キャリアを広げる“人脈”転職 - 転職完全マニュアル

「コネ入社は使えない」とは昔のこと。質のいい人脈を持っていることは、信頼し得る仕事をしてきた証。豊かな人脈がある人ほど、キャリアアップの道が拓かれる。本企画では、人脈を大きく育てるための、土作り・種まき・水やりを紹介。人脈を活かしたキャリア構築の方法を教えよう。

藤巻幸夫氏

株式会社セブン&アイ生活デザイン研究所
代表取締役社長
藤巻幸夫氏


人脈を呼び寄せるのは好奇心・行動力・学び


伊勢丹のバイヤーとしてキャリアをスタートさせ、老舗企業・福助の経営再建を手掛けるなど業界を超えて辣腕をふるってきた藤巻幸夫氏。ビジネス上のつき合いを超えて、幅広い分野に信頼できる友人が2000人以上いるという人脈作りのプロフェッショナルである藤巻氏が考える、「ビジネスにおける人脈の役割」とはどのようなものなのか。

「ビジネスが成功するか否かは、いかに同志≠集めることができるかにかかっています。人脈とは、志を同じくする人とのつながりであり、ビジネスの成功を左右する必要不可欠な要素です」と藤巻氏は語る。

しかし、人脈を単なる知人≠ナはなく、信頼できるまでに育てるにはどうしたらいいのか。藤巻氏は、20〜30代の若い頃に好奇心のおもむくままに行動したことが、貴重な人脈に結びついたという。

「とにかく色々なことに興味を持って、どんどん人に会う。知らないことは理解するまで調べてみる。それを繰り返すことでビジネスのヒントも掴めるようになり、絶妙のタイミングでキーパーソンに出会って、キャリアの幅が広がってきました」

若いうちは、知識が乏しくて当たり前。恥をかくことを恐れずに、どんどん質問する勇気と、学ぶ姿勢が必要となる。その積み重ねがやがて大きな財産になるという藤巻氏。自身も若い頃に、恥ずかしい経験から学ぶことがあったと話す。

「伊勢丹のバイヤーとして、まだ駆け出しだった頃、アクリルとカシミアの違いが分からなかった。『そんなことも知らないのか』と人から指摘されました。そこから徹底的に勉強して、誰よりも詳しくなった。口うるさい人ほど自分を成長させてくれるんだと、その時実感しましたね」


原動力はシンプルな気持ち“会いたい”がスタートに


藤巻氏がこれほどアグレッシブに人と出会う原動力となっているのが、「好き」や「憧れ」といった非常にシンプルな気持ちだという。

「例え、ミーハーだと思われても、自分が好きな分野や好きな人は知りたい、会ってみたいと強烈に感じる。そうすると、次はどうやってその分野を深く学ぼうか、どうやったらあの人に会えるのかを考えるようになる。それが私の行動原理なんです」

今でも話題のスポットに足を運び、目標とする人に会うための方法を考えて実行する藤巻氏。若い頃のフットワークの軽さが、エネルギッシュな行動力の源泉になっている。


もてなす心と人間力が人を惹きつけていく


仕事とプライベートの区別なく、自ら“24時間営業中”という藤巻氏は、人に接する姿勢を「ホスピタリティ」というキーワードで表す。

「打算的なギブ&テイクではなくて、人をもてなす、喜んでもらいたいという気持ちが大切です。極端なことをいえば宴会芸でもいい。会った人を楽しませることが、次の出会いにつながっていくと思います」

仕事に有用な人脈作りというと、モノやカネの取引や利害関係になるケースが多い。藤巻氏はそれを、結果としてついてくる副産物と捉える。情報やアイデアを与えてくれる相手には、自分だけが提供できる情報やアイデアで応えることが大切だ。「常に自分は相手にとって魅力ある人間だろうかという点検と確認は重要です」という藤巻氏。自分自身を磨き、向上していく姿勢。そこにふさわしい人とのリレーションが生まれていくと強調する。藤巻氏の自分点検法は、若い頃から愛読している*『言志四録』や『三国志』などの中国の古典文学を読み返すこと。普遍的な思想や哲学、倫理観を養うことができるという。

「長く仕事を続けていると、人間の基本的なあり方が麻痺してしまうことがあるんです。物事の善悪や社会的なマナーやルールの基本に立ち返る意味で、とても参考になります」

常に自分を謙虚に見つめ、人と接する。藤巻氏の人脈作りの原点は学びと謙虚な気持ち≠ノある。

*言志四録 江戸時代後期の儒学者・佐藤一斎が40年余りの半生をかけて書き記した哲学書


見返りの要求が溝を広げることに

人脈にも、避けるべき人間関係が一つある。それは、会社の知名度や肩書を重視する人だ。

“ヒト・モノ・カネ”のやりとりが基本になるビジネスの世界だが、藤巻氏が考える人脈は、むしろ業界という狭い枠を超えたところにこそ存在する。

藤巻氏が人とつき合う上での基本姿勢は、何かを与え続けることに徹し、決して見返りは期待しないこと。この繰り返しが信頼関係を生む。

「打算や下心がある人間関係は長続きしないし、やがて両方に決定的な溝≠ェできる。そういうことも、若いうちにいろんな人と出会うことで学んでいける」と語る。

今も小学校時代から中学、高校、大学時代の同窓生を大切にしているという藤巻氏。損得や利害関係のない人間関係こそ大切にしていくフジマキ流≠物語るエピソードだ。


フジマキ流人脈作りの極意
【1】知らないことを聞く勇気
【2】常に“ホスピタリティ”を持つ
【3】打算は人脈をだめにする



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