Vol.73

地域PRの動画なのに再生回数約3万8千回! 佐世保市がタイムラプス動画を作ったワケ

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国土交通省の観光白書によると、日本を訪れる外国人観光客数は、2013年に年間で初めて1千万人を突破した。また、国民一人当たりの国内宿泊観光旅行回数も2011年以降は増加の一途をたどっている。

地方自治体には、日本が観光大国を目指す上で、国内はもちろん海外の旅行者に向けても自らを売り込む営業力が求められ、各地域がさまざまな手法で、地域PRにしのぎを削っている。

そんな中、最新の動画技法であるタイムラプス動画を用いて地元の魅力を発信している自治体がある。長崎県佐世保市だ。

佐世保市秘書課が「sasebocity koho」のアカウントでYouTubeに投稿している動画、『佐世保の時間。』シリーズは市職員が自前で制作しているのが特徴。4/14現在で8本が公開されており、再生回数の累計は約3万8千回に上っている。

この動画制作を担当している秘書課広報係は職員3人で市政に関する広報紙やテレビ番組の制作などを行っている部署だ。

これまで動画の企画から撮影、編集などに携わってきた主幹兼広報係長の田崎和彦氏に導入のきっかけなどを聞いてみると、「売り込む」とはどういうことなのか、その根本が見えた。

佐世保市がタイムラプス動画で魅せる「時間の流れ」

佐世保
佐世保市秘書課主幹兼広報係長の田崎和彦氏

佐世保市がタイムラプス動画を使った理由、それはタイムラプス動画が「新しい観光客との接点」と「佐世保との相性」を持っているからだった。

「ハウステンボスなどの関係者の努力や今までのPR効果などもあり、佐世保市の観光客数は順調に推移しています。しかし、スマートフォンやタブレット端末といった新しいテクノロジーの普及により、今まで私たちが発信している情報が届かなかった人にも届く可能性が生まれました。そのような皆さんに、もっと多面的に効果的なPRを行っていく必要があると考えたんです」

また、佐世保市の置かれた地理的環境と、その環境が生んだ独特の時間の流れ方もタイムラプス動画の導入に大きく関係しているのだという。

「佐世保には、西海国立公園『九十九島』という絶景スポットがあります。大小208の島々からなる島の密度日本一の多島海で、青い海原に緑の宝石を散りばめたような情景です。特に夕日が沈むにつれ、空や海の色が変化していく様子は息をのむ美しさです。そんな美しく変化していく時間の流れを表現しようと思ったら動画が一番いいだろうという結論に行き着きました」

佐世保
西海国立公園『九十九島』 写真提供:佐世保市

『佐世保の時間。』という動画のシリーズ名もその時間の流れを表現するためのネーミングだ。その「時間の流れ」を表現するために目をつけたのがタイムラプスという手法だった。

「佐世保には九十九島などの自然景観のほかにも、ハウステンボスなどの観光施設をはじめ、異国情緒あふれる街並みや歴史遺産、伝統行事など、ビジュアル的に魅力的なものがたくさんあります。そうしたものを通して流れる佐世保独特の時間を早回しして濃縮することで、それぞれの魅力が増し、写真や通常の動画とは違う面白いPRができるのではないかと考えました。タイムラプスが最近ネット上などで話題になっていたことも理由の一つです」

ITが広げる地方自治体の情報発信の可能性

営業の仕事でも、一度実績が出た営業手法にこだわるあまり、新しい手法に挑戦しなくなってしまうことがある。しかし、そのままで成功し続けることは難しいという危機感を田崎氏は感じているようであった。

「現在、国は人口減少克服と地域活性化に向けた地方創生に全力を挙げて取り組もうとしています。地方においても自ら考え、取り組むことが求められており、全国の自治体はわが町の魅力を再発見しPRにつなげようとすごく努力しています。その中でいかに他の自治体と差別化していくか、どうやって魅力的な情報を多くの人に届けるかということが各自治体の大きな課題になっているんです」

今は世界がインターネットで網羅され、個人が求める情報が簡単に引き出せる時代。だからこそ、田崎氏は新しい技術に挑戦していくべきだと考える。

「今は市役所の職員も情報感度を高く持つことが必要です。社会にはアナログな方法でしか、情報が届かない人もいます。しかし、その一方で、デジタルな方法だからこそ情報が届く人もすごく増えています。重要なのは情報をそれぞれに合った届け方で、それぞれに一番興味を持ってもらえる伝え方をすることだと思います」

ターゲット別に動画の見せ方(=売り込み方)を変える

「いつもよりちょっぴり素敵な夜」とタイトルをつけた最初のタイムラプス動画を佐世保市がYouTubeで公開したのが2014年9月12日。中秋の名月とスーパームーンを佐世保市内の景観とともに撮影したものだった。それから1週間で立て続けに3本動画を公開するが、再生数は思うように伸びなかった。

「単純にYouTubeに投稿しただけではあまり反応がありませんでした。なので、次はいかに拡散させるかを考えました。佐世保市の公式Facebookアカウントに載せてみたり、バイラルメディアに直接売り込んでみたりと、いろいろ手を打った結果、動画によっては再生回数が1万5千回を超えるなど、多くの皆さんに見ていただくことにつながりました」

動画の拡散方法を考える一方で、佐世保市は、ただ単に動画を拡散させるのは本質的ではない、とも考えている。

「すでに全国的に有名なお祭りや観光地であれば県外、市外から広く観光客を集めるのも目的のひとつではありますが、全ての動画の狙いがそれというわけでもありません」

「地方の小さなお祭りを、一度も来たことのない人やその地域に思い入れのない人に向けてアピールするのは難しいと思う」と話す田崎氏は、『千灯籠と万灯籠』や『愛宕市』の動画を例に挙げて続ける。

「これらの動画ではその地域の伝統的な行事や代表的な景観を映し、かつてその地域に住んでいた方や、お祭りに足を運んだ経験がある方に懐かしさを感じてもらうということを意識しました。この動画を見て、『行ってみよう』と思って行動に移す人ってその地区の出身者だったり、強い思い入れのある人だと思うんです。だから郷愁を誘うように、その地区に昔からあるシンボル的なお店や神社など、時間が経っても変わらないものを意識的に多く撮影しています」

佐世保市の狙い通り、SNSでシェアされた動画には「佐世保に帰りたくなりました」「動画を見た後、佐世保に住む親と久し振りに電話で話しました」などのコメントが寄せられていたという。

自らが扱う商品を売り込む方法はひとつではない。タイムラプス動画を導入した佐世保市の例のように、商品の特性と相手のことを理解し、そこに合ったPRの手法に挑戦してみる価値はあるかもしれない。

取材・文・撮影/佐藤健太(編集部)

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