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潜入! 噂の人気講座【K.I.T.虎ノ門大学院 金沢工業大学大学院】

「実務力の向上」に特化したカリキュラムに定評のある、K.I.T.虎ノ門大学院のビジネスアーキテクト専攻。 最大の特長は、ビジネスの第一線で活躍する講師陣と、受講生20人という超少人数制にあるという。 そこで 同専攻の看板講師である三谷宏治氏の戦略思考特論に潜入。講義を実際に体感した。

戦略思考特論の目的は、特定のケースについての演習をこなし、「重要思考」※1「B3C」※2、「戦略ピラミッド」※3、「戦略的オプション比較」※4といった戦略思考能力をスキル化すること。潜入した回では、米ウォルマート社が展開するWHC事業※5のケースを取り上げ、講師と生徒との白熱したディスカッションが行われていた。
右下にある講義資料を参照しつつ本文を読み、講義で行われたディスカッションの疑似体験をしてみよう。

※1「重要思考」…最も重要なことをまず決定し、そこを中心に、戦略、効用(ユーティリティ)、施策(ツール)という3階層で意思決定を行っていく思考法
※2「B3C」…いわゆる3C分析(Customer:顧客、Competitor: 競合、Company:自社)に、土俵(Battle Circle)という概念を加えた、独自の分析法
※3「戦略ピラミッド」…ビジョンと事業戦略、機能戦略の3つの階層を持つ経営戦略をつながりとして考えるフレームワーク
※4「戦略的オプション比較」…戦略を立案する際に比較する軸を絞り込んで評価するフレームワーク
※5「WHC事業」…会員制の現金払い持ち帰り卸売業(キャッシュ&キャリー)のこと。中小自営業者といった法人だけでなく、会員になれば個人客でも買い物ができる。1999年には、米国最大手のコストコが日本に上陸した

ディスカッション ――ウォルマートはWHC事業を継続すべき? 撤退すべき?


ディスカッション
――ウォルマートはWHC事業を継続すべき? 撤退すべき?

講義のレジュメ資料(PDF)

※クリックするとPDFがご覧いただけます

三谷氏: ではさっそくSam’s Club(以下、サムズ)※6に対するスタンスを明らかにしてください。「この事業は続けるべき」のGo、「すぐに売却すべき」のNo Go、あるいは「条件付きであれば続けても良い」の条件付のGo、どれでしょうか?
※6「Sam’s Club」…米ウォルマート社が展開するWHC事業

(生徒はそれぞれ、Go/No Go/条件付きGoのどれを支持するかを明示し、それぞれチームごとに分かれて、なぜその意見なのかをチームで話し合う)

三谷氏: では、全チーム発表してください。それではGoチームから。

生徒A: 1985年に44億ドルだった市場規模が、1990年前半に200億ドルと増えている点に注目し、非常に成長性が高いため、ビジネスチャンスも多いだろうということでGoにしました。

生徒B: 会費として年間20ドル程度の年会費を払うか、もしくは非会員として、販売価格の5%を上乗せして払うかという選択肢を顧客は選ばなければならず、会社としてみれば事前にある程度の会員収入を得ることができるため、この事業は続けても損はしないと考えました。

三谷氏: でもそれは事業的に見て、そんなに影響力が大きいかな?例えばそれが、顧客から最初に一律10万円徴収し、代わりに金利を付けますよ。というモデルなら、資金繰りに効果があるかもしれない。でも年間20ドルレベルでは、事業的に大したインパクトはないでしょう。他はありますか?

生徒C: サムズはWHC業界シェア1位のプライス・クラブ※7に次ぐ、市場シェア20%を保持しています。また、他のプレーヤーに比べて1位のプライスと2位のサムズのみが投資収益を上げているので、相対的に収益性の高いポジションにいると考え、これはGoだろうと判断しました。
※7「プライス・クラブ」…ソル・プライスにより1976年にカリフォルニア州サンディエゴで創業されたWHCの元祖。1993年にWHC業界3位だったコスコと合併し、現在のコストコになった

三谷氏: なるほど。プライス・クラブ、サムズ以下の他社は赤字なんですね。じゃあほかには?

生徒D: もともとウォルマートの主軸であるディスカウントストアビジネスから、WHCへ顧客が流出するのを防ぐために、競合他社がやる前に自分たちでやってしまうという考えもあったと思います。

三谷氏: 本業との関係において、WHC事業もやらなくてはならないのではないかと。それもあるでしょう。

事業の良し悪しを図る上で、考慮すべきは「シナジー効果」

講義風景1

自分の意見を発表する生徒に対し、三谷氏は「そう考 えた理由」の追求を求める

三谷氏: では「条件付きGo」の意見を聞きましょう。

生徒E: WHC事業の方がディスカウントストアビジネスよりも、ディシジョンメイキングユニット(DMU)※8となる顧客の所得層が若干高い傾向にあると思います。両者の顧客層がかぶらないならばGoだと判断しました。

※8「ディシジョンメイキングユニット(DMU)」…「意思決定単位」の略で、最終的に購買 を決定する権 限を持つ人、あるいは組織のことを指す


三谷氏: なぜかぶらなければGoなんですか?

生徒E: かぶらないことによって、同じ商圏内にWHCとディスカウントストアが出店した場合でも、お互いの顧客が共食いにならないためです。

三谷氏: ではほかの人は、何が不安で「条件付きGo」なんでしょう?

生徒F: 不安の要因は、同じ商圏内にプライスとサムズの両方が出店してしまい、共倒れになってしまう恐れがあること。なので、Goするなら、両者が共存できることをはっきりさせた上でするべきだと思います。

三谷氏: さきほど話にあったWHCとディスカウントストアの「共食い」みたいなことが、競合とも起きるんじゃないかということですね。なるほど。では最後、NoチームはなぜNo Goなんでしょう?

生徒G: WHC事業の市場となる50万人都市は100カ所しかない中、1984年時点ですでに100店舗以上出店されているため、市場が飽和状態になっているのではないかと思います。プライスという競合がいて、シェアが倍近くあることからも、これから進出はするべきではない。

生徒H: わたしは、サムズ用の商品がウォルマートとは別ルートで、独自に購入しているということから、それだと物流のシナジーが高まらないと考えました。また、サムズの扱う商品が売れ行きの良い商品ということで、場合によってはウォルマートと商品がバッティングするんじゃないかと思ってNoにしました。

三谷氏: 物流ネットワークを2つの事業で共有できるなら、サムズはディスカウントストアビジネスで、強い物流網を持っていることが強みになるかもしれない。しかし資料をよく読んでみると、仕入れも別ですし、どう考えても同じモノが、同じ物流網にのるとは考えられない、と。