Vol.18

150年の歴史ある江戸前ずしランチで特上の“ネタ”補給【ザ・営業食】

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そのネタいただきます!
ザ・営業食
営業マンたるもの、ランチをただのエナジーチャージで終わらせるなんてもったいない! 空腹を満たすと共に、アイスブレイクや飲み会で使える“ネタ”も仕込むべし。
『九段下 寿司政 本店』の鮪

江戸時代から続く老舗の名門すし店。いざ、暖簾をくぐる!

『九段下 寿司政 本店』の外観

ランチタイムを利用してリーズナブルに、食文化についての本物の知識を仕入れるこの企画。今回訪れたのは九段下にある老舗のすし店『九段下 寿司政 本店』だ。

1861年(文久元年)にはじまったこちらの店は、江戸随一と言われたその伝統の味わいを、昔のままの製法で今に伝えるまさに名門中の名門。冷蔵庫がなかった時代からの江戸前ずしのあり方を受け継いでおり、当時の主流である〆物ネタや煮物ネタを得意とするそう。夜のおまかせは8000円~なので、訪れるなら財布の中身と心の準備が必要だ。

でも、ランチタイムなら「にぎり」も「ちらし」も1890円! チャレンジするなら、まずはここから。これで本物に触れられるならお安いものだ!

食べる前に知るべき3つのポイント!
いまさら聞けない江戸前ずし入門

『九段下 寿司政 本店』は江戸前ずしの店だ。でも、江戸前ずしってよく聞くけれど、どんなものかと聞かれると、分からないことだらけ……。そこでいただく前の準備として、まず、以下の3つのポイントをおさえて欲しい。

1)江戸前ずしとはいわゆる“にぎりずし”のこと

江戸前の海(いまでいう東京湾)で捕れた魚介類

江戸前の海(いまでいう東京湾)で捕れた魚介類を使ったすしであることが、江戸前ずしの名前の由来である。しゃりの上にネタを乗せた、いわゆる“にぎりずし”が一般的で、巻き物やちらしずし、イカの印籠ずしなども含まれる。

2)“旬”を大切にする

目の前の海で捕れた新鮮な魚介をにぎるので、自然とその時期に合わせた旬の魚介を取り扱うことになる。そのため、江戸前ずしは旬を大切にするというスタイルになった。

3)“〆物”と“煮物”を赤いしゃりで

赤酢が多く使われていて、ほんのり赤いしゃり

新鮮な魚介を扱うとはいえ、昔は冷蔵庫もない時代。そこで塩や酢で〆たり、加熱して煮たり、タレに漬けたりして魚介が悪くならないようにして提供していたそうだ。また、江戸前ずしが全国に流通するようになった当時は、赤酢(熟成した酒粕で作る赤い色の酢)が多く使われていて、しゃりがほんのり赤かったそうだ。

以上が江戸前ずしの特徴であるが、現在は江戸前ずし自体もどんどん変遷をたどり、赤酢を使用するのは伝統的な一部のすし店のみであったりと、狭義や広義でその意味も変わるようだ。

伝統の赤酢で〆た「こはだ」は
酸味・塩辛さ・渋味のバランスが絶妙

伝統の赤酢で〆た看板の「こはだ」

『九段下 寿司政 本店』の1階は、カウンターが8席とテーブル席が3つある程度で、空間はすっきりと、すがすがしい落ちつきを見せている。カウンターのすぐ向かいでは職人さんがネタをさばいていて、その手元までもがよく見える。

こちらの店で、特筆すべきは赤酢で〆た光モノ「こはだ」の味わいだ。酢で10分ほど〆るのが一般的とされる「こはだ」。それを寿司政では赤酢で2時間近くも〆るのだそうだ。

じっくりと手間暇をかけることで赤酢のすっぱさと塩のしょっぱさ、それに渋味がにじみ、ここならではの「こはだ」が完成する。また、〆物ネタと並んで看板にしているのが煮物ネタだ。穴子、煮蛤、煮烏賊、しゃこなど、長年継ぎ足しされている漬けタレで味わえる。もちろん味は絶品である。

文人が足しげく通った、酒と文化の香る寿司店

文人が足しげく通った、酒と文化の香る寿司店

『九段下 寿司政 本店』に通いつめた常連客には文人も多く、中でも作家の山口瞳氏は「九段下寿司政のしんこ(こはだの稚魚。“新子”と書く)を食べないと、私の夏が終わらない」と語るほどこの店を愛したという。

山口氏は一人でふらりとやってきて熱燗を飲んでいくこともあれば、出版社の担当編集者などと連れ添って2階の座敷に上がってすしを楽しむこともあったそうだ。

映画監督の山本嘉次郎氏が寿司政に送った書

他にも自動車評論家の徳大寺有恒氏、編集者の嵐山光三郎氏など、この店をひいきにした著名人は少なくない。こちらのような歴史のある店では、どんな料理が味わえるのかはもちろん、常連客についても知ることは重要だ。もしかすると、“営業先の重役も常連だった”なんてこともあるかもしれないのだ。

すしとは“しゃっちょこばらず”楽しむもの

『九段下 寿司政 本店』の店長、稲田昌大氏

『九段下 寿司政 本店』の店長、稲田昌大氏

料理にはマナーがつきもの。特にすしとくれば職人世界の独特の言葉や、旬のネタを食べる順番など知っておかないと恥をかきそうだが……。

「いや、そんなことはありませんよ」。そう教えてくれたのは『九段下 寿司政 本店』の店長、稲田昌大氏。

「たとえば昼に『にぎり』を頼んでみてください。職人が一貫一貫握ったすしを出していくので、それを食べればいいんです。たいてい鮪からはじまって、白身魚、貝、光モノがなど出てきます。もちろん、“最初は光モノの『こはだ』が食べたい”と言って貰えれば、最初に握ります」

稲田氏によると、すしだからといって“しゃっちょこばる(緊張して構える)”必要はないとのこと。夜もおまかせ(8000円~)にすれば、職人さんがいいように握ってくれる。「一貫いくらか知りたければいつでも遠慮なく聞いてください」と稲田氏は話す。

伝統が息づく店でありながら、醸し出される雰囲気に堅苦しさは感じない。これならば、得意先を連れて行くというのもありだろう。まずはランチで訪ね、徐々になじみの常連になってみてもいいかもしれない。

【今回のお店】
・店名:九段下 寿司政 本店
・住所:東京都千代田区九段南1-4-4
・電話番号:03(3261)0621
・営業時間:11:30~14:00(LO13:30)/17:30~23:00(L.O.22:30)
      土日祝11:30~14:00(LO13:30)/17:00~21:00(L.O.20:30)
・定休日:年中無休
・アクセス:東京メトロ東西線・半蔵門線、都営地下鉄新宿線九段下駅より徒歩1分
・お店のHP:http://www.sushimasa-t.com/

取材・文/questroom inc.、井上晶夫 撮影/柴田ひろあき

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