Vol.250

無職になった芦名佑介~高年収も地位も捨てて気付いた本当の“幸せ”

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昨年、営業typeでは当時プルデンシャル生命保険株式会社の営業所長だった芦名佑介氏を取り上げた

学生時代にはアメフトのU19日本代表キャプテンを務め、2社目に入社した同社では25歳で営業所長まで昇進。前職の約17倍を稼ぐまでになった男のキャリアヒストリーだ。

「年収17倍」という数字のインパクトもさることながら、「両親の死もラッキーだった」と捉える彼独特の人生観、「夢は怪物になること」と謳う、その自信に満ち溢れたたたずまいが大きな反響を呼んだ。

だが、芦名氏のストーリーは、ここで終わりではなかった。2015年10月、彼は突然「ハリウッドでスーパースターになる」と宣言し、プルデンシャル生命保険を退職。数千万を超える年収を捨て、身一つで海を渡った。

「今のほうが間違いなく幸せ」。迷いのない目でそう語る芦名氏の今を追う。

芦名佑介(あしなゆうすけ)氏

芦名佑介/あしな・ゆうすけ

1989年生まれ。2004年、慶應義塾高校に入学しアメリカンフットボール部に入部。17歳でU-19日本代表選手に当時最年少で選出され、18歳でU-19日本代表のキャプテンを務める。慶應義塾大学を卒業後、電通のコピーライター職を経て、プルデンシャル生命保険に営業として転職。14年、25歳という当時史上最年少の若さで営業所長に抜擢された。15年10月、同社を退職。単身渡米し、ハリウッドで舞台劇『BLOOD』に出演。現在は帰国し、ビザの取得を目指しながら、国内で新たな活動をスタートしている

「ただの金持ち」になることに、もう夢を感じなくなった

指定の場所にやってきた芦名氏は、別人のようにシンプルな装いだった。ひと目で上等と分かるネイビーのスーツから一転、無地のグレーのVネック。アクセサリーはひとつもない。

代わりに、ひと回り以上は分厚くなったように見える胸板が、彼の動物的な男らしさを一層強調していた。

「あの記事の反響を見て、直感的にやばいなって思ったんですよ」

この10カ月の近況を問われた芦名氏は、落ち着いた語り口でそう話し始めた。

芦名佑介(あしなゆうすけ)氏

「20代で支社長になるということが、僕がプルデンシャルでやりたいことだった。でも、前回の記事がいろんなところで出回って、営業所長の僕がどの支社長よりも有名になってしまった気がしたんです。そのとき20代で支社長になるという夢に、もうワクワクしなくなっていることに気付いたんです」

これまでも野生の嗅覚で、人生を切り開いてきた。とにかくカッコいい男になりたい。そのために、自分の闘争心が最もかき立てられる場所を選んできた。次なる勝負の場を模索する芦名氏に、声を掛けたのはアメリカから帰国した友人だった。

「アッシーも来なよ」そう彼女は言った。「ありえない――」芦名氏は反射的にそう笑い飛ばそうとした。が、その瞬間、猛烈なスピードで、あるイメージが頭の中を駆けめぐった。エンターテインメントの本場・ハリウッドで、屈強な外国人たちを日本人の自分が打ち倒す。それは、この上なくワクワクする光景だった。持ち前の闘争心が再び烈火のごとく燃えはじめたのだ。

「想像したら、『アリだな』って。それで去年の10月末にプルデンシャル生命保険を退職。その2週間後には、ハリウッドでとある劇団のオーディションにたどり着いていました」

英語が話せるわけでもない。演技のレッスンを受けたことがあるわけでもない。だが、それと同様、できないと諦める理由も彼は持ち合わせていなかった。

初めて受けたオーディションで、芦名氏はある男に「You have a talent(持っている)」と言わしめた。その相手こそが、ゴールデングローブ賞に2度、エミー賞に5度ノミネートされた演劇・映画界の巨匠、ロバート・アラン・アッカーマン氏だった。ロバート氏から直々のオファーを受けた芦名氏は2016年3月から1カ月間、ハリウッドの小劇場で舞台に立ち、俳優デビューを果たした。

普通じゃないことを連続的にやり続ける人だけが成功者になれる

怒濤の半年を過ごした芦名氏だが、その決断に反対の声をあげる人も少なくなかったという。

史上最年少での営業部長という座を捨て、成功するか分からない道へ行くのだから止めるのも無理はない話だろう。だが、芦名氏からはそうした世間のノイズに惑わされている様子は一切感じられない。なぜ彼はここまでブレずにいられるのか。

「僕が電通を辞めてプルデンシャルに転職すると決めたときも、『保険業界なんてやめておけ』と止める人はたくさんいました。けれど、僕がプルデンシャルで結果を出しはじめたら、みんな『お前は絶対に成功すると思っていた』と言い出した。それについて特に嫌な気持ちはないんです。ただ、人間が他人の成功を推理できないということを学びましたね」

そう言い切ると、ひと呼吸置いて、芦名氏は続けた。

「僕の考えでは、成功とは不自然なものなんです。普通のことをやっていても決して成功することはない。おかしなことを連続的にやり続けた人だけが成功者になれると思っている。だから、周りが何を言っても僕は決して気にしません」

だが、人と違うことをする人間に世間の風当たりは厳しい。特に近年はSNSが発達し、個人が集中攻撃を受ける場面も増えた。芦名氏も前回の記事が公開された際、少なからぬバッシングを浴びた。だが、そんな批判の声さえ「ラッキーだと思った」と受け止める。

「イノベーターのステップは4段階あると僕は思っていて。最初は興味すら持たれない“無視”。そして結果が出ると“称賛”が生まれる。でもその次には『アイツはやり方が汚い』や『裏でこんなことやっている』などあることないこと言われて、“批判”を受ける。失敗する人はほぼ全て、この批判で潰れてしまいます。でも成功に批判はつきもの。それを乗り越えた人だけが、最後に“歴史”になれるんです」

一番のリスクは不安定ではなく、本気になれないこと

アメリカの舞台で俳優デビューを飾ったものの、現在の芦名氏は無職。つまり、数千万円の年収から一気に0へ“転落”した。だが、その顔つきから悲壮感は読み取れない。

芦名佑介(あしなゆうすけ)氏

「後悔は全くしていません。そもそも、もう今の僕はお金に執着がないんです。プルデンシャルにいた頃は、同僚より良いスーツを着たり、良い時計を着けたり、良い車を買ったり、良い家に住んだりすることを幸せだと思っていました。もちろん結果を生む上で競争意識は重要ですが、あの頃僕が幸せだと思っていたものは、今振り返れば全部“見栄”でしかなかったんですよね」

だから、高収入を捨てることにもためらいはなかった。

「不安定な道を選ぶことをリスクだと恐れる人が多いけれど、僕にとって一番のリスクは、本気になれないこと。大切ではないもののために本気になれない場所にとどまり続けることが、一番のリスクなんです」

それは、全てを捨てて敢然とチャレンジしたエンターテインメントの世界でも同じことだった。初めてその場に立って、「自分は俳優をやりたいわけではない」ことを実感したのだと言う。

「なりたいのは、俳優ではなく、表現者だった。誰か他人を演じるのではなく、自分の生き方や考え方を通じて世の中にメッセージを伝えられる人に僕はなりたいんだ、そう気付いたんです」

目指すは「人を集められるインフルエンサー」

人を動かせる人物になることこそが、自分の目指すところ。そう再発見した芦名氏は、現在、無報酬で講演活動を行い、希望者との面会などを通じてさまざまな年齢・立場の人たちとコミュニケーションを取りながら、新しい種を蒔いている。

芦名佑介(あしなゆうすけ)氏

「いいものには必ず人は集まるんです。人が集まれば、いくらでもビジネスは成立させられる。なので僕は芦名佑介という名前でいかに人を呼べるかにチャレンジしているんです。だから、自分でもいい、仕組みでもいい、いいものを作って、もし個人で人を集めることに自信がある人は、組織を出て、どんどんチャレンジしていけばいい。そうでないなら会社の看板を使って、人を集めればいいと思います」

どれだけ多くの人たちに影響を与えるインフルエンサーとなれるか。個人が主体の現代だからこそ、確かにそれはあらゆる職種で大きなストロングポイントになり得る。

「ハリウッドに行って、日本社会の問題や矛盾もたくさん見つかった。僕はそれを自分の力で変えていきたいし、変えられると思っています。僕の考えに賛同する人たちを集めて、世の中を動かしていきたい。今はとにかく自分のやりたいことだけをやっている感じ。子どもの頃に戻ったみたいな気分ですね。確かに収入はなくなったけど、確実に今の方が幸せだって断言できます」

彼がこれから何をなし遂げようとしているのか。全容はまだ見当もつかない。その奮闘を無謀だと笑う人もいるだろう。だが、そんな声に決して足をとられたりしない。なぜなら、芦名佑介はどこまでも能力ではなく可能性を信じる男だからだ。

取材・文/横川良明 撮影/竹井俊晴

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