大人も必読!マネーフォワード辻庸介氏×メルカリ小泉文明氏が就活生に語る「成長できる職場」の見つけ方

社会人としての成長を前提にした場合、理想的な「ファーストキャリア」とはどんなものか?大企業・ベンチャーそれぞれの環境を知る2人のビジネスリーダーに聞く。大人も必読!

2016年2月16日(火)、就活生向けメディアであるtypeキャリアビジョンが渋谷ヒカリエで開催した『1st Career Summit』。イベント名の通り、社会人としての「最初のキャリア」についてさまざまな切り口で考えるためのトークセッションが行われた。

社会人一年目で何を吸収するかでその後のキャリアは変わってくる。では、その吸収すべき事柄とは何か。そこで身に付けた能力は、30代~40代となった時どのように発揮されていくのか。そして、それらはどんな企業で働けば身に付けることができるのか。

今回は、マネーフォワード代表取締役社長CEOの辻庸介氏と、メルカリ取締役を務める小泉文明氏によるトークセッション「大手で働くメリットvsベンチャーで働くメリット、それぞれ何が違うの?」から、大手企業とベンチャー企業、それぞれで積める経験とはどのようなもので、ファーストキャリアで身に付けておいた方がいい能力とは何なのかを紹介したい。

マネーフォワード代表取締役社長CEOの辻庸介氏/メルカリ取締役を務める小泉文明氏
マネーフォワード代表取締役社長CEOの辻庸介氏(写真右上)/メルカリ取締役を務める小泉文明氏(写真右下)

マネーフォワードの辻氏は、2001年に京都大学を卒業後、ソニー、マネックス証券を経て2012年に同社を起業している。ファーストキャリアを世界的メーカーで過ごした後、起業家となっている。

メルカリの小泉氏も、2003年に早稲田大学卒業した後、大和証券SMBCの投資部門に就職。金融業界の大手で若手時代からミクシィやDeNAといったネット企業のIPOを担当してきたという。

その後は、ミクシィの取締役執行役員CFOなどを経て、2013年にメルカリの取締役へ。その他、フリークアウトやアカツキ、ラクスル、trippieceなど数多くのスタートアップを取締役・監査役として支援するなど、ベンチャーの現場を多数見てきた人物だ。

彼らのセッションを通じて挙げられた、会社選びのポイントは以下の3つだ。

【1】大手、ベンチャーを問わず「勝ち癖」の付いた組織を探す
【2】ビジネスの「起承転結」を見通せる職場を探す
【3】業種や規模で決めず、「人ありき」で決めるべく社員に会いまくる


社会人としての「1社目の刷り込み」は非常に大きい。いかに自らが成長できる環境に身を置けるかで、その後のキャリアは変わってくるのだ。そのために抑えておく上記3ポイントは、社会人としての2年目、3年目を考えたときに、キャリアアップするための良い足場となるのだろう。

【Q1】なぜファーストキャリアで大手企業を選んだのか?

辻氏 私が新卒でソニーに入社したのには、キチンとした理由があったわけではないんです。不真面目な学生だったので、何となく当時のソニーという会社がかっこよく見えて......(笑)。

小泉氏 実際、超かっこよかったですよね。プロダクトもかっこいいし、社員も仕事ができて魅力的だったし、何よりグローバルな感じがしました。

辻氏 そうですね。その後マネックス証券を経由して現在のマネーフォワード設立に至るのですが、私のキャリアにおいてグローバルはテーマの一つにもなっています。

小泉氏 僕は、新卒で大和証券SMBCを選びましたが、理由はお金の勉強をしようと思ったから。もともと自分で事業をやりたいと思っていて、何をやるとしても「お金を稼がなければならない」、「お金の知識が必要だ」と考えて投資銀行への就職を決めたんです。そんな理由でよく受かったなって話ですけどね(笑)。

【Q2】もう一度就職活動するなら、大手とベンチャーどちらを選択するか?

小泉氏 僕は「大手かベンチャーか」という二者択一の判断軸じゃなく、やっているビジネスが「イケてるかどうか」で会社を選んだ方がいいと思っていまして。大手の中にも、イケてる会社とそうでない会社はあるし、ベンチャー企業でも同じ。メルカリみたいなイケてるベンチャーと、そうでない会社があるわけですよ(笑)。

そもそもベンチャーって、設立3年経っても残っている割合が大体10%程度なので、イケてない会社は生き残れない。他方、大企業も、最近は不祥事とかで危機を迎えるところがちらほら出ていますが、何年か前にその会社に入社した社員はこんなことになるなんて誰も想像してないはずです。

今は好調な会社だって、10年後どうなるかなんて分からない。そうなると、結局のところ「個人の実力を付けない限り未来は明るくならない」、「会社に依存したら終わりだ」という結論になる。

辻氏 ホント、そうですよね。

小泉氏 だから、大手企業に就職したとしても、それ以上に配属された部門が一番稼いでいる部門だとか、会社の中で一番イケてる部門なのか?の方が肝心で。もし、内定が出たのが大企業で、イケてる部門に配属されそうなのであれば、ベンチャーよりも大手企業を選んだ方が絶対にいいですよ。

辻氏 何でですか?

小泉氏 会社の中でも突出して結果を残している部署って、やっぱり優秀な人が集まっているからです。結果を出しているのには理由があるし、何と言うか「勝ち癖」が付いている。勝ち癖が付いている部門にいさえすれば、勝ち癖の付いている先輩の秘訣みたいなものを盗めるわけですよ。

辻氏 なるほど。

「もう一度就職するなら?」の質問に対して自論を展開する小泉氏
「もう一度就職するなら?」という質問に対して自論を展開する小泉氏

小泉氏 その業界の中でトップの部門ならば、新鮮で良質なビジネス情報も一番最初に入ってきます。そこで働く社員は、誰よりも多い情報を、俯瞰して見て判断できるわけです。そういう環境が手に入るのであれば、僕はベンチャーより大企業を選びます。

まぁ、この理屈は大企業だけでなくベンチャーにも適用できますけど。ベンチャーならどこも一様に「若いうちからいろいろ経験できる」というわけじゃなくって、結果を出しているベンチャーに行くということが一つの勝ちパターンなんじゃないかと思います。

ちなみに、イケてる・勝ち癖の付いている会社に入社したとして、3年間くらい働いてもそれ(=勝ち癖)を学べなかったら、その後、身に付くようになるとは到底思えません。だから、最後は「そこでどんなノウハウを吸収していくか」が大事になるんじゃないでしょうか。

例えば、ある案件を取るための、数社によるコンペがあったとしましょう。負けている部門にいると、「どうせ次のコンペも勝てないだろう」という空気があって、言い訳の多い人生が始まってしまうわけですよ。

一方、結果を出し続けている部門の社員は、実際は自分の提案内容とは関係ない部分~例えば会社の製品やサービスそのものが良いとか~で勝っているんだとしても、「自分の提案でまたコンペに勝った!」という良い勘違いが生まれてくるんですよね。

そうやってどんどん勝ち癖を付けていくと、自然と「勝つための手段」を考えるようになるんです。負けた時の言い訳を考えるのではなく、ね。

なので、そういった環境があるのはどの会社なのか?という視点で会社を選ぶのが良いと思いますよ。

辻氏 小泉さん、メチャメチャ良いこと言いますね。就活の神になれそう(笑)。聞いていて本当にそうだなと思いました。

私の意見はほどんど小泉さんと同じなのですが、学生の時って、会社とか社会とか、自分に何ができるのかとか、そういうことが何も分からないじゃないですか。だから、まずは大手・ベンチャーどちらでもいいから、心の動いた会社に入ってみたらいいんじゃないかと思います。

私が就職した当時、就職ランキングの1位とか2位にいたソニーに入社したことで、みんなに「良い会社に入ったね」と言われました。私もカッコイイ会社だと思っていたし、実際にとても良い会社でした。

ただ、めちゃめちゃ仕組みが整備されているからこそ、私がいろいろ提案をしても組織の壁に苛まれて突破できない、ということがありました。当時の私が力不足だっただけなんですが、そのころに、「全てにおいて揺るぎないルールが決まっている中で、自分は10年後もここで働いていていいのかな?」と思ったのを覚えています。

もっと早く、いろんな仕事のやり方を学べる環境で力を付けたいと。そう思って、マネックスに出向したんです。

「人は強くない」というのが私の持論で。強くないので、環境に適応するんだと思うんです。でも、会社に入り、「5年後には自分はあの先輩のようになっているかも」、「10年後にはこの先輩みたいになるのかな?」とキャリアパスが何となく分かってきた時、将来の自分に照らし合わせてみると違和感を持つ瞬間もあるんですね。

こういう感覚が、キャリアを作っていく上では大切なんだと思います。

【Q3】新卒時代、大手企業で得られた経験の中で、現在も活きていることは?

小泉氏 やっぱり、会社のネームバリューという強みは大きかったですよ。

僕の仕事はIPOを目指す企業とのやり取りだったんですが、どこの会社も、新卒1年目の時から社長が直接相手をしてくれたんです。若いうちにそういう経験を積めるというのは、大手企業の看板があったからこそだなと思います。

若いころは実力が追いついていないので、会社の看板を使った方が良いと思うんですね。さっき話した通り、強いチームに入れば入るほど優秀な人と会えますし、その方たちから得られるものってかけがえのないものですから。

今の仕事でも活きている経験としては、ビジネスをやる時に相手のキーマンが誰なのかが何となく分かるということでしょうか。商談とかミーティングに入って、30分もしないうちに、「この人がどうやらカギを握っているんだな」というのが分かってくるんですよ(笑)。そうしたら話は早い。

辻氏 私の場合は、「事業が回る」というのがどういうものかを理解できたことですね。ソニーという世界に市場を持つ会社で、事業を企画してモノを作り、実際に売ってお金がグルグル回っていくプロセスを目の当たりにしました。その結果、「ビジネスってこうやってできていくのか」というのが、感覚で分かるようになったんですね。

マネーフォワードを起業してからは、なおさら「あの時は良い経験をしたな」と思うようになりました。ああいう感覚は、本を読んでもなかなか得られないと思います。

ただ、大事なのは、実際にそのプロセスを自分が主導して回していけるかで。私自身、ソニーにいた時にできなかったことをマネックスに出向してから経験できた。いろいろしんどかったですけど、その分すごく伸びているという実感を得られたので、やっぱり人間は経験なんだなと思いますね。

【Q4】逆に、大手では得られない、ベンチャーならではの経験とは?

満員御礼で盛り上がる会場。刺激的な話に学生も興味を示した。
満員御礼で盛り上がる会場。2人の刺激的な話に学生も興味を示していた

辻氏 先ほどの内容に類似してしまうのですが、ビジネスがどう動き、どう変わっていくかという仕組みを、より身近で学べるということでしょうか。

例えば、私がマーケティングの責任者だとして、プロダクトの責任者がどういうことを考えて動いているのか、カスタマーサポートはお客さまからどんなお声をいただいて、どんな改善に取り組んでいるのか、経理が今どう動いているのかとか、そういった会社の仕組みが全部分かるんです。

大手企業だと、自分のいる部署以外の動きが全然把握できなかったりしますよね。組織が巨大すぎるから、距離が遠いというか。

ベンチャーの方が、全体感を分かった上で、自分がどこにいて、社会のどの部分に役立っているのか、という実感を得られると思います。

小泉氏 個人の成長という観点でベンチャーが良いと思うのは、仕事をする時、必要以上にいろんなヒントを与えられないところですね。なので考える癖が自然と付く。ひたすら考えて、それをやることによって、どんどん専門性が身に付いていくんです。

セオリー通りにやることはほぼないので、ゼロから考えなければならないですし。それはそれでつらいですが(笑)。自分で考える癖を付けて、結果それが自分の専門性になっていく、という成長パターンこそが、ベンチャーで働く良さだと思います。

あとは、自分の人生を自分の頭で考えて決定できるというところも良さですね。

僕がまだ大和証券にいて、ちょうど26歳くらいになったころ、民営化案件で「10年で10兆円のプロジェクトを任せる」という話があったんです。若手に仕事を任せてもらえるという意味ではありがたい話でしたが、同時にちょっと寒気がしたんですよ。「これを受けた瞬間に、10年間の僕の人生が決定してしまう」と思ったら、自分にかけられそうになったハシゴに寒気がしたんです。

要は、「自分の人生を会社に決められたくない」という思いです。自分で意思決定をするんだという手綱がないと怖くて、そんなんじゃ会社と心中できないと思って、結果として(IPOの)担当先でずっと「ウチに来ないか」と誘ってくれていたミクシィへジョインすることになりました。

【Q5】ファーストキャリアで得ておいた方がいい経験とは?

小泉氏 最初はやはり経験がないので、勝ち癖の付いている会社や部門で、社内外問わずイケている人たちと一緒に仕事をしていくことですかね。

そこで自分の可能性を否定せずにトコトンやること。僕の話をすると、最初の3年間、月の残業は100時間以上は絶対やってました。仕事が楽しくて仕方なかったというのもありましたが、やった分コンペは勝てるし、提案もお客さまに喜んでもらえたので。

この3年間のタフな経験が今の肥やしになっていることもあって、「とにかくやる」という覚悟みたいなものは、ファーストキャリアにおいて一番大切なんじゃないかと思っています。そう考えると、どの会社に行っても同じという結論になるわけですが(笑)。

辻氏 (笑)。じゃあ、私はあえて小泉さんとは違う視点でお話しますね。多くの人が行く人気企業って、人気がある分、単純に混むというか、競争がめちゃめちゃ激しくなってたくさんの人たちとやり合わないといけなくなる。

そこで全員にチャンスが回ってくるかというと、実際はそんなことはありません。勝てる確率が低くなるんです。だから、実は人の少ないところに行った方が、自分が1番になれるし、経験もたくさん積めるかもしれない、と思うんですよ。

会場に質問を投げかける辻氏。就活生と一体化した空気感でトークセッションは終盤を迎える。
会場に質問を投げかける辻氏。就活生と一体化した空気感でトークセッションは終盤を迎える

最近はよく、ワークライフバランスとか、「働き過ぎるな」とか言うじゃないですか。でも、結局ビジネスは経験ありき。例えばイチローは誰よりもバットを振り続けたからイチローになれたわけで、ビジネスもビジネスパーソンとして場数を踏まないと能力なんて伸びるわけがないんですよね。

20代の走り込まなくてはいけない時期には、しっかり足腰を鍛えなきゃいけないと思うんですよ。

【Q6】勝ち癖のある企業・組織を見極めるポイントとは?

辻氏 まずは経営陣を見て、その経営者が世の中に何を果たそうとしてやっているのかを見極めることが大切です。

経営者ってメディアにいっぱい出ているじゃないですか。それをひたすら読んでみる。面白そうな会社だと感じたら、業種は特に選ばずに、とにかく会いに行ってみる。社長に直接会えなくても、担当の方とかにお会いして話を聞いてみるんです。

それだけでも会社のビジョンは伝わりますから。とにかく会いまくって判断する。ピンときたら飛び込めばいいし。自分の直感を信じて行動したのであれば、たとえ失敗しても納得のいく次のスタートも切れますよ。

小泉氏 僕は就活の時、全業界の1位と2位の企業に会ってみる、ということをしていました。

1位と2位の会社って、その業界を勝ち抜いているだけの強い社風があるんです。で、2位には2位に留まってしまうだけの理由もあって。簡単に言えば統率されているかどうか。1位の企業は統率されていて、2位の企業は大体自由なんですよ。

個人的には、2位の企業さんが好きだったんですけど、なるべくたくさんの企業と会う中で自分の個性や考え方を探し出すという作業をした方がいいんだと思います。いろんな人に会って、いろんな話を聞いて、1番自分が反応したところにチャレンジすればいいのかなと、そう思いますけどね。

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「大手で働くメリットvsベンチャーで働くメリット、それぞれ何が違うのか」というテーマで展開されたトークセッションでは、どちらが正解という結論には至らなかった。

キャリアをスタートさせる1年目においては、今後生き残っていくために「勝ち」への執着心を根付かせ、「勝ち癖」を自身の中に定着させること。そして、自身で判断できる明確な判断軸を持ち、周りに流れない言動を心得ること。これらが将来的なキャリア形成でも欠かせない能力となるようだ。

社会人デビューを大手企業とベンチャー企業、どちらを選択するべきかという問いに正解はない。ただ、自分自身が楽しみながらも、必死に頑張れる環境を「見極める審美眼」は必要なのかもしれない。

文/蛯原啓貴



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