仕事の達人

株式会社シンプレクス・テクノロジー/代表取締役社長 金子英樹氏

株式会社シンプレクス・テクノロジー
代表取締役社長
金子英樹氏

profile

1987年に一橋大学法学部卒業後、アーサーアンダーセン(現・アクセンチュア)入社。 1990年に退職。金融システムパッケージベンダーのキャッツ・ジャパンを経て、 1991年にソロモン・ブラザーズ・アジア証券に入社。同社システム部門で経験を積み、その後デリバティブ・アナリシス部門バイスプレジデントに就任。 1997年にシンプレクス・リスクマネジメントを設立し、2000年、シンプレクス・テクノロジーに社名変更、代表取締役社長に就任。 2002年2月、JASDAQ上場を果たし、2004年5月には東証二部上場、 2005年9月に東証一部上場と猛スピードで会社を成長させ、金融システムの専門家集団として業界の内外で脚光を浴びる

金融ドリームチームを率いる負けず嫌いな仕事マニア

外資系コンサルティングファームから外資系証券会社へ、そして30代で起業。金融ハイテクベンチャーのシンプレクス・テクノロジーを急成長させた金子英樹氏の経歴を見ると、まさにエリート街道まっしぐら、といった印象を受ける。しかし、彼のこれまでの歩みを知れば、それが間違いであることに気付くはずだ。最初から恵まれた環境だったわけではない。狙ってキャリアアップしてきたわけでもない。「ただ、負けたくないから」。そんな思いで日々真剣勝負してきた金子氏の仕事観を紹介しよう。

経済のグローバル化による競争激化に伴い、金融市場の主要プレーヤーは先進的な金融商品の開発にしのぎを削っている。そこで重要性を増しているのが、市場分析や売買を円滑に行うITシステムの存在だ。その時流に乗り、ディーリングシステムをはじめとする金融ITソリューションを専門に手がけ、脚光を浴びている会社がある。金子英樹氏が率いる金融ハイテクベンチャー、シンプレクス・テクノロジーである。

金融とテクノロジー双方の高次元な知識を持つプロフェッショナルたちが、コンサルティングからシステム開発までを一手にこなし、驚異的な短納期でシステムを構築する。このビジネスモデルが高く評価されて、創業8年足らずで東証一部上場にこぎ着つけたというのだから、その急成長ぶりは推して知るべしである。

外資系ITコンサルティングファームのアーサーアンダーセン(現・アクセンチュア)やソロモン・ブラザーズ・アジア証券でキャリアを積んだ金子氏が、同社を立ち上げたのは33歳のとき。満を持しての起業かと思いきや、意外にも「経営者になりたいと思ったことはない」という。

「僕、プライベートは大雑把なんですが、何というか仕事では絶対に譲りたくないものがあってね。自分でもエキセントリックだと思うくらいに(笑)。それにこだわって生きてきたら、結果的にサラリーマン生活は長く続けられなかった、というだけのことなんです」同社の立ち上げに加わった面々は、世界的な金融企業ソロモン・ブラザーズ内でドリームチーム≠ニ呼ばれていた、金融工学とITの専門家ばかりだ。彼らは皆、金子氏の持つ美学に惹かれて行動を共にした。金子氏のユニークさは、まさにその美学に由来しているといっても過言ではない。

「ものすごく負けず嫌いな一方で、他人の長所は素直にリスペクトできるというか。学生のときもロクに勉強をしていなかったような自分に、人より優れたところがあるとしたら、そうやって人を巻き込み、チームの力を最大限に発揮させることかもしれませんね」

信頼を得るための「賭け」に出た新人時代

大学時代は六本木のディスコ(いまで言うクラブ)で働いていた金子氏がコンサルタントを目指したのは、1冊の本との出会いがきっかけだ。「少しは本でも読め」と友人から手渡されたのが、日本におけるコンサルティングビジネスのパイオニア、大前研一氏の本だった。これが機縁となり、1987年にアーサーアンダーセンへ就職。当時のアンダーセンでは、ある大手生命保険会社のシステム刷新という一大プロジェクトが進行していた。各世代のエースコンサルタントが結集したこの未曾有のプロジェクトに、金子氏もプログラマーとして参加することになる。

アンダーセン主導で進められたこのプロジェクトには、大手SIベンダーも開発に参加していた。知識量も経験も豊富なベテランぞろいの大手ベンダーに対し、アンダーセンは20代の若手メンバーばかり。ベンダー側からの突き上げは厳しく、顧客も巻き込んで熾烈な主導権争いが繰り広げられていた。一歩間違えばプロジェクトが転覆しかねない状況の中で、金子氏は難局を打開すべくベンダー側にこう持ちかけた。

「ヨーイドンで同じ規模の設計開発を始めて、どちらが早く問題なく開発できるか競争しましょうよ。もし僕らが勝ったら、もう何も言わないでください」

それからの日々は、負けず嫌いな新人の真骨頂だった。優に1週間は不眠不休で開発に没頭し、ベンダー側のシステムに比べて遜色のないモノを作るに至った。それを機にベンダーのエンジニアたちの見る目は変わり、信頼関係が生まれていったという。

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