見えるオフショア開発。

しかし、言葉やカルチャーの違いなど、未だに多くの課題が残されている。事実、進捗管理やエンジニアのマネジメントがままならず、プロジェクトが頓挫してしまうケースも少なくない。

そんな中、従来のオフショア開発の課題を払拭し得る、新たなプロジェクトマネジメントモデルがあるのをご存じだろうか。それが、IBS Global Bridgeが手掛けている“グローバルチーム型”の開発スタイルだ。

従来のオフショア開発では、日本語が話せる外国人をブリッジSEとして現地に配置するのが一般的。その場合、日本のSEが現地のエンジニアを直接マネジメントできないため、コミュニケーションロスや手戻りが生じやすいという課題があった。

一方、IBS Global Bridgeが実践するグローバルチーム型開発は、現地・日本を問わず全員を一つのチームとして捉えることに加え、英語を共通言語とするためブリッジSEが不要となる。結果、円滑なコミュニケーションが可能となるため、従来よりも進捗管理やマネジメントが行いやすくなるのだ。

しかし、このグローバルチーム型の開発を効果的に取り入れるためには、乗り越えなければならない壁があるという。それが、

【1】距離の壁
【2】言葉の壁
【3】意識の壁

の3つだ。今回は、これらの壁を打ち破るヒントを、IBS Global Bridgeで活躍する2名のエンジニアの話から探った。

コミュニケーションの頻度と質を高めるための「仕組み化」を実施

ブリッジSEを介さない新たなプロジェクトマネジメントモデルである“グローバルチーム型”開発

ブリッジSEを介さない新たなプロジェクトマネジメントモデルである“グローバルチーム型”開発(出典:同社Webサイトより

「もともと、ベトナムでのオフショア開発に失敗したことがきっかけで生まれたのがグローバルチーム型の開発だったんです」

そう過去を振り返るのは、同社でゼネラルマネジャーを務める仲本貴紀氏だ。かつては同社の母体であるインテリジェンス ビジネスソリューションズもベトナムでのオフショア開発を手掛けていたが、完成品のクオリティの低さや、バグ修正などの指示を出す際のコミュニケーションエラーに頭を悩ませていたという。

「何が原因なのかと考えたところ、一体感のなさが致命的なのではないかと思い至りました。一般的に、発注側とオフショア先のエンジニアは、それぞれが別の会社に籍を置いています。つまり、詳細なメンバー構成もわからなければ、各々の目的も違うのです。それに加えて、日本とベトナムという物理的な距離と言葉の壁が立ちはだかっている状況で、プロジェクトが上手くいくはずがなかったのです」(仲本氏)

そこでインテリジェンス ビジネスソリューションズは、IBS Global BridgeとIBSベトナムを戦略的グループ会社として設立し、物理的な距離の壁と言葉の壁の払拭に取りかかったのだった。

「これまでマネジメントを行っていたブリッジSEの代わりに、日本とベトナムの双方を見るチームリーダーを配置し、コミュニケーションの円滑化を図りました。また、そもそも現地のブリッジSEは、日本語ができるというだけで、技術力やマネジメント能力はリーダーを任せるレベルに達していないケースが往々にしてありました。ブリッジSEを介さずにコミュニケーションが取れるようになったことで、ベトナムと日本との距離は確実に縮まり、スケジュールもコントロールしやすくなりました」(仲本氏)

ここで大切なのが、ただ直接コミュニケーションを取るよう意識付けするだけでなく、仕組みに落とし込んで対話を重ねること。

同社では、日本・ベトナム双方で導入しているコミュニケーションツール『Microsoft Lync』などを駆使しながら、1~2時間おきにベトナムのプログラマーに声を掛けるようにしているそう。

さらに、やみくもに「作業指示を詳細化して、現地の考える余地をなくす」のではなく、ベトナムのプログラマー自らが課題解決に乗り出してくれるようなコミュニケーションを重ねるという(その詳細は後半で紹介する)。インプット情報を増やすことよりも、現地で行間を補えるようにすることで、【1】の距離の壁を乗り越えているのだ。

では、【2】の言葉の壁を越えるには何が必要なのか。同社のプロジェクトリーダーである山入端翔氏はこう語る。

「新規のシステム開発のプロジェクトの場合には、仕様書をはじめから英語で作成することでコミュニケーションエラーを防いでいます。既存システムの改修プロジェクトの場合は、仕様書を英語に翻訳するだけでは伝わりにくい部分もありますが、ラフな絵や画面共有を積極的に利用して認識合わせをしたり、実際のソースコードを見せながら説明することで理解を深めてもらえるように工夫しました」(山入端氏)

グローバルチーム型開発では、チーム内の公用語は英語で統一されている。そのため、通常の会話がスムーズに行えることはもちろん、必要書類を最初から英語で作成することで精度の高い情報交換が可能になる。

日本語から英語への翻訳を介すことで細かな意図が伝えにくい場合には、開発言語というエンジニアならではの共通言語が活躍するというわけだ。

こうして【1】の距離の壁と【2】の言葉の壁を乗り越えることは可能となった。しかし、最も高くそびえ立っていたのは、意識の壁だったと仲本氏は続ける。

指示者と作業者という意識を変え、チームでのプロジェクト進行へ

エンジニアの意識の醸成に対する思いを語る山入端氏

エンジニアの意識の醸成に対する思いを語る山入端氏

環境が整備されても、人の意識というのは簡単に変わるものではない。

主流となりつつあるオフショア開発の影響で、ベトナムのエンジニアには「日本人は顧客である」という意識が根付き、日本側のエンジニアにも「指示はこちらから出すもの」という考えが抜けないケースが少なくなかったのだ。

そこで【3】意識の壁を乗り越えるべく、同社が取った施策について、山入端氏は次のように語った。

「これまで、ベトナムのエンジニアには開発業務に必要なことのみを説明してきたのですが、クライアントのビジネスモデルや、プロジェクトの成功がクライアントにもたらす価値なども伝えるようにしました。すると、自身に求められていることを自ら考え、主体的に行動するようになっていったのです」(山入端氏)

さらに、単にプログラミングのみを任せるのではなく、ベトナムのエンジニアが基本設計や要件定義などの上流工程から参画できるような体制を整えたという。

同社で手掛けているのは、基本的にプライム案件。自由度高く取り組める案件であるという点に加えて、同社とベトナムとの間にあるグループ会社という関係性の近さが、上流から共に取り組むという意識の醸成に一役買っているのだろう。

「上流工程から参画してもらうことで、仕様がわからなくて作業が滞るという事態を未然に防ぐことができます。結果、指示されたことのみしか行わないという受け身なスタイルが改善されていきました。私は以前、ベトナムに滞在してプロジェクトに取り組んだことがありますが、ベトナムのエンジニアたちのスキルは非常に高い。チャンスさえ用意すれば、上流工程ができないわけがないと感じていました」(山入端氏)

目指すはプロジェクト成功のさらに先、アジアエンジニアのスキルUP

仲本氏は、海外エンジニアの育成にかける思いについて熱く語った

仲本氏は、海外エンジニアの育成にかける思いについて熱く語った

さまざまな施策を実践しながら、ノウハウを蓄積していくことで、グローバルチーム型というプロジェクトマネジメントモデルは普及していくことだろう。しかし同社にとっては、それも通過点に過ぎない。

「現地エンジニアが主体的にプロジェクトに取り組めるような仕組みを作ることで、アジアのエンジニアのスキル向上に取り組んでいきたいと考えています。それは結果として、共に働く私たち日本のエンジニアにとっても刺激となり、成長を後押しする存在となってくれると確信しています」(仲本氏)

そのためには、日本人の意識の変革が必要不可欠だという。海外エンジニアとのプロジェクトだからと必要以上に細かく指示を出したり役割を限定するのではなく、同じチームの仲間として、対等に向き合うことが必要だと仲本氏と山入端氏は繰り返すのだった。

取材・文/秋元祐香里(編集部) 撮影/小林 正

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/smartdrive_neo 「IoTで運転診断」が生む意外なビジネスとは?スマートドライブのビッグデータ活用【連載:NEOジェネ!】 //type.jp/et/log/article/smartdrive_neo Mon, 16 Nov 2015 14:31:10 +0000 世間をアッと言わせるユニークなアイデアと技術力で勝負しているニュージェネレーションを応援するこの連載。今回紹介するのは、スマートフォンアプリと専用デバイスで気軽に運転診断ができる車のIoTサービス『DriveOn』を手掛けるスマートドライブだ。走行データを集めた先には壮大なビジネス構想があった。彼らが思い描く「未来の車社会」に迫った
(写真左から)代表取締役社長 北川 烈氏
チーフアーキテクト 村山 嗣氏
最高データ解析責任者 兼 経営企画担当 元垣内(もとがいと) 広毅氏
ソフトウェアアーキテクト 吉岡 誠氏

10月29日から11月8日の日程で開催された「東京モーターショー」には、今年も数多くのコンセプトカーが出展された。話題の中心にあったのは、メーカー各社が競って開発を進める自動走行車。実用化にはクリアしなければならない課題がまだまだあるのだろうが、こうした車が当たり前のように街を走る未来が来ることは、すでに確実なことなのだと印象付けた。

10年先、20年先を見据えた大手メーカーによるこうした動きとは別に、未来の車社会をいち早く現実のものにしようというスタートアップもある。2013年10月に創業したスマートドライブは、総務省主催の新事業創出支援プログラムの1号案件に採択されるなどして注目を集めている。

スマートドライブが手掛ける一般ユーザー向けIoTサービス『DriveOn』は、車に専用デバイスを装着するだけで走行データを取得し、ドライバーの運転スキルを診断してスマートフォンに表示するというもの。現在、クラウドファンディングサイト『Makuake』内で先行販売の予約を募集している

一方では、収集したデータを解析し、保険や整備会社の新商品開発などに活用するエンタープライズ向けのプロジェクトも着々と進めている。いずれの動きも、最終的に目指すところは、走行ビッグデータ解析を活用して実現する「事故や渋滞がない社会」の到来だ。

アイデアの出発点:今走っている車をちょっとだけ賢く

代表取締役の北川烈氏は、慶應大学在学中にインターン生としてイトクロで新規事業の立ち上げを経験し、その後、MITに1年間留学。帰国後は東京大学大学院へと進み、2013年に同社を創業した。

起業に際して、さまざまなビジネスプランを考えていた北川氏が最終的に選んだのが「クルマの未来を変える」ことだった

起業に際して、さまざまなビジネスプランを考えていた北川氏が最終的に選んだのが「クルマの未来を変える」ことだった

起業にあたっては、「農業、医療、家電など、データ活用によってこれから大きく変わっていくことが予想される領域に注目した」と北川氏。中でも実体験から未来を強く思い描くことができたのが、自動車の領域だったという。

「留学中に、Googleやテスラに就職していた友人を通じて自動運転車などに乗せてもらう機会がありました。そのため、肌感覚としてどんな未来がやってくるのかを理解できたことで、この分野で貢献したいと強く思うようになりました」

自動車は家電などと異なり、買い替えのサイクルが長いために普及に時間が掛かるという側面がある。データ解析を活用したスマートドライブの構想は、「全く新しいモノを生み出すよりも、今走っている車をちょっとだけ賢くするのが面白いのではないか」という発想から生まれた。

デバイスを通じて得られる運転の巧拙や運転頻度などのデータを活用すれば、現行は年齢などで一律に決められているために高騰している保険料を、適性な価格に引き下げることも可能だ。

他にも、渋滞緩和や営業車の配車最適化など、ビジネスのアイデアは尽きない。

開発のポイント:試した車種は1000台以上。全社体制、社員総出で

『DriveOn』は、OBD-IIと呼ばれる専用デバイスを故障診断用のポートに差し込むことで、エンジン・コントロール・ユニット(ECU)内のデータをリアルタイムで取得する。取得するデータは、スピード、急加速、急ブレーキ、アイドリング、車内外気温、約50種のエンジンの異常、位置情報など。これをBluetooth通信でスマートフォンに送信する。

『DriveOn』のハードウエア開発をけん引する村山嗣氏

『DriveOn』のハードウエア開発をけん引する村山嗣氏

デバイスの開発を主導したチーフアーキテクトの村山嗣氏は、前職のパワーエレクトロニクスで自動車関連の開発用ツールの開発に携わったほか、無線通信業界でのキャリアも長い人物。通信と車、双方に精通しているバックボーンを活かして、今年3月の入社当時はコンセプトモデルだったものを、半年で7、8回のバージョンアップを経て商品レベルまで持っていった。

「開発にあたって最も苦労したのは、あらゆる車種で間違いなく動作するように対応すること。ひと口にECUのデータと言っても、メーカーごと、さらには車種ごとにデータのフォーマットは違います。車種によっては、デバイスを差すことによって警告灯がついてしまうものもあったし、差しっぱなしにしていてもバッテリーが上がらないよう、消費電力を抑えることにも苦心しました」(村山氏)

試した車種は1000台以上。テストは全社体制、社員総出で行った。最初はレンタカーを利用したり、知り合いの車を借りたりして対応車種を徐々に増やしていったが、そもそもレンタカーにはない車種も少なくないため、途中からはディーラーや整備会社と提携してテストを進めたという。

ビジネスに精通しているからできる、使えるデータ化

公認会計士資格を持ちながら、データ解析のスペシャリストでもある元垣内広毅氏

公認会計士資格を持ちながら、データ解析のスペシャリストでもある元垣内広毅氏

エンタープライズ向けのプロジェクトとしては、業務提携を結んだアクサ損害保険と取り組む、データを活用した次世代型保険商品の開発が進行中で、広くバラまいたデバイスからは徐々に走行データが集まり始めている。このデータをどう解析していくかをディレクションしているのが、最高データ解析責任者の元垣内広毅氏だ。

直近では故障予測、近い将来には交通事故の予測など、データの使い道は幅広い。だが、ここでもネックになるのは「車種によって取得可能なデータの種類、粒度、フォーマットが異なること」(元垣内氏)。元垣内氏はこれをいかにそろえるかに注力してきた。

吸い上げたデータをそのままの形で提供したのでは、提携先の企業には使いようがない。どう使いたいのかをヒアリングする必要があるし、時にはこちら側からどう使えるのかを示すことができなければ、ビジネスとしては成立しない。

統計学をバックボーンにする元垣内氏は、前職のグリーでは主に、ソーシャルゲームのプラットフォーム上におけるユーザーの行動データ解析を行っていた。加えて公認会計士の資格も取得しており、企業の外部監査をしていた時期もあるという異色の経歴だ。

データ解析のスペシャリストでありながら、ビジネスデベロップメントにも精通していることが、取得したデータを「本当に使えるデータ」にすることを可能にしている。

IoT時代の技術者、そして起業家に求められること

IoTのプラットフォームビジネスを手掛けるSORACOMの玉川憲氏は以前、弊誌の取材に対し、IoT時代に求められるエンジニア像を「フルスケール」と表現し、「横のスキル拡張」の必要性を強調していた。元垣内氏しかり、スマートドライブ社が技術者に求める資質というのもそれに近いもののようで、11月に入社したばかりのソフトウエアアーキテクト吉岡誠氏は「今までやってきたことだけでは、この会社ではやっていけない」と気を引き締めている。

2015年11月にジョインしたばかりの吉岡誠氏

2015年11月にジョインしたばかりの吉岡誠氏

前職のゼンリンで地図ソフトの開発などに携わっていたという吉岡氏。スマートドライブでもその経験を活かして車両管理や渋滞回避の仕組みの開発を担当することになるが、専門領域としてきたバックエンドの開発に留まらず、「場合によっては客先に出向いてのビジネス設計までを担うことになりそう」という。

自分の専門領域だけを見ていればいいわけではないというのは、スタートアップにおいては当たり前のことかもしれないが、ハード、ソフト、ビジネスが一体になるIoTサービスとなると、その傾向はより顕著になるということのようだ。

「一つの技術領域を深掘りするだけのエンジニアは、だいたい市場と合わない製品を作る。技術はあくまで手段なので、技術者と言えどそれをどう活かすかという視点は欠かせないと思っています」と村山氏は話す。

技術が手段だとすると、大切なのはビジョンでありミッション。スマートドライブが掲げるミッションは、「世界中の走行データを収集・解析し、価値のある情報を最適なタイミングで提供することによって、より快適で効率的な世界にする」というものだ。北川氏は、そうした未来は仮に自分たちがやらなくても、いずれは確実に現実になると考えている。

「スティーブ・ジョブズがいなくてもスマートフォンはいずれ世の中に生まれたかもしれませんが、ジョブズがいたからこそ、iPhoneのような洗練された形で、あれだけ早く普及した。放っておいてもやってくる未来を、どれだけ早く持ってこれるか、そしてそこに自分たちの価値観を反映した形で実現できるかが、アントレプレナーに求められることなのではないかと思っています」(北川氏)

取材/伊藤健吾 文/鈴木陸夫(ともに編集部) 撮影/竹井俊晴

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/tks-18 “メイカーチルドレン”を育てる「STEM教育」を政府も後押し!マレーシアのサイエンスフェスタ【連載:高須正和】 //type.jp/et/log/article/tks-18 Fri, 13 Nov 2015 11:36:59 +0000
高須正和のアジアンハッカー列伝

高須正和(@tks

無駄に元気な、チームラボMake部の発起人。チームラボニコニコ学会βニコニコ技術部DMM.Makeなどで活動中。MakerFaire深圳、台北、シンガポールのCommittee(実行委員)、日本のDIYカルチャーを海外に伝える『ニコ技輸出プロジェクト』を行っています。日本と世界のMakerムーブメントをつなげることに関心があります。各種メディアでの連載まとめはコチラ

10月30日から11月1日の金・土・日3日間、マレーシア・クアラルンプールのコンベンションセンター『Mines』にて、Kuala Lumpur Engineering and Science Festa(以下、KLESF)が行われた。

セットアップ中の会場。会場は見えている範囲だけでなく、右側の黒いカーテンの下にも多くのハンズオンコーナーがある

セットアップ中の会場。会場は見えている範囲だけでなく、右側の黒いカーテンの下にも多くのハンズオンコーナーがある

世界的に盛り上がっているSTEM教育(Science Technology Engineering Mathmatics=科学、技術、工学、数学の4つの頭文字を取ってSTEM教育と呼ばれる、実際に何かを作り出す力を付けることを目指す実践型教育)のイベントの一つとして開かれ、マレーシア中心部の各地から観光バスで中学生たちが会場に詰めかけた。

平日初日の金曜日を教育デーにして、全国の学生を呼び寄せるのは良いアイデアだ。

教育デーはどのブースも子供たちでいっぱいになった

教育Dayはどのブースも子供たちでいっぱいになった

会場のコンベンションセンターは非常に広い。体感ではビックサイトのホールを複数使って行われた『Maker Faire Tokyo 2015』に匹敵するサイズに思われる。この写真でも広さは伝わると思うが、屋根の下の部分にも大量のワークショップや教室スペース、ハンズオンのスペースがあるのだ。

ブース出展は半分が学校などの教育機関、残り半分が企業や政府機関によるもので、マレーシアの産業界や政府がスポンサーとなって出展を後押ししている。

ハンズオンのコーナーにはこのようなクラスが数十単位で並ぶ。これはAndroidアプリケーション開発のコーナー

ハンズオンのコーナーにはこのようなクラスが数十単位で並ぶ。これはAndroidアプリケーション開発のコーナー

マレーシアが誇る国を挙げた科学教育の実態

出展者は大学、高校、研究機関であり、そこに、通信キャリアや石油化学、不動産などの政府系企業が加わる。マレーシアはいま国を挙げて科学教育を振興しているためだ。

今回の会場には本当に広い範囲の「エンジニアリングとサイエンス」の出展者が集まっていた。

当たり前の話だけれど、この手の教育は、まずは学生に興味を持ってもらわなければ学習にならない。そのためエンジニアリングの分野を幅広く用意することは非常に大事になる。

日本でも「問題発見型」とか「習うのでなくて参加する」とか、STEM教育の方法論が語られてはいるけど、スタート地点は「実際に仕事でやっているエンジニアや科学者が、何をやっているのかを理解する」ことから始まる。なので、会場にはさまざまな産業界からのデモとワークショップが行われているわけだ。

ざっと見ただけでも、次のようなハンズオンコーナーがあった。

・Androidアプリ開発
・Windowsアプリ開発
・Arduinoをつかったフィジカルコンピューティング
・Webプログラミング
・Wi-Fiのパスワード判定とセキュアなWi-Fiの作り方
・DNAの解析
・DNAの複製
・数学
・電子回路とはんだ付け
・橋やタワーの構造計算
・ゆでられている卵の中で何が起こっているか(熱とタンパク質の硬化)
・薬の調合
・さまざまな種類の農業(農業だけ5ブースぐらいある)
・モデリングと3Dプリント
・ロボティクス

このように、技術分野は非常に広範囲にわたる。

それぞれのスペースでは、1時間から1時間半程度の時間を割いて、10人程度の集客を想定してハンズオンさせるワークショップを行っていた。Wi-Fiのワークショップではルータの会社が機器の提供を行い、Windowsアプリ開発はMicrosoftが、ロボティクスは『RERO』というマレーシアの教育用ロボ開発会社がそれぞれ支援しており、電子回路とはんだ付けは『Freescale』が運営協力していた。

単純なスポンサードより、こういう得意なことで協力してもらうのはうまいやり方だ。

REROのワークショップ。カンボジアからの参加者も見える

REROのワークショップ。カンボジアからの参加者も見える

中央の8つのサーボがついたロボットが『RERO』。中央のコントロールユニットを含むキットが1500リンギット(執筆時は1リンギット=28.43円だったので、4万2645円)で売られていた

中央の8つのサーボがついたロボットが『RERO』。中央のコントロールユニットを含むキットが1500リンギット(執筆時は1リンギット=28.43円だったので、4万2645円)で売られていた

DNA抽出のワークショップの光景

ここまで挙げたのはすべて、全体では半分のスペースも占めていないハンズオンコーナーでのワークショップで、残りの6割ぐらいの展示スペースは、大きく分けると国営企業を中心にした産業界と、マレーシア各地の工学部や工業高校が展示していた。

学生の獲得にダイレクトにつながるので、出展する意味は大きいのだろう。これもうまいやり方だ。

マレーシア内の学校だけじゃなくて、米ユタ大や英ノッティンガム大などマレーシアにもキャンパスを持つ海外の大学や、フィリピンなどマレーシアからの留学生を受け入れている学校も出展していた。

学校のブースでは、小学生から高校生ぐらいまでの研究成果を展示している学校が多く、小学生がマインドストームを用いてフィッシュセラピーの疑似体験させるブースもあった。

いくつかの研究ポスターを見たけど、Abstract(摘要)、Future work(今後の課題)などの書き方はかなりしっかりしていて、「研究者としての頭の使い方」をしている学校もあるように感じられた。かつて見たシンガポールのサイエンスフェスにはおよばないし、こういう分野は先生が指導しやすい部分だから一概にレベルを判断することはできないが、きちんとしていることはうかがえた。

中学生による水のフィルターの研究展示

中学生による水のフィルターの研究展示

小学生が作った、緑豆と赤い豆を振り分けるマインドストームのロボット。このブースは先生がいなかった

小学生が作った、緑豆と赤い豆を振り分けるマインドストームのロボット。このブースは先生がいなかった

企業ブースは通信キャリア、航空、不動産など、いかにも国営企業っぽい分野が並ぶ。マレーシアは資源大国で、石油や天然ゴムを輸出していており、付随する石油化学工業などには強みがある。

Bamboo instituteとして出展していた竹のエレキギター

Bamboo instituteとして出展していた竹のエレキギター

天然ゴムを使って太鼓を作り、叩いていた大学。インパクト満点

天然ゴムを使って太鼓を作り、叩いていた大学。インパクト満点

こちらも学生のプロジェクト。多くのモーターでパワーアシストする装具。重い物を持ち上げることためではなく、障害者のアシスト用らしい

こちらも学生のプロジェクト。多くのモーターでパワーアシストする装具。重い物を持ち上げることためではなく、障害者のアシスト用らしい

クアラルンプール近郊の中学生が大量に押し寄せる

土日にも人は多かったが、初日の教育Dayがもっとも大入りになった。クアラルンプール近郊から大量のバスで中学生が押し寄せ、様々なプロジェクトを体験していく光景があちこちで見られた。

マレー半島にはマレー系、インド系、華人系の住民が住んでいる。シンガポールは民族融合政策をとっているので、どこの学校でも民族の隔てはなく教育レベルは高い。どのぐらい高いかというと、シンガポール在住の外国人が通うインターナショナルスクールの最高点が、公立学校の平均点に及ばないぐらいのレベルだ。

マレーシアでは、私立学校のレベルが公立学校よりだいぶ高いため、私立学校からの参加が盛んである。今回のサイエンスフェスタに観光バスで乗り付けてきたのも私立学校が多く、華人学校の制服を着ている参加者をよく目にした。

僕が日本から持ってきた『Mr.Knocky』(明和電機)、『BOCCO』(ユカイ工学)などを楽しむ中学生たち

僕が日本から持ってきた『Mr.Knocky』(明和電機)、『BOCCO』(ユカイ工学)などを楽しむ中学生たち

マレーシアの英語教育のレベルは非常に高く、出展者も来場の中学生たちも英語だけで用が足りるぐらいには話せる。会場内の第二言語は完全に中国語で、昼飯の時など子供同士でしゃべっていたのは中国語だった。マレー語はほとんど聞こえてこない。

出展していた何人かのマレー人に尋ねたら、「やっぱり華人は勉強が好きで、しかも親も勉強してる」とのこと。実際に、華人系の家族だと先に親が興味を示して、自分が理解してから子供に教えていることが多いようだ。人口的にはマレー系の方がはるかに多いので、大学の定員などで問題が生じることがあり(ほっておくと高学歴者が全部華人になってしまう。一方でマレー系を優先すると優秀な人が海外に流出してしまい、そのまま帰ってこないことが多いという)、マレーシアの政府も頭を悩ませているようだ。

それはともかく、実際に多くの子供がサイエンスフェスを訪れ、楽しんでいるのは間違いない。

会場の一角にはMakerのブースもある。

今回僕らは、マレーシアのWeMakerグループが会場最大のブースを構え、その一角に招かれた。この「僕ら」というのは、東南アジアメイカースペースネットワークのことだ。

東南アジアメイカースペースネットワーク『SEAMNet』

今回僕は、『South East Asian Makerspace Network』(以下、SEAMNet)の一員としてサイエンスフェスタに参加した。

SEAMNet は東南アジア各地28のMakerスペースが参加しているネットワークで、オーガナイザーは連載第3回にも登場したマレーシア出身のWilliam Hooiが務めている。

今、東南アジア各地にメイカースペースがすごい勢いで増えていて、例えばタイのバンコクには去年1つ(しかもオランダ人が運営)しかなかったものが、今年いきなり5つに増えた。フィリピン、カンボジアにもMakerスペースができている。

SEAMNetに参加しているグループは自発的に作ったところが圧倒的に多いが、政府補助を受けているところもある。バックグラウンドはさまざまだが、カリキュラムの作成や資金調達、ビジネスモデルの構築など、共通の課題も多い。

何より他のメイカースペースの活動は刺激になるので、今回ネットワークを組むことになったのだ。

彼女 Chong See Mingとは深圳、シンガポール、東京のMakerFaireで会った。マレーシアには国際的に活動するMakerも多い

彼女 Chong See Mingとは深圳、シンガポール、東京のMakerFaireで会った。マレーシアには国際的に活動するMakerも多い

シンガポールは東南アジア最大のチャンギ空港と、複数のLCC会社があるので、アジア各地から非常に来やすい場所だ。国内の交通の便も非常にいいし、そもそもの言い出しっぺの僕らがシンガポールにいるので、会合はシンガポールで行い、2015年6月にイベントを開催したこともある(イベントにはこの連載でおなじみのヴィヴィアン大臣も来訪している)。

William Hooiがオーガナイザーを務める『OnemakerGroup』は、シンガポールのMakerスペースをまとめてエコシステムを作ることを目的にしていて、政府の施設である『National Design Centre』に2年間限定でPrototyping LabというMakerスペースを設けている。

この施設には、多くのデザイン分野で起業したベンチャーが安く入居しているほか、展示会やカンファレンスなどを行うスペースがあり、シンガポール政府の部局であるiDA(Infocomm Development Authority/情報通信やインターネット活用などを促進している組織)が中に事務所を持ち、さまざまな活動をサポートしてくれる。

例えば「デザイン見本市やるけど、政府広報に載せてくれないかなあ」とか、「あそこの公民館貸してくれない?」とか、「イベントやりたいんだけど、出展したがるような会社知らない?」みたいな話だ。シンガポールはこういう連携を作るのがとても上手で、しょっちゅうさまざまなMeetupをやっているし、そこに役人が顔を出すことも多い。

第1回の会合もそのNational Design Centerで行っている。

今回はマレーシア最大のメイカーコミュニティWeMakersがサイエンスフェスタにブースを構えることになり、その一部でSEAMNが招待されたので、日本代表として僕も参加した。

ベトナムからFablab Saigon、タイからCHIANG MAI MAKER CLUB、インドネシアからARCLab、シンガポールからOneMakerGroupが参加して、マレーシアと、日本からの僕を含めた6カ国が揃ったことになる。

CHIANG MAI MAKER CLUBは、もうレポートをアップしている。タイ語のレポートに自分の写真を見るのはちょっと変な気持ちだ。

東南アジア各地から集まったMakerたち

東南アジア各地から集まったMakerたち。前列真ん中でえんじ色のTシャツを着ているのが、オーガナイザーのWilliam Hooi

タイやインドネシアでもサイエンスイベントを見たけど、これだけ大規模にやっているのはシンガポール以外ではマレーシアのこのイベントが初めてで、こういう動きが東南アジア全体に波及していくのだろうと感じた。

告知

【1】東南アジアメイカースペースネットワークでは、新しくネットワーキングするメイカースペースを募集しています。日本は東アジアなのでそこまで対象じゃないけど、興味ある人は僕まで連絡をください。シンガポール来て、グループの紹介をしていただければと思います。

【2】11月21日(土)の『Rakuten Technology Conference 2015』で、アジアのMakerムーブメントについて講演します。参加無料ですので、ぜひご来場ください。

【3】12月の初旬から前半ぐらいに、この連載で扱っているような、アジアのMaker事情をまとめた書籍が出る予定です。タイトルや出版日が決まりましたら、僕のTwitterなどで告知します。

>> 高須正和氏の連載一覧

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/tsumikii ユーザー参加型のモノづくり「オープンディベロップメント」とは~“閉じた開発”からの脱却が製造業を変える //type.jp/et/log/article/tsumikii Wed, 11 Nov 2015 10:13:08 +0000 プログレス・テクノロジーズが提供する開発コミュニティー『tsumikii』のメンバー

プログレス・テクノロジーズが提供する開発コミュニティ『tsumikii』のメンバー

インターネット上で資金調達を行う「クラウドファンディング」や、他社との協業で新たな価値を生み出す「オープンイノベーション」、OSSと同じ要領でモノづくりを進める「オープンソースハードウエア」など、近年、ハードウエア製品の開発スタイルが進化を遂げている。

そんな中、2015年10月に行われたアジア最大級の最先端IT・エレクトロニクス総合展『CEATEC JAPAN 2015』に出展された『オレクル』という製品が、製造業に新たな可能性をもたらすモノとして脚光を浴びている。

「さあ、スターのように登場しよう」というキャッチコピーが付けられた入場曲システム『オレクル』

スマホと連動し、オフィスに出社してきた人に合わせて「入場曲」が流れるスピーカーである『オレクル』は、「毎日の出社を楽しく」というユニークなコンセプトと、シンプルでありながらも親しみの持てるフォルムから、会場で高い評価を得た。

この『オレクル』を生み出した開発コミュニティ『tsumikii』が取り入れている開発手法こそが、今後のスタンダードとなり得る新手法「オープンディベロップメント」だ。

先行して世の中に浸透している他の手法とは一線を画すこの手法についてより詳しく知るべく、『tsumikii』を運営するプログレス・テクノロジーズを直撃した。

企画段階から意見を募り、「本物のユーザー目線」を実現する

【アイデアステージ】【製品化ステージ】【販売ステージ】の3つのフェーズでモノづくりを進める『tsumikii』

【アイデアステージ】【製品化ステージ】【販売ステージ】の3つのステージでモノづくりを進める『tsumikii

製品開発会議をインターネットで生中継し、コミュニティメンバーからアイデアを募りつつ開発を進めていく。それが、『tsumikii』が手掛けるオープンディベロップメントというスタイルだ。もともとは社内のコロニー(新事業)創出プロジェクトを改良する過程で生まれたスタイルだという。

当初、プログレス・テクノロジーズのコロニー(新事業)創出プロジェクトでは、社員から出された事業アイデアを、特定のメンバーのみで審査していた。その過程で、「アイデア審査の段階から、社員や、その製品・サービスのユーザーとなる人たちも参加してブラッシュアップすることができたら、もっとニーズのある製品を生み出せるのではないか」という声が上がったという。

さらには、社員やユーザーに、アイデアが生まれて製品になるまでのストーリーに参加しファンになってもらうことで、単にデザインや機能の良さにとどまらない新しい価値を提供したい。そう考えた結果、ユーザーとともに開発を進める『tsumikii』が生まれたのだと、設計開発サービス部長である石澤祐介氏は語った。

現在の『tsumikii』が完成形とは考えておらず、より良い形のオープンディベロップメントを目指して今後も試行錯誤を続けていくのだという。

「大手メーカーによる製品開発の場合、一般的には販売直前まで製品情報がオープンにされません。しかし、先に企画段階の情報を公開すれば、製品に対するユーザーの要望を事前にキャッチすることができると考えたのです」

結果として、よりユーザーに求められる製品へとブラッシュアップすることが可能となる。これが、オープンディベロップメントによる製品開発の利点だ。

しかし、石澤氏いわく、オープンディベロップメントのメリットはそれだけに終わらないと言う。

「私は前職で電子機器の開発を手掛けていましたが、大手メーカーではほとんどが分業制。自身の担当領域以外に意識がおよばず、製品の全体像が把握できなくなってしまうという課題がありました。ですがオープンディベロップメントの場合、開発の進捗が常にオープンですし、必然的にユーザーの声を意識するようになるのです」

オープンディベロップメントは、分業制による“閉じた製品開発”ではなく、全員参加型のモノづくりの実現に一役買っているのだ。

成功のカギは「技術や知識もシェアする」意識

設計開発サービス部長の石澤祐介氏

設計開発サービス部長の石澤祐介氏

従来の“閉じた開発”から脱却するためには、ユーザーの存在を意識することはもちろん、メカ・エレキ・ソフトウエアなど分野を横断した知識を持つことが必要となる。とはいえ、エンジニア1人1人が全ての技術領域を完璧に把握するのはなかなか難しいというのも事実だ。

「だからこそ、大切になるのは『チームで開発する』という姿勢です。それぞれ専門分野を持つエンジニアが集まることで知識はシェアされていきますし、特別に高い技術力が必要な場合には専門のエンジニアに頼ればいい。また、オープンにすることで解決策を持つ人が協力してくれることも考えられる。あとは、それぞれが自分の専門分野にとらわれず、ユーザーにとって最高の製品を生み出そうとするマインドの問題だと考えています」

『tsumikii』では、ユーザーから募ったアイデアをもとに、自社が抱えるエンジニアたちが製品開発を進めているそう。ここが、すべてをコミュニティにゆだねるオープンソースハードウエアと異なる点であり、完成までのコミットメントと品質が担保される。

もちろんそのチーム内には、それぞれ異なる専門分野を持ったエンジニアがいて、協力し合いながら開発に取り組んでいるという。

ストーリーの共有によって、ユーザーが一番の広告塔になる

オープンディベロップメントによってメリットが得られるのは、開発面のみではない。製品の販売時にも強みを発揮するだろうと石澤氏は予想している。

「完成した製品には、ユーザーのアイデアが盛り込まれています。自身も製品の企画・開発に携わったという意識が芽生えるため、自然と製品のファンとなってくれる。その製品が持つストーリーを共有するというのは、何にも勝るマーケティング手法ではないかと考えています」

近年、製品の機能のみならず、UXやその製品が持つストーリーへの共感が重視されるなど、製品購入者の意識は変化している。そのため、製品開発の過程をユーザーと共有し、共に作り上げた製品であるという意識を持たせることで、愛着を抱かせることができるのだ。

「製品のファンとなったユーザーは、自身が購入するだけでなく、周囲にその魅力を伝える広告塔にもなってくれます。これがオープンディベロップメントの大きな強みですね」

『tsumikii』で生まれた製品は、クラウドファンディングなどを利用したマーケティングを予定しているが、BtoBやBtoBtoCといった他社との連携も検討し、ヒット商品を生み出していきたいと石澤氏は語る。ユーザー参加型のオープンな開発スタイルから、どのような製品が生まれるのか。今後の『tsumikii』にも注目したい。

取材・文・撮影/秋元祐香里(編集部)

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/masui_notification IoT時代の通知技法を考える【連載:増井俊之】 //type.jp/et/log/article/masui_notification Tue, 10 Nov 2015 11:55:38 +0000
増井俊之の「世界の不便を退治しよう」

増井俊之(@masui

1959年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部教授。ユーザーインターフェースの研究者。東京大学大学院を修了後、富士通半導体事業部に入社。以後、シャープ、米カーネギーメロン大学、ソニーコンピュータサイエンス研究所、産業技術総合研究所、Appleなどで働く。2009年より現職。携帯電話に搭載される日本語予測変換システム『POBox』や、iPhoneの日本語入力システムの開発者として知られる。近著に『スマホに満足してますか? ユーザインターフェースの心理学

メールやメッセージが届いたことをユーザーに知らせる通知システムが広く使われています。1980年に開発された「4.0 BSD」というバージョンのUNIXには「biff」というシステムがあり、メールが届いた時、ユーザーのターミナルに通知メッセージを表示できるようになっていました。

1985年ごろの『Sun Workstation』のメールソフトのアイコン。 メールが届くと「旗」が立つ (米国では、出したい手紙をメールボックスに入れて旗を立てておくと 配達人が持っていってくれるのですが、 手紙が届いた時、配達人が旗を立ててくれることもあるそうです)

1985年ごろの『Sun Workstation』のメールソフトのアイコン。 メールが届くと「旗」が立つ (米国では、出したい手紙をメールボックスに入れて旗を立てておくと 配達人が持っていってくれるのですが、 手紙が届いた時、配達人が旗を立ててくれることもあるそうです)

その後、1985年ごろ発売された『Sun Workstation』はBSD版UNIXの上にビットマップディスプレイと先進的なGUIを搭載していましたが、以下のようなメールボックスアイコンで表現されたメールアプリケーションでは、メールが届いた時にメールボックスの右側の旗が立つようになっていました。biffをGUI化した通知システムが1985年ごろにはポピュラーになっていたということになります。

メール到来を通知するアイコンは30年前から使われていたことになりますが、アイコンなどの表示で知らせる手法は現在のスマホなどでもよく使われています。

昔のメールはメールサーバ間のバケツリレー方式で転送されていましたから、メールが届くのは多くても1日に数回程度で、このような通知が煩わしいと感じることはありませんでした。

現実世界でも、通知により作業が中断されるのは誰かが来た時や電話が掛かってきた時ぐらいでしたから、通知が煩わしくて困ることも多くありませんでした。

一方、現在のパソコンやスマホでは、所構わず一方的なタイミングで通知音が鳴ったり、表示が変わったりするため、精神が休まることがありません。現在のスマホユーザーは「通知地獄」に陥っていると言えるかもしれません。

仕事をしている時に通知音が鳴ると気になりますが、通知音が鳴るたびに対応していると、細切れ時間で仕事を行う「マルチタスキング」を行うことになってしまいます。マルチタスキングは効率が悪いので避けたいものですが、通知を完全に無視するのは精神力が必要なので、適切な通知だけが適切なタイミングで届いてほしいものです。

通知地獄はIoT技術によって解決できる

通知の問題はパソコンユーザーにとって昔から悩みの種になっていたようで、通知問題を解決するためのシステムの研究が2000年ごろから盛んになっていました。

インターネットの普及によりメール以外のさまざまな通知がリアルタイムで届くようになったことが、こういう研究の背景になっていたのだろうと思います。

通知手法に関する研究は近年、また盛んになってきたようで、先日大阪で開催されたUbiComp2015コンファレンスでは、通知問題に関連する論文が何件も発表されていました。

人間の状況を取得する手法に関する論文の手法の分類. (L. D. Turner, S. M. Allen and R. M. Whitaker. Interruptibility Prediction for Ubiquitous Systems: Conventions and New Directions from a Growing Field. in UbiComp'15 Proceedings, pp. 801-812.)

人間の状況を取得する手法に関する論文の手法の分類. (L. D. Turner, S. M. Allen and R. M. Whitaker. Interruptibility Prediction for Ubiquitous Systems: Conventions and New Directions from a Growing Field. in UbiComp’15 Proceedings, pp. 801-812.)

モバイル機器の普及により、どこでも通知を受けられるようになり、通知を制すれば人間行動を制することができるとサービス会社が考えているのか、いろんなサービスがやたら通知を出すことになって地獄化が進んでいることに加え、ユーザーが通知を受けられる状況かどうかをさまざまな方法でセンシングしやすくなってきたことが関係しているのだと思われます。

そもそも通知地獄が進行したのは、インターネット技術やモバイル技術の進化のせいだと思われますが、このような通知地獄はIoT技術によって解決できる可能性があります。

・どういうタイミングで通知を行うか
・どういう方法で通知を行うか

という2つの課題をIoT技術で解決できる可能性があるからです。さまざまなセンサを利用してユーザーの状況を検出して通知タイミングを調整したり、ユーザーに負担を与えない通知方法を工夫したりすることができるでしょう。

ユーザーの状態を把握し、最適なタイミングで通知する

ユーザーが通知を受けられる状態かどうか、退屈しているかどうか、疲れているかどうかなどを判定できれば、それを利用してタイミング良い通知を行うことができるでしょう。

ユーザーの状態を正確にセンシングできれば、通知に適したタイミングを知ることができます。動悸センサ/発汗センサ/筋電センサ/脳波センサなどを利用すれば、ユーザーの脳の活動状況やリラックス具合などを計測できるでしょうし、アルコールセンサを利用すれば飲酒状況も計測できると思われます。

こういった生理センサを利用して、適切な通知タイミングを知ろうとする研究が行われてきましたが、通知を制御するだけのためにこのようなセンサを装着して暮らすのは、現状では少々難しいかもしれません。

ユーザーの会話状況、誰かと一緒かどうかといった周囲環境を観測したり、ユーザーの椅子の加重状況を計測したり、ユーザーのキーボード利用状況などをモニタしたりすれば、ユーザーにセンサを密着させなくても、ユーザーの状況をある程度センシングできるでしょう。ユーザーがしばらく動いていなければ、沈思黙考しているか居眠りしているかだと思われるので、後者の場合は適切な通知を送るのが良いかもしれません。

現在は誰もがスマホを持ち歩いていますが、これに加えて誰もがスマートウオッチやウエアラブル端末を持ち歩くようになれば、これらのセンサ情報だけを利用して、かなりの精度でユーザーの状況を把握できるようになると思われます。

ユーザーの周囲の状況を観測するためにカメラやマイクを設置するのは大変ですが、着席時にスマホを脇に置いておくぐらいならば問題なさそうです。寝落ちしたら通知音が鳴るとか、酩酊状態でネット投稿しようとすると警告されるとかいった応用に利用できそうです。

しかし、ユーザーの状況を計測して完全な通知ハンドリングシステムを作ることは困難です。ボーッとしているのか/関係ないことを考えているのか/ものすごいアイデアが出ているところなのかを判定することは相当難しいでしょう。

また、通知の内容によって動作が変わることが好ましい場合もあります。例えば会議中はメールの通知は届いてほしくないのが普通ですが、会議で議論されているシステムの進捗メールは届いてほしいかもしれないので、通知の中身まで考慮したフィルタリングが必要かもしれません。

しかし、メールの内容を元にspamを根絶することが難しいのと同様に、通知内容を元に通知を制御することはかなり難しいでしょう。完全な通知システムを作ることは無理かもしれませんが、現在より適切な通知システムを作ることは可能でしょうから、さまざまな試みの研究が進んでほしいものだと思います。

アンビエントな通知方式を利用する

大きな音や光による通知は邪魔ですが、もっと穏健な通知方式を利用すれば、通知イライラ問題は解決するかもしれません。ネットに接続されたディスプレイやアクチュエータをアンビエントな通知システムとして利用する、さまざまな試みが行われています。

1. 光によるアンビエントな通知システム

MITメディアラボの石井裕氏は、1995年ごろから『Tangible Bits』という名前で実世界と計算機世界を融合するさまざまなシステムを提案しており、さまざまなアンビエントな通知システムも提案しています。

『Water Lamp』はAmbient fixture(アンビエントな家具)シリーズの作品の一つで、水面を経由して情報を天井に投射することができます。

WaterLamp 1997 from Tangible Media Group on Vimeo.

『Orb』はメディアラボ出身者が設立したAmbient Orb社が開発した、ランプのようなアンビエントな通知システムです。株価や天気などの情報をアンビエントに通知することができます。

『Orb』は製品としてはあまり成功しなかったようですが、アンビエントな光を出す家具というアイデアはまだまだ健在で、auは8月に『Umbrella Stand』という製品を発表しました。本体底のLEDが光ることによって、傘が必要かどうかが分かるようになっています。

Phillipsの『Hue』のようなネットワークから制御が可能な電灯製品が増えてきましたが、『Hue』のような製品を使うと、『Orb』や『Umbrella Stand』のようなアンビエントな照明を比較的簡単に自作できます。

例えば橋本翔氏が公開しているソフトウエアを利用すると、20行程度のRubyプログラムを使って今日の天気を『Hue』で表示するシステムを作ることができます。

2. アクチュエータを活用したアンビエントな通知システム

モータのようなアクチュエータを利用すると、さらに面白いアンビエントな通知システムを作ることができます。

前述の石井裕氏らによって2000年に製作された『Pinwheel』は、ネットのケーブル上のトラフィックを「風車」でアンビエントに通知するシステムです。ケーブル上を流れるデータの量に応じて風車が回転するので、ネットワークのデータを体で感じることができます。

Pinwheels 1997 from Tangible Media Group on Vimeo.

江ノ島の風通知システム

江ノ島の風通知システム

右の写真は、私の研究室の小浦侑己氏と山田尚昭氏が作成した『江ノ島の風』通知システムです。

プロペラの向きと回転数をサーボモータと直流モータで制御することにより、江ノ島の現在の風速と風向きが常に表示されるようになっています。

ヨットやウインドサーフィンのようなスポーツが好きな人は、部屋に置いたこれを眺めてソワソワすることができます。

通知地獄の解消はカームな世界への第一歩

世の中の通知がまだまだ増えるのは間違いありませんし、通知を扱うための使いやすいIoTデバイスやセンサが増えるのも間違いありませんから、今後もいろいろな通知システムが登場してくるでしょう。

いつでもどこでも誰でもコンピュータが活用できる「ユビキタスコンピューティング」の世界が実現しつつありますが、スマホにどっぷり漬かって通知に右往左往する人たちが増殖している現在は、理想と程遠い状況のように感じられます。

ユビキタスコンピューティングという言葉を提唱したMark Weiser氏は、早くからこのような危険に気付いており、「カーム(Calm)テクノロジー」という概念を1995年に提唱していました。

カームテクノロジーの世界では、コンピュータはあまり主張せず、さりげなく人間を助けてくれる存在になります。このような目標が実現された社会を「アンビエント情報社会」と名付けて、その実現に向けて研究を行っている人たちもいるようです。

Weiser氏の提案から20年も経つのに、カームな世界が実現されていないのは悲しいことです。ユーザーが能動的に努力してコンピュータを利用しなくてもコンピュータやネットの恩恵を十分に受けられるようにするため、IoT技術を駆使して通知地獄を解消するところから始めていきたいものだと思います。

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//type.jp/et/log/article/taimei-5 UI設計は手法より「文化」を意識しよう~iPhoneの3Dタッチはファミコン世代をスマホゲームにいざなう!?【連載:TAIMEI】 //type.jp/et/log/article/taimei-5 Mon, 09 Nov 2015 12:41:19 +0000
TAIMEIの「Innovation Roadmap」

小俣泰明(TAIMEI)@taimeidrive

NTTコミュニケーションズなどの大手ITベンダーでシステム運用やネットワーク構築の技術を磨いた後、面白法人カヤックでディレクターを担当。その後、2009年4月に上場企業の取締役に就任。2012年8月にトライフォートを共同設立、代表取締役Co-Founder/CTOに就任。スマートフォンアプリ・ソーシャル領域に特化した開発・運営を展開している

ユーザーインターフェース。僕がサービスを開発する時、最も重要視しているキーワードの一つです。

今回はUI設計をする時に意識する、一般的なやり方とは違った切り口の設計思想をお伝えできればと思います。

その切り口とは、「文化から考えるUI設計」です。

その前に、少し昔を振り返ってみましょう。

1990年後半から2000年代にかけて、日本国内ではガラケーが流行り、携帯サイトが「文化」になりました。ビジネスとしても「携帯課金」という概念が生まれ、モバイルから課金する文化が生まれました。

この文化は世界でも先行しており、モバイルでのアプリ収益は今も日本が世界第1位というデータが出ています。

なぜ、ガラケー時代に「タッチ入力」は流行らなかったのか?

From MIKI Yoshihito ガラケーの普及で日本に根付いた「文化」とは?

From MIKI Yoshihito
ガラケーの普及で日本に根付いた「文化」とは?

モバイル分野がサービスとして発展していくきっかけとなったのは、携帯メールでのやりとりです。ガラケー全盛期、日本のユーザーはdocomo,ezweb(au)、softbank各社のメールでコミュニケーションを取るようになりました。メアド交換を赤外線で行う文化も生まれましたね。

そして、UIにおいてはテンキー入力という入力手法が広まりました。若いユーザー層は、テンキー入力の方がキーボードよりも早く入力できるような状況にまでなっていきました。

そして迎えたスマホ時代。携帯のUIは一新され、新たな操作性をユーザーに迫ることになったわけです。

このガラケー→スマホへの転換で生じた変化をまとめてみましょう。

■課金:キャリア課金からApple、Google課金へ。

■コミュニケーション:携帯メールからLINEなどのチャットアプリへ。

■絵文字:デコ絵文字やキャリア絵文字からスタンプへ。

■連絡先の交換手法:SNSでのID検索。もしくは登録された電話番号などからの自動連携。

■入力方法:テンキーからフリック入力、音声入力へ。

ここで重要なのが、すべてが革新的に変わったのではなく、前の時代からあった「文化」を引き継ぎながら、スマホにマッチしたUIに進化したということです。

言い換えれば、普及の前提に「文化の醸成」があったから、代替技術が普及したのだと思います。

その証拠に、ガラケー時代にも画面タッチ型の携帯はいくつか登場していましたが、そのほとんどが流行ることなく消えていきました。UIは、ユーザーに理解されて初めて成立するものだからでしょう。

「文化」の延長線上にある提案は、すぐ受け入れられる

From Masaru Suzuki  そこまで大きな話題にはなっていないiPhone 6sの3D Touchですが、けっこう可能性があると感じています

From Masaru Suzuki
そこまで大きな話題にはなっていないiPhone 6sの3D Touchですが、僕はけっこう可能性があると感じています

では、本題に戻り、スマホ時代のユーザーに受け入れられているUIとは何かを考えてみましょう。

それはサイドビューであったり、スワイプメニューであったり、フォームライブラリであったり、いろいろありますが……。僕が今回書きたいのは、こういう小手先のテクニックではありません。

ユーザーはスマホに慣れてるわけではなく、今までの「文化」に慣れているだけなわけです。そう考えると、文化レベルでのUIは理解できます。

どういうことか?

過去、携帯課金をしていたユーザーは、スマホでも課金する方法を覚えてくれます。

過去、コミュニケーション(メールでのやりとり)をしていたユーザーは、スマホでもチャットアプリの操作方法を覚えてくれます。

過去、絵文字やデコレーション絵文字を使っていたユーザーは、スタンプの操作方法を覚えるといった考え方になってくれます。

つまり、新しいサービスのUI設計を進める場合は、その操作方法が便利かどうか?や、デバイスに最適化されているか?という視点もさることながら、その操作方法が「ユーザーの文化レベルで浸透しているか?」も考えながら開発することが大切になるわけです。

この概念が、サービスのUI設計で重要なポイントだと考えてます。

そう考えると、例えばカスタマーサービスのフォーム設計時などでは、「スマホではフォーム入力ではなく、チャット形式で入力できるように設計しよう」という風に発想をふくらませることもできるでしょう。コミュニケーション文化の延長線上にある、新たな手法として。

ぜひ、ユーザーの文化レベルを意識したUI設計というのを意識してみてはいかがでしょうか?

個人的には、iPhone 6sに搭載された3D Touchに注目しています。よくよく考えてみると、「ゲームをやってて強い敵が出てきたら強くボタンを押す」みたいな使い方ができる気がする。興奮するとボタンを強く押しちゃうのって、ファミコンの時代からあるあるな「文化」でしたからね^^;

非常に楽しみなモバイルUIの一つなので、Androidにもぜひ搭載してほしいです(ここ、特許争いとかで導入できないとかしないでほしい……)。

スタンダードな操作方法の一つになることを期待しています。

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/fshin44 SEとWebエンジニアの間にある「キャリアパスの断絶」をどう解消するか【連載:えふしん】 //type.jp/et/log/article/fshin44 Mon, 09 Nov 2015 10:02:40 +0000
えふしんのWebサービスサバイバル術

藤川真一(えふしん)

FA装置メーカー、Web制作のベンチャーを経て、2006年にGMOペパボへ。ショッピングモールサービスにプロデューサーとして携わるかたわら、2007年からモバイル端末向けのTwitterウェブサービス型クライアント『モバツイ』の開発・運営を個人で開始。2010年、想創社を設立し、2012年4月30日まで代表取締役社長を務める。その後、想創社(version2)を設立しiPhoneアプリ『ShopCard.me』を開発。2014年8月1日からBASE(ベイス)株式会社のCTOに就任

皆さんこんにちは、えふしんです。

僕がモデレータで参加しているWebSigというコミュニティが、今年の11月21日、芝浦工業大学の学生向けにWeb業界のキャリアについて話をするイベントを行います。情報系、工学部系の学生で、将来はソフトウエアエンジニアになろうしている人を想定して開催する予定です。

一緒にWebSigのモデレータをやっている技術評論社の馮さんいわく、芝浦工大の学生のような理系の学生は、非常に真面目なので産業界を支える存在として多くの会社から期待されているとのことでした。

それゆえ、彼らがソフトウエア産業に就職しようとした場合、大手SIerやメーカー系の歴史の長い企業、もしくはその系列や取引先から声が掛かることが多いようで、Web業界への就職はまだまだマイノリティだと考えています。

ですので、彼らが将来Web業界に行きたくなった時に転職しやすくできたらいいなと思っています。今回は、そこに向けて考えていることを書いてみたいと思います。

Web業界目線で考えた「ITエンジニアのスキルマップ」

一つの論点として、あくまでWeb業界にいる僕が考えた、「IT産業のエンジニアスキルマップ」を以下の図に示してみます。

IT産業のエンジニアスキルマップ

横軸がプログラミングスキルで、縦軸が大規模システム開発のノウハウです。

僕自身はSIerに勤めたことがないので、取引先として外注で関わった時の経験や知人の話、僕のブログへの反応など、周辺から見聞きした程度しかSEの置かれた状況を知りません。ですが、その知識を前提に、SIとWeb業界のキャリアパスの違いを考えるなら、こういう分類がいいのかなぁと思って作ってみました。

この図で表現したかったのは、つまりこういうことです。

【1】大卒以上でSE職になると、プログラムを書かない人材に育てられる傾向が強い。

【2】SE職のキャリアで得られるスペシャルなスキルは、大規模業務システムを構築、運用するノウハウ(ビジネス、システム、マネジメント)である。

【3】一口にSE職と言ってもいろんな会社があって、ガンガンコードを書ける会社もあればそうでない会社もある。コードを書かない生活に浸かってしまう人と、その人たちを技術でサポートする人たちがいる。ここを混ぜると話がややこしくなる(今回の想定は前者)。

【4】それに対して、Web業界の開発はあらゆることをコードで表現するので、サーバ構築、運用も含めてコードが書けないと困る時代に突入している。コードを書ける上司と、コードを書く人たちによるチームになる。

A象限の人がスーパーマンです。つまり大規模システムも作れるし、コードで自己表現もできるし、そのまま成果物としてユーザーが使えるモノを作れます。

それに対して、もう少し普通のSEの人だと、C象限に属するような印象です。

で、多くのWeb系のエンジニアはB象限になるかと思います。さらに言うと、クラウドの発展によって、B象限にいるエンジニアでもベストプラクティスを活用することで大規模なWebベースのシステムを作れる時代になっていると言えます。

かつて、mixiアプリのトラフィックで返り討ちにあったベンチャーが、AWSに泣きついて事なきを得たというのは、まさにこの現象と言えます。

SE→Web業界へのキャリアチェンジが難しい理由

上の図は、あくまでも「Web業界にいる人」の目線で作ったということを繰り返し書いておきますが、優秀な人材が新卒でどこかのSIerに就職し、後にその人がWebベンチャーなどに転職したいと思ったとしましょう。

同じ「エンジニア」ですから、本来は、SIerでSEをしてきたキャリアと、その後のWebエンジニアとしてのキャリアは線形でつながっていてほしいですよね。

企業規模の面ではSIerの方が給料が高いと予想されますから、むしろ上から目線で転職できることこそが「選択肢の幅が広い」ということになるべきです。

ところが現実は、コードを書かないまま教育されたエンジニア(SE)の人はC象限に分類され、Web業界が求めるエンジニアはB象限ですから、C→Bへのレーンチェンジは既存のキャリアの延長線では難しいわけです。

異なる象限を超える努力をしない限り、Web業界へ転職する時、開発現場が求める技術の実装・運用の経験が少ないという理由で「経験不足」と言われてしまうことは否めません。

高学歴でSI業界に就職して、バリバリ働いているSEが、いざWeb系に転職してみようとしたら経験不足と判断されるというのも、ちょっとおかしな話かなと思うところがあります。

でも、現実に断絶がある以上、(たとえWeb業界に入らなくても)将来の選択の幅を狭くしないためには、実装や運用の勉強は自分でしておかなきゃいけないことを覚えておいてね、と。これが、今回のWebSigを企画した僕らの問題意識です。

ジーズアカデミーの一期生にも、レーンチェンジ希望者がちらほら

話は変わり、先日、僕がメンターとして参加しているデジタルハリウッドのジーズアカデミーTOKYOという起業家育成を目指した教育プログラムで、第一期生の卒業発表が行われました。

そこで何人かのプロフィールを見ていて気が付いたのが、高い学歴を持って大企業の系列企業に就職した方の多くが、やはりコードを書く機会を得られないまま育ってきたということです。

結果、数年後に自分自身で問題意識を見出し、C→Bのレーンチェンジを目指してプログラミングを学んでいる姿がちらほら見かけられました。

もしかしたら、そういう人は学生時代も就職してからも、そんなに意識が高くなかったのかもしれません。でも、そういうエンジニアの方が世の中にはたくさんいるわけで、大人になっていく中で「もっとこうすればよかった」と思うことが見つかった時に、変わるきっかけとしてジーズアカデミーへの入学を選んだのかなと思っています。

そこにメンターとして関われていることは、大変うれしく思います。今年のWebSigイベントでも、こういう現実を先に知っておいてもらえれば、将来どこかでレーンチェンジをしたくなった時の役に立つかもと思って話したいと考えています。

人のキャリアにも「イノベーションのジレンマ」は存在する

イノベーションのジレンマとは、既存企業の培ってきた成功法則が、新興勢力の生み出す新しい成功法則と折り合いが付かなくなり、知らぬ間に既存企業が時代の変化に遅れを取ってしまう現象だと認識しています。

これは、エンジニアのキャリアにも当てはまる話だと思います。

“設計者”であるSEは裁量労働制で働けるのに、“労働者”であるプログラマーは裁量労働者として扱われない場合があるという「SI産業の雇用の常識」に対して、新興勢力であるWeb業界は、SEとプログラマーの両方を役割を兼ね備える立場として新しいワークスタイルを作っていく必要があります。

SIerのすべてが上で説明したような雇用形態になっているわけではないと前置きしつつ、今も残るこうした状況は、「コードを書く」という行為の重要性におけるイノベーションのジレンマなのではないかと思うからです。

Web業界の開発では、「誰かが絵を書いて、職人さんがコードに起こす」という製造業的な生産プロセスはもう終わっていて、「絵も書くし、コードも書く」というフェーズに移り変わっています。

その理由の一つは、製造業や建築とは違って、実際にモノを作ってみるまで成否が分からないという不確実性にあります。なぜ不確実かというと、ソフトウエアを使うのが人間だからでしょう。

そんな世界で成功するには、コードを書き、壊すことを繰り返し行うしかありません。その回数と速度をどれだけ上げるか?というイテレーションのサイクルを、たくさん回すしかないのです。

その原資となるものは、積み上がった再利用可能なソフトウエア資産と、Web上で共有されるノウハウです。ソフトウエア資産はコピーをすることで一瞬で再利用が可能です。それをベースとして世界中の企業が競争をするので、のんびり伝言ゲームをしながらコードを書いてたら、スピードが遅くて間に合わないということになります。

対して、重厚長大なSIerの開発現場で求められるのは、過去に作り上げたソフトウエア資産をどのように守っていくか?という視点です。

エンタープライズシステムは、規模が大きくなればなるほど保守・運用が必要になりますから、既存のルールを維持することが重視されている限りは、守りの仕事をする人たちの雇用は絶対になくなりません。

ただし、SIerに勤めるエンジニアも、もう一つ持っておくべき視点があります。産業構造そのものを破壊するような新技術が誕生したら、守るべきソフトウエア資産の価値がゼロになるかもしれない、ということです。

不謹慎な例えかもしれませんが、3.11が起きた段階で、福島原発を守る原子力関連の仕事は、現時点の技術レベルだとおそらく30年以上は続くものになってしまいました。これを「ビジネス」として考えるならば、非常に高いニーズがあると言えます。

しかし、もしある日突然、放射性物質の核分裂を止めたり、安全に除去するようなイノベーションが生まれたら、職を失う人がたくさん出るでしょう。

技術の進化による「社会のハッピー」が、自分の存在価値を失う転機になるかもしれない。エンジニアは常に、技術革新における矛盾と対峙し続けることになります。

ソフトウエア産業においても同様です。既存の産業破壊を狙う代替技術自体は、常に出てきてチャレンジを仕掛けてきます。もちろん、チャレンジはチャレンジなので、ダメになる技術もたくさんあるのですが。

例えばFintechにおけるブロックチェーンは、これまでの金融技術に破壊的イノベーションをもたらすかもしれないチャレンジャーでしょう。電気自動車も、既存の自動車産業の置き換えを目指しています。また、カーシェアリングなどによるシェアリングエコノミーは、製造業の販売の基本的な枠組みを壊す可能性もあります。

これまで守らなくてはいけないと思っていた技術の常識が、もっとシンプルになった瞬間に、コストも常識も無効化されることはまれに起きます。

そうなった時に「自分を守る術」として有効な打ち手は何なのか。現時点で、すでにWeb開発の現場は「絵も書くし、コードも書くエンジニア」を求めるようになっている以上、ソースコードを書くというスキルは自身を守る武器の一つになるのは間違いないでしょう。

他に、どんな打ち手が考えられるかは、僕自身もWebSigイベントで探りたいと思います。

最後に、こちらがイベントの参加申し込みページになります。

>> Web屋から見たIT業界・Web業界・ネット業界の働き方とキャリアの作り方

社会人の参加枠は先に埋まってしまいましたが、学生枠はまだまだ空いています。開催ギリギリまで待って、学生の参加人数が少なかったら、社会人枠を増やすと思います。

わざわざ東大宮で社会人だけのイベントをやるのは寂しいです。学生の皆さん、ぜひ来てみてください!

ちなみに僕が今通っているKMDという慶應の大学院では、同じ校舎でIVSの学生向けイベントをやっていて、100m以内にGMOの熊谷正寿代表とかサイバーエージェントの藤田晋社長とか、社会人でもまぁ滅多に会えないような経営者がたくさん来るんですね。なのに、肝心の学生とは断絶してる現実がわりとあって、もったいないなぁと。

今回のWebSig、うまく学生さんたちにうまくリーチできるといいなぁ。

>> えふしん氏の連載一覧

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/uxpress-ide 優れたUXデザインには「EES」がある~米ソニー出身の専門家が語る、世界に通用する製品開発 //type.jp/et/log/article/uxpress-ide Fri, 06 Nov 2015 11:42:45 +0000 UXPRESSのFounder and CEO・井出健太郎氏

UXPRESSのFounder and CEO・井出健太郎氏

製品の優劣が、スペックのような「機能価値」ではなく「体験価値」で判断されるようになって久しい。

それゆえ、ハードウエアやソフトウエア、スマートフォンアプリなど、さまざまな分野の製品開発でユーザーエクスペリエンス(UX)のデザインが重視されるようになってきたのは当然の帰結だろう。この流れは、BtoCのみならずBtoBの分野にも、かつ製品だけでなく取扱説明書にまで浸透し始めている。

これから普及フェーズに入っていくと見られているIoTプロダクトのように、目に見えない技術領域まで「サービス」となる開発では、UXデザインがいっそう必要不可欠なものになるはずだ。

そんな中、米カリフォルニア州サンディエゴでUX専門のコンサルティング会社UXPRESSを創業した井出健太郎氏は、「UXをデザイン面だけで考えるのは危険だ」と警鐘を鳴らしている。

同氏はソニーの米国子会社Sony Electronics Inc.でUX Team Leadを6年務め、6カ国120件を超えるローカライズおよびUX改善プロジェクトを担当。その経験を活かし、2015年1月にUXPRESSを創業している。

現在は自社製品の海外展開を考える日本企業へのUXコンサルティングも多数手掛けている(※企業サイトも日本語版を展開している)が、世界で通用するUXの設計に必要なものとは何なのか。

そして、タイトルで触れた、優れたユーザビリティ(使いやすさ・使い勝手)を実現するために押さえるべき「EES」とは何か。井出氏の話から紐解いていこう。

軽視されがちな「リサーチ」の重要性

井出氏は明治大学を卒業後、留学生として台湾、中国、アメリカと海外を渡り歩く生活を送ってきた。Sony Electronics Inc.に入社する前は、市町村でIT講習の講師を務めたり、米サンディエゴ州立大学大学院で応用言語学を学び言語教育にも携わるなど、ITと教育という2つの畑を経験している。

そんな経歴を持つ井出氏は、UXをデザインするためのコンサルティングを行う際、ある“こだわり”を持っている。

「ユーザーにあれこれ教えなくても、使い方に『気付いてもらう』のが究極のUX。これは、講師をしていた時に学んだ教育の本質とも似ています」

作り手側の意図を押し付けず、この「気付き」を導くために大切なのが、ユーザーリサーチだという。冒頭で、UXがデザイン面だけで語られることへの危惧をコメントしていたのも、井出氏自身、過去の業務でリサーチの甘さがもたらす負の面を体感してきたからである。

「本来、UXをデザインするのは事前のリサーチがないと不可能なもの。ですが、開発費に十分な予算を割けない場合も多く、さらに開発にスピードが求められる現在、とりわけグローバルに展開する製品となると各地域のユーザーの嗜好や行動習慣を十分にリサーチできないままリリースしてしまう傾向があります」

そこでUXPRESSは、拠点をサンディエゴに置くことでコンサルフィーの高いサンフランシスコやシリコンバレーに比べて30%以上のコスト削減を実現しているほか、

■リサーチ被験者のリクルートを自前で行う
■各種ツールを用いてデザイン工数を削減する

などの施策で、成果物の納期を最短2週間で行うことを強みに事業を展開している。

これは、「世界中のコト・モノをもっとやさしく(優しく・易しく)シンプルに」という企業理念に基づき低コスト・短納期を実現することで、より多くの企業にユーザーリサーチの機会を提供するためでもある。

「UX/ユーザビリティリサーチは、ユーザーテスト、ヒューリスティック評価、統計的なサーベイなど複数のアプローチを組み合わせて行います。ただし、大切なのは専門的な手法を駆使することではありません。それ以上に肝心なのは、ユーザー参加型デザインをはじめとした各種ユーザー調査から得た生のフィードバックを、その後のデザインプロセスの『根拠』とすることなのです」

リサーチ結果を踏まえて、作り手たちがUX向上における共通理解・共通言語を持つことで初めて、実際のデザイン・開発プロセス(ペルソナ作成→ストーリーテリング→カスタマージャーニーマップ→ワイヤーフレーム・プロタイプ作成)で製品を磨き上げていくことが可能になると井出氏は強調する。

リサーチのROI(投資利益率)を調べたある調査では、「ペルソナ設定の精度向上で収益は4倍に」、「ワイヤーフレームの見積もり精度が約50%も改善」、「リリース後のリワークとバグ修正が25%減」などといった事例も出ている。UXの向上・改善に向けた各種リサーチを初期投資として考えることは、未来のコストダウンにもつながるというわけだ。

大切なのは「真のユーザー目線、引き算の発想、ストーリー思考」

井出氏自身が「真のユーザー目線」を持ち続けるために行っている行動習慣とは?

井出氏自身が「真のユーザー目線」を持ち続けるために行っている行動習慣とは?

こうしたリサーチを経てUXの設計フェーズに移った後は、ユニバーサルなデザイン(例:なるべく文字ではなくピクトグラムで機能を説明するなど)を行う各種テクニックが求められるが、ここでも手法以上に重要なことがあるという。

それは、「UX向上の担い手がどんなポジションで旗を振るか」だ。

そもそも、製品開発で高いUX/ユーザビリティを実現するためには、冒頭に記した「EES」、

【1】Effectiveness(効果)=ユーザーがどの程度タスクを達成できたか
【2】Efficiency(効率)=どれだけ効率的にタスクを達成できたか
【3】Satisfaction(顧客満足度)=ユーザーの主観でどれだけ満足できたか

の3つを高い水準で保たなければならないと井出氏は言う。

それらを横断的に見ながら製品づくりを進めるには、「経営、開発、カスタマーサービス、マーケティングなどといった関連部署の真ん中にいる人でなければならない」とのこと。このことからも、UXがUIやグラフィックデザイナーのみの仕事ではないことが分かるだろう。

では、ある意味でプロダクトマネジャーのような振る舞いが求められるUXの担い手が、良い製品・サービスを提供・作成するために気を付けるべき点は何なのか。

「一つは、徹底したユーザー目線を持つこと。つまり独りよがりでないおもてなし、真の思いやりの視点を養うことです。次に、ユーザーは機能がてんこ盛りになっている製品だと使い切れない場合が多いため、『引き算』の発想で手掛けるモノを見つめ直すのも大切でしょう。

そして最後に挙げられるのが、体験・ストーリーベースの思考です。今の世の中はモノやサービスが氾濫しており、自分が何を求めているのかユーザー自身が不明瞭だったりするケースが増えています。ユーザーがその製品・サービスを使って何ができるのか、そしてどんな体験ができるかを、ユーザー自身に実感してもらう『仕掛け』を考え抜く必要があります」

「Bad UXなモノ」に敏感であれ

ちなみに井出氏自身がユーザー目線を養い、持ち続けるために行っているのが、日常生活で見かけた「Bad UXなモノ」を写真に収め続けること。

例えばエレベーターに乗る際、ボタンを見て瞬時に何をすればいいのか分からなかった時などに写真を撮り、「なぜ使い方が分からなかったのか?」と自問自答するようにしているのだという。

「海外で長く生活していると、日本固有の暗黙知とアメリカの暗黙知はまったく異なるということにも気付くようになっていきます。こうした違いに敏感になることが、グローバルに通用する良いUXを作り上げる最初の一歩になるのだと思っています。

日本企業は世界に通用する技術やサービスが多数持っていますが、それを海外に普及させるのが苦手な面があります。その壁を越えるためには、特徴を各地域の方々にも分かりやすい形で表現し、落とし込むことが必要です。UXPRESSはそのための橋渡しができればと考えています」

取材・文/伊藤健吾(編集部)  撮影/川野優希

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/squeeze-cto 「民泊」拡大で注目のSQUEEZEに、Pythonコミュニティで活躍する関根裕紀氏がジョイン。新CTOが考える次の一手とは? //type.jp/et/log/article/squeeze-cto Fri, 06 Nov 2015 10:59:51 +0000 (写真左から)SQUEEZE代表取締役社長CEOの舘林真一氏と、CTOに就任した関根裕紀氏

(写真左から)SQUEEZE代表取締役社長CEOの舘林真一氏と、CTOに就任した関根裕紀氏

外国人旅行者の急増や2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催へ向けて、民泊・バケーションレンタル事業への注目度が高まっている。Airbnbのようなホームシェアリングサービスが台頭し、国内では今年8月「国家戦略特別区域を定める政令」が改正され、一部の地域では民泊に関する条例の整備も進み出した。ビジネス面で、今後さらなる需要増が見込まれる有望なマーケットの一つだろう。

その活性化の一翼を担っているのが、2014年9月設立のスタートアップSQUEEZEである。

同社が開発・運営する民泊の不動産オーナー・企業向けサポートサービス『Mister Suite』は、AirbnbやHomeAwayをはじめとした主要な宿泊マッチングサービスにも対応しながら利用者を伸ばしている。そして今年10月19日、SQUEEZEの新CTOに関根裕紀氏が就任した。

複数のスタートアップでエンジニアとして活躍してきた関根氏は、『Pythonエンジニア養成読本』を共著で執筆したり、『PyCon JP 2015』で副座長を務めるなど、日本のPythonコミュニティの中で名の知れた存在だ。

このタイミングで同社に関根氏がジョインした背景には、『Mister Suite』がPythonで開発を進めている(開発環境の詳細はコチラに記載)ことに加えて、民泊事業において技術面でのイノベーションが必要なタイミングという理由があった。

民泊産業の発展には「オペレーションシステムの進化」が急務

バケーションレンタルに必要なプロセスをトータルサポートする『Mister Suite』

バケーションレンタルに必要なプロセスをトータルサポートする『Mister Suite

SQUEEZEが運営している『Mister Suite』とは、民泊における各種オペレーションを分業体制に落とし込み、世界中の在宅ワーカー、カメラマン、ハウスキーパーを各モジュール間でつなぎ合わせることによって、膨大にある民泊業務を回していく、いわば新しいクラウドワーカーのプラットフォームである。

増加する民泊業務に対して、専属の登録スタッフが力を合わせることで、訪日外国人の受け入れ体制を構築している。個人が各々のライフスタイルに合った働き方を選択し、空き時間で必要な作業のみをこなせるような体制を取ることで、「新たに仕事を創出する」というのも同社のビジョンの一つである。

「そもそも何をやれば物件を貸し出せるのか分からない」、「海外からの問い合わせに対応できない」といった人のほか、ホスティングの運用面まで手が回らない物件オーナーや、空室対策として民泊事業に参入したいという不動産会社などを対象に各種サービスの提供を行っている。

同社CEOの舘林真一氏は、このサービスを運営していく上で必要となるシステム面での要諦をこう語る。

ゴールドマンサックス証券シンガポール支社やトリップアドバイザーのシンガポール支社で経験を積んだ後に起業した舘林氏

ゴールドマンサックス証券シンガポール支社やトリップアドバイザーのシンガポール支社で経験を積んだ後に起業した舘林氏

「利用者は訪日外国人がほとんどで、時差を考えると宿泊の問い合わせから予約、チェックインまでのやり取りは24時間対応が基本となります。また、チェックアウトから次の利用者のチェックインまでの間に部屋の清掃を済ませておくなど、オーナーさまだけでは手が回らない部分をこちらでサポートするサービスとなっているため、各種オペレーションをスムーズに進行させるシステムが必要不可欠なのです」(舘林氏)

メールや電話での問い合わせ対応は主に英語となるため海外在住の登録スタッフが、清掃作業などは国内の登録スタッフがそれぞれ対応している。同社のシステムは、こうしたスタッフ=クラウドワーカーの使い勝手も考慮したものでなければならない。

加えて、膨大な客室を一括管理するためのシステムも提供しており、開発陣に求められる能力は非常に高いものとなっている。高性能な業務システム並みの設計と、機能開発の素早さが求められるのだ。

「問い合わせやブッキングに始まって、実際に利用してチェックアウトするまでに必要な機能は膨大にあります。『Mister Suite』のようなサービスのオペレーションシステムは、改善すべきことがまだまだ山積みなのです」(関根氏)

会社設立から1年あまりでサービスを急拡大させてきたため、これまでのシステム開発はスピード優先で「都度対応が中心だった」と舘林氏。つまり、システムの細部にもそれぞれ部分最適が必要であり、その上で全体最適をできるだけ早く実現しなければならないという状況なのだという。

新CTOの最重要ミッションは優先順位を定めたスピーディな開発進行

前職のアライドアーキテクツでは海外向けサービスの開発経験もある関根氏

前職のアライドアーキテクツでは海外向けサービスの開発経験もある関根氏

そこで、経験豊富な関根氏に白羽の矢が立ったわけだが、さらなるサービス進化の糸口として、価格設定時のフォロー機能も開発していきたいと舘林氏は続ける。

「オーナーさまが最も頭を悩ませるのが価格設定です。宿泊料金はシーズンやニーズによって変わるものですが、どう価格を設定すれば高い稼働率を保てるかが分からないという声が非常に多い。そこで、この課題に関してもソフトウエアによって価格設定の自動化を進めています」(舘林氏)

宿泊費設定を自動化するには、膨大な量のデータを分析し、シーズンごとのニーズや周辺エリアでのイベントといった“変数”を加味する精度の高いアルゴリズムの開発が必須だ。

「舘林とはコミュニティ活動を通じて以前から面識があり、Pythonや開発プロセスについて何度か意見交換をしていました。『Mister Suite』の開発についても多少話を聞いていたので、それぞれのエンジニアが何にどう取り組んでいるかはある程度理解しています。正式にジョインしてから日は浅いですが、今は膨大にあるタスクの中でどれを優先すべきかを洗い出し、早々に着手すべき順番を決めたいと考えています」(関根氏)

民泊事業は、海外企業や大手不動産会社の参入など、マーケットの急拡大に伴って競争の激化が確実だ。SQUEEZEが打ち出すビジネスモデルをさらに強固なものにし、スケールしていくことを視野に入れると、オペレーションシステムの高速化と情報共有のための基盤整備をさらに加速させていくのが競争優位につながるだろう。

関根氏がCTOとしてジョインし、開発面で陣頭指揮を執るのは、まさに今でなければならなかったというわけだ。

「競合他社では問い合わせ対応やブッキングなどのオペレーションに多くの人員を割いたり、人海戦術でこなしているところもあります。一方、当社はあくまでもテクノロジーで戦っていきたい。ですから開発陣の強化によって強みをさらに伸ばし、これから台頭する複数の宿泊サイトのチャネルマネジャー、そしてクラウド人材のインフラを提供して国内外にシェアを広げていきたいですね」(関根氏)

ちなみに民泊事業をスケールさせるには、既存の大手旅行会社や不動産企業との協業も一つの手だが、「そういった業務提携は考えていない」と舘林氏は語る。『Mister Suite』を一大プラットフォームに育てていくためには、特定企業の“色”を付けずに独自進化していくのがベターという考えからだ。

関根氏を開発リーダーに迎え、日本発のシェアリングエコノミーにおけるホスティングインフラとして世界を視野に事業拡大を目指すSQUEEZE。急拡大するマーケットの行方とともに、その存在をどれだけ確かなものにしていけるか、今後に注目だ。

取材・文/浦野孝嗣 構成/秋元祐香里(編集部) 撮影/竹井俊晴

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/lifeistech_uzabase ユーザベース竹内秀行氏がライフイズテックの“留学CTO”に就任。キャリアメイクの新しい形となるか!? //type.jp/et/log/article/lifeistech_uzabase Thu, 05 Nov 2015 11:36:44 +0000 (写真左から)ユーザベース執行役員の竹内秀行氏と、Life is tech!取締役CTOの橋本善久氏

(写真左から)ユーザベース執行役員の竹内秀行氏と、Life is tech!取締役CTOの橋本善久氏

中高生に向けたプログラミングスクールやITキャンプの提供を行っている『Life is Tech!』。2014年12月にスクウェア・エニックスの元CTOである橋本善久氏を取締役CTOに迎え、オンラインプログラミング学習サービスの開発にも注力している最中だ。

>> 『Life is Tech!』がスクエニ元CTO橋本善久氏の招聘で目指す「プログラミング教育のピクサー」構想とは?

その橋本氏のジョインから約1年、またしても同社に敏腕エンジニアが加わるという。それが、ユーザベースで執行役員を務める竹内秀行氏だ。

アジア最大級の企業・業界情報プラットフォーム『SPEEDA』や、ソーシャル経済ニュース『NewsPicks』の設計・開発を担当し、ユーザベースにおける技術トップとして同社のイノベーションを支えてきた竹内氏。今回の「就任」は、ユーザベースにも籍を置きながら『Life is Tech!』の開発にも携わる、“留学CTO”というユニークな形式になる。

彼の参画にはどのような狙いがあるのか。橋本氏、竹内氏双方の話を通じて、その真意に迫った。

竹内氏が求めた「新たな組織づくりのカタチ」

昨年の『TechCrunch Tokyo 2014』で「CTOオブ・ザ・イヤー」に輝いたこともある竹内氏

「もともと親交はあったのですが、先日飲みに行った時にすっかり意気投合して、『一緒にやりましょう』ということになったんです」(橋本氏)

そう振り返る橋本氏の言葉通り、今回の取り組みは突発的に決まったそう。CTOとして他社へ“留学”するというアイデアは、今年4月ドリコムとpixivが行った「社会人交換留学」に端を発しており、発案からわずか2営業日でLife is Tech!、ユーザベース双方の合意が得られたという。

大学在学中からプログラミングを手掛け、Webアプリの黎明期から経験を積んできた竹内氏という経験豊富なパートナーを得ることは、Life is Tech!にとって大きなメリットだろう。

一方、竹内氏はなぜこのタイミングでの“留学”を決めたのだろうか。取材班の問いに、竹内氏は次のように語った。

「私はユーザベースで執行役員を務めていますが、これまではエンジニアの1人として行動することでも価値が提供できていました。しかし、組織が拡大するにつれて求められるものが変わってきたと実感しています。自分自身のためにも、そして技術チームのトップという立場としても、常に成長を続けなければならないと考えるようになっていた矢先に、今回の話が持ち上がったんです。

橋本さんは前職時代、数千人規模の大手ゲーム会社でCTOを務めており、その経験も活かしてLife is Tech !やその開発チームを育てようとしています。私は、そこでのマネジメントの様子を見てみたい。そして、Life is Tech!というユーザベースとは異なるカルチャーの組織に身を置くことも、私にとって学びや成長の機会にもつながるはずだと思っています」(竹内氏)

“留学CTO”という名称に込められた、ギブアンドテイクの約束

竹内氏のジョインにあたって熟考されたのは、“留学CTO”と名付けられた役職名だ。

「近年、増加傾向にある『技術顧問』とは一線を画したかったんです。当社だけではなく、竹内さんにも、そしてユーザベースにも価値のあるジョインにしなければならないというのが私たちの考えでした」(橋本氏)

結果、2人が付けた名称が“留学CTO”。Life is Tech!が技術支援を受けるだけでなく、竹内氏にとっても学びのある「留学」のような形式になるように、という意図が込められている。

「企業に勤めているエンジニアは、一般的にはその企業の中でしか経験を積むことができません。しかし、それではどうしても成長に限界がある。複数の企業に属してプロジェクトに取り組むことができれば、その分だけ経験値を高めることができるはず。それを実現するのが、この“留学CTO”という新しい働き方なのです」(橋本氏)

竹内氏がLife is Tech!で新たな学びを得る代わりに、竹内氏もLife is Tech!に自身が持つノウハウを伝授する。ギブアンドテイクな関係性によって生まれる良い化学反応を、両氏共に期待しているようだ。

「CTOは現場のエンジニアの手本となる立場でなければなりません。そういった意味でも、私自身がこのような経験を積めることを非常にうれしく思っています」(竹内氏)

第三者へも伝えていける、実体験に基づく学びの実現を目指して

この“留学CTO”の取り組みには、エンジニアのキャリア形成における「新しい提案」の意味合いもあると話す橋本氏

この“留学CTO”の取り組みには、エンジニアのキャリア形成における「新しい提案」の意味合いもあると話す橋本氏

“留学CTO”のような働き方を画期的に思う反面、それぞれの会社としてはどう受け止めているのだろうか。特にユーザベースに関しては、自社の執行役員が「兼業」となることに対する懸念点はなかったのだろうか。

「私の場合は、会社も快諾してくれました。もともと結果を出せばどんな働き方をしても良いという社風ですし、社員が1カ月間休職して好きなことに取り組む『自由研究』という制度も導入に向けてテストしていたりします。

要は、今回の経験を通じて私がユーザベースに何を持ち帰ることができるのかが重要なのだと思います。私はユーザベースで働くことが好きですし、Life is Tech!での経験は自社のエンジニアたちにもしっかりと伝えていきたいです。それが私のミッションだと考えています」(竹内氏)

今後、竹内氏はLife is Tech!の提供するオンライン学習システムの開発プロジェクトを中心に、Web業界での豊富な経験を活かしたエンジニアチームのマネジメントなども手掛けていくという。技術面を竹内氏が支えることで、橋本氏はサービス設計などにより注力できるようになる。

「“留学”とはいえ、やってもらうことはガチの業務。アドバイザーのように一部分を見て指示出しをするようなポジションをお任せするつもりはありません。それくらい入り込まなければ、やる意味がないと思うんですよね」(橋本氏)

橋本氏は、働くエンジニアの多様性の観点からこう語って締めくくった。

「今の時代はサービスも多様化・複雑化していて、1人のリーダーが全てをカバーするのはスキル的にも時間的にも難しいと思います。私には私の、竹内さんには竹内さんにしかできないことがあり、それが大変良い補完関係を作ることができます。何もCTOだからって1人でやる必要もない。また、1人の人間が一つの場所だけで働く事が絶対でもない時代です。

私自身も自分の会社を経営しながらLife is Tech!で取締役CTOを務めるという、柔軟な働き方をさせてもらっていますが、竹内さんも今回2つの組織に同時に貢献する形になる。そしてそれは、所属組織にとって逆にプラスに作用する場合もあると思います。

“留学CTO”のような働き方が増えれば、エンジニアを志す人材にとっても刺激になるのではないかと思います。私たちは『働き方の未来像』も提示して行ければと思っているのです」(橋本氏)

なお、今回の取り組みに際して、橋本氏×竹内氏のダブルCTOによるLife is Tech!主催の若手・学生エンジニア向けセミナー『今必要とされるエンジニアの「思考」と「サービス開発」』が11月29日に開催されるとのこと。興味がある人は以下リンク先をチェックしてみよう。

>> 2015年11月29日(日)14:30~17:00 渋谷dots.にて。詳しい情報はこちら

取材・文・撮影/秋元祐香里(編集部)

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//type.jp/et/log/article/hfu 日本の“行政Tech”が世界の注目を集めた日~GitHub Universeに登壇した国土地理院・藤村英範氏が語るオープンデータの取り組み //type.jp/et/log/article/hfu Thu, 05 Nov 2015 08:17:45 +0000

先日、GitHubがサンフランシスコで開催した初めての開発者向けイベント『GitHub Universe』のプログラムの中で、国土地理院が地理空間情報活用のために進めているオープンデータの取り組みが、GitHubの活用事例の一つとして紹介され、会場の注目を集めた。

さらに国内のオープンソースコミュニティからも脚光を浴び、日本OSS推進フォーラムが実施する「第10回 日本OSS貢献者賞・奨励賞」で、国土地理院情報普及課は奨励賞を受賞している。

世界でもまだそれほど進んでいるとは言えない行政のオープンデータへの取り組みについて、なぜ国土地理院はいち早く着手することができ、実績を出せる形で運用できているのか。

自らもエンジニアとして同院の情報公開に取り組み続け、GitHub Universeではスピーカーとして発表を行った国土地理院情報普及課の課長・藤村英範氏に話を聞いた。

行政ならではの情報精度と実用性を追求したオープンデータに

―― 日本の自治体でGitHubアカウントを公開しているところは少なく、つい最近までは和歌山県と神戸市と国土地理院ぐらいだったと聞いています。そもそも、GitHubを使いはじめたのはどのような経緯だったのでしょうか。

国土地理院では、全国で測量した地形図データをはじめとした地理空間情報をいろいろな形で利用していただけるよう、インターネット上に2003年からWeb地図『地理院地図』を公開しています。

Web地図『地理院地図』

Web地図『地理院地図

『地理院地図』で閲覧できるデータは「地理院タイル」と名付けて、さまざまなアプリでお使いいただけるようにWeb地図で一般的な形式で提供しています。主に利用されているのは、土木や都市計画などの分野が多いです。ただ、もっと幅広く活用いただくためにどうすればいいかを外部の専門家やエンジニアの皆さんからアドバイスしていただくため、2013年4月から意見交換を行う掲示板としてGitHubを使い始めました。

>> 国土地理院情報普及課公式GitHubアカウントはコチラ

個人では、GitHubがスタートした2008年の7月からアカウントを作成して、活用できるかどうかを検討していたのですが、2012年9月に先にTwitterの活用が始まり、SNSを活用した情報発信に力を入れる流れができ、GitHubもその延長上として活用できるなら取り入れようということになりました。

当初はもっぱら情報共有と意見交換の場としての活用を進めていましたが、使い続けているうちに以前から課題となっていたバージョン管理がやりやすく、ツールとして使えることがはっきりと分かったのです。

その後も、外部からのプルリクエストを受けてデータを提供するなど、いろいろな形で使えるツールだと感じています。

―― GitHub Universeに登壇されたきっかけを教えていただけますでしょうか。

GitHubを用いた当初の技術掲示板は、それほど上手く運用できていたわけではありませんでした。ただ、2014年10月の御嶽山噴火の際に現地で収集したデータを表示するサイトや、2015年1月からは『地理院地図』のソースコードをGitHubを使って公開していたことから、院の活動についてGitHubの方にも知っていただけていたようです。

今年の1月22日に、世界の行政機関が登録するGitHubアカウントをまとめた『GitHub and Government』のリストへ国土地理院情報課のアカウントを登録したこともあり、GitHub Japan(GitHub初の海外支社)の方から、発表してみないかとご提案いただきました。

今回登壇したセッションで司会進行役を務めていた、GitHubでオープンガバメントを担当している行政担当エバンジェリストのBen Balter氏も、行政のオープンデータの取り組みについて参考になる事例を探されていたようです。今年7月に来日された際、国土地理院の取り組みについてお話したところ、非常に関心を持っていただき、そうした流れもあって今回の登壇につながったんだと思います。

日本独自の地図情報の扱い方とオープンデータの応用事例を紹介

『GitHub Universe』で登壇した際の藤村氏

『GitHub Universe』で登壇した際の藤村氏。3Dの地図情報を元に作成された地形模型のサンプルを見せながら国土地理院のオープンデータへの取り組みを紹介

―― 登壇されたセッション「Changing Lives with Open Data」では、ロサンゼルスのオープンガバメントの運用に関する事例や、サンフランシスコの公共交通機関に関するオープンデータを活用するスタートアップの事例が紹介されていました。そこに並んで、国土地理院の事例が紹介されましたが、あらためて発表内容をお話いただけますか。

発表タイトルは「GSI Maps for the next wave of civic innovation」とし、国土地理院という役所の仕事についても知っていただくため、地理院地図のデータをを政府のオープンデータ戦略に沿って提供していることや、地理院地図を自由にアレンジして使えるようオープンソースになっていることなどをお話しました。

技術者向けのイベントということで、GeoJSONやSlippy map tilenamesを採用しているといった技術的に細い点についても紹介しましたね。

※編集部注:GitHub Universeでの講演内容のほか、藤村氏が対外的に発表してきた資料はコチラで公開されている。

日本は自然災害が多く、そうした場合の地理院へのアクセスは通常の4倍にもなること、また、関係機関の現場での活動にいち早く活用できるよう3Dデータを測量用航空機やドローンなども使って収集し、公開していることなども紹介しました。

もちろん、災害対応以外にもビジネスや商用でもデータを活用できるように公開されています。データの応用範囲を広げるために、3Dデータを3Dプリンタで出力しやすい形で公開したり、地図が簡単に作れるようにしたりしている例を挙げ、実物のサンプルを見せるなどして分かりやすく説明したつもりです。

ーー実際にサンプルを見せられたところはかなりウケてましたね(笑)。行政がここまで細やかにデータを公開しているのかというインパクトもありました。

発表で特に伝えたかったのは、国土地理院が手掛ける地理空間情報という分野の面白さです。

地理空間情報は比較的にオープンデータやオープンソースがうまくいっている分野で、GitHubでもGeoJSONデータのサポートを手厚く行っていますが、日本における地図作成の歴史は他国と比べても独自のものがあります。さらに、日本の行政としてデータをどう扱って価値を出していけるか、チャレンジすることが多いと考えています。

例えば、災害時の対応についても今以上にできることがあるのではないか、外部の皆さんの知恵や手助けをいただきながら検討しなければならないと考えています。

―― 藤村さんご自身は、エンジニアとしてイベントで発表されたことについて、何らかのメリットや意義を感じられたのでしょうか。

行政の中で働くエンジニアにとって、外部のエンジニアの方々と直接交流できる機会はとても貴重です。さらに今回は海外ということもあり、想像以上に大きな参加メリットがあったと感じています。

今回のイベントでは行政関係からの発表事例がいろいろあり、オープンガバメントの流れが本格的に進んでいることが実感できましたし、そこで何が問題になっているかという点についても、現地の参加者の方たちと意見交換することができました。

個人的には、GitHubのキャラクターのOctoCatが登場するオープニングアニメにあった、現場で何度も失敗を重ねながらも結果を出そうとするエンジニアが、プラットフォームでつながり合い、自分たちができることを確認し合う、というストーリーには共感することが多くありました。

驚いたのは、有名なIT企業や大企業のエンジニアたちが、自分たちの個性を包み隠さず発揮しながら現場で活躍しているという事実を目の当たりにしたことです。

横のつながりは大事で、今後のオープンデータ対応を進める上で、より多くの人たちとコミュニケーションし、意見を語り合える場を設けるのは大事だと感じました。

法律とユーザーニーズの両方からより実用性の高い情報公開を

国土地理院情報普及課の公式GitHubアカウント

国土地理院情報普及課の公式GitHubアカウント

―― そもそもの話になりますが、国土地理院は他の行政とは異なり、なぜこれほど早くオープンデータ対応が進められたのでしょうか。

実は、国土地理院では制作したデータを公開することが業務として法律で定められているのです。測量法第27条第2項にある「測量成果の公表及び保管」では、必要とされるデータを一般の不特定多数で利用できる状態にするよう規定されています。

合わせてデータの更新も法律上の業務として定められていて、例えば災害などで実世界が変化した場合はいち早く現場を測量し、修正を公開する必要があるのです。

もう一つ、地理空間情報活用推進基本法というのもあり、ここでは情報を多様なサービスで活用できるようにすることで、国民の利便性の向上や事業の創出や経済効果にもつなげられるようにしなければならないと定められています。

つまり、地図情報をいかに活用するかを考えることが業務の根底にあり、そこでオープンデータにもいち早く取り組むことができたのです。

―― 法律で定められているとはいえ、利用者視点での情報公開となるといろいろ難しいのではないかと思います。何か工夫されている点や、独自の取り組みなどはあるのでしょうか。

GitHubやTwitterなどを活用してオープンな情報発信をするというのもその一つですが、エンドユーザーからの質問対応なども地理院全体で注力しています。

そして国土地理院の場合、オープンデータにあたる地図データの提供と、そのショーケースとなる地理院地図の両方を提供しているので、利用状況を分析して次の効果的な情報配信の方法を検討しやすいというのがあります。

サーバの運営についても、災害時の急なアクセスに耐えられるよう、外部の技術者の力を借りながら対応していますし、どういう時にどのような情報をどのような形で求められるのか、いろいろなパターンを体験でき、現場からの声も聞かせていただけているというのは、オープンデータを進める上でとても役立っています。

GitHubのChris Wanstrath CEOも語っていたように、「課題の近くでコードせよ」というのはとても大事だと感じています。

ソフト開発のスキルやWebに詳しいエンジニアが求められている

自身の経歴を話しながら、これからの「オープンデータ活用」で必要な人材像について語る

自身の経歴を話しながら、これからの「オープンデータ活用」で必要な人材像について語る

―― ここまでいろいろお話をお聞きして、藤村さんのようにエンジニアのスキルを持つ人材が院内にいることがオープンデータの推進にも少なからず影響していると感じました。院内では、他にもエンジニアのスキルを持つスタッフはいらっしゃるのでしょうか。

国土地理院の場合、情報工学が含まれる試験区分からも一定の人数がエンジニア(技官)として採用されます。

全体で約700名いる職員のうち7割がエンジニアですが、その中でITの専門性を最初から持つ者の割合はそれほど多くはありません。

採用情報はオンラインで公開されていますが、国土地理院の場合、これからますますオープンデータやオープンソースに対応する必要があり、特にWeb開発にも興味を持って取り組める人材が求められていると感じます。

地図作成に関する知識は持っていなくても心配ありません。採用後に全員が「国土交通大学校」で1年間の研修を受講する職種もありますし、さまざまな研修やOJTの機会がありますので、測量に関する必要な知識はそこで学ぶことができます。

測量や地図、画像技術などに興味のある方はぜひ応募してほしいですね。

―― オープンデータを進める際に、外部のプロフェッショナルの協力を得てコラボレーションを行う上でも、エンジニアとしてのスキルや経験が役立てられるということでしょうか。

その通りです。私自身は大学時代にロボティクスにおける高速画像処理の研究を専門としていましたが、インテリジェントなシステムには地理空間情報が必要だと考え、地図を作る技術に関われる仕事として国土地理院を志望しました。

山好きで高校生の頃から地形図に親しんでいたというのもあり、それがきっかけで地図を作る仕事に興味を持ったというのもあります。

国土地理院での仕事では、外部の方たちと交流することも多いのですが、これまでは土木や業務システムに関連する分野の方がほとんどでした。しかし、データの活用範囲を拡げるにはもっと幅広いジャンルの方たちとも情報交流を行う必要があり、そのためのパートナーネットワークを構築し、年2回の会議を開くなどしています。

会議は公開されているので、地理空間情報に興味がある会社や組織の方にも、もっと参加していただきたいと考えています。

また、データについてもどんどん活用していただきたいですね。ブラウザやスマートフォンのさまざまなAPIからご利用いただけますし、地理院地図を構成する地理院のソフトウエアはすべてFOSS4G(地理情報分野のオープンソースソフトウェア)として公開していきます。

GISは歴史が長いゆえ、Webとの親和性がまだ確立されておらず、オンデマンドでリアルタイムな処理をもっとブラウザ側でできるようにして、クラウド側で浮いたリソースをサービスのさらなる安定化や強化に回せるようにしたいという思いがあります。

何よりも地図データを扱うのはとても面白いので、まずはデータを使ってみて、感想や意見を聞かせていただきたいです。

取材・文・撮影/野々下 裕子

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/githubuniveres 誕生から7年、GitHubは何を変えてきたのか~GitHub Universeから見えたエンジニアとコードの未来 //type.jp/et/log/article/githubuniveres Wed, 04 Nov 2015 09:57:53 +0000

今年10月1日~2日、世界で1100万以上のユーザーに利用されているGitHubが、創設から初となる開発者向けイベント『GitHub Universe』を本社のあるサンフランシスコで開催した。

同社初となる開発者向けイベントは、GitHubの代名詞「OctoCat」を主人公にしたオープニングアニメ(以下の動画)からスタート。2日間にわたったプログラムでは、新サービスや機能を発表するキーノートをはじめ、GitHubが掲げるBUILD、COLLABORATE、DEPLOYの3つをテーマにしたBREAKOUT=セッションエリアが設けられ、ソフトウエア開発から企業関係者まで幅広いジャンルのスピーカーに迎えてさまざまなトピックが取り上げられた。

技術的な情報共有もさることながら、GitHubを取り巻くオープンソース市場の拡大や、ソフトウエア開発環境の変化に焦点が当てられており、政府機関やNPO、教育関係での利用拡大を具体事例と共に紹介するセッションが注目を集めていた。

オープニングキーノートに登壇した創業者兼CEOのChris Wanstrath氏は、GitHubをとりまく変遷として、2008年にソーシャルコーディングを実現するサービスとしてスタートしてから、10年には組織で使えるようオープンとクローズの両方へ対応し、12年にはエンタープライズ市場への対応を進めてきたと紹介。

それはそのままソフトウエア開発市場の変遷でもあり、現在は大企業や政府までもがオープンソースを利用し、その結果2700万を超えるプロジェクトで活用されている。結果、GitHubの月間ビジター数は3600万を超えているという。

利用企業はハードメーカー にも拡大。市場に合わせ「横のつながり」に注力

同社は何よりもサービスの使いやすさを重視し、ユーザーインターフェースやコミュニケーション機能の充実に力を入れ、新機能も次々に提供してきた。

今回はWebデザインやクリエイターの利用が増えていることに合わせて、大容量のファイルストレージ機能を提供する『Git LFS』や、GitHubパートナーによるさまざまなサービスやツールをプロジェクトに合わせて提案する『Integrations Directory』を発表。

さらに、ハードウエアオープン認証規格であるU2F(FIDO Universal 2nd Factor)に対応するセキュアな規格技術を開発するYubicoと提携し、ワンタイムパスワードを簡単に生成できるUSBキーことYubikeyをユーザーに低価格で提供するプランを発表し、会場では無料で配布された。

このようにGitHubはさまざまなパートナーとの連携を拡げており、キーノートではAWSやAzureをはじめ、ATOMなど競合関係に当たりそうなサービスも含めてパートナー関係にあることが強調され、会場内にも彼らが提供する交流スペースがあちこちに見られた。特に、今後強まるであろう大企業でのオープンソース開発においては、GitHubに加えていかに有用なツールが使えるかがカギになる。

実際に大規模組織での活用は増えており、例としてNASAの研究機関であるエイムズ研究センターが、米国内にある9つの国際パートナーと連携して300名以上とバーチャルで運営する太陽系探査プロジェクトの事例が紹介された。

5年間にわたるプロジェクトでは優秀な人材を一カ所に集めるのは難しく、その時々に必要な専門家がバーチャルに参加する方法が有効であるとしているが、こうした開発手法はすでに大企業での採用が始まっている。

会場で行われたセッションでも、Facebook、Microsoft、Airbnb、Spotify、Etsyといった企業からスピーカーが登壇し、活用事例を紹介。

中でも興味深かったのは、GE、Target、Ford、John Deereのソフトウエア開発担当者が参加したトークセッションで、ハードウエアや流通を手掛ける世界規模の企業において、アプリ開発などを含めたソフトウエア開発の重要性は高まる一方で、エンジニアの採用が重要課題になりつつあることが紹介されていた。

どんなコードが得意かより、マネジメントのスキルが必要で、企業カルチャーに配慮した開発ができるような人材が世界中で求められているとの声もあった。

キーノートに登壇したChris Wanstrath CEOは、GitHubのこれまでの成長要因としてユーザー本位のサービス提供とパートナー関係の拡大、市場への柔軟な対応をあげ、「全ての人がデベロッパーになり参加者になるのが目標」と参加者とユーストリーム中継の視聴者に向けて語った

キーノートに登壇したChris Wanstrath CEOは、GitHubのこれまでの成長要因としてユーザー本位のサービス提供とパートナー関係の拡大、市場への柔軟な対応をあげ、「全ての人がデベロッパーになり参加者になるのが目標」と参加者とユーストリーム中継の視聴者に向けて語った

キーノートではGitHubのサービスだけでなくパートナーとの連携についても時間をかけて紹介されていた

キーノートではGitHubのサービスだけでなくパートナーとの連携についても時間をかけて紹介されていた

オープンデータ活用で社会変革を担う一面も

GitHubが利用されるジャンルは幅広く、2日目のキーノートではで社会を変革するツールとしてのGitHub利用事例が、バイスプレジデントを務めるNicole Sanchez氏の進行で紹介された。

そこでもエンジニアの重要性が語られており、貧困で水道が使えない母子家庭を支える寄付オンラインで募る『Detroit Water Project』の担当者は、「Webサイトの開発やアイデアの面でエンジニアの協力なしには実現できなかった」と語った。これからも社会をより良い方向へとハックするためにボランティアに参加してほしいと呼びかけていた。

エンジニアを育成するための環境も必要であり、特に子供や女性が活躍するためのスキルとしてエンジニアリングとサイエンスの教育に力を入れていくべきとの発表もあった。初日のキーノートでも紹介された『GitHub Education』というプロジェクトはその一つであり、イベント後に『Classroom for GitHub』というオンライン教育用サービスも発表されている。

2日めのキーノートでは社会や教育の場でのGitHubの活用事例が紹介された。写真はの担当者の講演

2日目のキーノートでは社会や教育の場でのGitHubの活用事例が紹介された。写真は『Detroit Water Project』の担当者の講演

行政でもエンジニアの活用は強く求められており、実は日本でもすでにGitHubを通じてエンジニアと連携する動きが始まっている。

「Changing Lives with Open Data」と題されたセッションでは、ロサンゼルスのオープンデータの活用促進や、サンフランシスコ市内の交通データベースを活用して社会事業を立ち上げたREMIXと並んで、国土地理院によるGIS(地理情報システム)データの公開と利活用の事例が紹介された。

発表を行った情報普及課の藤村英範氏は、2003年から始めたGISのオープンデータ化から、より活用を拡げてもらうためGitHubの活用を決め、14年7月の御嶽山噴火や今年9月の鬼怒川堤防決壊では、ヘリやドローンで収集した情報をいち早く公開していると説明。

「データは公開するだけでなく使われなくては意味がなく、エンジニアが参加しやすいようプラットフォームの選択肢を広げるのは重要」ともコメントしている。

>> 藤村氏への詳しいインタビュー記事はコチラ

オープンデータを活用する先進的な自治体の事例としてロサンゼルス、サンフランシスコ、そして国土地理院の事例が紹介された

オープンデータを活用する先進的な自治体の事例としてロサンゼルス、サンフランシスコ、そして国土地理院の事例が紹介された

幅広いプログラム構成から見えるGitHubの広がり

プログラム全体として先進事例やメッセージ性の高い内容が多かったが、もちろん開発に関する具体的なノウハウを学べるセッションも多数行なわれており、APIやWebツールの開発、Gitについても取り上げられていた。

ソフトウエアアーキテクトのエキスパートであるMoziilaのMYK MELEZ氏は、GitHubのオフライン機能で活用できるツールの開発技術について解説。GitHubユーザーの増加と共にニーズが高まるのは間違いなく、ツールが増えることはコミュニティ全体にとっても支援になるはずだが、まだまだ数もアイデアも少ないので、興味を持って取り組んでみてほしいとコメントしていた。

GitHubやプロジェクトの運用管理をテーマにしたセッションでは、「利用者が混乱するのでWebのアップデートは48時間以内にしてはいけない」、「だが、セキュリティアップデートはできるだけ早急に行わなければならない」といった基本的な話題も取り上げられていた。

セッションの内容は幅広くAPIやアプリ開発について解説する専門的な内容もあった

セッションの内容は幅広くAPIやアプリ開発について解説する専門的な内容もあった。写真は情報管理ツール『Confluence』などで知られるAtlassianのセッション

GitHubは、オープンソースソフトウエアを通じて社会のあり方や働き方に変革をもたらそうというメッセージを発信し続けているが、その中でエンジニアが一体どのような役割を求められるのかというヒントが、本イベントではあちこちで語られていたように感じられた。

最近ではソフトウエア開発以外にも、Webサービスの構築や雑誌の編集、教育ツールとしての活用にまで広がっており、全体として参加者のスキルというよりは、GitHubの活用目的に合わせたプログラム構成だったように見える。

CEOのWanstrath氏は「プロジェクトにはビジョンとコミュニケーションが大事であり、それに対して必要な技術を磨くプラットフォームとしてもGitHubを活用できるようにしていく」と語っており、今後はオンラインでこうしたセッションが開催されるかもしれない。

GitHubの動きを知り、どのようなメッセージを発信しているのかに注目することは、エンジニアとコードの未来を知るためにこれからますます必要になりそうだ。

会場のPier 70は廃工場を再利用したユニークなイベントスペース

会場のPier 70は廃工場を再利用したユニークなイベントスペース

取材・文・撮影/野々下 裕子

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【2016年3月18日に移転致しました】エンジニアtypeドメイン変更のお知らせ //type.jp/et/log/mag/archives/49730 『エンジニアtype』リニューアル日程と、(ちょっとだけ)新コンセプトのご報告です //type.jp/et/log/mag/archives/49675 約半年で150万DL突破のスマホゲーム『クラッシュフィーバー』に見る、少人数でヒットを生む開発プロセス //type.jp/et/log/mag/archives/49649
//type.jp/et/log/article/kaizen_bizreach_pm Kaizen須藤氏×ビズリーチ丹野氏が明晰回答。プロダクトマネジメントとは何かを浮き彫りにする7つの質問 //type.jp/et/log/article/kaizen_bizreach_pm Mon, 02 Nov 2015 11:59:10 +0000

良い開発体制を作れば、それだけで良いプロダクトができるわけではない。“正しく製品を作る”だけでなく、“正しい製品を作る”ことを考えなければならない——。

伊藤直也氏によるこうした問題提起に端を発し、弊誌では前回の記事で、伊藤氏に「プロダクトマネジャーの役割と適性」について語ってもらった。

しかし伊藤氏も指摘している通り、国内においてはプロダクトマネジャーという役割の認知度はまだまだ低く、ベストプラクティスがあるわけではない。そうした職能に実際に就いている人であっても、日々悩みながら暗中模索しているというのが現状だろう。

こうした中、Webサービスの事業を牽引するプロダクトマネジャーのあり方について議論するセミナーが10月9日、ビズリーチ本社で行われた。

登壇したのは、Kaizen Platform, Inc.CEOの須藤憲司氏と、ビズリーチのサービス企画本部本部長の丹野瑞紀氏。しばらくCEO業に専念していた須藤氏は、サービスのさらなる飛躍を自ら牽引すべくこのほど、再びプロダクトマネジャーを兼務する立場となった。一方の丹野氏はビズリーチで複数のプロダクトを扱うプロダクトマネジャーであり、自身のブログ『小さなごちそう』でも熱心にプロダクトマネジメント論を展開している。

プロダクトマネージャーにたちはだかる壁を、どう乗り越えるか from Mizuki Tanno

Kaizenがしてきた失敗に学ぶpm論 公開用 from Kaizen Platform

ここでは、セミナー後半のトークセッションで参加者から寄せられた質問と、それに対する2人の回答を基に、サービスの規模や性質、それぞれの出自も異なる2人の考えるプロダクトマネジャー論を紹介する。

PMはドラクエの勇者。全てのスキルが必要だが、100点でなくていい

エンジニアとしてのバックボーンを持つことから「技術者目線でのプロダクトマネジメント」を語ったビズリーチ丹野瑞紀氏

エンジニアとしての経験を活かし、「技術者目線でのプロダクトマネジメント」を語ったビズリーチ丹野瑞紀氏

【質問-1】 現状、営業・企画と技術・開発との間の調整ばかりで板挟みになっている。マーケッターにもエンジニアにもデザイナーにもそれぞれの分野では劣っていて、まるでドラクエの勇者みたい。プロダクトマネジャーにしかできないこととは?

須藤 板挟みになるというのは「あるある」ですが、プロダクトマネジャーのキャリアの積み方は大きく分けてビジネス畑からかエンジニア畑からかに分類できると思います。まずは自分が理解しやすい方を押さえにいき、その上であまり得意でない方にどう対応していくかを考えるのが良いと思う。

丹野 プロダクトマネジャーはディレクションする立場なので、マーケッターともエンジニアとも言葉が通じないといけない。それぞれのスキルは50点でも60点でもいいんです。どれも何となく分かるというのは、むしろ強みになる。プロダクトマネジャーに固有のスキルがあるとすれば、いろんな立場の人がいる中で、どうにか一つの解へと導いていくファシリテーションの能力と言えるのでは?

須藤 去年のIVSで行った対談の中で、プロダクトマネジャーにはビジネスもテクノロジーもデザインも分かることが求められるという結論に至ったんです。難しいのは承知ですが、顧客体験を生み出すための全てのことをできなくてはプロダクトマネジャーは務まらない。

そうなるためには、それぞれの職種をローテーションさせて、ちょっとずつスキルセットを身につけていくのが良いのではないでしょうか。ドラクエの勇者に例えるなら、速くレベルを上げてロトの武器を身に付けろということです。

僕自身はマーケッターの出自で、開発に足を踏み入れたのはプロダクトマネジメントをやるようになってから。最初はエンジニアの言うことが分からないのでシステム開発の本を読みまくりました。今はデザインの本をいっぱい読んでいるけれど、全然身に付いていません(笑)。でもそれでいいと思っているんです。会話さえできれば事足りるから。

【質問-2】 経営陣はユーザー数や機能面で先行する競合に並ぶことばかり考えていて、ビジョンやターゲット設定がないがしろになっていると感じる。このままで良いのだろうか?

須藤 競合に勝つのは勝った方がいいに決まっているけれど、問題は勝ち方。どうやって勝っていくのかが十分に議論されていないというのが一番の問題ではないでしょうか。

機能が全てそろったら勝てるのならそれでいいが、大抵の場合はそうではない。芯を食ったキラーファンクションのようなものが最初のカスタマーを呼び、伸びてきたらカスタマーが重視するポイントを上から順に押さえていくというのが一般的では?

丹野 競合はもちろん参考にしますが、パクろうとしてもパクりきれないのが常。表面だけマネると、自社の製品を選んでもらう理由がなくなってしまうから筋が悪い。

そういう時は、「自社の製品がなくて競合の製品だけしかなかったら誰が困るのか」という問いを立ててみると良い。それで誰も困らないというのだったら、他の製品を作った方がいいのではないでしょうか。

【質問-3】 事業責任者の下で小さいプロジェクトを任されているが、ミッションといくつかのKPI目標はあるものの、お金に関することがほとんど分からない。プロダクトマネジャーは事業責任も負った方がいいのだろうか?

丹野 与えられたミッションやKPIが正しければ良いですが、プロダクトマネジャーは前提を疑うことでイノベーションを起こしていくもの。事業責任や売り上げ構造も把握した上でプロダクトを開発していく必要があるのではないかと思います。

須藤 事業責任を負っていないのではプロダクトマネジャーとは言えないのではないかとまで思いますね。プロダクトマネジャーに求められるのはプロダクトが結果として伸びるために必要なこと全て。

与えられたミッションの中でやるのではやれることが限られるし、コストが分かっていないとやはりやれることが少ない。プロダクトをマネジメントしていこうと思ったら、ミッションもKPIも自分で作っていないときついと思います。

組織拡大には痛みが付きもの。優先して押さえるべきはUI設計

最近、CEOであるKaizen の須藤憲司氏が「あらためてプロダクトマネジャーの職に就いた理由」とは?

最近、CEOであるKaizenの須藤憲司氏が「あらためてプロダクトマネジャーの職に就いた理由」とは?

【質問-4】 プロダクトやマーケットが変化していくのに伴い、組織はどう変化していくものか?そこにプロダクトマネジャーはどのような形で関わるものか?

須藤 Kaizenは現在従業員数100人で、そのうちプロダクト部門は30人くらい。常にだいたい従業員数の3~4割をプロダクト部門が占めてきました。早い段階でプロダクトマネジャーとエンジニアが組むチーム制を導入したんですが、工夫したのはチーム内にセールスやカスタマーサクセスの人間も入れたこと。そのことで、本来めんどくさい部門間の調整がスムーズになっています。

丹野 ビズリーチでは以前はプロダクトごと、事業ごとにチームが構成され、企画を担うプロデューサーもその中にいたのですが、社員数が500人を超え、この8月からはサービス企画本部の下にプロダクトマネジャー部を置き、プロダクトマネジャーを職能として育成する体制に切り替えました。製品が増えて複雑性が増し、ステークホルダー間の調整も増えたためです。

もちろん完全に職能ごとに分かれてしまうのもダメなので、プロジェクト単位でエンジニア、デザイナーらとともにプロダクトマネジャーもアサインする、マトリックス的な組織になっています。

須藤 僕はCEO兼プロダクトマネジャーなので、プロダクトマネジャーの仕事だけやっていると会社が倒産してしまう。絞りに絞って何をやったらプロダクトの質に効果的に貢献できるのかを考えた結果、どういうテーマをどこにマイルストーンを置いてやっていったらいいかという計画のところと合わせて、UIを見ることを徹底してやっています。

週2回の定例会議などでかなり細かいところまでレビューしてるんですが、そこさえ押さえればかなりの部分をコントロールできるという実感があります。

丹野 私も最近は守備範囲が広くなって大変さが増しているものの、UI/UXは全部見るようにしていますね。ただ、その際に「これでいいですか?」と言われて画面だけ見せられるのではそのまま差し戻さざるを得ない。

多くの製品を見ている立場としては、その画面が解決するユーザーの課題とセットで示してくれるのでなければ対応しきれませんから。

【質問-5】 サービスの拡大期にはどんな痛みがあったのか?

須藤 例えばスピードを優先するのかクオリティを優先するのかというジレンマは常につきまといます。Kaizenの場合はQAのクオリティがなかなか上がらず、リリースするたびにバグが出るという状況が続きました。その時には一端、新規の開発を全て止めて、ドキュメントを書くとかテストの自動化プロセスを書くとかに1カ月丸々を費やして対応しました。

また、初期のフェーズであれば全員がプロダクト全体を把握できるんですが、プロダクトが大きくなってくると、全体を把握せずにある部分しか分からないという人が必ず増えてくる。

開発チームでいえば、自分が書いたのではないコードに触らなければならなかったり、逆に自分が書いたコードを知らない人が触ったりするシチュエーションが多発するということです。

その難しさは開発者なら分かると思いますが、サービスの品質に大きな影響をもたらします。コミュニケーションツールを充実させるなどの手はもちろんありますが、万能の解決策はないと思っています。失敗もある程度許容しながら、フェーズに合わせてチームで乗り越えるしかないのではないでしょうか。

【質問-6】 初期のフェーズであれば直接ユーザーと接する機会も多いからプロダクトが「芯を食っている」かどうかを肌で感じられるが、徐々にチームが大きくなって、セールスチームなどからの声しか接しなくなると不安が芽生える。マーケットにフィットしているかどうかの感覚を保つにはどうしたらいいのか?

須藤 お客さんのところに行くのは重要で、僕は今でもやっています。同時に、誤解を恐れずに言えば、そのユーザーが正しいユーザーなのかどうかも評価できなければならないのではないでしょうか。

ターゲットとはズレていたり、この人の言うことを聞いてもしょうがないという人に時間をかけてもプロダクトは良くならない。その感覚を養う意味でも、やはりたくさんのカスタマーに会うことは大事だろうと思います。

丹野 ある程度データで見ていく必要もあるでしょうね。ただ、いろいろな施策を打ってもKPIが全く動かなくなってくると、確かに手応えが感じられなくなるかもしれない。買って使ってくれたユーザーだけでなく、買わなかった人の意見を聞くのも一つの手ではないでしょうか。

須藤 手応えがなくなってきたのは、大きいと思っていた市場が案外小さかったからかもしれない。それは必ずしも悪いことではないんですよ。市場が思ったより小さかったのであれば、ではどうするかという方向に問いが変わるから。案外小さかった仮説のすぐ隣にデカいチャンスが転がっているというのが、僕自身の経験則です。

そうなったら、疑う先を多少広げてみるというのもアリではないでしょうか。ニーズそのものをまだ感じていない人のニーズを掘り起こせれば、ものすごいパラダイムシフトを起こせる。手応えがなくなってきたら、むしろそれはチャンスなのかもしれないですよ。

四六時中プロダクトに向き合える情熱としつこさを持てるか

非常に難易度の高い技能が求められるプロダクトマネジャーの仕事に「向いている人」の傾向を話す2人

非常に難易度の高い技能が求められるプロダクトマネジャーの仕事に「向いている人」の傾向を話す2人

【質問-7】 ビジネスサイド出身の須藤さん、エンジニアサイド出身の丹野さんから見て、プロダクトマネジャーに向いている人って?

須藤 つまらない答えになってしまいますが、パッションがないとダメ。取り組んでいるプロダクトが実現したい世界観や解決したいテーマに情熱が向いていないとしんどいと思います。

なぜならプロダクトマネジャーは四六時中プロダクトのことを考える必要があるし、仮に全然関係のない場面でいいアイデアに遭遇した時、すぐに反応できるのは結局、そのプロダクトが好きだからこそだと思う。

丹野 出自どうこうではなく、しつこさではないかと思いますね。問題というものは一見シンプルに見えても簡単には解決できない。それでも絶対に解決可能だと信じ切れる信念を持てるかどうか。企画書を書いて終わりではなく、泥臭い実行フェーズをやり続ける覚悟があるかどうかだと思います。

須藤 プロダクトマネジャーは他人の領域に土足で踏み込むような仕事だから、時には嫌われることもある。目的を達成するためにはありとあらゆることをするという粘り強さは確かに大切です。後は周りの人に助けてもらえる人は有利だとも思います。僕自身は欠陥人間ですが、その点に関しては自信があるんです(笑)。

取材・文/鈴木陸夫 撮影/伊藤健吾(ともに編集部)

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//type.jp/et/log/article/cto-book-koga 小賀昌法氏がVOYAGE GROUPの採用・育成方針を決める際に参考にした本【連載:エンジニアとして錆びないために読む本】 //type.jp/et/log/article/cto-book-koga Mon, 02 Nov 2015 11:34:00 +0000

撮影場所:VOYAGE GROUP社内ライブラリ『OASIS』

業界でその名を知られるCTO(最高技術責任者)に、仕事に役立つ名著を紹介してもらうこの連載。第5回目となる今回は、各種メディアやアドテク事業を展開するVOYAGE GROUPの小賀昌法氏だ。

今回、編集部が小賀氏に依頼したテーマは「エンジニアの採用や育成方針を構想する上で役立った良書3冊」。果たしてどんな書籍を選んだのだろうか?

多くの人の手を経て出版される書籍はお得な情報源

「本を読むのは好きですね。2015年1月から9月までに読んだ本を数えてみたんですが、全部読み通した本は、ビジネス17冊、技術書2冊、マンガ88冊、小説2冊。流し読みや一部だけ読んで済ませた本は、ビジネス9冊、技術書4冊でした」

ビジネス書や技術書だけでなく、マンガや小説もよく読むという小賀氏。ストーリーや登場人物の言動から、実生活に役立つ考え方や表現が学べるからという。

情報を単純な「点」としてではなく、背景や前後関係を交えた「流れ」として伝えることで相互理解が深まることも、読書を通じて学んだことである。

「例えば、採用面接は応募者を値踏みする場のように思われるかもしれませんが、私たちにとっては、VOYAGE GROUPの姿を正しく理解してもらう場です。ですから現実の出来事を並べ立て相手の理解を迫るのではなく、現在の会社の状況がどういう経緯で成り立っているのか、分かりやすく説明することを常に心掛けています。ストーリーには理解を促す力がある。これも読書から学んだことの一つです」

むろん、そんな小賀氏が書籍から得る情報に寄せる信頼は厚い。

「もちろん例外はありますが、多くの場合、Webコンテンツに比べて書籍の密度は圧倒的です。そもそも自分の考えを1冊の分量にまとめるのはすごく難しいことですし、著者や編集者など、多くの関係者の労力があって初めて1冊の本が出版されるわけですから、その手間隙を考えると、