“MC型授業”で知られるカリスマ教師が「新人マネジャーの5大苦悩」に回答~成果を挙げるチームの作り方とは

どの業界・職種であれ、部下のマネジメントに対する悩みは尽きないもの。そんなマネジャーたちの悩みに光を差すのが“MC型授業”で知られる沼田晶弘先生だ。扱いが難しいと言われる“現代っ子”たちのやる気を引き出し、地域のコンテストなどでも数々の実績を残す“チーム”へと育て上げる現代版カリスマ教師が、マネジャーたちの生の悩みに答えていく。

業界・職種問わず、全てのマネジャーが部下のマネジメントに対して、何かしら頭を悩ませているのではないだろうか。「チームに一体感が生まれない」、「部下のモチベーションが上がらない」、「今どきの若手社員は何を考えているのか分からない」etc.。そんなマネジャーたちの悩みに対して一石を投じるのは、「MC型授業」で名を知られるようになり、メディアでも話題の小学校教諭、沼田晶弘先生だ。

アメリカでチームビルディングを学び、現在そのコミュニケーション法を活かしながら生徒たちと触れ合う彼の授業は、まるでTV番組を進行する「MC」と「ひな壇の芸人」たちのようなやり取りだ。

沼田先生が何かを問いかければ、生徒たちが次々と自分の経験や考えを口にし、それを先生が広げていく。全員が前のめりに授業に参加する沼田先生のクラスは、勉強のみならず給食も毎日完食、リレーも一位、さらには「学校新聞コンクール」で受賞したり、テレビ朝日『ナニコレ珍百景』に登録されるなど、学校外のコンテストでも次々と受賞を果たしている。

扱いが難しいと言われる現代っ子たちのやる気を引き出し、数々の実績を残す“チーム”へと育て上げる彼は、まさに「現代版カリスマ教師」。その評判は教育界以外にも広まっており、今年2月下旬には初の書籍『「やる気」を引き出す黄金ルール 動く人を育てる35の戦略』(幻冬舎刊)も発刊予定だ。

そんな彼なら、企業で働くマネジャーたちの悩みにも一筋の光を差してくれるのではないだろうか......ということで、一般企業のマネジャーたちからアンケートで集めた生の悩みをぶつけてみた。

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“MC型授業”で知られる、東京学芸大学附属世田谷小学校教諭の沼田晶弘先生

【Q1】チームでの目標達成がなかなかできません。そもそも何が部下のやる気を出すスイッチになるのかが分からないです......。

この問い自体がマネジャー側の勘違い。やる気って、出させるものじゃないんです。やる気っていうのはもともと人間に標準装備されていて、自然と出てくるものなんですよね。だから本人が「面白い」、「やりたい」と思わなきゃ、やる気なんて湧き出てこない。

例えば、「作文を書きなさい。何を書いてもいいからね」というと、子どもたちは「えー」って言うんですね。当たり前なんです。何を書いてもいいと言われたって、もともと作文なんて書きたくないんだから。

それを解決しようということで私が考えたやり方の一つが、『ドラマティックカップラーメン』。「カップラーメンの説明書を、1、2、3、4という手順の番号をなくして、ドラマティックでロマンティックなラブストーリーに変えてくれる?」と言うと、皆、面白がって書き始めるんです。

これは決して遊んでいるわけではなくて、皆がちゃんとルール通りに箇条書きではなく、一つの物語として書き上げてくるようにしてもらう。だからしっかり勉強になっているんですよ。

少し話が逸れましたが、勉強だけでなく、仕事を前向きにこなしてもらいながら目標を達成するには、ゲーム性を高めることが大事だと思います。そのためには、基本要素として3つのことが必要になります。

それは、【課題】【報酬】【制限】です。

同僚や後輩に「これを達成したら焼き肉に行こう!」などと言うだけで、小さいことだけれど意欲は上がりますよね? 【課題】をクリアしたら【報酬】を提示するというやり方がレベル1。じゃあ、何がこれをさらに楽しくさせるかといったら、次に来るのが【制限】です。

例えば僕らのクラスでは、地域自治体などが主催するコンテストなどにも積極的に参加していて、「賞金が○万円に達したら、皆で帝国ホテルのディナーを食べにいこう」という目標を立てています。このプロジェクトは佳境に差しかかっていて、ゴールも見え始めています。帝国ホテルに届くために、あと3万円、あと1.5万円......とリミットが迫って来るとともに、生徒たちのモチベーションも上がってくるんです。

ここまでが、レベル2のやり方ですね。ただ、今となっては生徒たちのモチベーションの源泉はお金ではなくなっています。実は、目標にしていた金額はもうとっくに超えているんですが、それでもこっそり個人でコンテストに応募して、3万円の賞をゲットしてきた子がいました。それを学校に持ってきて「寄付します」と。

黙っていれば3万円もらえるのに、なぜそんなことをするかというと、【制限】の先に【プライド】が生まれたからなんです。

最初は【課題】【報酬】【制限】をクリアするために頑張るんですが、これらをクリアすると、だんだんプライドが行動の原動力になってくる。「クラスの皆のために、自分も何かを受賞して、貢献するんだ」って。最初は「受賞して嬉しい」、「お金が入って嬉しい」だったのが、次第にお金なんてどうでもよくなるわけです。

組織マネジメントでも、【課題】→【報酬】→【制限】→【自然と生まれるプライド】のサイクルが回り出すと、チームは成果も上がるし良い雰囲気になると思います。


【Q2】あれこれ細かく指示をしないと動かない部下が多くて悩んでいます。そういう時はどうすればいいのでしょうか?

僕たちのクラスはいろんな賞を受賞することで注目されるようになりましたが、実はその10倍くらい落選もしています。50以上のコンクールに参加して、毎週落選通知が来ていますからね。それでも頑張れるのは、小さな成功体験があるからだと思います。

本当に小さくていいんです。今担任をしているクラスで最初に作った成功体験は、「時間内に掃除が終わった」とかでした。一つでも成功体験を作ってあげることができれば、その後、生徒は自主的に動いてくれるようになります。

例えば、僕たちのクラスはこの2年間、給食を残したことは一度もありません。まず蓋を開けた瞬間から、全員で食べ切れるように分担しています。これも、【課題】を最初に設定して、達成するたびに小さな成功体験として自覚してもらうというやり方。今では、僕が出張で学校にいない日も、「溢れるくらいのパンプキンスープ、飲み切ったよ!」などと生徒から報告が来るくらいになっています。

これは仕事でも同じで、部下が自発的に動かないというのは、マネジャーが部下に成功体験を積ませていないからだと思います。まずは「小さい成功体験」を一緒に作るところからスタートすればいいのではないでしょうか。


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「やる気も自発性も、引き出すのではなく、自然と出てくるようにサポートしてあげることが大切です」

【Q3】いわゆる「ゆとり世代」と呼ばれる若手社員のマネジメントに悩んでいます。挫折経験がなく、競争意識も低くて......。どう接するのがよいのでしょうか?

そもそも、後輩を「○○世代」と一括りにして見ていること自体が間違いです。違う時代を生きてきた人を、自分と同じ尺度で測れるはずがないじゃないですか。

「挫折したことがないメンバー」と言いますけど、そもそも挫折っていいことなんでしょうか? 確かに、僕たちの世代は失敗しても失敗してもガムシャラに頑張る星飛雄馬みたいなキャラクターに憧れたりしましたが、今の時代はそんな子、ほとんどいませんよ。

また、少し前に流行った『ドラゴンボール』では、何だかんだ言ったって主人公の孫悟空が一番強いけれど、今流行っている『ONE PIECE』はチーム戦です。こうやって時代が変わってきているのに、自分の価値観を押し付けても意味がないんです。まずは、マネジャー自身が「自分が正しい」という考えを一度捨てる必要があります。

自分が積み上げてきたものを一旦捨てるのは、とても勇気がいることです。実際、それができる人ってほとんどいないのではないかと思います。ただ、革命を起こす経営者って、あっさりと自分のやってきたことを崩せる人だと思うんですね。ソフトバンクやユニクロが成功しているのも、経営者がこの「捨てる勇気」を持って時代に対応してきたからじゃないですかね。

それと、視点を変えてみるのも大切ですね。「ゆとり世代」なんて言って悪いところばかり見られがちですが、例えばゆとり世代のコンピュータスキルの高さは目を見張るものがありますよ。僕のクラスの子どもたちは、PowerPointを使って歴史の勉強資料を作っていますが、正直僕とはスキルのレベルが違います。生徒の方がはるかに上手いんです。

人間ってやっぱり、悪いところを直すより、褒めてあげないと耳を閉じるので、良いところを見てあげないとダメなんですよ。僕のクラスだって悪いところだらけだと思いますよ。そこにあんまり目を向けていないだけで(苦笑)。

もちろん、生徒を叱らなければならない時はありますが、悪いところの指摘の仕方も、強く言うと「聞きたくない」という思いが先行してしまうので、自分で気付くことができるような言い方をします。自ら気付くのをアシストしてあげるような感覚です。

普段の会話で、「お前は漢字が弱点だよなー。漢字さえできれば、すごいんだけどなー」なんてポロッと言うと、「漢字ができるようになれば、俺は完璧になれる!」とモチベーションが湧いてきますから。これは、面と向かって指摘すると弱点克服の押し付けになり、重荷になってしまうので、“ポロッと言う”のがミソですね。


【Q4】メンバーに本音で接してもらえていない気がします。心を開いてもらうにはどうすればいいですか?

本音で接する関係を築くには、大前提として「信頼関係」が構築されている必要があります。信頼関係って言うと、マネジャーは「飲みに行く」って発想になる人が多いんですけど、そうじゃありません。

今話したような普段の会話だけでも、やり方とコミュニケーションの量で信頼関係を築くことはできます。わざわざ飲みに行かなくても、部下の机にコーヒーをポンと置いて、「この前どうだった?」なんていうちょっとしたコミュニケーションを自分から取るだけで、部下は話しやすくなると思いますよ。上司の席にコミュニケーションを取りに行くのって、実は結構ハードルが高いですから。

マネジャーなら自分の席に座ってないで、自分から話しかけに行くべきです。私も授業中、皆が問題を解いている時、教室を歩き回って「最近どうなの?」なんて声を掛けたりしています。「問題やってる時に雑談するな」なんて生徒に怒られることも多いんですが(笑)。

ちなみに私は、先生業の傍らで、企業向けに「信頼構築プログラム」というものも行っています。これは、職場でメンバー同士の信頼関係を深めたい、という企業から依頼が来て行うプログラムなのですが、大体2時間もやると皆フレンドリーになります。

プログラムの内容はシンプルで、いくつかのゲームをチームでやるというもの。例えば、「20本のストローとセロハンテープを用意するので、生卵を2メートルの高さから落としても割れないよう細工をしてください」といったテーマを与えます。

そうすると、皆「ああでもない、こうでもない」と言いながら始めるんですね。これって、リアルな職場だとなかなかできないことなんです。生卵が割れるかどうか、なんていう些細なテーマだから気兼ねせず意見が言えますが、仕事の現場だと「あの人は上司だから」とか、「他部署の人だから」と遠慮して意見が言えないのです。

こんな風に、他愛もない話をしたり、仕事の現場でも意見を交わす機会を増やしたりすることで、接する時間が増えると自然と信頼関係というのは築かれていくのだと思います。


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「人間関係の根底にあるのは『信頼』。全てはそこから始まります」

【Q5】チームが「ただの仲良しグループ」になってしまいがちです。「成果を挙げるチーム」に変えるには、どうすればよいでしょうか?

最初の話にも通じてきますが、成果目標を意欲の湧く目標にしてどんどん上げていけば、仲良しグループでも成果を挙げられると思いますよ。

また、ビジネスの世界ではよく「チームマネジメント」の話が出てきますが、結局は個の力なんですよ。個の力が高まれば、チームの力も高まる。先ほど話した、企業向けの信頼構築プログラムでも、プログラム終了後に企業の担当者に「○○さんは自分で何でもやるタイプですね」、「△△さんはメンテナンスタイプですね」といった感じでフィードバックするんですね。理由は、それぞれの個性を活かせる配置をマネジャーができるかどうかで、チームの成果って変わってくると思うからです。

僕の担当するクラスでも、運動会のリレー競争の時などはこういう考え方で“マネジメント”をします。直近の運動会では1位を取ったんですが、ここにも個の力を引き出す秘密がありました。

リレーって、前を走ると後ろが気になってついつい振り返っちゃうじゃないですか。前に誰もいなければ、どんなに足の速い子でも気が抜けるし、スピードも落ちる。だったら前だけ見て走れるようにすればいい、ということで、「チームとして○○秒を切るタイムを出そう」というルールを作ったんです。

すると、足の速い子がレースで先頭に立っても、皆が一喜一憂しなくなるんです。1位でバトンを渡せても、「うわー!これで何秒経った!?」なんて言いながら戻ってきます。「自分は1位だった」ではなく、「チームのために自分の力を最大限出そう」という考えに変わるんです。

こうやって工夫しながら、マネジャーが個の力を見極めて引き出せれば、チームの成果は変わってきますよ。


取材・文・撮影/光谷麻里



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